金木犀の許嫁
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第六十話 伊賀へその六
「近くにありますが」
「姫路城ね」
「ですが姫路市で」
「神戸市じゃないのよね」
「大阪にはありますが」
「大阪城ね」
「羨ましい時があります」
夜空それに真昼の生まれ育った街のことを話した。
「私としては」
「そうなの」
「羨んでも仕方ないですが」
そのことはわかっていてもというのだ。
「ついです」
「思ってしまうのね」
「街にお城があれば」
神戸市にというのだ。
「そう思ってしまって」
「それで伊賀だと」
「傍にお城があるので」
だからだというのだ。
「いいですね」
「お嫁さんに入ったら」
「その時からですね」
「街にお城があって」
「何時でも見られますね」
「そうなるわね」
「そうなることがです」
それがというのだ。
「嬉しいです」
「それじゃあそのお寺に」
「今からです」
「行くのね」
「そうしましょう」
こう話してだった。
五人で伊賀上野城の傍にある寺に向かった、この際城が恰好の目印になったことは言うまでもない。そうしてだった。
その寺の前に来るとだ、真昼はその門を見て言った。
「かなり古そうね」
「ええ、木造でね」
「瓦も立派で」
「古そうで立派ね」
「そうよね、この中に入ったら」
真昼はさらに言った。
「どんば場所かわかるけれど」
「境内結構広いしね」
「地図見たらね」
「じゃあ門を開いて」
「中に入りましょう」
こう話してだった。
五人で門を開けて中に入った、するとそこは。
多くの墓石や卒塔婆があった、真昼はその墓場を見て言った。
「そうそう、お寺だとね」
「お墓あるのもね」
「普通よ」
「檀家の人達のお墓がね」
「だからお墓でもね」
「怖がることもないわね」
「そうよね」
こう話してだった。
墓場の中を進んでいった、そして大きな木造の寺の前に来た。すると今度は幸雄がこんなことを言った。
「お寺自体は古いですが」
「歴史を感じさせますね」
佐京もその寺を見て述べた。
「江戸時代からあるだけに」
「はい、ですが暮らす場所はです」
「家族がですね」
「そちらは築二十年程で」
それ位でというのだ。
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