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砲兵工廠

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第四章

「そうだった方がね」
「市ヶ谷は士官学校でな」
「陸軍さんの」
「今は自衛隊の基地になっているが」
「陸自さんのね」
「まあ兎に角な」
 自分の向かい側にいる早乙女に話した。
「何かとな」
「変わってるね、東京も」
「わしの頃とはな」
「それで東京ドームも昔は」
「砲兵さんの場所だったんだ」
「そうだった、場所は悪くない」 
 それ自体はというのだ。
「悪いのはな」
「巨人だね」
「あんたが嫌いなな」
 そうしたというのだ。
「あのチームだ」
「そうなんだ」
「確かに巨人は悪い」
 金之助が見てもだ。
「あの球場かrは常に禍々しいドス黒い瘴気が沸き起こっている」
「物凄いね」
「そうしながらな」
 そのうえでというのだ。
「東京ひいては日本、世界を汚染している」
「あれだね」
 早乙女は金之助の話を聞いて思った。
「金之助さんがロンドンに行った時の」
「いい思い出ではない」
 ロンドンの話が出るとだ、金之助の顔が曇った。
「やはりな」
「そうだよね」
「倫敦にいたことは。そしてあの街はあの頃工場からな」
「煙がどんどん出て」
「酷いものだった」
「空気が悪かったね」
「東京も一時そうだったがな」
 空気が悪かったというのだ。
「あの時の倫敦は遥かにだった」
「酷くて」
「いていいものではなかった」
「それであの時のロンドンの工場の煙みたいに」
「あの球場からは常に瘴気が出ていてな」
 そうであってというのだ。
「世界を汚染している」
「やっぱりそうなんだ」
「それはそうだが」
 しかしとだ、金之助は話した。
「場所自体は悪くない」
「球場そしてチームが悪いんだね」
「うむ」
 そうだというのだ。
「あくまでな」
「それだけだね」
「そこは間違えないことだ」
 決してというのだ。
「間違えるとな」
「あの場所についてどうこう言うね」
「わしは軍隊とかあの頃の政府とは距離を置いてな」
「財閥とかも好きじゃなかったね」
「書斎の人間だからな」
 だからだというのだ。
「本質的にな」
「合わないんだ」
「どうしてもな」
「それで色々書いていたんだ」
「わし自身の肌に合わない、しかしな」
「しかし?」
「ずっと共産主義とかあったな」
 金之助はこの思想については嫌そうな顔で話した。 
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