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西遊記

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第一回 孫悟空生まれるのことその三

「そうなります」
「神様か仏様でないと」
「それか仙人か聖人でもないと」
「死にます」
「そうなります」
「待て。神様か仏様になってか」 
 猿は家来の者達の言葉を聞いて気付きました、そのうえで言いました。
「仙人か聖人になるとか」
「はい、死にません」
「その都度生まれ変わることもありません」
「ずっと生きられます」
「それこそ天地がある限り」
「それはいい、ならだ」 
 猿はここまで聞いて言いました。
「わしは仙人か何かになりだ」
「そうしてですか」
「不老長寿を得られてですか」
「死なない様になりますか」
「そうなられますか」
「そうなるぞ、それでどうなればそうした存在になれる」 
 家来達に明るい希望を持った顔になって尋ねました。
「一体」
「はい、神仏なり仙人や聖人に弟子入りしまして」
 家来のうちの一匹が答えました。
「修行を積めばです」
「それでか」
「なれます」
「ではこれよりだ」 
 猿は皿に明るい声で言いました。
「そうした御仁を見付けてな」
「弟子入りされますか」
「そうする、だからな」 
 それ故にというのです。
「暫くの間留守にする、思えばな」
「思えばといいますと」
「わしが水簾洞を見付けた時だ」 
 三百年前のことを言うのでした。
「滝の奥は水も波もなくな」
「実に不思議ですな」
「そこに鉄の橋がかかっていてだ」
 そうしてというのです。
「橋の下にある泉からだ」
「そこからですか」
「石の穴を通ってな」
 そうしてというのです。
「水が激しく流れ落ち竹林に囲まれてだ」
「洞窟に竹も面妖な」
「そこに石造りの屋敷があり」
 そうであってというのです。
「花果山福地、水簾洞洞天とあった」
「そうでしたか」
「実にだ」
「不思議であり」
「そもそもわしは石から生まれておる」
「それも普通はないですな」
「これは何かある」 
 猿は確信しました。
「仙人なりになる運命だ」
「それでは」
「行こう、それで留守の間はな」
 それまではといいますと。
「そなた達、猿猴達に任せてな」
「そのうえで」
「行って来る」
「これよりですね」
「身支度を整えてだ」
 そうしてというのです。
「行って来る」
「その時海を渡りますが」
「ああ、前に筏を作って遊んでいたからな」
「その筏を作って」
「それで海を渡るとしよう」
「それでは」 
 猿達も頷いてでした。 
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