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ニンジャ・イン・ザ・ファンタジーⅥ

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白き極光編
第1章
  ルーン・ブレード・イズ・グリステン

「…よし、良いぞ! 走れ!」

 ソルヴェントの手招きに応じ、彼の潜む茂みへロックとセリスが飛び込む。
 
「ふー…どうにかここまでは来れたか。洞窟まではあと少しだけど…」

 ロックは葉の隙間から周囲を窺う。
 襲撃を繰り返すコールドホワイトに対しては街の防御を固めよというアースクエイクの指示により、街の外を巡回する帝国軍は目に見えて減っている。
 おかげで洞窟目前まではそこまでの苦労は無く来られたものの、フィガロ城とサウスフィガロ間の連絡を断つ為、洞窟の入口には黒い魔導アーマーを含めた部隊が簡易的な検問を敷いている。

「あれはヘビーアーマー…通常の魔導アーマーと比較して動きは鈍重だが重装甲かつ高出力だ。魔導レーザー発射口も発射時以外は装甲化されていて生半可な攻撃は効かない。接近戦を挑めばその重量も脅威となるだろう」

 さすが元帝国将軍のセリスは帝国の兵器に関して詳しい。

「操縦席も前面に装甲が追加されているので、正面からでは搭乗者を狙う事も難しい」

「じゃあどうする?」

 ロックはミスリルナイフを手にするが、あれの前では心許ないだろう。

「任せて。私は帝国の元将軍にして…魔導剣士。その真髄を見せてあげる」

 セリスが目を閉じ、人差し指と中指を揃えた右手を顔の前に翳す。
 そして静かに何かの詠唱を始めると、その指先に青白い魔力が集まり、渦巻き始めたのだ。

「…ブリザド!」

 そしてその手を帝国軍へ向けると、突然ヘビーアーマーが動作不良を起こした。

「な、なんだ!?」

「おいどうした!?」

「分からん!」

 まさか遠距離から内部機構を直接凍結させられたなどとは考えもつかないだろう。
 ヘビーアーマーの周りに兵士達が集まり、あれでもないこれでもないと騒ぐ。

「行くぞソルヴェント!」

「ヨロコンデー!」

 その隙は見逃さない。
 茂みから同時に飛び出したロックとソルヴェントが、未だこちらに気付かぬ帝国軍へ襲い掛かる。

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 まずはソルヴェントがスリケン投擲!
 連続して10枚投げられたスリケンは、背を向けていた帝国兵3人の肩、腕、脚などへ突き刺さり、一斉に崩れ落ちた。

「!? て、敵襲! 敵襲ー!」

 ヘビーアーマーの操縦席で四苦八苦していた兵士が、駆けて来るロック達、そして最後尾で倒れた仲間に気付いて声を上げた。

「うおぉりゃっ!」

 ロックの飛び膝蹴り! 振り向いた兵士の顔面直撃!

「イヤーッ!」

 ソルヴェントが裏拳を側頭部へ叩き込む!
 ヘルメット陥没! 脳震盪!

「くそっ!」

 やむなくアーマー兵も剣を抜いて操縦席を飛び出し、残る兵士は5人。

「貴様らリターナーか!」

 ロックのナイフと兵士の剣が切り結ぶ。

「さぁな! だが、帝国に反感を抱く奴なんていくらでもいるんだ…ってな!」

 ロックは力を抜いて素早く左へ抜けると、よろけた兵士の腹へ膝蹴り!
 盗賊…もといトレジャーハンターの軽快な戦い方は、帝国軍の戦闘教本では習わないイレギュラー極まりない物だ。

「ドトン・ジツ! イヤーッ!」

 敵兵と睨み合っていたソルヴェントは、背後から剣で突きを仕掛ける別の敵の気配を察知すると、ドトンで一気に胸辺りまで地面に沈む!

「がふっ…!?」

「ぅあっ!? ち、違っ…がひっ!?」

 背後から迫っていた兵士の切っ先が、前にいた兵士の胸へと突き刺さる。
 慌てて腕を引いた兵士の金的へ、下半身を埋めたままのソルヴェントからの無慈悲なアッパー! 股間を押さえて倒れ痙攣する!
 幸いブレイクこそされなかったものの、当面動く事は不可能であろう!
 この非情なる惨劇を偶然目撃してしまった残る2人の兵は、ゾッと青ざめてソルヴェントから距離を取る!

「同情するね…!」

 あまりの恐怖に後ろへの警戒心が緩んだ2人の首元へ、ロックのダブルチョップ! 同時にダウン!

「っし、制圧完了」

「さすが、隙を狙う戦法はお手のもんだなロック=サン」

 何に使う予定だったのか、長い鎖が検問所に置いてあったので、これを使って気絶した兵士達を一纏めにして縛り上げた。
 ヘビーアーマーの配線を切断し、内部凍結から復旧しても動かせないようにしているところへ、セリスが合流した。

「改めてニンジャが味方にいると頼もしいと感じたわ」

「ドーモ。セリス=サンの…魔法? あれでこいつを無力化してくれたおかげさ」

 ソルヴェントは手の甲でヘビーアーマーを叩き、鈍い音を響かせる。

「さーて、ここを抜ければナルシェまで一直線。エドガー達も到着してると良いんだが…っと、そうだ」

 ロックは懐から赤い筒を取り出して地面に設置すると導火線に火を着けた。
 筒の先端から発射された球体が空中で炸裂し、晴れ渡った青空に不釣り合いな爆発音を鳴らす。

「…来たな」

 地平の彼方から土煙がこちらへと接近し、白い鋼鉄のモンスターが彼らの前で停止した。

「ドーモ、コールドホワイトです」

「遅くなって悪かったな。…そっちは随分と激戦だったようだな…」

 見ればコールドホワイトのニンジャ装束も、愛用スノーモービルも、ところどころに焼け焦げたような痕が付いている。
 魔導レーザーによるものであろう。

「連中、途中から戦い方を変えて来てな。追い掛けて来るのをあちこち連れ回す事が出来なくなって、牽制にもある程度近付かねばならなくなったのだ」

「なるほど、アースクエイクの指示は正解だったわけか」

 その名を聞いたコールドホワイトの目が見開かれる。

「な、なんだと!? アースクエイク=サン!? ま、まさかあの街にいるのか!?」

 コールドホワイトは元々はソウカイヤだ。
 であればソウカイヤでも名の知れたアースクエイクの存在を知っていたとしても不思議は無いだろう。

「ま、まずい…アースクエイク=サンと戦うのはまずいぞ…早く行こう!」

 ロックが出会ってから、コールドホワイトがここまで取り乱し、焦りとも怯えとも取れる様子を見せたのは初めてだ。
 それだけアースクエイクというニンジャが恐ろしく強大な相手という事を、ロックは改めて認識する。

「そうだな。あ、コルディ、こっちは元帝国将軍のセリスだ」

「ドーモ、セリス=サン。コールドホワイトです。元か…ともあれ万が一にもアースクエイク=サンの追跡を受けてはいかん。行くぞ!」

 3人を急かすように先を行こうとする彼を、ロックが止めた。

「待った。セリスは脚を怪我してるんだけど…モービルの席に乗せてやってくれないか?」

 コールドホワイトはしばし逡巡したが、怪我人を歩かせて行軍が遅れる事を嫌って承諾した。

「すまない」

「そのまま歩かせるのは非効率的と判断しただけだ」

 さすがのニンジャ腕力。
 セリスを乗せたモービルを手押ししながらコールドホワイトは呟く。
 既に1度通過した道。迷う事は無く、道中に帝国軍もいないので、スムーズに進んでいたのだが…?

「…む…?」

「なんだ?」

 コールドホワイトとソルヴェントのニンジャ感知力が、足裏に伝わる僅かな震動を感じ取る。
 それはやがて、音も伴ってロックやセリスにもはっきり認識出来る規模となっていた。

「…まさか!?」

 洞窟のフィガロ城側出口まであと一息というところで、一行の進行ルート上の壁を突き破り、巨大な暗色系カラーリングの機械が現れた。

「ディッグアーマー! 地中掘削用の大型魔導アーマーだ!」

「アースクエイクが話してた奴か!」

 4本の爪状パーツと回転機構を備えた両サイドのアームに加え、機体前面には地盤を削る為に用いると思われるホイールを1基持っている。
 そして正面にはガストラ帝国の国章。

「フ…フフフ…見つけたぞ…セリス元将軍…!」

 外部からは見えないが、操縦席でうわ言のように呟く者がいた。

「そ、曹長殿…やはりこれはまずいのでは…」

「馬鹿! 今以上にまずい事があるかっ! あの女が帝国の機密情報をいくつ持ってると思ってる!? 貴様の失態のせいでそれらがリターナーに渡ったらどうするつもりだっ!!」

 そう、それはセリスを地下室に監禁していた2人の帝国兵だ。

「フィガロ城行きの道程で強固な岩盤を迂回したのが思わぬ僥倖…! フィガロを潰した上にあの女も自分の手で始末したとなれば全て帳消しだっ!」

 というよりはそれ以外に生き残る道が無いとも言える。
 もはや彼と部下には後が無いのである。
 ブラム曹長は外部スピーカーをONにする。

「セリス元将軍! 大人しく戻るのならばこの場でミンチにするのだけは見逃してやるぞ!」

「明日殺される事を知りつつ戻れと? どうもジョークのセンスは最悪なようだな」

 セリスから突き付けられたNOの返答を聞いたブラムは、顔を真っ赤にして狂気めいて目を剥く。

「では肉片となれ! ドリルバレット発射!」

 ディッグアーマー本体部分に2つの穴が開き、そこからスティック状ドリルが顔を覗かせ回転を始める。

「かわせっ!!」

 セリスが叫ぶと、ロック達は慌てた様子で左右に散開する。
 直後、彼らのいた場所へ向けてドリルが射出され、多量の礫や砂を巻き上げながら地面へ深く突き刺さって潜行して行く。

「くそっ…! ならばこれでどうだ! サンダー準備! 魔導ジェネレーター出力上昇!」

 今度は機体全体が仄かに発光を始める。

「魔法が来るっ!」

「魔法っ!? 機械がか!?」

「魔導を注入された人間は体内に魔導回路が形成され、そこに充填した魔力と術式の詠唱で魔法を使う! あれはその回路を機械的に模倣したジェネレーターを搭載しているんだ!」

 セリスは剣を抜き、先ほどのブリザド使用時と同様に詠唱を開始した。

「何をする気だセリス!」

「帝国が魔導を実用化しておいて、魔導への抑止力を用意してないと思う? まぁ見てなさい!」

 不敵な笑みを浮かべたセリスは、剣を握った右手を避雷針めいて高々と掲げた。

「死ねぇっ!! サンダーっ!!」

 帯電したディッグアーマーから放たれた指向性の電撃が、空気を切り裂きセリスへ向かう。
 だが、それは不自然に軌道が変わり、彼女ではなく彼女の持つ剣へと引き寄せられた。
 そして、刀身に触れた電撃は分解され、純粋な魔力となって剣を伝いセリスへと流れ込んだのだ。

「…ふぅっ………どう? これが魔封剣。この力の前では、あらゆる魔法は術式によって与えられた特性を失い、私を潤す魔力となる」

 セリスは挑発的に口の端を吊り上げると、剣の切っ先をディッグアーマーへと向ける。

「お、おのれ…! あんな技があるなんて聞いてな…うわぁっ!?」

「イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 ディッグアーマーの表面に火花が走る!
 コールドホワイトとソルヴェントの同時スリケン攻撃だ!

「えぇい、効くかそんな物が! 地中深くの高圧にも耐えるように設計されているんだぞこっちは!」

 周囲を跳ね回るニンジャを追い払うように、魔導レーザーが乱射されるが、大型故に犠牲となった旋回性能が仇。
 2人のニンジャはそれを容易に回避しながらなおもスリケン投擲!
 優れたニンジャのスリケンであればこの装甲も難なく抜けるであろうが、2人はニンジャ戦士全体で見れば下の上、贔屓目に見て中の下といった実力である。
 スリケンの質では太刀打ち出来ぬが故、ひたすらに量で押す!
 スリケンは元の世界では大気中の重金属成分を触媒として生成していたが、それが存在しないこの世界では大気中の魔力をニンジャ握力で圧縮して作り出しているのだ。

「効かないと言って…ん? ば、馬鹿な!? アラートが!?」

 操縦席内部の計器が機体の異常を示す。

「ジェネレーターが強制冷却だと!?」

 魔法の使用に不可欠な魔導ジェネレーターが突然の機能不全!

「さっき借りた魔力、返却させてもらったわ」

 セリスの指先が青白い輝きを放っている。機体内部へ直接撃ち込まれたブリザドだ!
 機体構造を熟知している、元将軍という立場が可能とした精密攻撃!

「まだまだ! ブリザド!」

 今度は機体の関節駆動部へのブリザド!
 これを許せばディッグアーマーはただの鉄の棺桶!

「アームシリンダーとフロントホイールをフル稼働させろ! 稼動熱で氷避けをするんだ!」

 ブラム曹長と部下がレバーやパネルを必死で操作し、機体の動かせる部位をとにかく動かして熱を発生させようとしている。
 だが、その為に他の者への攻撃が手薄になった!

「待ーたーせーたー…なっ!! コルディっ!!」

「おうっ!」

 姿を消していたロックが引きずって来たのは…入口の検問で放置していたヘビーアーマーの前腕部…の、さらに鉤爪の部分だ。
 さすがに腕を丸ごと持って来るのは無理なので、最も頑丈そうな爪部分を分解して持って来たのだ。
 それをニンジャ腕力で持ち上げたコールドホワイトは、稼動しているホイールの隙間へ強引に捩じ込んだ!
 摩擦! 摩耗! 研磨! ホイールとボディパーツの隙間に挟まれて甲高い金属音を叫ぶも、これは近接戦闘用に精錬された強固なメタルクロー!
 折れる事無く異音を放っていたが、ついにつっかえ棒としてホイールの動きを止めてしまった!

「ホイールがやられた!?」

 さらに!

「「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」」

 スリケン追撃!
 回転するシリンダーの側面におびただしいスリケンがヒット! ヒット! ヒット!
 ニンジャ身体能力で短時間にスリケンを50以上は撃ち込まれ続けた表面装甲にとうとう亀裂が走る!
 そこへさらなるスリケン! 立て続けに黒煙と小爆発!

「アームシリンダーもて、停止だとぉ!?」

 シリンダーのみに留まらず、煙を吹き出す箇所が見る見る増えて行く!

「だ、駄目だ! 脱出! 脱出だっ!!」

「ひ、ひいぃぃぃっ!!」

 最後まで抗おうとしていた搭乗者2人もついに諦め、機体を放棄!
 洞窟の脇道へと逃れて姿を消した!
 直後! ディッグアーマーのボディが内部から爆発を起こし、完全に機能停止!

「…フーッ、なんとかなったぁ…」

 ザンシンしていたソルヴェントが全身から力を抜いて座り込んだ。

「ヌゥー…まさかこれが大量にいるのか、セリス=サン?」

 コールドホワイトも肩で息をしながらセリスへと向き直った。

「いや、ディッグアーマーの絶対数はそう多くはない。用途が限られている事に加え、レアメタルを大型の機体に使用せねばならないコスト面もだし、他のアーマー兵器と規格が異なるパーツが多い為に製造ラインを共有出来ない問題もある」

「それを聞いて安心したぞ」

 ロックが押して来たモービルを受け取り、コールドホワイトはセリスに席へ座るよう顎で促した。

「この騒ぎでも応援が来ないとこ見ると、まだフィガロ城側には帝国軍は展開してないみたいだな。後ろから追手が来る前にさっさとナルシェに行こう」

「ウム」

 4人は残骸と化したディッグアーマーの横を通り抜け、洞窟出口へと向かう。
 …と、コールドホワイトはおもむろに取って返すと、ニンジャ腕力とニンジャ握力でもってディッグアーマーから装甲板をひっぺがす。
 それを見たロックは、背中に悪寒が走るのを覚えた…というより思い出した。

「今頃外は日が傾いているだろうな、ロック=サン?」

「…ああ」

「ザイルは持っているな、ロック=サン?」

「……ああ」

「俺が何を言いたいか分かるな、ロック=サン?」

「………ああ」

 げんなりした表情へ様変わりしてしまったロックの姿に、セリスとソルヴェントは顔を見合わせて首を傾げるのだった。



 洞窟の入口にへたり込んだブラムは、その巨漢を見上げていた。恐怖に引きつった表情で。

「ドーモ、ブラム=サン。アースクエイクです」

 胸の高さに掲げられたその男の右手はしっかりと握り込まれ、指の間からはおびただしい量の血液が流れ落ちている。
 握られていた手が開かれると、圧縮された肉塊が生々しい音を立てて地面に落ちた。
 ブラムと共にディッグアーマーに乗り込んでいた兵士の成れの果てだ。
 2本の脚だけは膝から下の原形を留めており、辛うじて元人間である事を窺い知る事が出来た。

「ディッグアーマーはどうした、ブラム=サン? フィガロ城攻略の要となる希少なディッグアーマーは?」

「ぁ…ぃや…そ、それ…は…」

 彼は既に失禁している。

「答えろブラム=サン。己の管理不行き届きを揉み消す為に無断で持ち出したディッグアーマーは?」

 部下から手渡された濡れタオルで、手に付着した血を拭き取りながら、アースクエイクは改めて問い詰める。

「も…申し訳ありません! セリス元将軍らの抵抗に遇い、喪失いたしました! 申し訳ありません! お許し…お許しをぉっ!!」

 彼は腰が抜けて満足に動かない身体に鞭打って、どうにかドゲザ体勢を取った。
 アースクエイクは冷たい表情のまま、尋問を続けた。
 彼のいた世界では、ドゲザは最上級の屈辱的行動なのだ。

「セリス=サンは単独か?」

「い、いえ…他に盗賊のような身軽な男が1人と…ニンジャ…ニンジャが2人おりました…!」

 ブラムは包み隠さず話した。
 相手に全てを見透かされているかのような本能的恐怖心から、どうしても嘘が口から出なかったのだ。

「ニンジャが2人…スノーモービルを駆るニンジャは分かっていたが、もう1人…。フム、コルツ山で同乗していたのはその盗賊とニンジャか」

 得た情報から分析を行うアースクエイク。
 その4人の行き先はフィガロ城か、それとも…。

「…ナルシェ? リターナーとナルシェが協力関係に?」

 ナルシェには例の氷漬けの幻獣がある。
 魔導の娘を組織に加えた事で、あれの力を引き出す手段を発見したのだろうか?

「…近くケフカ=サンのナルシェ攻撃が行われる。ナルシェのガードにリターナーの戦力も加わると面倒だな…本部を発見出来ぬとしても、コルツ山は完全封鎖して合流を妨害せねば。おい、サウスフィガロ守備隊からコルツ山に回せ。山道にバリケードも組んで人っ子1人通すな」

「はっ!」

 敬礼を返した兵が駆け去ると、アースクエイクは再びブラムへと視線を落とした。

「とりあえずはこのサンシタの命で許してやる。次の失態は同じ末路を辿ると思え」

 物言わぬ肉塊を指で指し示すアースクエイクに、ブラムは全身をガタガタと震わせて頷きを繰り返す。

「あ、ありがとうございます! ありがとうございますっ!」

「お前には今度のナルシェ侵攻でケフカ=サンの指揮下に入ってもらう。汚名を返上して見せよ」

「はいっ…! はいっ! 必ずや!!」

 何度も何度も頭を地面に打ち付け、ドゲザを繰り返すブラムを冷ややかに見下ろしたアースクエイクは、周囲の部下に命じて検問の復旧を行ってからサウスフィガロへと帰還した。
 ロック一行は新たに元帝国将軍のセリスを加え、帝国の包囲網と追撃を振り切ると、一路ナルシェを目指した。
 冒険の発端となった、雪と蒸気の街へ。 
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