蒼と紅の雷霆
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紅白:第九話 第一データ施設
バタフライエフェクトを見つけるためにデータの解析を続けていたアキュラだったが、あることが分かったようだ。
『以前手に入れたデータを解析したところ、僕達が探している施設…バタフライエフェクトが隠されてる施設に入るには、パスコードが2つ、必要みたい。まあ、残念ながら肝心の施設がどこにあるかっていうのは、まだ分かってないんだけどね…』
「だが、パスコードが、第一、第二データ施設内部にあることは判明した。」
「第一データ施設…確かあそこは……弟が行ったことのある施設だったな。」
まだ自分達がテロ組織を抜けたばかりでフリーの傭兵をしていた時、テロ組織からの指示で弟が向かった施設だ。
「そうですね、私も昔に何度か足を運んだこともあります…この施設には私達が向かいましょう。必要なパスコードは施設の破壊と共に入手しておきます。」
かつてのスメラギに不本意ながら所属していたパンテーラは施設に何度か出入りしていたので探索は容易である。
「…ならば、第二データ施設には俺が向かう。貴様らが戻り次第出る。」
「お兄さん!テーラちゃん!モルフォちゃんも頑張ってね、私は何も出来ないけど、応援してるからね!」
『サンキュ♪︎行ってくるわ』
ソウとパンテーラはモルフォを伴って、スメラギに廃棄された第一データ施設へと向かった。
「ここか…」
「恐らく昔と構造は変わっていないはずです。そうそう、年月によって劣化したリニアシフトはソウの攻撃と私のセプティマの一部の虚像なら破壊出来るはずですから道を塞ぐ物は破壊して下さい。」
無事に閉鎖されたデータ施設へと潜入したソウとパンテーラとモルフォ。
閉鎖されただけあって荒れ果てているが、かつてのスメラギを知る者である2人にとっては不思議と懐かしさを感じさせた。
しかも、何の偶然か…ソウの潜入したルートはかつての弟が潜入したルートと同一だった。
「よし、行くぞ」
先に進んでいくと早速劣化したリニアシフトが道を阻む。
早速ソウは銃剣に雷撃をチャージし、チャージセイバーでリニアシフトを粉砕する。
「流石ですね、いくら劣化したとは言えそれなりの耐久があるはずなのですが」
「稼働していた時は俺の雷撃鱗を容易に使えば破壊出来たらしいがな、あのレトロゲーム好きの“馬鹿”曰く…」
『ふーん?』
もうあの時の記憶は朧気だが、確かにいたかつての仲間。
彼はあの騒動の後にどうなったのかは分からない。
そしてマイナーズであった彼女も恐らくは…。
気を取り直して遠方を見ると、廃棄されたデータサーバーが見える。
かつては世界中に点在するスメラギ関連の施設からセプティマホルダーの研究データを始めとする様々なデータが集められていたらしい。
「テーラ、確かここには俺達のデータもあったんだったな?」
「はい、私はこの施設からあなた方兄弟のこと…そして電子の謡精のことを知ったのです…そう、全て…」
『ここに私のオリジナルのセプティマホルダーのデータもあるのかしら…?』
数多くのセプティマホルダーの犠牲の結果とも言える膨大なデータを見て、パンテーラはスメラギとマイナーズへの怒りと憎しみを燃やしていたが、あの時はこのような状況になるとは予想もしていなかった。
機能停止しているリニアシフトをクリムの虚像を再現し、光弾で破壊しながら奥に進んでいくと、壁が劣化して崩壊していた。
「良かった、ここは足場が収納されていて壁にはトゲがあったのでソウでは突破が厳しかったと思います」
「俺では足場を引き寄せるどころか破壊しかねんからな…」
『お父さん、省エネよ省エネ』
「……省エネ…厳しいな」
そんな細かい調整が出来るなら誰も苦労はしないだろう。
モルフォの歌、【灼熱の旅】が響き渡る。
キッククライミングで壁を蹴り登り、リニアシフトを破壊しながら突き進んでいくと、停止しているコンベアの通路を発見し、そこを駆け抜け、そして奥の部屋に入るとセキュリティシステムが作動して閉じ込められる。
「…閉じ込められたか」
「ソウ、天井を目指して下さい。そこにサイレンがあるはずですから、それを壊せばシャッターのロックが解除されるはずです」
パンテーラの指示通りに天井を目指し、途中の浮遊メカを破壊しながらサイレンをチャージセイバーで破壊する。
斬り裂かれたサイレンは沈黙し、シャッターが開いて先に進めるようになり、部屋を出るとゲートモノリスを発見した。
「ゲートモノリス…破壊して先に進みます」
「ああ、頼む」
「迸りなさい、蒼き雷霆よ!」
ゲートモノリスを少年?の虚像が雷撃を叩き込んで粉砕し、そのまま奥へと進むと進んだ先には床にトゲが敷き詰められていた。
「ここは電磁場が流れていた場所なのですが…どうやらここの機能も停止しているようです。」
「これくらいの距離ならばマッハダッシュからの雷撃鱗のホバリングで突破出来るはずだ」
マッハダッシュと雷撃鱗ホバリングを駆使して上手く足場を利用して突破していく。
「後の下もトゲになっていますから注意して下さい」
「了解した」
トゲ地帯に落ちないように停止しているコンベアの通路に着地して進むと固定砲台のある場所に差し掛かる。
「厄介な防衛装置ですが、ソウの紅き雷霆ならばきっと!」
「ああ、叩き斬る!」
頑丈なはずの砲台が雷撃刃で容易く両断されてしまう。
時には雷撃鱗ロックオンを使ってロックオン放電することで真上の砲台を破壊していく。
「それにしても昔と変わらない警備ですね。」
「ああ、例え閉鎖したとは言え、かつてここには多くの機密データがあった。かつて破壊されたデータもあるとは言え、知られてはまずいデータもあるはずだからな。万が一敵にデータをサルベージされないように警備も昔と変わらんのも当然だな」
とは言え、今の2人にとっては昔のスメラギの警備など形骸も同然であり、難なく突破していく。
そして再び電磁場の出ていたエリアに出る。
「ここも、マッハダッシュからの雷撃鱗のホバリングで突破出来そうですね」
「ああ」
移動しながら目の前の敵を薙ぎ倒して突破し、下の足場を下方向への雷撃鱗ダッシュで強引に破壊して突破する。
「ゲートモノリス発見しました。使える端末があれば良いのですが…」
「あいつが壊した部屋が直っていれば良いんだがな」
ゲートモノリスを破壊して奥に進むと、どうやら破壊されていた部屋は一応直っており、端末もいくつか生きているのもあるようだ。
「どうやらここの端末は生きているようですね。ならば急いでデータをサルベージしましょう。恐らく昔と変わっていないはずです」
「そうしたいが…どうやらそうはいかんようだ」
奥には翼戦士の羽根ペンを持った大柄な男が佇んでおり、自分達を獰猛な笑みを浮かべながら見ていた。
「おう!お前さんがガンセイヴァーじゃのう?ようやく来よったか!この辺をシケ張りしとる連れから連絡があってのう。こがいにして、お前さんが来るのを待ちよったわけじゃ!」
「その風貌…確か、名はバクト。どこぞのマフィアの初級幹部だったな」
「そらぁ、ちぃとばかし古い情報じゃ。今は幹部じゃのうて、頭張っとるモンじゃ。言うても前の抗争で、ファミリーの大半は逝ってしもうたかお縄になっとるけい、名目だけのお飾りモンじゃがのう。ほいじゃが…お前さんの命(タマ)さえトりゃあ、取っ捕まったモンも無罪放免…儂らの前科もまっさらにしてくれるゆー話じゃ。」
『またそれ!?セプティマホルダー優遇も限度ってもんがあるでしょ!?』
「…なるほど、つまりあなたはファミリーを人質に取られたのですね?」
「全く…スメラギは今も昔もどこまでも腐っているな…。貴様にも事情があるようだが、俺達は止まるわけにはいかないんでな…目の前に立ち塞がるのなら誰であろうと叩き斬る」
「威勢がええのうガンセイヴァー。お上が腐っとろうが、今ん儂にゃあ関係が無ァ…ファミリー再興のためなら、儂ぁ泥もすするし、犬にもなる…それが儂の極道じゃ!」
バクトは羽根ペンを取り出して契約を始めた。
「コントラクトォ!だらあっ!儂のセプティマ“螺旋(スパイラル)”で、全身千々に裂かれんさいやぁーっ!!」
戦闘形態となり、激しい螺旋エネルギーを纏って突進してくるバクトにソウは咄嗟に回避する。
その勢いは紅き雷霆による身体能力の強化の恩恵があるソウにも即回避を選択させる程であった。
「だらああああっ!!」
壁を反射してソウの真上を取ると、勢い良く落下して床を殴って拳の螺旋エネルギーを解放した。
「テーラ!」
「任せて下さい、分身に惑いなさい!!」
イソラの虚像を作り出し、追尾性能を持った複数のデコイがバクトに向かって行く。
「邪魔じゃあああっ!!」
デコイを螺旋エネルギーを纏った拳で吹き飛ばし、バクトは跳躍すると螺旋エネルギーの光弾を放ってきたので咄嗟に雷撃鱗を展開して光弾を防ぐ。
「ぬうっ!?」
「はあっ!!」
マッハダッシュで距離を詰めると雷撃を纏わせた拳による一撃をバクトに叩き込む。
超加速の勢いを加算した拳をまともに喰らったバクトは勢い良く転倒した。
「へっ、やりよるのぉ…お前さんの拳…かなり効いた…久しぶりじゃのう、こんな重い拳は…力だけじゃなく何かを背負った一撃じゃ…」
「チッ、見た目通りにタフな奴だ」
「久しぶりに血が騒いできたのう!どりゃああああっ!!」
螺旋エネルギーを纏わせた拳を構えながら突進してくるバクト。
ソウは僅かな変化も見逃さず、バクトの真上の壁に螺旋エネルギーが迸っていることに気付き、バクトの真上をマッハダッシュで通過する。
「今です!愛の爆炎!!」
「ぬおおおっ!?」
すれ違い様にパンテーラがクリムの虚像を作り出し、光弾を発射してバクトにダメージを与える。
「はあっ!!」
背後からチャージセイバーからの雷撃刃による連擊をお見舞いし、最後にパンテーラがリベリオの虚像を作り出してガトリング弾を浴びせる。
「ふははははっ!本当に強いのうっ!ただの喧嘩なら楽しめたんじゃがなぁ!」
「ぐっ!」
振り返りながらの拳を受け止めるが、受け止めたソウの腕の方が痺れる。
「迸りなさい、蒼き雷霆よ!」
即座にパンテーラがサポートし、少年?の虚像のプラズマ球と稲妻がバクトに炸裂する。
「チッ!」
ソウもまたダメージを稼ぐためにショットを連射し、凄まじい波状攻撃によってバクトもいくらか後退する。
「あああっ!死に晒せぇ!!」
バクトは雄叫びを上げて拳を床に叩き付けると螺旋エネルギーが立ち上る。
ソウとパンテーラは距離を取りつつ螺旋エネルギーをかわしながら距離を詰めた。
そして螺旋エネルギーが消えた直後に再び槍の穂先を射出し、バクトの体を拘束するとそのまま一気に距離を詰めてチャージセイバーを叩き込む。
「ぐおおおっ!?ぐはあっ!!」
怯んだ隙に顔面に拳を殴り、更に腹に膝蹴りを繰り出して乱打を叩き込む。
「くたばれ!!」
雷撃を纏わせた拳でバクトの頬を殴り飛ばし、壁に勢い良く叩き付けた。
「ぐあ…っ!は…ははは…強いのうお前さんは…儂もそれなりに腕には自信があったんじゃがのう…お前さんの拳は…本当に“重い”…その重さは並大抵の覚悟のモンには出せん…あんたの強さの秘訣…知りたいもんじゃのう」
「…全ては“奴”を殺すため…そしてあいつらとの誓いを守るためだ。セプティマホルダーの未来を手に入れるために戦い続けたあいつらとのな。俺はあいつらに託されたんだ…テーラを…あいつらが信じ、支え続けたこいつを…俺が守る」
脳裏に浮かぶのは共にスメラギと戦ってくれた戦友達。
そして彼らの最期にセプティマホルダーの最後の希望を託されたのだ。
ならばその希望を守るのは自分の役目だろう。
「ふ…はははははっ!なるほどのう!惚れた女のために体張るような男じゃ!強いに決まっとる!!何時の世も惚れた女のために戦う男は強いと相場が決まっとるんじゃ…じゃがのう…儂もファミリーのためにも負けるわけにはいかんのじゃ…ほな、ガンセイヴァー…儂の意地に付き合ってもらうぞぉ!!!これが…儂の道じゃああああっ!!双稜螺岩穿!!!」
上空に移動したバクトがセプティマを解放することで壁から複数の螺旋エネルギーのドリルが展開され、ソウとパンテーラが避ける。
しかし、完全には避けきれなかったのかソウの体が破砕音を鳴らしながら欠けた。
「チッ!」
バクトの真上が安全地帯だと見抜いたソウはマッハダッシュで上に移動するとテーラに最後の一撃の指示を出す。
「テーラ、頼む」
「はい、愛の刃を受けなさい!!」
「迸れ、紅き雷霆よ。貴様の意地を俺の紅き雷刃で両断する。ギガヴォルトセイバー」
インテルスの虚像の円月輪とSPスキルの雷刃波を受けたバクトは真っ二つに両断された。
「ぐおっ!?…大したもんじゃのう……これが…報いか…」
光に包まれながら自らの死を受け入れて消滅したバクトを確認するとソウはパンテーラにデータのサルベージを頼む。
「テーラ、データを」
「はい、セキュリティが昔のままなら…出来るかもしれません」
端末を操作し、少々の時間はかかったものの、パスコードを発見したようだ。
「よし、これでミッション終了だ。帰還するぞ」
「はい、データの抜き取りも完了しましたから、早くここから脱出しましょう。その前にあなたの体の修復を」
パンテーラのセプティマによって鏡が出現し、ソウを反転させると欠けていたソウの体が元通りとなっている。
そして、今度こそ基地へと帰還するのであった。
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