金木犀の許嫁
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第六十三話 結婚すべきでない人その三
「遂にどんな哲学や宗教でも救えない様な」
「そんな人になったのね」
「世の中そんな人もいるんですね」
白華は目を丸くして話した。
「どんな哲学でも宗教でも救えない人が」
「そうみたいよ、人がそうしてもね」
「救えないですね」
「神様仏様が直接出ないと」
「救われないですか」
「人の底を抜いて」
そしてというのだ。
「餓鬼になるとね」
「人では救えないですか」
「そうみたいよ」
「そうなのですね」
「堕ちてもね」
それでもというのだ。
「人の底はね」
「抜けないことですね」
「そこを抜けるとね」
「餓鬼になって」
「本当によ」
「どんな宗教や哲学でも救えなくなりますか」
「人ではね」
真昼は真顔で話した。
「それで餓鬼の行き着く先は」
「破滅ですね」
「ええ、人間の世で餓鬼がいても」
「やっていけないですよね」
「餓鬼みたいに何処までも卑しく浅ましくなったら」
そうなればというのだ。
「人は嫌って寄り付かなくなるから」
「生きていけないですね」
「それで死んでもね」
人としての身体がというのだ。
「魂は餓鬼道に堕ちて」
「苦しみますね」
「白華ちゃんも餓鬼道のことは聞いてるでしょ」
「はい」
白華はすぐに答えた。
「常に餓えて渇いて」
「苦しむのよ」
「そうした世界ですね」
「だからね」
それでというのだ。
「死んだらね」
「徹底的に苦しみますね」
「そうなるから」
だからだというのだ。
「餓鬼になったら駄目よ」
「そうなると終わりですね」
「今お話している人なんて」
それこそというのだ。
「誰からも見捨てられて行方不明になったから」
「もう死んでます?」
「そうかもね」
真昼はそうなっている可能性を否定しなかった。
「一回ホームレスになったそうだけれど」
「またですね」
「そうなってね、それでホームレスになっても同じホームレス仲間からもね」
「嫌われますね」
「そうなることが確実だから」
それ故にというのだ。
「もうね」
「今はですね」
「死んでるかもね」
「野垂れ死にですね」
「そうかもね、それでそうなってもね」
例えそうであってもというのだ。
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