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金木犀の許嫁

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第六十一話 相手が来てその十一

「熊も出るし」
「伊賀でも」
「やっぱりいるよ」
 この生きものもというのだ。
「九州以外にはね」
「いるのね」
「それで猪だって」 
「いるわね」
「だから畑もね」
 こちらもというのだ。
「大変だよ」
「お天気のこともあるし」
「そうだよ。何でも昔はね」
 佐京はこうも言った。
「ニホンオオカミがいたから」
「それでなの」
「そう、それでね」
 そうであってというのだ。
「まだね」
「ましだったの」
「狼がいたから」
 ニホンオオカミである、かつてはこの生きものも日本全国に棲息していてよく見られたのは歴史にある通りだ。
「だからね」
「ああ、狼ね」
「狼がいたら」
 それならというのだ。
「獣を食べてくれるから」
「獣害も少ないわね」
「そうしたね」
 佐京はさらに話した。
「有り難い生きものだったんだ」
「狼は」
「日本ではね」
「そうなのよね」
 真昼も言ってきた。
「実はね」
「狼はね」
「怖い生きものでなくて」
「童話みたいに」
「そうじゃなくてね」
 妹に話した。
「獣を食べてくれて」
「畑を守ってくれる」
「日本は農耕社会だったでしょ」
「ええ」
 夜空はその通りだと答えた。
「完全にね」
「それでよ」
 だからだというのだ。
「何よりもね」
「畑が大事で」
「それでね」
 そうであってというのだ。
「畑を荒らす生きものを食べてくれるなら」
「有り難い存在だったのね」
「『おおかみ』はね」
 この文字はというのだ。
「大神よ」
「凄い神様ね」
「大いなるだからね」
「そうなるのね」
「そう、本当にね」
 まさにというのだ。
「日本ではね」
「狼はそうした立場ね」
「そうだったのよ」
 こう話した。
「これがね」
「成程ね」
「それでね」 
 姉はさらに話した。
 
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