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西遊記

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第四回 悟空斉天大聖となるのことその四

「我等よりもずっとか」
「何と、そんな下っ端か」
 悟空は義兄弟達に言われて怒りました。
「下らん、では帰る」
「いや、待て待て」
「これからの務めで上がっていくぞ」
「兄弟落ち着け」
「短気はならんぞ」
「短気も何もわしは王だぞ」 
 だからだとです、悟空は自分を宥める兄弟達に言いました。
「それで下っ端なぞなるか」
「いや、だからこれからだ」
「落ち着くのだ」
「ここはそうせよ」
「兄弟ならやがては」
「すぐだ、それでいてられるか」
 義兄弟達が止めるのも聞かずです、悟空は筋斗雲を出して飛び去ってしまいました。六大王もこれには呆れるばかりです。
「兄弟の悪い病気が出たな」
「本当に短気だ」
「気さくで剽軽で憎めぬが」
「そこが困ったところだ」
 悟空についてその呆れ顔で言います。
「どうしたものか」
「かといってもお偲びで来ていて大きく動けぬ」
「ここは退散しよう」
「それぞれの治める場所に戻ろう」
「そして兄弟を後で宥めよう」
 それぞれ言い合って神界から退散しました、そしてです。
 悟空は花果山に戻ると何とでした。
「何十年もか」
「はい、経っております」
 混世魔王が答えました。
「これが」
「神界だと何十日しかだ」
 悟空は驚いたお顔で言いました。
「経っておらぬが」
「ああ、言い忘れていましたが」
 魔王はこう前置きして言いました。
「神界の一日はです」
「下界の一年か」
「左様です」
「それを早く言え」 
 悟空は思わず言いました。
「そうだと知っていればな」
「驚かれませんでしたか」
「そうだった、いやしかしな」
 それでもというのでした。
「事情はわかった、しかもわし等は不老不死」
「だからですな」
「何十年経っていてもな」
「何でもありませんな」
「左様だ、しかしな」
 それでもというのでした。
「わしは戻って来た、またここで暮らすぞ」
「あの」 
 大臣の一人が聞いてきました。
「神界でのお仕事は」
「辞めだ辞めだ」
 怒ってです、悟空はその大臣に答えました。
「あんな仕事はな」
「あんなですか」
「一番下っ端の仕事だぞ」
 怒った声のまま言いました。
「そんな仕事に就けるか」
「大王としては」
「そうだ、だからな」
「辞められて」
「そしてもうここでな」
「暮らされますか」
「下っ端であるより王であってだ」
 それでというのです。 
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