夢幻水滸伝
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第三百九十話 献身的に働いてその一
第三百九十話 献身的に働いて
マルタはこの世界に来て声からこの世界とこの世界での自分のことを聞いてからそのうえで動くことにしたが。
どうしていいかわからなかった、だが目の前に薬屋があり自身の職業が薬剤師であることから店に入ったが。
小人の老婆の薬剤師が彼女が店に入るなり店のカウンターで仰天して叫んだ。
「何者だい?あんた」
「はい、私は」
マルタは老婆に素直に答えた、すると彼女はまた仰天して言った。
「星の方でしたか」
「どうやら」
「どうやらじゃないです」
老婆はこう返した。
「この店に星の方が来られるとは」
「ここはキングストンですよね」
マルタは店の場所のことも話した。
「そうですよね」
「はい」
老婆はその通りだと答えた。
「この街は」
「そうですよね」
「しかし」
それでもとだ、老婆は自分の前に立っているマルタにこうも言った。
「何でまたこの店に」
「いや、普通にです」
「普通に?」
「行くあてがなくて」
「そうなのですか」
「この世界に来たばかりで」
そうであってというのだ。
「どうすればええかわからへんで」
「うちの店に来ましたか」
「丁度目の前にありまして」
それでというのだ。
「私も薬剤師なので」
「そうですか、それでこれからどうするか」
「何もわかりません、右も左も」
「それならです」
老婆はマルタの話を受けて彼女に告げた。
「うちで働かれますか」
「雇ってくれますか」
「いや、私も歳で」
見れば七十位だ、小人は背丈は兎も角外見は人間と同じであり年齢もわかるのだ。尚人の寿命は種族に関係なく同じである。
「そろそろ辛くなっていて孫娘に色々教えてますが」
「そうされていますか」
「娘夫婦は独立しまして」
そうしてというのだ。
「別の店をやっていますが孫が二人いまして」
「そのうちのお一人ですか」
「はい、妹の方が学校を出てです」
「このお店に入られて」
「それで、です」
そのうえでというのだ。
「今住み込みで店を継ぐ為に教えていますが」
「そうですか」
「丁度もう一人店員が欲しかったんです」
「貴女がご高齢で」
「はい、ですから」
そうした事情がありというのだ。
「探していましたが」
「それで、ですか」
「部屋と三食用意しまして」
そしてというのだ。
「給料も支払いますが」
「そうしてくれますか」
「それでどうでしょうか」
「お願いします」
即座にだ、マルタは答えた。
「私もです」
「今はですね」
「行くあてもないです」
「それでうちに来てくれましたし」
「はい、お願いします」
是非にという返事だった。
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