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蒼と紅の雷霆

作者:setuna
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紅白:第五話 スラム街2

 
前書き
インティって人の心って言われるけど遺体その物を利用しようとはしない分良心はあるんだよね 

 
回収してきた物資によりコハク達の生活が良くなってきた。

ソウ達はそれぞれの目的のために行動しつつも、拠点を提供してくれているコハク達の脅威となるものを排除していた。

時には拠点でモルフォとロロの合同ライブが行われ、初めて会った時の表情の陰りは大分無くなっていた。

そして、今日も何時も通りに何事もなく終わるのだと誰もが思っていた。

『コハクちゃーん!みんなー!ただいまー!』

「けほっけほっ……お帰…り…ロロちゃん…アキュラ…く…」

咳き込みながらもアキュラとロロを出迎えようとしたコハクだったが、力なく倒れそうになった所を妙な違和感を感じていたアキュラがギリギリでコハクを支える。

『コハクちゃんっ!!』

「コハクッ!!」

アキュラが即座にコハクを抱き上げると急いでベッドに運び、ロロに指示を飛ばす。

「ロロ、ソウとパンテーラに通信を入れろ。」

『え?…う、うんっ!』

アキュラの口から2人を呼べと言われるとは思わなかったロロは驚きながらもソウ達に通信を繋いだのであった。

通信先の2人もミッションを終わらせて急いで戻ってきてくれたので、急いでコハクの容態を診る。

「これは…少し前に猛威を振るった流行病でしょう。症状が似ています」

ソウとパンテーラはセプティマで肉体が構成されている関係上、病気とは無縁だったのだが、旅をしている最中に何度か感染者を見かけたことがある。

「意識はないが、まだ初期症状だ。発見が早かったのが幸いしたな…薬があれば治るんだが…」

「それは確かなのか?」

ソウがコハクの症状を確認しながら呟くとアキュラが尋ねてきた。

アキュラは機械が専門である上に病気とは無縁の状態である上に周りを見る余裕がなかったこともあり、この流行り病については疎かった。

「…ああ、だがマイナーズでは入手は難しいだろう」

「はい、大きな病院なら大抵置いてあるありふれた薬らしいんですが、僕達マイナーズでは…」

薬がある大きな病院は言うまでもなくスメラギの息がかかっている。

そんな場所から入手など日常生活すら満足に出来ない上に常にスメラギのセプティマホルダーから命を狙われているマイナーズでは不可能だ。

「そんな…!」

「コハクは!コハクは助からないのです!?」

「安心しろ。俺が町の病院に乗り込み、薬を確保してこよう。」

「だが、あまり時間はない…ここは俺達も乗り込むべきか…」

「ええ、1人よりも複数人で探せば…」

1人よりも3人で手分けして探せば早く見つかるだろう。

幸い、この3人は機動力と言う点ではこの世界に置いて最高峰だ。

「兄貴達…」

「イクス…GSもパンテーラもお願いなのです!コハクを、助けて…!」

人見知りでアキュラとソウとパンテーラから距離を取っていたマリアが2人に懇願する。

そしてそんな彼女の想いを無下にするような3人ではない。

「約束する…薬は必ず持ち帰る。だから、コハクの看病は任せたぞ。」

アキュラがそう言った直後に地響きが起きた。

「な、何だぁっ!?」

「まさか…」

鏡が反転してパンテーラが消えたかと思えばすぐに表情を険しくして戻ってきた。

「どうだテーラ?」

外の様子を見てきたのであろうパンテーラに外の状況を尋ねると最悪の答えが返ってきた。

「スメラギのマイナーズ狩りが始まったようです。最新型の戦車まで出してくるとはそれなりに本気のようですね」

『そんな…っ、タイミングが悪すぎるよ…!』

『何もこんな時じゃなくても良いでしょうに…!どれだけ暇なのよスメラギの連中は…!』

ロロとモルフォが狙ったかのようなタイミングの悪さに苛立ちを覚える。

一刻を争う時だと言うのにマイナーズ狩りが行われており、コハクもマイナーズも見捨てられないアキュラとロロだが…。

「…俺よりもお前の方が速く病院に辿り着けるはずだ」

「何?」

「俺達がスメラギの部隊を殲滅してやる。お前は急いで病院に向かえ」

『ソウ…っ!』

マイナーズ狩りを止めに向かってくれることにロロは驚いた。

ソウはコハク達はともかく一般のマイナーズには基本的に何もしないと言うのに。

「だから分かっているな?ここまでしたのに薬を持たずにのこのこと戻ってきたら叩き斬るぞ」

雷撃刃を展開した銃剣の切っ先をアキュラに突きつけるソウにアキュラもまた口を開いた。

「それはこちらの台詞だ。もし俺が戻ってきた時にこの基地が壊滅していたら俺は貴様を討滅するぞ」

互いに睨み合っていたが、2人は同時に出口に向かう。

「「そっちは任せたぞ」」

存在はともかく実力自体は認めているためか、アキュラはメディカルセンターに向かい、ソウはスラム街のスメラギの部隊の殲滅に向かう。

「…若いですねぇ…」

『うんうん、僕達も情熱的だった昔を思い出しちゃうよ』

「あなたは今も昔も変わらずポンコツですが」

『ムカッ!そう言う君は見た目はともかく中身は立派なお婆さんじゃないか…ひぃっ!?』

光弾がロロの真横に当たる。

「あら?良く聞こえませんでしたね?もう一度言ってもらえますか?」

『はあ、やれやれ。そんなだから何度もスクラップにされるんでしょ?少しは学習したら?』

綺麗で凄まじい威圧感を纏った笑顔を浮かべるパンテーラにロロはガクガクと震えながら頷き、パンテーラの隣に浮かんでるモルフォは呆れたように笑う。

『す、すみませんでした…』

「よろしい…ではロロ、そちらは任せますよ」

『さっさと薬取ってきなさいよ』

『うん、お願いねパンテーラ…認めたくないけど君とソウのタッグは凶悪だからね。スメラギが可哀想に思えるくらいには』

パンテーラとモルフォ、ロロもそれぞれのパートナーを追い掛けていき、それぞれの目的地に向かう。

「…スメラギ…貴様らの好きにはさせん…!!」

ソウは銃剣から雷撃刃を発現させると構える。

「まずは挨拶代わりと行きましょうか。愛の爆炎です!!」

パンテーラはクリムの虚像を作り出すとクリムのセプティマである起爆のセプティマによる光弾を発射させると前方の戦車とセプティマホルダーが吹き飛ぶ。

「迸れ、紅き雷霆よ。我が敵を紅き雷刃で両断する…!」

マッハダッシュで距離を詰めて戦車をチャージセイバーで両断し、雷撃鱗ロックオンで範囲内の敵をロックオンすると放電で周囲を殲滅。

『私の歌を…!』

ソウのサポートをするために【蒼の彼方】の歌が響き渡る。

まだ抵抗を見せるのなら今度はギガヴォルトセイバーではなく殲滅力の高いもう1つのSPスキルを発動する。

「ライジングオーバードライブ」

雷撃エネルギーを銃剣にMAX状態にさせると強化チャージショットを乱射し、大勢いたスメラギ部隊は瞬く間に数を減らしていく。

「ば、馬鹿な…俺達は夢を見ているのか…?あれだけの部隊がこうもあっさりと…」

「こ、これが…スメラギの誇る翼戦士を倒してきた最凶最悪のセプティマホルダー・ガンセイヴァー…っ!ぎゃああああっ!!?」

ソウが放つチャージショットの弾幕に巻き込まれ、断末魔を上げながら息絶えるスメラギ兵。

反撃しようとしても高速で動き回るソウがすれ違い様に雷撃刃とショットで攻撃し、時にはパンテーラの虚像からのセプティマの連携で消し飛ばす。

「撃ち払いなさい」

リベリオの虚像がガトリング砲を乱射してスメラギ兵を撃ち抜いていき、あれだけいた部隊も残り少ない。

「全く…学習能力のない連中だ…それからその呼び名は止めてもらいたいな…」

「仕方ありませんよ、ソウ。あなたはもう遥か昔の存在…あなたの名前を知っている人はもうほとんどいないのですから…それに私は嫌いではありませんよ?ガンセイヴァー?」

「…………とにかく急ぐぞ」

「ふふ」

先を進むと大型戦車が行く手を阻む。

「雑魚の癖に図体がでかいな、邪魔だ」

「これを使いましょう。愛の刃です!!」

ロロから渡されたインテルスの戦闘データと映像で詳細を知ったことで再現出来たインテルスの虚像を出現させると彼女の2つの円月輪が放たれ、ブーメランのような起動を描いて戦車を切り裂く。

「良くやった、テーラ」

追撃のチャージセイバーを繰り出し、マッハダッシュで真上を取って雷撃刃を戦車に突き刺す。

搭乗者の断末魔の叫びが聞こえ、構わず雷撃を流し込むと戦車は爆散した。

「スメラギの部隊はこれで全部か?」

周囲を見渡してみるが、気配は感じない。

「恐らくは…一度基地に戻ってコハクの様子を見に行きましょう」

『……待って!あそこよ2人共!!』

「迸レ…蒼キ雷霆ヨ(アームドブルー)…」

モルフォが指差した先から掠れて聞き取りにくいが、どこか懐かしい声が聞こえた。

2人に向かって蒼き雷撃の聖剣が発射され、即座にギガヴォルトセイバーで迎撃する。

雷刃波と聖剣が激突すると周囲の瓦礫を衝撃で吹き飛ばす。

聖剣の発射位置を見ると黒いフードで全身を覆った、ソウと同じ背丈の…声からして少年だろうと言う人物がいた。

「蒼き雷霆…何者だ?」

「何でしょう…生気を感じません…」

『何なのこの感じ?彼から物凄く辛い気持ちが流れ込んでくる…心が…壊れそうな…』

パンテーラは少年?に違和感を抱く。

普通の人間ならばあるはずの生気が全く感じられないのだ。

「シテ…」

「ん?」

「僕ヲ…殺シテ…」

「「!?」」

「打チ砕ケ…ライトニングスフィア…」

次の瞬間、少年?の周囲を3つの大型雷球が発生と同時に回転する。

これはかつてソウの弟の彼が使用していたスキル。

「チッ!!」

咄嗟にバックステップで距離を取るソウ。

「マンダラー」

雷球が発射され、ソウは咄嗟にマッハダッシュで回避する。

「斬リ裂ケ、スパークカリバー…シュート」

再び聖剣を出現させ、パンテーラに向けて発射する。

「くっ!!受けなさい!!」

パンテーラは聖剣をかわしながら夢幻鏡の光弾を放って牽制し、ソウが距離を詰めて雷撃刃で攻撃する。

しかし大したダメージにはなっていないのか少年?はパンテーラに対して更なる攻撃を行おうとする。

「ライトニングスフィア…マンダラー」

「これならどうです!?」

雷球をかわしながらパンテーラはインテルスの虚像の円月輪を叩き込み、ソウはチャージショットを直撃させる。

少年?が直撃を受けるが少年?は意も介さずに攻撃を続けようとした。

「それ以上はさせん」

雷撃鱗ダッシュの突進で少年?を吹き飛ばす。

触れた少年?の体は異様に冷たかった。

しかし、気にしている余裕はないと判断したソウはそのまま雷撃を迸らせてチャージセイバーで少年?を斬りつけた。

「ーーーーッ!?」

「まさか、こいつも紅き雷霆が弱点なのか?」

彼の弟も蒼き雷霆よりも高出力の紅き雷霆の攻撃は防げずにダメージを受けていた。

これは蒼き雷霆のセプティマホルダー共通の弱点なのかもしれない。

「ソウ、離れて下さい!!」

クリムの虚像が発射した爆発のエネルギー弾が放たれ、直撃を受けた少年?が仰け反った。

「これも弱点か…テーラ、畳み掛けるぞ!!」

「はい!」

パンテーラがソウをサポートし、弱点となるスキルを使って少年?を追い詰めていく。

「僕…ヲ…殺シ…テ…兄サ…ウアアア…ッ!?」

突如少年?の蒼き雷霆が暴走し始め、頭を押さえて苦しみ始めた少年?はダッシュでこの場を去った。

「…あいつ…まさか…いや…そんなはずは…」

「もし…そうなら…“あれ”はもう人の心など微塵もないのですね…」

表情を険しくしながらソウとパンテーラは基地に帰還した。

「GS…」

ずっと泣いていたのか泣き腫らした目をソウに向けるマリア。

「コハクはどうだ?」

近くにいたジンにソウがコハクの容体を尋ねる。

「大丈夫です…イクスさんが薬を持ってきてくれればコハクさんは助かります」

「そうか…早く戻ってこい……アキュラ…」

アキュラの帰りを待ちながら、自身が病気とは無縁であることを活かしてコハクの看病をするのであった。 
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