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西遊記

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第一回 孫悟空生まれるのことその七

「これからどうする」
「はい、もうこれで国に帰りまして」
 悟空は笑顔で答えました。
「そしてです」
「そのうえでじゃな」
「そこでずっとです」
「遊んで暮らすか」
「そうします」
 こう言うのでした。
「この世の終わりまで」
「それではな」
「いやあ、よかったです」
「うむ、しかしな」
 仙人は喜ぶ悟空に忠告する様に言いました。
「お主はそれでも注意せよ」
「この性格ですか」
「気が短くな」
 そうであってというのです。
「すぐに暴れるし調子に乗るからな」
「それが問題ですか」
「兎角火の気が強過ぎる」
「だからですか」
「そこは気を付けるのじゃ」
「不老長寿になってもですな」
「そして仙術を極めたが」 
 しかしというのです。
「それでもな」
「承知しました」
「まあおいそれとは治らんな」
 仙人はこうも言いました。
「お主は。人の話を聞いてもな」
「それでもですか」
「お主のその気質は火即ち火徳によるものであり」
「火の気が強過ぎるので」
「それでじゃ」 
 どうしてもというのです。
「おいそれとは治らん、それで苦労もするであろう」
「ううむ、楽しく暮らしたいですが」
「そう思うなら少しでもな」
「注意することですな」
「左様、よいな」
「わかりました、しかし容易にはですか」
「治らぬ」
 仙人は達観した様に言いました。
「そのこともわかっておれ」
「火の気が強過ぎますか」
「火そのものと言っていいまでにな」
「石から生まれてそれとは」
「だが五行は火だけではないな」
 仙人は悟空にこのこともお話しました。
「土、水、木、金があるな」
「合わせて五つです」
「その全てが揃うとな」
「上手くいきますな」
「だからな」
 それでというのです。
「揃えばよい」
「わし以外にも」
「四人おればな、合わせて五人おれば」
 そうなればというのです。
「お主も大丈夫じゃ、大きなことを為せるぞ」
「大きなことが」
「お主だけでも出来るであろうが」
「より大きなことをですな」
「必ずな、では花果山に戻っても達者でな」
「また楽しく過ごします」
 悟空は仙人に笑顔で挨拶をしました、そうしてです。
 仙人に別れを告げて山を後にしました、筋斗雲に乗ると瞬く間に飛び去ってしまいました。仙人はその悟空を見届けてから仙童に言いました。
「あの者は必ず大きなことを為すぞ」
「確かに」
 仙童も言いました。 
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