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蒼と紅の雷霆

作者:setuna
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紅白:第六話 メディカルセンター

スラム街のマイナーズ狩りを行っているスメラギの部隊の殲滅をソウとパンテーラに任せたアキュラとロロはメディカルセンターを襲撃する。

『コハクちゃんの容体が心配だ!早いとこ薬を見つけて持ち帰ろう!』

「基地に関してはソウとパンテーラのことだから問題はないだろう…迅速かつ確実に行くぞロロ……待っていろ…コハク…」

嫌悪している仲ではあるものの、実力に関しては信頼しているようだ。

本人に言えば間違いなく顔を顰めるだろうが。

かなりの規模のメディカルセンターのために警備もそれなりに手厚い。

特に一定の間隔でトゲ付きのバリアで全体を覆うメカが厄介でフェイクカゲロウさえも無効化するので足止めを喰らいやすかった。

しかし、アキュラはインテルスの重力のセプティマを解析して再現したEXウェポンの円月輪で薙ぎ払う。

「そこを退け…っ!」

『オービタルエッジ!喰ーらーえーっ!!』

アキュラの表情に映る感情は相変わらず薄いが、何時もよりも鬼気迫る何かを感じさせる。

エレベーターは恐らく襲撃によって使用不能になり、階段も警備が厳重になっているだろう。

ならば上の階に繋がる壁を飛べば良いだけの話。

「ロロ、アンカーネクサスだ」

『OK、アンカーネクサス!思い切りぶつかっちゃえアキュラ君!!』

アンカーネクサスの糸で上の敵を捕捉して突進する。

上空の敵を利用して上へと飛んでいき、上の階に侵入した。

「ロロ、ルミナリーマインだ」

『OK!ドカーンとやっちゃえっ!!』

そしてここの機械群に対してクリムの起爆のセプティマを疑似再現したEXウェポンを使用し、光弾が着弾と同時に大規模の爆発をした。

「(俺はかつて守れなかった…俺の命よりも大切な物を…)」

何故あの時の自分は守れなかった?

昔のソウとの戦いで傷付いていたから?

それもあるかもしれないが、セプティマホルダーへの憎悪を優先して後先のことをまるで考えていなかったからだ。

それによって自分は肝心な時に動けず、大切な物を奪われてしまった。

「俺はもう…失わん…っ!」

自分の愚かさと無力さを嘆くのはもう終わりだ。

今はコハクを救うことのみに全力を注ぐ。

ロロの【キミとエクスプロージョン】の歌によって強化されたジャケットのまるで弾丸を思わせる動きでアキュラはメディカルセンターを駆け回り、そして医薬品を備蓄しておく備蓄倉庫の前へと辿り着く。

『邪魔だーっ!』

ロロがEXウェポンを切り替え、スパークステラーで備蓄倉庫前のゲートモノリスを破壊する。

そして備蓄倉庫へと入り、アキュラはジンから渡された薬の情報を思い出しながら棚に置かれてある大量の医薬品を見つめる。

『この部屋、薬品がいっぱい…』

「目的の薬もあるかもしれんな…探すぞ、ロロ。」

『がってんだ!』

アキュラとロロは早速目的の薬を探し、情報通りの薬の薬瓶を発見する。

『あ、あそこ!あれって探してる薬じゃない?あれさえ持ち帰れば…』

アキュラが棚に駆け寄って薬を手にしようとした時、蒼い雷が背後で迸った。

振り返るとそこにはアキュラを追い詰めた雷撃のセプティマホルダー・ブレイドが剣を構えていた。

「ホールドアップだ、イクス。メディカルセンターを襲うとは…」

『ブレイド!』

「マイナーズ共が何を考えているか知らんが…その悪行、死を持って償え…」

「貴様に構っている暇はない…即座に片付けさせてもらう。」

こうしている間にもコハクは苦しんでいるのだ。

これ以上の時間の遅れは許されない。

「行くぞ!」

ブレイドがアキュラとの間合いを詰めて斬り捨てようとするが、ブリッツダッシュでブレイドの真上を取り、アンカーネクサスを起動させてブリッツダッシュでロックオンと同時にダメージを与える。

「ぐっ!?」

「ブレイド、貴様は確かに速い」

ロックオンと同時にショットを連射し、ホーミングショットによってブレイドに確実にダメージを与えていく。

「己っ!」

ブレイドはショットを受けながらもアキュラに斬り掛かるが、紙一重でのブリッツダッシュの回避で剣は空振りする。

「ロロ、今あるEXウェポンで奴に有効な物があるか試すぞ」

『了解!ド派手に行くよ!』

スパークステラーを除いたEXウェポンを使用し、ルミナリーマインの光弾がブレイドに直撃した。

「ぐはっ!?」

「それが弱点か」

『効いてるみたいだよ!流石アキュラ君!』

ルミナリーマインの直撃によってブレイドが大きく反応したことで弱点を理解したアキュラは即座にルミナリーマインを主軸とした戦術を組み上げる。

「くっ!ならばっ!」

剣が蛇腹状になり、鞭のようにしならせるとアキュラに向けて繰り出してくる。

「っ!」

壁を利用してブリッツを装填しながら蛇腹剣の軌道を見切ると空中リロードで着地しつつ、使用済みのブリッツの放棄と同時に新たなブリッツを装填しつつ刃を砕く。

「何だと!?」

「確かに貴様は速く…強いが…貴様よりも強く、忌々しい男を俺は知っている…」

まだ心身共に未熟だった頃に外国の多国籍セプティマホルダー連合のセプティマホルダー達と共にスメラギと戦っていたソウに何度も挑んで敗北を喫した苦々しい過去。

しかし、どれだけ装備を新調しようと、体を鍛えようとそれを上回る絶大な力を振るってくる存在を誰よりも心身から理解していた。

「貴様の雷撃もそうだ…雷撃のセプティマホルダーとしては貴様は奴と同ランクかもしれんが、攻撃面に関しては格下だ。貴様の雷撃よりも強く鋭い雷撃があることを貴様は知らんだろう。」

ブレイドの攻撃をいなしながらアキュラはアンカーネクサスで的確にロックオンしつつ、ショットとルミナリーマインの連続攻撃を浴びせる。

「何を言っている!?」

「分からんか?奴と再会した以上、もう俺は貴様などには負けん。奴を倒すにはまず貴様などに躓いていられん」

ブレイドが剣を振るい、地面を駆ける衝撃波をブリッツダッシュで急接近し、銃で直接殴り飛ばす。

「うあっ!?」

まともに受けたブレイドが吹き飛び、棚に激突する。

ソウへのライバル心とコハクを救いたいと願う心がアキュラの動きと感覚を鋭くさせていた。

「ぐうう…何だこの動きは…あの時とはまるで違う…」

ブレイドは剣を支えにしながら立ち上がる。

「無駄だ、今の貴様では俺には勝てん。俺には貴様に構っている暇はない。そこで大人しくしていろ」

コハクのために時間をこれ以上割きたくないアキュラはブレイドを放置して棚の薬を確保しようとした直後であった。

「ふざけ…っ!?こ、これは…っ!?」

「っ!?」

『アキュラ君!あいつのセプティマ反応が…』

ブレイドの異変に気付いたアキュラとロロが振り返る。

「ぐ…っ…うああああああっ!!」

ブレイドの纏っていた雷が禍々しい色に変わり、獣のような雄叫びを上げた。

『この異常なセプティマ反応の上昇…暴走して…いや、させられてる…?』

「ダアッ!!」

一瞬で間合いを詰めてくるブレイドにアキュラはダッシュジャンプで回避する。

「まさか、外部からの干渉か…?まさか…」

ブレイドの異変の理由に気付きかけていたが、再び蛇腹剣を振るってくる。

今度も同じように空中リロードで踏み砕いて攻撃を阻止し、ルミナリーマインによる爆撃を叩き込む。

「グオオオオオッ!!」

しかし、ダメージを受けてもブレイドは柄に新たな刃を装着し、そのまま衝撃波を2発繰り出す。

「この動き…正に獣だな…しかし、理性のない動きなど!」

ブレイドの強みは卓越した剣技と冷静な判断力。

力に任せて暴れる姿は寧ろ弱くなったとしか感じられない。

回転斬りや下突きの連携技も、今まで使っていた技は確かに強くなっていたが大振りで読みやすい。

しかし、このままでは無駄に時間が過ぎてしまう。

「…仕方がない…ロロ、ABドライブのリミッターを解除し、ARドライブモードに移行する。」

『でも、それをやったらアキュラ君の体が…』

「構わん、多少の負担は覚悟の上だ」

『…あーもう!分かったよ!リミッターカット!!ARドライブモード!!』

「ロロ、サポートを頼む」

『OK!じゃじゃ馬セプティマの動力のフルスペックを見せてやる』

次の瞬間、アキュラの纏っていたジャケットの出力が大幅に強化され、ブリッツダッシュの体勢に入った瞬間にアキュラの姿が消えた。

「グウッ!?」

異常なまでの急加速にブレイドが反応しきれずに銃での打撃を喰らってロックオンされながら仰け反る。

「ロロ、スパークステラーだ。」

『喰らえ!フルパワーのスパークステラーだ!!』

複数のビットがブレイドを囲い、紅い雷撃…紅き雷霆を再現した疑似セプティマの雷撃がブレイドに注がれる。

「グアアアアアッ!?」

雷撃のセプティマホルダーが雷撃でダメージを受けている。

これは紅き雷霆が蒼き雷霆のセプティマホルダーの雷撃の許容量を大きく超えているからだ。

許容量を超えた器はいずれ決壊するようにブレイドも許容量を超えた雷撃に全身を焼かれ、あまりの激痛に叫んだ。

しかし、ブレイドは全身を焼かれながらも動きを止めない。

「っ!?奴の体は普通ならば動けないほどのダメージを受けているはず…」

ブレイドに干渉している側からすればブレイドがどうなろうと構わないと言うのか。

『アキュラ君!こうなったら!』

「ああ、行くぞロロ」

ロロがモード・アウェイクニングとなり、アキュラと高速で移動し、複数のビットがブレイドを攻撃する。

「クロス…」

『ディザスター!!』

2人が交差して最後の一撃を叩き込む。

「ガハッ!?」

クロスディザスターを受けたブレイドは倒れ伏したが、まだ立ち上がろうとする。

「ウゥ…イクス…殺ス…」

『こいつ、様子がおかしい…何かに操られてるみたいな…うう…こうしている間にもコハクちゃんの容体が…!』

「コハ…ク…?」

ロロの口からコハクの名前を聞いたブレイドの様子が変化する。

「…?」

「コハク…コハク!コハクッ!!!」

コハクの名前を聞いたブレイドは突如、コハクの名前を叫びながら悶え苦しむ。

『こいつ急に!何なの!?』

「…だが、今のうちだ。薬は頂いていく!」

アキュラは薬を確保するとメディカルセンターを脱出する。

「グッ…ウウッ…!ウアアァーッ!!」

アキュラが去った後もブレイドはその場で呻き、叫ぶだけであった。

アキュラが薬を確保していた頃、ソウはパンテーラと共にコハクの看病をしていた。

「GSの兄貴…看病上手いよなぁ…」

キョウタがテキパキと作業するソウを見ながら思わず呟く。

「ソウには弟と…妹のような存在がいたのです。2人が体調を崩した時も率先して看病をしていましたから…生まれついてのお兄さん気質なのでしょうね」

「GSの弟と妹…全然想像出来ないのです…きっとGSみたいに無口でここに皺を寄せてるに違いないです」

眉間を指差しながらマリアは何とかソウの弟や妹を想像しようとする。

「2人はソウとは正反対な性格をしていましたよ。変に頑固なところは共通していますけど」

一度決めたら梃子でも譲らない頑固さは血の繋がった弟はともかく、血の繋がらないはずの彼女にもあった。

雑談をしながらアキュラが戻らないことの焦りを和らげながら看病を続けると、向こうから此方に駆けてくる音が聞こえた。

「今戻った!早くコハクに薬を。」

アキュラの手には全員が待ち望んでいた薬瓶が握られていた。

「いっ、今すぐ準備します!」

アキュラから薬を受け取り、早速装置で投薬するジン。

「はぁ…はぁ……」

「投薬、完了しました。効いてくれるといいのですが…」

「後はコハクの回復力を信じるしかないだろう」

ソウの言う通り、薬を投薬した今はコハクの回復力を信じるしかない。

全員が沈黙しながらコハクを見守る。

「…ううっ…お姉…ちゃん…」

「コハク姉ちゃん、凄え苦しそうだ…」

「うわ言で何度も何度も…お姉ちゃんを…呼んでいるのです…」

『お姉ちゃん?』

「コハクには姉がいたのですか?」

コハクに姉がいることは初耳だった2人がマリア達を見つめる。

「コハクのお姉ちゃんは…スメラギに殺されたのです…」

「マリアッ!まだ死んだって決まったわけじゃねーだろ!姉ちゃんが…あの鬼強え姉ちゃんが死ぬわけないっ…!」

「コハクのお姉さんは…前の基地からここに移り住む時に、囮になってくれたんです…死体は見つからなかったけど…でも、あの状況では…」

「…なるほどな。そういうことか。」

「…?」

何かを察したように呟いたアキュラをジンが不思議そうに見る。

「…お姉…ちゃん……行かない…で…!」

「コハク…お前の姉じゃないが…俺が、ここに居る」

「…アキュラ…君…」

「頑張るんだ、コハク。」

コハクの傍に寄り、安心させるように声をかけるアキュラ。

その姿にパンテーラは腕を組んで頷いた。

「美しいです…これもまた1つの愛の形なのですね」

『いや、これって…愛なの…かな…?』

『どっちかと言えば、妹を心配するお兄ちゃんよね』

『っ!そ、そうだね…』

モルフォの言葉に一瞬だけロロは動揺したように動きを止めたが、すぐに普段通りになった。

「お前達、サボらず働け」

ソウの一言で全員がコハクの回復のために動き出した。

数日後、基地内で明るい声が響いた。

「うーんっ、気力充実っ!パワーがみなぎるっ!」

『良かったー!元気になったんだね、コハクちゃん!』

「うん!おかげ様で!ありがとう、ロロちゃん、モルフォちゃん、テーラちゃん、お兄さん、アキュラ君!」

「元気になったのは良いが病み上がりだ。あまり無理はするな」

「そうですね、また体調を崩さないように腹巻きでも作りましょうか。」

「腹巻きは…ちょっとカッコ悪いかも…」

「「着けろ…真似をするな」」

テーラがお手製腹巻きを作ろうとすると、拒否するコハクにアキュラとソウが同じ言葉を言う。

「マリアからも…マリアからも、礼を…言うのです、イクス…GS」

『わ!やったねアキュラ君!マリアちゃんがデレたよ!』

「なっ!マリアは別にデレてねーのです!全く失敬な…」

「…フッ。」

ロロとマリアのやり取りにアキュラが微かに笑みを浮かべた。

『アキュラ君が…笑った!?何時ぶりだろ…』

「アキュラ君て、笑うんだ…」

「…どういう意味だ?」

「ソウ…見ましたか?アキュラが笑いましたよ?不気味ですね…これはきっと天変地異の前触れなのかもしれません…」

「全くだ。あいつが笑うなど寒気がするな…明日は隕石が降り注ぐかもしれん。用心しなければな…」

真剣に話し合う2人にアキュラは銃を抜いた。

「貴様ら…討滅するぞ…」

『アキュラ君だって人並みに笑うことあるんだからね!』

「とにかく、おかげ様で完全復活!みんなには感謝してもし足りないよ!」

「そうですか…まずあなたはその布面積の少ない服をどうにかしないといけませんね。正直病気になったのはそんな格好だからな気がします」

「ええ!?そんなあ」

コハクが愕然となるが、この中で布面積が極めて少ないのはコハクであり、誰もがパンテーラの言葉に…腐れ縁のアキュラですら同意する程であったと言う。 
 

 
後書き
何時見てもコハクの服は寒そう。
これがイクス2で続投とは… 
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