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西遊記

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第一回 孫悟空生まれるのことその六

「十年も経たずに不老長寿になった者なぞ」
「そうですか」
「そしてな」
 それでというのだ。
「お主力が違うな」
「強いですか」
「仙人としてのそれがな」
「そうであるか」
「かなりの才がある」
 仙人のそれがというのです。
「だからさらに修行を積めばな」
「もっと凄くなりますか」
「不老長寿以外にもな」
「他にも色々仙術を授けて頂きましたが」
「わしの知っている限りを教えるが」
「お願いします」
 悟空はそれならと答えました。
「わしもここまでくるとです」
「学びたくなったか」
「はい」
 まさにというのです。
「わしも」
「ではさらに教えるぞ」
「お願いします」
 こうしてさらに修行を受けてです、悟空はどうなったかといいますと。
「これであらゆるものに変身出来る様になった」
「七十二般変化の術に」
「筋斗雲にも乗れてな」
「あらゆる場所に一瞬で行ける」
「左様、そうなった」
「そしてお師匠様がご存知のことも」
「全て教えた、三年でな」
 それだけの歳月でというのです。
「教えた」
「不老長寿の次は」
「こんなことははじめてだ」
「三年で、ですか」
「変化の術や筋斗雲まで教えたのはな」
「やはり早いですか」
「そなたとんでもない才能がある」
 またこう言うのでした。
「仙人としてな」
「そうなのですね」
「うむ、だからな」
 それでというのです。
「山を出てもな」
「凄い仙人になりますか」
「必ずな、しかしな」
「しかし?」
「そなた才はあるが」
 仙人は悟空にどうにもという顔で言いました。
「性格がな」
「問題がありますか」
「騒がしく気が短くだ」
 そうであってというのだ。
「すぐに暴れるな」
「はい、どうやら」
「その気質が問題だ」 
 こう言うのでした。
「五行で言う火そのものじゃ」
「火の気が強いあまり」
「そのものと言っていい」
 そこまでだというのです。
「それは隠せぬ。そのことに気を付けてな」
「そうしてですか」
「生きていくのじゃ」
 こう言うのでした。
「よいな」
「はい」
 悟空はそれならと応えました。
「それでは」
「それでもうそなたに教えることはないが」
 それでもというのでした。 
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