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西遊記

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第一回 孫悟空生まれるのことその二

 ふとです、猿は気付いて言いました。
「滝の向こうに何かあるぞ」
「何か?」
「何があるんだ?」
「あれは穴だな」 
 滝の向こうにあるものはというのです。
「少し行ってみよう」
「そうするか」
「あの滝はかなり流れがきついか」
「お主大丈夫か」
「滝を越えられるか」
「どうも泳ぎは他の遊び程得意でないが」
 猿は仲間達にそれでもと返しました。
「泳げる、そして滝なぞだ」
「何でもないか」
「あの流れが強い滝でも」
「それでもか」
「問題ない」
 こう言ってでした。
 猿はその滝を何なく通り抜け穴に入りました、そして奥まで行ってからそのうえで皆のところに戻って笑って言いました。
「いいものがあったぞ」
「いいもの?何だ?」
「何があったのだ?」
「屋敷だ」
 それがあったというのです。
「それがあった」
「何と、それがあったのか」
「お前さん屋敷を見付けたのか」
「そうなのか」
「そうだ、わしが見付けたからな」
 だからだというのです。
「わしのものでいいな」
「いいとも」
「あんたのものにしろ」
「そしてあんたわし等の中で一番強い」
「しかも頭がいい」
「元気だしな」
 そうであるからとです、猿達は口々に言ってきました。
「王様になるかい?」
「わし等な」
「何をしても一番だし」
「色々仕切っていいこと言ってくれる」
「王様に相応しい」
「だからどうだ?」
「そうか、じゃあ屋敷は滝の奥にあったからな」
 猿はまずは自分が見付けて住むことになった屋敷のことから言いました、とても明るく威勢のいい感じです。
「水簾洞にするか」
「ああ、滝が簾だな」
「それでだな」
「洞の中にあるからか」
「そう名付けてな」
 そうしてというのです。
「そこに住む、それで皆がそこまで言うならな」
「それならだな」
「わし等の王になってくれるな」
「そうなってくれるな」
「なるとも」
 笑顔で言いました、こうしてです。
 猿は花果山の麓の猿達の王様になりました、そして彼等を仕切り導きながら三百年あまり遊んでいました、ですが。 
 万物の移り変わりを見ていってです、既に美猴王と名乗っていた猿は気付いてしまい悲しみの感情を持ってしまいそのうえで言いました。
「わしも何時か死ぬな」
「まあそれは」
「生きていますから」
「そうなります」
「わし等もですし」 
 猿達は猿にこう答えました。 
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