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俺様勇者と武闘家日記

作者:星海月
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第3部
グリンラッド〜幽霊船
  優しさにも種類がある


「え? な、何!?」

 尋ねても、彼は無言のまますたすたと歩き進めていく。歩いていくうちに、甲板へ向かっているのだと気づいた。

 私たちが出てきたのは船尾の方だった。私たちの他には数人の船員のみで、皆黙々と作業をしている。

 ここで何をするのかと思いきや、私の手を離すとすぐに、腰に提げている剣を抜いたではないか。

「!?」

 だが、よく見るとそれは本物の剣ではなく、木でできた訓練用の木剣だった。よくユウリがトレーニングするときに使うものだ。おそらく私とすれ違うときに、一人でトレーニングをするつもりだったのだろう。

 けどどうして今、剣を抜いたの?

「今から特訓に付き合え、鈍足」

「何で!?」

 思わず勢いよく反応してしまった私に、ユウリは聞く耳を持たず剣を構える。

 うう、よくわかんないけど、ここはひとまずユウリに合わせよう……!

 星降る腕輪をルークに預けたままの今の私は、唯一勝っていた素早さすらユウリにははるか及ばない。そんな私の攻撃を、ユウリは当然のごとく躱していく。

 逆に隙を突かれ、私の脇腹めがけてユウリの一撃が放たれる。

「っ!!」

 咄嗟に身を捩ったので致命傷は逃れたが、それでもこの一撃は重く感じた。

「しばらく相手してない間に、随分と腕が鈍ったようだな」

 トゲのある言い方に、突如いいようのない怒りが沸き起こる。

 こっちは色々悩んでるのに、いきなり喧嘩ふっかけられて脇腹突かれて、理不尽極まりないんですけど!?

 唐突に戦闘意欲が湧いた私は、反撃とばかりにユウリに何発も拳を当てようとする。だけど半ばヤケになっているからか、易易と避けられてしまう。

 ああ、もう、腹立つ!!

 完全にユウリに一撃与えることに集中した私は、その後も延々とユウリと攻撃の応酬を繰り返した。だけどその甲斐あってか、体が悲鳴を上げる頃には、五回に一回はユウリの体に当たるようになっていった。

「はあ、はあ……。やっと当たるようになった……」

「ふん。これでも俺は手加減してたんだ。けど、さっきの腑抜けた顔よりはマシになったな」

「……!」

 言われてみれば、さっきまでモヤモヤしていた気持ちが、戦いに集中していたからか、心なしかスッキリしたような気がする。

 ……もしかして、ユウリなりに元気づけてくれたのだろうか。

 だとしても他にもっといい方法があるのではないかと思うのだが、これが彼なりの優しさであり、その優しさが私にはとてもありがたかった。

「ホイミ」

 何発も受けていたユウリの攻撃によるダメージが、彼の回復呪文によってみるみるうちに消えていく。

「……ありがとう」

 私がお礼を言うと、ユウリは「ふん」と鼻を鳴らしながら、また船内へと戻っていった。

 分かりづらい優しさではあるが、胸が温かくなるのを感じながら、私は深呼吸をひとつした。

 ゆっくりでいい。ルークの気持ちに向き合って、自分なりの答えをこれから探していこう。

 気持ちを切り替えた私は、しばらくの間無心で正拳突きの練習をしたのだった。


 
 
「皆さん! これを見てください!!」

 あれから五日後。船はひたすら南東を進み、ポルトガの海峡を経てロマリア近海にいる。そんな中、ヒックスさんに呼ばれて一同が操舵室へと集まると、ヒックスさんはマックベルさんからもらった例の骨を懐から取り出した。

「何かあったのか?」

 ユウリが問うと、ヒックスさんは骨に巻き付かれた髪の毛の端をつまみ上げた。すると突如、骨が見たことのない速さで揺れ始めたではないか。

「これは……?」

「わかりません。たまたまさっき手に持ったら、突然激しく動き出したんです」

 もはやどの方角を指し示しているかもわからず、骨は円を描くように激しく揺れ回っている。まるで近くに何かがあるかを教えているような――。

「まさか、この辺りのどこかに金銀財宝があるのか?」

 何かに気づいたユウリが、期待の入り混じった声を上げる。

「ここしばらくは何も反応を示しませんでした。ですがついさっき、ふと骨に目をやったら淡く光り輝いてたんです。それで不審に思い手に取ったら、このような反応を始めたんです」

 ぐるぐるとひたすらに回り続けるその骨は、まるで私たちに何かを訴えているかのようだった。

「こういう不可思議な現象は苦手でして……。すみませんがユウリさん、持っていてくださいますか?」

「ああ。わかった」

 ユウリは不安がるヒックスさんの頼みを素直に聞き入れた。だが、持ち主が変わっても、骨は依然として回り続けている。

 すると、一人の船員が慌てた様子で操舵室へと入ってきた。

「船長!! 右舷2時の方向に正体不明の船らしき物体を見つけました!!」

「何!?」

 船員が放つ逼迫した声に、私たちは思わず顔を見合わせる。

「急いで近づいてみましょう。我々船乗りは正体不明な現象が嫌いでしてね。出来ることならなるべく早く正体を突き止めたいんですよ」

「わかった。ヒックス、船の進航はお前に任せる」

「アイアイサー!!」

 ヒックスさんの掛け声に、周りにいる船員も声を揃える。そしてすぐに進路を変えると、正体不明の船に向かって進航した。

 舳先の向こうにぽつんと見える船影を見て、私たちの間に緊張が走る。日暮れ前だと言うのに、あの船影の周囲だけ、妙に暗い。まるで黒い霧でも纏わせているかのようだ。

「なんかあの船、嫌な感じがするね」

 不安のあまり声に出して呟くと、ユウリが意外そうな顔で答えた。

「鈍感なお前でもわかるのか?」

「え?」

 そりゃああれほど不穏な光景を見れば、誰でも同じ事を言うと思うけど。

「あれは出来れば関わりたくない。だが、あの船にオーブがある可能性がある以上、行くしかないな」

 さらに不安を煽るような言い方に、私は思わず口をつぐんだ。

「……なあ、マジであの船に向かうのか?」

 いつの間にか『鷹の目』を使っていたナギが、乾いた声でユウリに問う。

「何か見えたのか?」

「見えたも何も……、あれは普通の船じゃないぜ。まるで幽霊船だ」

「幽霊船?」

「船長!! あの船、ただの船じゃあありません!! 全体もボロボロで、あの状態で海上にいるのが不思議なぐらいです!!」

 ナギが鷹の目を使ったと同時に、見張り台にいた船員も同じように、ヒックスさんに向かって叫んでいた。

 ただ事ではないと判断したヒックスさんは懐から望遠鏡を取り出すと、船影が浮かぶ水平線にレンズを向けた。

「確かに……、あれはまるで亡者の乗る船ですな」

 そう一言呟くと、ヒックスさんはユウリに望遠鏡を手渡した。

「ユウリさん。我々船乗りは、ああいう得体のしれないものには極力近づかないようにするという信条があります。いざというとき、海の上では逃げ場がありませんから、下手をすると全滅する危険もあります。しかし、それでも行くというのなら、皆を説得しなければなりません。……少し時間をいただいてもよろしいですか?」

「それなら俺も行く。皆に納得してもらわなければ、この旅は続けられないからな」

 そう言いながらユウリは、ヒックスさんと共に他の船員さんのところへ行ってしまった。

 うう……。やっぱり行くつもりなんだよね。

 もしあの船が本当に幽霊船だというのなら、幽霊が苦手な私にとって、できれば行きたくないところだ。 

「大丈夫? 顔色が悪いけど」

「え!? あ、うん、平気だよ!」

 心配そうに声を掛けるルークに驚くが、すぐに何でもない素振りを見せる。

「君のことは僕が守る……、って言いたいけど、さすがに幽霊相手じゃあ攻撃できないよね」

「……っ!」

 苦笑いを浮かべて肩を竦めるルークの言葉に、今更ながら私は動揺する。彼の気持ちを知った後だと、その意味が何なのか何となく理解してしまう。

「取り敢えず、あの船に近づくまで待つしかねえよな。念の為、すぐに乗り込めるように準備しとこうぜ」

「そーだね。万が一のために、いつでも戦えるようにしとこう☆」

 ナギの指示にシーラを始め三人が素直に頷くと、それぞれ自分たちの部屋に戻り、旅支度を整えることにした。

「ミオちん、大丈夫?」

「え?」

 自分の部屋に入ろうとしたところで、シーラが怪訝な顔で私に尋ねた。

「るーたんのこと、あんまり考えすぎないほうがいいからね」

 彼女の気遣いに、私は自然な笑みを作る。

「ありがと、シーラ。もう大丈夫だから」

「それならいいんだ。でももしまた話したいことがあったら、いつでも聞くからね」

 そう言い残すと、シーラは自分の部屋へと戻っていった。改めて、彼女がそばにいてくれてよかったと、心から思えた。



 それから小一時間ほど経った頃。船の外はすっかり暗くなっており、空には濃い闇が立ち込めている。いつ雨が降ってもおかしくない天気だった。

 あるいは、例の船に近づいているからかもしれない。肝心の船は相変わらず陰鬱そうな黒い霧をまとっており、近寄りがたい雰囲気を漂わせている。

「やはり無人のようですね。もしくは全員中で命を落としたか」

 甲板にてヒックスさんや鷹の目を使っていた船員たちが船の状況を報告する。

 私たちも肉眼で確認するが、少なくとも甲板に人の気配は確認できない。いずれにしろ、あの船からオーブについての情報を得る可能性が一気に低くなった。

「ヒックス。あの船に乗り込めるように手配してくれ」

「わかりました」

 旅支度を整えたユウリがヒックスさんに言うと、ヒックスさんはすぐに了承した。

 ヒックスさんの合図で船べりにタラップがかけられ、船と船の行き来が可能になったので、早速私たちは乗り込むことに。

「俺たちが船の探索をしている間、此処で待っていてくれ」

 タラップに足をかけたユウリがヒックスさんに伝えた。

「わかりました。あの船はどういう経緯かはわかりませんが、いつ沈んでもおかしくない状態です。どうかお気をつけて」

――え!? そうなの!?

 一気に船に乗り込む意欲が下がる。

 そのとき、急にユウリがこちらを振り返り、私の髪の毛をひっぱった。

「痛っ!!」

「おい、ぼんやりしてないで行くぞ」

 痛いと言っても、彼も本気でやってるわけじゃない。私とユウリの中ではよくあるやりとりのひとつなのだが、後ろでそれを見ていたルークの殺気がなんだか怖い。

 殺気に当てられて逃げる……はずもなく、ユウリは我関せずを貫き通し、すぐにタラップを渡り始めた。

 一方私たちもユウリの後に続く。タラップの下の海面は想像以上に遠く、思わぬ高さに恐怖で足がすくんでしまう。そんな気の緩みを目ざとく見つけたかのように、一陣の風が吹いた。一瞬煽られ、体のバランスが崩れそうになるも、後ろにいたルークに支えられる。

「大丈夫? 夜の海は落ちたら探せないから気をつけないと」

「う、あ、ありがとう」

 ルークに後ろから抱きとめられている状態に耐えられなくなった私は、反射的にルークから離れた。前を見ると、鈍くさい私の行動に苛ついているユウリの姿が目に入ったので、怒られる前に急いで渡り切る。

 続いてルーク、シーラ、殿にナギの順で渡り切ると、ヒックスさんはタラップを外した。

「私たちはここで待ってますので、戻られましたら合図をお願いします!」

「ああ! すぐ戻る!」

 ヒックスさんの声に返事を投げかけると、ユウリはカバンからランタンを取り出し、メラの呪文を唱えて火を灯した。

 ぼんやりと光るランタンを頼りに、私たちはまず船上を探ることにした。甲板の床は今にも抜け落ちそうで、一歩歩く事にギシギシと大きな軋み音が鳴り響く。視界が制限された闇夜の中、遥か前方にうっすらと見えたのは、船内へと続く下り階段だった。

 すると、いつものように先頭を歩いていたユウリがピタリと足を止める。その後ろを歩いていた私は、まさか急に止まるとは思わず、ユウリの背中に激突してしまった。

「ご、ごめん!!」

 すぐに謝るも、目の前の彼はしばらく動かなかった。他の三人も何事かと様子をうかがう。

「どうしたの?」

 再び声をかけると、今初めて私の声に気づいたかのような反応を見せた。その様子に訝しむも、次の瞬間には何事もなかったかのようにカバンから何かを取り出した。

「なんでもない。それより、一度試しに山彦の笛を吹いてみる」

 山彦の笛は三賢者であるエドが作った、オーブが近くにあれば山彦となって音色が返ってくるアイテムだ。これまでもオーブのある場所で吹いて、実際に返ってきたことがある。

 しかし今回、ユウリが吹いた後に同じ音色が返ってくることはなかった。それはつまり、この船にはオーブがないことを示していた。

「けっ、なんだよ。肩透かしじゃねーか」

「おいバカザル。階段を降りたら『盗賊の鼻』で宝の数を調べろ」

「結局宝も諦めてねーのかよ。さすがドケチ勇者様だな」  

 悪態をつきまくるナギに、ユウリは今にもベギラマを放たんばかりの殺気を周囲に漂わせるが、さすがに船の上で打つのは危険なのか、眉間にシワを刻むだけで怒りを抑えるに留まった。いつも思うが面倒な性格である。

「待ってユウリちゃん、あそこ!」

 シーラが指差すその先は、私たちが今から向かう階段の方。暗くて見えないはずなのに、なぜかろうそくほどの小さな光がぼんやりと光っている。

「え……、待って、もしかして人がいる!?」

 もしかしたらこの船の生き残りかもしれない。そう思った私は足早にその光に近づこうとした。

「待て!! そいつは人間じゃない!!」

 ユウリの制止の声が聞こえると同時に、私の視界に目を黄色く光らせた鎧姿の骸骨が映し出された。

「なっ、なにあれ!!」

 不気味なドクロの頭に不似合いな鎧姿から生えている六本の腕は、それぞれに剣を持っている。まさかあの六本の剣をすべて扱うつもりなのだろうか。

「あれは『骸骨剣士』だ! サマンオサでも時々見たことある!」

 叫ぶルークに振り向くと、彼はすでに自身の武器であるパワーナックルを装備していた。

いや、ルークだけじゃない、ナギやシーラも戦闘態勢に入っている。

 まずい、鉄の爪を装備している暇はない。ここは素手で戦わなくては!

 しかも魔物は一体だけではなかった。後ろから二体、同じ姿をした骸骨が現れたのだ。

「おいルーク。あいつどのくらい強い?」

「えーと、僕らが普段海で遭遇する魔物よりは強いよ」

「はあ、マジかぁ~」

 敵の力量をルークに尋ねたナギは、面倒くさそうにため息を吐いた。

「なら、一体ずつ集中的に倒すぞ」

 ナギより早く口を開いたのは、ユウリだ。誰よりも早く自身の剣を抜くと、一気に先頭の骸骨剣士の前に踏み込んだ。

 ガキィン!!

 だが、ユウリの動きを骸骨剣士は予想していたのか、手にしていた長剣でユウリの刃を受け止めた。そしてどこにそんな力があるかというくらい強い力で、ユウリを後ろに下がらせた。

「くっ!!」
 
 それだけではない。残り五本の腕から繰り出される剣撃に、ユウリが反撃する暇すら与えず、骸骨剣士はじりじりと追い詰める。

「おいおい、何やってんだよ勇者様!」

 軽口とともにチェーンクロスを振り回すナギを、忌々しそうに一瞥するユウリ。と同時に気持ちを切り替えたのか渾身の力で押し返すと、ナギの行動を読んだのか後ろに退いた。

「くらえ!!」

 次は自分の番だと言わんばかりに、ナギが勢いよく跳躍しながら骸骨剣士に飛び込んでいく。振り下ろされたチェーンクロスは骸骨剣士の頭蓋骨を叩きつけるが、少しヒビが入ったくらいでそいつの動きを止めるほどには至らなかった。

「イオ!!」

 続いてシーラの呪文が魔物の周囲に爆発を巻き起こした。派手な割に殺傷能力の乏しいこの呪文は、三体の骸骨剣士の視界を遮る程度に留まった。

 しかしその一瞬の隙をついて、ユウリとルークが交互に一体の骸骨剣士に一撃を与えた。二人の気配に気づかなかった魔物は攻撃をまともに受け、胴体と右足の骨が砕かれた。

「今だ、ミオ!」

 ルークの掛け声とともに、すでに魔物に向かって走り出していた私は拳に力を込め、バランスを崩した魔物の頭蓋骨目がけて思い切り殴り飛ばす。

 そして骸骨剣士の頭が勢いよく甲板の端へと転がっていくのを横目で見ながら、ユウリがトドメの一撃を骸骨剣士の肋骨に与えた。どうやらあそこが魔物の弱点らしい。断末魔の声を聞くことなく、骸骨剣士はそのまま乾いた音を立てて倒れ伏した。
ーーまずは一体!

 なんてのんびり確認している暇はない。残りの骸骨剣士は一体はシーラ、もう一体はルークの方へ向かっていた。

 ルークの方は問題ない。だけど今シーラの近くには庇ってあげる人が誰もいない。呪文を放つ時間もない今、一番近くに駆け寄れるのは私だけだ。

「シーラ!!」

 私は駆け出しながら星降る腕輪の力を最大限に引き出した。……つもりだったが、すぐにハッとなって気づく。そういえば、腕輪はルークに預けたままだったんだ!

 マズい!! これじゃ間に合わない!! そう思ったときだ。

「バギマ!!」

 突如、杖をかざしたシーラの前にだけ、無数の圧縮した空気の刃が現れた。そして彼女が杖を前に突き出すと、その無数の刃は二体の魔物めがけてものすごい速さで襲いかかった。

 バギの呪文より何倍も大きい真空の刃は、シーラに剣を振り上げる骸骨剣士の体を無惨に切り裂いていく。それはまるで二枚の紙切れをナイフで刻むかのように呆気ないものであった。

「す……、すごい……」

 私だけでなく、他の皆も彼女の放った呪文の威力に唖然としている。マックベルさんから習得した呪文ということで、本来の半分程度の威力しか出せないはずなのだが、半分の威力でこれなら、完全版の威力はどれほどなのかと思わず息を呑んだ。

 そのとき、突然私の足元がぐらりと傾いた。

「え!?」

 何事かと思う間もなく、ベキベキと私の足元の床が抜け落ちていく。

 どうやらバギマで放った刃の一部が腐りかけた床板に当たり、その衝撃で床が抜けて――。

「ええええええっっっっ!!??」

「ミオ!!」

 崩れ落ちた床板とともに、私は絶叫を伴いながら甲板の穴の下へと落ちていった。

 その時誰かが私の名前を呼ぶ声が聞こえたが、パニックのあまりその後のことは全く覚えていなかった。

 
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