下手な哲学書
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第四章
「確かにね」
「今その言葉が頭の中にあるわ」
「その本は全くわからなくて」
「何もないんじゃないかしらってね」
その実はというのだ。
「思ってるわ」
「そうなのね」
「だからね」
それでというのだ。
「読むの止めようかしら」
「だったらね」
聡子はそれならと話した。
「お坊さんとお話してみる?」
「仏教の?」
「キリスト教の神父さんでもいいけれど」
「宗教ね」
「哲学って宗教から生まれてるでしょ」
「ええ」
その通りだとだ、美利も答えた。
「そうよね」
「だから宗教の人のお話をね」
「聞いてみるの」
「読むのもいいし」
「じゃあ近所のお寺に行ってお話聞いて」
美利はそうしてと返した。
「本もね」
「読んでみるのね」
「そのお坊さんからいいって言われた本をね」
「じゃあそうしてみるのね」
「これからね」
こう答えて実際にだった。
美利は近所の寺に行って住職に仏教とはどういったものか聞いて彼から紹介された仏教の本を読んでみた、すると。
「物凄くわかりやすかったわ」
「そうだったのね」
「住職さんのお話も紹介してもらった本も」
どれもとだ、美利は聡子にサークルの部室の中で話した。二人は同じ文芸関係のサークルに所属しているのだ。
「わかりやすかったわ」
「そうだったの」
「ちゃんと仏教用語の説明もあって」
「文章もわかりやすかったの」
「そうだったわ」
「そうだったのね」
「いや、全然違ったわ」
聡子に真剣な顔で話した。
「本当にね」
「そうだったの」
「あれね」
まさにというのだ。
「住職さんにその哲学書の話をしたら」
「わからないっていう」
「書いた教授さん昔カルト教団支持してて」
そうであってというのだ。
「批判受けてマルクス主義にも染まっている」
「共産主義?」
聡子はそう聞いて顔を顰めさせた。
「あのソ連の」
「粛清とか秘密警察のね」
「強制収容所の」
「そういうのも持ち上げてたことあったそうで」
「やばい人よね」
「そうだったみたいよ」
こう話した。
「これがね」
「そうだったのね」
「だからね」
それでというのだ。
「この人の本はね」
「読むものじゃなかったのね」
「それで読んで難しいわからない何書いてるかわからないものは」
そうした本はというのだ。
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