スラム街の下着
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第四章
「ここだけの話だが」
「何でしょうか」
「書記長同志だが」
ソ連の実質的な国家元首はというのだ。
「下着は西側のもので西側の車がお好きだ」
「そうなのですか」
「そういうことだ」
「そうなのですね」
「だからな」
それでというのだ。
「アメリカ、西側とは本気ではな」
「戦わないですね」
「戦っても幾ら軍隊が巨大でもだ」
それでもというのだ。
「勝てる訳ではない」
「そうですね」
「だからだ」
カストフスキーはさらに言った。
「冷戦はな」
「このままであるべきですね」
「拮抗している様でな」
「違いますね」
「その通りだ」
こう言うのだった、そしてだった。
コスイスカヤはアメリカの次は日本に赴任した、この国ではソ連を賛美する知識人が多かったのだが。
彼等を見てだ、彼女は部下に話した。
「愚か者ね」
「はい、彼等は」
「知識人と言うけれど」
「何もわかっていませんね」
「わかろうともしていないで」
そうであってというのだ。
「兵器で嘘を吐いたり居直りもね」
「しますね」
「日本よりソ連の方が遥かにいい国で」
表情を変えずに述べた。
「自由もね」
「日本より遥かにある」
「そして日本よりもね」
さらに言った。
「ソ連は強い」
「そう言っていますね」
「彼等は利用しやすいわ」
「我が国にとっては」
「実に都合のいいね」
そうしたというのだ。
「駒になってくれるか」
「二次大戦直後からですね」
若い男性の部下はコスイスカヤに話した。
「日本にはああした知識人がです」
「多いわね」
「政党でもです」
「野党ね」
「ありますが」
「彼等は自分達の国を知らないわ」
今度は冷たく言った。
「そしてソ連のこともね」
「知らないですね」
「彼等は自分達の持っている下着の数を知らないわ」
「どれだけ多いか」
「下着の数も知らないで」
自分達が持っているというのだ。
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