蒼と紅の雷霆
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紅白:第四話 自動増殖プラント
前書き
久しぶりにやったら結構手強い。
アキュラが拾参ビルに向かっている際、ソウとパンテーラもまた廃棄されたプラントに到着していた。
「この廃棄プラント、情報だとスメラギからの電力供給は止まっていたようなのですが…どうやら、まだ生きてるようですね。このプラントのどこかに予備エネルギーの貯蔵庫があるかもしれません。」
『出来ればたくさんあればいいんだけどね。あの生活がどれだけ続くかは分からないし。ファンの子達にひもじい思いは出来るだけさせたくないわ』
モルフォにとっても自分のファンでもあるコハク達のことを放ってはおけず、出来るだけ助けてやりたいと思っているようだ。
「…コハク達には世話になっているからな。出来るだけのことはしてやりたいが…ここにとスメラギの連中も調査に来ているようだ。全く、連中はどこにでも現れるな…この点は今も昔も同じようだ…迅速にENパックを回収して撤退するぞ」
「はい、ソウも無理はしないで下さいね。」
「ああ、俺はこんなところで死ねんからな」
『さあ、ENパックを回収よ!!』
自分にはやらねばならないことがあるのだからこんな所で死ぬわけないにはいかない。
ソウはパンテーラとモルフォと共にプラント内に潜入し、周囲を警戒しながら奥へと進む。
「…少し様子を見てみたが、少し俺では厳しいトラップがいくつかあるな…」
「アキュラならば突破出来そうなのですが…」
『この丸鋸のトラップ、たくさん配置されてるわ』
特に丸鋸のトラップが厄介で瞬間的な速度ならともかく、動ける範囲でアキュラに劣るソウが突破するのは困難だ。
「仕方ない、こんなオンボロな場所でこのようなことはあまりしたくはないが…」
拳に雷撃を纏わせて床を殴ると床に大穴が開いた。
「良かった…古い施設だから心配しましたが…」
『崩落しなくてラッキーだったわね』
衝撃による崩落を懸念していたが、思っていたよりも老朽化はしていなかったようだ。
ソウとパンテーラとモルフォは穴に飛び込んで落ちる所まで落ちていく。
「思ったよりも落ちましたね」
「だが、ここならまだマシだ。行くぞ!!」
『よーし、今回も張り切っちゃうわよ!』
奥に進むと侵入者用の罠か、それとも老朽化によって荒れてしまったのか、トゲが敷き詰められた壁を発見する。
「これならマッハダッシュで飛び越えられそうです」
「ああ」
『勢い余ってトゲにぶつからないでよ?一発アウトじゃないにしてもダメージやEPエネルギーを無駄にするんだから』
「…要らん心配だ」
トゲが敷き詰められた壁をマッハジャンプを駆使して攻略していく。
壁の上に配置されている警備メカやスメラギ兵を倒しながら、ソウはマッハダッシュで上へと登っていく。
「それにしてもこの壁はトゲだらけですね…」
「このプラントの設計をした奴の性根の悪さが分かるようだな」
『トゲばっかりにすれば良いってわけでもないのにねぇ…』
例えカゲロウがなくとも今の自分ならばトゲで死ぬようなことはないが、あまり受けるわけにはいかない。
トゲの壁を突破し、奥に進むと今度はプレス地帯に入った。
「おい、ここはゴミ処理場か何かなのか?」
「どうしてこんなプラントにこんなプレスがあるんでしょうか…?」
『侵入者用のトラップかしらこれ?』
「このプラントを設計をした奴はプレスマシンを設置すれば侵入者をどうにか出来ると思っていたのか?」
だとしたらこのプラントの設計者は余程の馬鹿に違いない。
どうにかプレスに潰されないように進まなくてはならない。
「行くぞ、丁度所々に隙間がある。そこに入れば潰されはしないだろう」
「はい」
しかし、隙間に入るのを見越していたかのように警備メカが配置されており、隙間に入る際には慎重にならざるを得なかった。
雷撃鱗ロックオンが使えなければ何も出来ずに攻撃を受けていただろう。
ロックオンをして放電すると纏めて敵を蹴散らす。
「このプラントの設計者は間違いなく性悪だな」
「ええ、間違いありません」
『昔のスメラギの性格の悪さが分かるわね』
警備メカの足止めによってプレスマシンの餌食にする。
設計者の性格の悪さには流石のソウとパンテーラは辟易してきたが、更に面倒な仕掛けがあった。
浮遊するリフトがいくつかあり、奥にはトーテムポール型の砲台が設置されていたのだ。
「あのタイプは二台破壊しないと中央の本体が出てきません。その後に残りの砲台を破壊しなくてはなりませんが…通常なら」
「面倒な物を置いてくれたな…テーラ、頼む」
「任せて下さい…行きます…愛の弾丸を受けなさい」
鏡が出現してリベリオの虚像が現れたかと思えばエネルギーの糸でガトリング砲を編み、それを構えるとエネルギー弾を乱射する。
パンテーラの夢幻鏡で倒したセプティマホルダーの虚像を作り出し、その使用者(オリジナル)が使っていたセプティマの技を再現させる。
謂わばアキュラ達が使っているEXウェポンのような物だが、出会って間もない相手のセプティマを再現するのはかなり苦労するらしく、一度使用するとクールタイムが発生する。
下の段をリベリオの虚像に任せてソウは上の段を破壊し、飛び出してきた本体をパンテーラが光弾を放って破壊する。
「ふう、やはりあまり知らないセプティマホルダーの再現はかなり力を使いますね…」
それでも他者のセプティマを使えると言うのは強力なアドバンテージだ。
セプティマには相性が存在するため、弱点で攻めた方が効率が良かったりするのだ。
「相変わらず空間を繋げたりと便利なセプティマだな」
「ふふ、相変わらずの愛らしさでしょう?」
「…ああ(相変わらずの凶悪さの間違いだがな)」
いくら鈍感な部類に入るソウもパンテーラに言って良いことと悪いことは理解している。
『頑張ってねお父さん』
モルフォの歌がソウのセプティマを高める。
この歌は【追憶の心傷】だったはずだ。
パンテーラのセプティマのクールタイムも短くなり、2人はモルフォの歌の加護を受けながら前進する。
トゲのない壁をキッククライミングで登り、ソウは登った先にあるシャッターを潜ると、そこには見覚えのある戦車が動いていた。
「こいつは…ずいぶんと懐かしいじゃないか…確か…“スパイダー”だったか?旧式を持ち出してくるとはスメラギも余裕がないようだな」
かつてのスメラギの最新型戦車も今では旧式。
ソウは懐かしさを感じながらも雷撃鱗ロックオンでロックオンすると頭部に向かって放電し、集中攻撃する。
「行きなさい」
パンテーラもクールタイムが終わり、再使用可能になったリベリオのセプティマによるガトリング弾をスパイダーに浴びせる。
「終わりだ。ギガヴォルトセイバー!!」
最後にSPスキルの雷刃波を叩き込むとスパイダーは真っ二つに両断され、跡形もなく爆散した。
「お疲れ様でした。ソウ」
「ああ、だがのんびりしている余裕はない。急ぐぞ」
長居をしていては万が一のことがあるかもしれないので急いで奥のシャッターを潜って先を進むと、スメラギ兵が姿を現し、こちらを攻撃してくる。
「良くこんな場所にも来るものだな」
「ご苦労様ですよ、本当に」
立ちはだかるスメラギ兵を斬り捨て、薙ぎ払いながらソウとパンテーラは奥にゲートモノリスを発見し、それ破壊して奥へと進む。
「ソウ、この奥から強力なセプティマを感じます。恐らく翼戦士でしょう」
「邪魔をするなら叩き潰す。何も変わらん」
シャッターを潜った先には大量のENパックがあり、それを眺めている鋏を持った優男風の男がいた。
「君達は…この僕のアートを鑑賞しにきたお客人?それとも、アートの邪魔をしに来た不心得者…どっちだい?」
「…そこのENパックを大人しく渡す気がないのなら、後者だ…」
「それは残念。これは全部、今からアーティスティックに爆発させる予定なんだ。全てをアーティスティックに燃え上がらせる、美の追求者…クリム様の“起爆(デトネーション)”のセプティマでね。言うだろう?“アートは爆発だ!”ってさ?…あれ?“爆発はアーティスティックに!”だったかな?」
「…それを言うなら“芸術は爆発だ”…だ。」
ソウが訂正するとクリムは持っていた鋏をしまい、羽根ペンを取り出した。
「そうなの…まあ、どうでもいいか。全てが美しく、アーティスティックであれば…コントラクト…!ショーターイムッ!」
羽根ペンの契約により、変身現象が発動する。
まるで蟹を思わせるような強固な装甲を纏った姿となった。
「爆殺ショータイムだ…ここで君達は死に、その死はアートへと昇華される!」
「それがアートですって?愛のない独り善がりのアートに未来などありません」
「芸術に興味はない…俺達の邪魔をするのなら誰であろうと叩き斬るまでだ。」
ソウとパンテーラがクリムにショットと光弾を放つものの、クリムの装甲に阻まれてしまう。
「ほう、中々頑丈だな」
「その程度の攻撃では僕の装甲はビクともしない…今度は僕のアートをお見せしよう!」
爆発の勢いを利用したジャンプと着地と同時の爆発。
爆発を利用した体当たり、そして爆発する光弾を放ってくる。
「チッ」
マッハダッシュとホバリングを駆使しての空中機動で攻撃を回避しながら舌打ちするソウ。
しかし、この手の能力には弱点がある。
強力すぎて自身さえも傷付けてしまうことだ。
パンテーラの兄もセプティマの力を引き出しすぎたことで自らを死に追いやってしまった。
恐らくクリムはあの装甲で爆発のダメージを防いでいる。
「ならば、その装甲を潰させてもらうぞ」
チャージセイバーで一閃すると、クリムの装甲に大きな傷がついた。
「何っ!?」
「私の愛も受け取りなさい」
その傷目掛けてパンテーラも光弾を放ち、更にリベリオの虚像を作り出してガトリング弾を浴びせる。
クリムは自慢の装甲に一撃で傷をつけられたことに動揺し、動きを止めてしまう。
「良いのか?自慢の装甲が潰れるぞ?」
更にチャージセイバーでの一撃。
クリムの装甲に更に大きな傷をつける。
「くっ!なら、真のアートを見せてやる…っ!」
距離を取って光弾を乱射してくるクリムだが、マッハダッシュを利用してクリムの真上を取り、急降下をしながら雷撃刃での冑割を叩き込み、更に装甲に傷をつける。
「迸れ、紅き雷霆よ。お前の爆炎を俺の紅き雷刃で両断する。」
そして追撃の大上段から振り下ろしたチャージセイバーでの一撃によってクリムの装甲は限界を迎えて砕け散る。
「なっ!?」
「驚くようなことではないだろう。俺とお前とではセプティマホルダー…いや、能力者としての年季が違う。能力を闇雲に使うようなガキに負けるほど耄碌はしていない」
動揺している隙を突いて雷撃鱗ダッシュによる突進を叩き込むとクリムを壁に叩きつける。
そして壁から落ちる直前に手刀を脳天に叩き込み、今度は床に叩きつけてバウンドした所を拳打で滅多打ちにし、怯んだ所に回し蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。
「モルフォ、歌で支援を。テーラは後方で攻撃だ」
指示を飛ばしてソウはマッハダッシュで突撃し、モルフォは歌による支援とパンテーラはリベリオの虚像によるガトリング砲を浴びせる。
「うわあああっ!!」
「終わりだギガヴォルトセイバー」
装甲を失ったクリムに攻撃を防ぐことは出来ず、弾幕を受けて動きを封じられている間に距離を詰めたソウはSPスキルの雷刃波を繰り出してクリムを両断した。
「がはっ!アートに…散…るっ!」
SPスキルを使う暇もなく2人の圧倒的な実力に押し潰されたクリムは自身の死に陶酔しながら消滅した。
「ふう、何とかENパックに被害が出る前に倒せて良かったですね」
『本っ当!!あいつバカスカ爆発させるんだもの!何時ENパックが爆発するからヒヤヒヤしたわ!!』
「スメラギのENパックは幾重ものセーフティによって安全性が高いと言ってもあまり過信は出来んからな…特に古い施設の物だからセーフティも古い物のはずだ。」
「とにかく戻りましょう。夢幻鏡で迅速に」
「ああ、助かる…お前には感謝しても仕切れん……ありがとう…」
「ソウ…」
「こんなにも長い間、俺の我が儘に付き合わせてしまってすまないな…」
謝罪するソウの手をパンテーラは優しく握り締めた。
「気にしないで下さい…ソウ…私にとっても“2人”は大切な人達でした。私も仇を討ちたいのです…そのためならどこまでもあなたに着いていきます。私の愛があなたの支えになりますから」
「そうか…戻るぞ…テーラ…モルフォ…」
「はい」
『ええ、ねえ…私の複製元についてまた教えてよ。』
過去の話は今のモルフォが誕生する前の話なので、知識としては知っていても実感がないのである。
自分が生まれた時点で酷い世界になっていたのでこれが当たり前でもあったのだが。
この辺りはマイナーズのコハク達と認識が変わらないのかもしれない。
「あまり大した話題はないがな」
ミッションを終えたソウとパンテーラはENパックを回収して基地に帰還したのであった。
「戻ったぞ、ENパックだ。」
「ありがとうお兄さん!これで温かいお風呂に入れるよ~。」
「特にお前達は生身の人間だからな。感覚を遮断できないのは不便だな…いや、それが普通…だったな」
過去の自分も寒暖差に参っていた時代があったので間違いなく今の自分がおかしいのだと思い直した。
もうこのおかしいはずの状態に慣れてしまったことにソウは自嘲したのであった。
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