金木犀の許嫁
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第六十話 伊賀へその五
「こうして神戸から伊賀までもね」
「今回わかったけれど」
「案外楽に行けるのね」
「そうなのよね」
「お陰でよく休めました」
幸雄も微笑んで言ってきた。
「やはり車を運転していくよりも」
「電車で座ってですね」
「寝たりもしまして」
そうもしてというのだ。
「行き来をする方がです」
「楽ですよね」
「はい」
まさにというのだ。
「その方が遥かにです」
「そうですよね」
「ですから」
それでというのだ。
「この度はです」
「よかったですね」
「そう思います、では今から」
「はい、ホームに出て」
「駅からも出て」
真昼にその微笑みのまま話した。
「そしてです」
「伊賀の街に出ますね」
「そうしましょう」
「わかりました」
白華が応えた、今回の度の主役が。
「そしてお寺にですね」
「行きましょう」
「お見合い相手のおられる場所に」
「そうしましょう」
こう話してだった、そのうえで。
五人は列車から駅のホームに出た、そうしてそこから階段を登って改札口を出てそれから駅も出てだった。
伊賀の街に出た、ここで夜空は白華に尋ねた。
「お寺っていうけれど」
「はい、お城の近くです」
「伊賀上野城の」
「何でもかつては藩士の多くの人は信者さんだったそうで」
「忍者のお寺だったから」
「忍者の人達だけでなく」
さらにというのだ。
「藩士の人達もです」
「そうなのね」
「ですから」
それでというのだ。
「場所はわかりやすいです」
「お城の近くね」
「地図にも載ってますし」
その地図も出して話した。
「これを観ながらです」
「行くのね」
「そうしましょう」
「実はね」
夜空は白華の話を聞いて言った。
「お寺っていうと」
「それならですか」
「伊賀、忍者の里だから」
「あっ、山奥にですか」
「あるって思っていたけれど」
「そうしたお寺もあるでしょうが」
「白華ちゃんがお見合いするお寺は違うのね」
「はい」
そうだというのだ。
「お城の傍ですから」
「行き来しやすいわね」
「お城も見えますね」
地図の寺の場所を確認しつつだ、白華は笑って言った。
「嬉しいですね」
「何時でもお城が見えるっていいわね」
「神戸市ってお城ないですからね」
白華は少し残念そうに言った。
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