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ナポレオンコンプレックス

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第三章

「只な」
「戦争はしませんでした」
「そうだった、しかしだ」
「陛下は違いますね」
「私は戦う、戦うならばだ」
「体格が必要ですね」
「兵士は背が高くないと駄目だ」
 ナポレオンは言い切った。
「やはりな」
「左様ですね」
「特に近衛兵はな」
「背の高い者を集めていますね」
「そうしている」
 こう言うのだった。
「そして彼等が周りにいるならな」
「陛下は必然的に小さくなりますね」
「そうなる、それだけだ」
「左様ですね」
「そしてだ」
 さらに話した。
「私を小男と言うならだ」
「構わないですね」
「真実は違うからな」
 平然として語った。
「構わない」
「偽りの情報に踊らされるなら」
「むしろ好都合だ」
 今度は笑って話した。
「好きなだけだ」
「踊らされることですね」
「イギリスはな、人は相手を馬鹿にするとだ」
「背丈のことでも」
「その相手を侮る」
「その全てを」
「相手を侮るとだ」
 そうなると、というのだ。
「そこに隙が生じてだ」
「こちらは付け入ることが出来ますね」
「そうなるからな」 
 だからだというのだ。
「存分にだ」
「小男と思うことですね」
「むしろ好都合だ」 
 こう言うのだった。
「そしてそのうえでだ」
「イギリスと戦いますね」
「そうする、だが私を馬鹿にしないならだ」
「背のことを」
「特に真実を見ているならな」
 自分が小柄ではないと、というのだ。
「その者は私の敵となる」
「イギリスでも」
「手強いな」
「そうした者がいないことを願いますね」
「強くな」
 廷臣に強い声で話した。
「いないことを願う」
「むしろ」
「その通りだ」
 パリの自身の宮廷でこうした話をした、そしてだった。 
 イギリスでは事実ネルソンがそうであり陸軍の将軍アーサー=ウェリントンも部下達にこんなことを言っていた。
「私は長身と言われるがその私とだ」
「彼は変わらないですか」
「その背は」
「そうなのですか」
「実はな」
 真面目な顔で語った。
「そうだ、そして小男と呼ぶ前にだ」
「まず彼を調べる」
「そうすることですね」
「実際はどうか」
「その背丈にしても」
「センチメートルで一六四あるとな」
 それならというのだ。 
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