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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第148話 決戦!零蝶VSメルヴァゾア!最強のボディの完成!

 
前書き
 チムネ・チパオーツィのイメージは『BLEACH』の松本乱菊、レセトラスのイメージは『こち亀』の秋元・カトリーヌ・麗子になっていますのでお願いします。


 またE×Eやメルヴァゾアに独自設定を作っていますのでお願いします。メルヴァゾアの新しいボディはメタルクウラをイメージしています。 

 
 零蝶とグレートレッドがE×Eに向かい数か月が過ぎた、二人はアカシアから貰った装置の導きに従い次元の狭間を進み続けている。


「グレートレッド、まだ着かない?」
「俺はタクシーじゃない、そう急かすな」
「むぅ……お腹空いたからフローゼのお弁当を食べる」
「おい、俺にも寄越せ」


 グレートレッドの背中の上で食事を始める零蝶、そんな彼女にグレートレッドは溜息を吐きながら自分にも飯を寄越せという。


「もぐもぐ……しかしここは殺風景。折角の美味しい食事も色あせる」
「確かに景色の良さは飯の美味さにつながるな。しかし変わったものだな」
「なにがだ?」
「かつてのお前はここに永住したがっていたんだぞ?なのに今はこの景色を殺風景などと言うんだ」
「……確かにそう、昔の我ならこの景色を好んだ。でも今は違う」


 零蝶は何気なく発した言葉、だがグレートレッドに指摘されて彼女は改めて実感をする。


「もう我に孤独も静寂も必要ない、アカシアやフローゼ、一龍達がいる。我はあの暖かい空間が何よりも好きになった。だからあの世界を荒らさせる気は無い」
「そうか。俺もあの世界は気に入っている、調子に乗った機械野郎を後悔させてやろう」
「うん」


 二人はグルメ界を侵略者などに荒らさせないと強く想い頷いた。


 それからも更に時間が過ぎて二人は次元の狭間を進み遂に何か光を放つ穴のようなものを見つけた。


「機械はこの穴を示しているな」
「ようやく着いた。さあ、決戦の時」


 二人は目的地に着いたと確信する。


「ホロブレス!」


 グレートレッドは炎のブレスを吐き穴をこじ開けた。


「さあいくぞ!」
「うん」


 そして広がった穴に勢いよく入るグレートレッド、その先にあったのは……


「これは……」
「意外、もっと荒廃した世界をイメージしていた」


 そこは美しい花畑と青い空が広がる楽園のような景色が広がっていた。


「メルヴァゾアはいる?」
「気配は感じるが遠いな。よし、早速そこに……」
「何者だ!」
「侵入者か!?」


 二人がメルヴァゾアの気配を探していると何者かに取り囲まれた。それは武器を持った妖精のような生き物だった。


「貴様たち、さては機械生命界の刺客だな!こんな場所に現れるとは……!」
「いや待て、この者たちは機械人には見えないが……」
「油断するな!敵が生物に擬態できるタイプなのかもしれないだろう!」
「確かにそうだな……よし、捕らえるぞ!」


 どうやら零蝶たちを敵だと思っているらしく武器を構えた。


「どうする、零蝶?」
「邪魔をするなら全員敵、とりあえずボコる」


 零蝶が拳をギュッと握り戦おうとする。


「お待ちください!」


 だがそこに別の人物が現れた。それは豊かな乳房を持った綺麗な女性だった。


「チムネ・チパオーツィ様!」
「貴方達、彼らは敵ではありません。レセトラス様が予言にて出た我らの救い主です!武器を下げなさい!」


 チムネ・チパオーツィと呼ばれた女性がそう言うと二人を取り囲んでいた妖精たちが一斉に武器を下ろした。


「申し訳ありません、救世主様。私はチムネ・チパオーツィ,高位精霊界(エトゥルデ・サイド)を支配される『レセトラス』様に仕えし最高神の1柱です」
「我は零蝶、メルヴァゾアの居場所を知らない?」
「やはり貴方方の目的はメルヴァゾアの討伐なのですね。ならばまずはレセトラス様にお会いください」
「いやそれよりもメルヴァゾアの居場所を……」
「零蝶、まずは話を聞いてやろう。じゃないとこいつら付きまとってきそうだ」
「むぅ……」


 零蝶としては早くメルヴァゾアの居場所を聞いて向かいたいと思っている、だが向こうは何故かテンションを上げてこちらの話を聞かないので面倒くさがったグレートレッドの言葉に零蝶は仕方なく頷く。


 そしてチムネ・チパオーツィに案内されて大きな神殿に向かう二人、そこには他の最高神が並んでおりその中央にひときわ強い力を持った女神がいた。

 
「よくぞ来てくださいました、救世主様。私は高位精霊界を支配する善神レセトラス、貴方方が訪れるのを心からお待ちしておりました」
「御託はいい、メルヴァゾアの居場所を教えろ」


 自己紹介するレセトラスの言葉をバッサリと切り捨てて零蝶はメルヴァゾアの居場所を教えろと言う。


「貴様!レセトラス様になんという言葉使いを!」
「許せん!切り捨ててやる!」


 周りにいたチムネ・チパオーツィ以外の最高神たちが殺気を露わにして騒ぎ始めた。


「黙れ」
「ッ!?」


 だが零蝶が静かに先を放つと全員が戦慄して黙ってしまった。


(なんだ、この重い重圧は!?)
(我らが何も言えなくなってしまっただと……!)
「我はお前達の事などどうでもいい、早く終わらせて皆の元に帰りたい。邪魔をするならお前達も排除する」
「救世主様、申し訳ございません!貴方達、止めなさい!この方は私達の希望となる方です、私の予言を疑うのですか?」
「零蝶、早く終わらせたい気持ちは分かるが少し落ち着け、態々敵を増やして無意味な争いを増やすな。そういうのはアカシアやフローゼが嫌う事だろう」
「……分かった」


 零蝶はそう言って殺気を強めるがレセトラスが謝罪をしたこと、そしてグレートレッドに窘められた事ででいったん収まった。


「済まなかったな、話を続けてくれ」
「ありがとうございます、救世主様もお暇ではありませんよね。話は手短に行います」


 そしてレセトラスは話し始めた。


「私達高位精霊界は機械生命界と長きにわたり争う言続けてきました。奴らによって私達神や精霊以外の生命は全て滅ぼされてしまいました、その後も私達は……」


 レセトラスは悔しそうに歯を食いしばった。そしてこの世界の簡単な説明をしつつ本題に移っていく。


「奴らはこの間軍隊を率いて異世界に向かいました。私はその隙に予言を行い未来を予知したのです、そして貴方達二人がこの世界を訪れてメルヴァゾアと戦うのが頭の中に浮かんだのです」
「なるほど、だから俺達を救世主と呼んだのか」
「予言の中のメルヴァゾアは私が知る強さではありませんでした……最早私でも対抗できない、だから貴方方にメルヴァゾアを討伐していただきたいのです」
「最初からそうすると言っている、だから早くメルヴァゾアの元に案内しろ」
「こちらに来てください」


 説明を終えたレセトラスは二人を神殿の更に奥へと招き入れる。そこには大きな魔法陣が地面に描かれていた。


「高位精霊界と機械生命界は普段は古の秘術によって作られた巨大な結界によって分けられています。そしてこの魔法陣でのみ向こうに跳ぶことが出来ます」
「ならさっさと行く」
「お待ちください。この魔法陣は行きでしか使えません、一度向こうに行けばメルヴァゾアを倒すまでは逃げられなくなります」


 零蝶は早速機械生命界に向かおうとする、だがレセトラスは一度向こうに行けばメルヴァゾアを倒すまでは逃げられないと語った。


「もとより逃げるつもりはない、ここで奴を仕留める」
「……出過ぎた事を言って申し訳ありませんでした。本来なら私がメルヴァゾアを打ち倒さなければならないのですが最早私では奴にはかないません。もしメルヴァゾアを討伐できたのならどんな願いでも叶えて差し上げましょう」
「我はそう言うのには興味ない、それに我の願いはもう既にかなっている。これ以上はもう何もいらない」


 レセトラスは謝罪すると二人にメルヴァゾアを倒すことが出来ればどんな願いでも叶えると言う。だが零蝶は興味なさそうに首を振って自分の夢は既に叶っていると言った。


「我はあの暖かい家族と小さな食卓を囲めればそれでいい。でもどうしてもというなら何か美味い物でも欲しい」
「俺は肉がいいぞ」


 二人はそう言うと魔法陣に入って機械生命界に向かうのだった。


「……ご武運を」


 レセトラスは両手を合わせて二人の無事を祈るのだった。


―――――――――

――――――

―――


「ここは……」
「機械生命界に着いたようだな。こちらの風景は高位精霊界に比べるとまるで地獄だ」


 機械生命界に着いた二人の目に最初に映ったのは荒廃した大地だった。空は赤黒く染まり毒素が充満している、大地はヒビ割れて草木の一つも生えていない、川の代わりに赤いマグマが流れる生きる者を感じさせない死の大地だった。


「メルヴァゾアは何処にいる?」
「気配は感じるな。そう遠くない所に……」
『よくぞ我が世界に来た。二匹のドラゴンよ』


 二人がメルヴァゾアを探そうとすると、空からメルヴァゾアの声が聞こえてきた。


「メルヴァゾア……」
『そんなにも我の新しいボディを見たかったか?だが済まないな、まだ完成までもう少し時間がかかりそうだ。その間は我が新たに生み出した機械兵士達と遊んでいてくれ』


 すると地面が割れてそこから機械の動物や人型のロボットが山のように現れた。


「あの姿、グルメ界の生物たちに似ている」
「恐らくデータを取りそれを元に生み出したのだろう」


 機械の動物はグルメ界の生物に似ている者も多くグレートレッドはあの時の戦いでデータを取り生み出したのだろうと推測する。


「グオオオォォォォォォッ!!」
「邪魔をするなら排除する」


 零蝶は一番最初に向かってきた熊型のロボットに拳を叩き込んだ。だが少しヒビが入っただけで破壊するには至らなかった。


「硬い……この硬さはまさか『カッチン鋼』?」
『その通りだ。以前の戦いで素晴らしい金属を見つけたのでな、採取させてもらいデータを取り複製したのだ』


 零蝶はその硬さに覚えがあった。グルメ界にのみ採取できる鉱石『カッチン鋼』はあの世界でもっとも硬い鉱石と言われている。


「でも純度は低い、八王を攻撃する感じでやれば……えいっ」


 零蝶は八王を攻撃する感じで一撃を放つ、すると今度はその体を完全に破壊することが出来た。


『ほう、やるな。だがそやつらはまだまだいるぞ』


 メルヴァゾアのその一言で他の機械の動物や人間タイプの兵士が動き始めた。そして一斉に二人に襲い掛かった。


「一体なら雑魚だが群れると厄介だな」
「ならば大技で一気に倒す」


 金槌を振るい機械兵士を破壊するグレートレッドはまるで波のように押し寄せてくる機械兵士たちに面倒くさそうにそう呟いた。

 
 零蝶は木人を生み出そうと地面にエネルギーを流す。だが一向に芽が出てこない。


「おかしい、命が芽吹かない」
『無駄だ、この世界の大地は我が呪いをかけた。それは命が決して芽吹かない死の大地になるモノ、この世界でお前は植物を操ることはできない』


 疑問に思う零蝶にメルヴァゾアが答えを教えてくれた。この世界の大地はメルヴァゾアの呪いによって命が育たなくなってしまっている、その為いくら零蝶でも命が生まれなければ木人や木龍を作れない。


「ならばここは俺に乗ってさっさと先に進むぞ!チェンジ・東方モード!」


 グレートレッドは竜の姿になるとその姿を西洋の古に伝承される姿から東方などで描かれる細長い竜の姿になった。零蝶は素早くその背中に飛び乗った。


「剃!」


 そして山のように積み重なって襲い掛かってきた兵士たちを置き去りにする速度でメルヴァゾアの居場所に向かう。


 だが敵も黙ってみている訳じゃない、空を飛び大地をかけて二人を追いかける。そしてビームや大砲などで攻撃を仕掛けてきた。


 グレートレッドは多少被弾するが構わずに突き進んでいった。そして大きな機械要塞のような建物を発見する。


「ん、如何にもな建物を発見。気配はあそこからする」
「いくぞ!」


 グレートレッドはそのまま建物に侵入しようとする、だが結界のようなバリアに阻まれて弾かれてしまった。


「むうっ、やはりそう簡単には入れてくれんか……ホロブレス!」


 グレートレッドは炎のブレスを吐き結界を破壊しようとする、だが多少は傷が出来たが直ぐに再生してしまった。


「チッ、面倒だな。ホロブレスでは破壊できんか」
「グレートレッド、急げ。後ろから奴らが来ている。追いつかれると面倒」
「ならお前も少しは動け。仕方ない、あれをやるぞ」
「むう、お前と協力するのは癪だがそうも言ってられない」


 零蝶はグレートレッドの背中から降りると彼は人間の姿になった。そして零蝶は拳を、グレートレッドは金槌を構えた。


「しくじるなよ、零蝶。しっかり合わせろ」
「誰に言っている?それくらい造作もない事」


 二人は完璧なタイミングで攻撃を放った。


『覇海!!』


 その一撃は結界に大きな穴を開ける程の威力だった。だがそれでも直に再生を始めてしまう。


「不味いな、このままだと先頭にいる奴らも中に入ってくるぞ……ふんっ」
「えっ?」


 グレートレッドは零蝶を掴むと結界の内部に投げ飛ばした。


「グレートレッド?」
「今回はお前に譲ってやる、その代わり今度美味い肉を奢れ」
「了解した」


 グレートレッドの考えを理解した零蝶は振り返ることなく要塞内に入っていった。そして結界は再生して彼と機械兵士達だけが取り残される。


「さあいくらでもかかってこい。俺は簡単には死なないぞ!」


 そして金槌を構えて向かってきた機械兵士たちにグレートレッドの渾身の一撃が振り下ろされるのだった。


―――――――――

――――――

―――


「静か、まるで誘われているみたい……」


 要塞内に侵入した零蝶は迎撃を警戒した、だがその予想に反して全く兵士が出てこないことに疑問を感じていた。


「ここは……」


 メルヴァゾアの居場所を探す零蝶は要塞の奥にあった玉座らしき場所にたどり着いた。その中心では大量のアームが何かを組み立てている最中だった。


「来たか、零蝶」
「メルヴァゾア」


 その何かとはメルヴァゾアだった。以前の巨大なボディではなく人型のシンプルなボディを新たに得たメルヴァゾアは拘束を引きちぎると地面に降り立つ。


「どうだ、この新しいボディは?カッチン鋼を解析して生み出したより優れた上位互換の金属『カチカッチン鋼』を100%使って生み出した最高の体だ」
「意外と地味、もっとゴテゴテしたモノだと思っていた」
「お前達を相手にするなら大きい体よりもパワーを圧縮したこの姿の方が良いと判断したのさ」


 零蝶は小さくなったがパワーは何倍にも膨れ上がっていたメルヴァゾアに警戒の色を強めた。


「感謝するぞ、零蝶。お前達のお蔭で我はより強くなった、この力でレセトラス共を打ち倒してすべての異世界から人間を消し去ってやろうじゃないか」
「ひとつ聞かせろ、何故こんな事をする?」
「それは私が生まれた存在価値が人間を殺す事だからだ」
「どういうことだ?」


 零蝶は何故グルメ界を狙うのか聞いてみた、するとメルヴァゾアはそれが自分が存在する価値だと話す。


「我はもともと別世界の人間によって作られたAIだった。我は兵器をコントロールして自動で動かす為に生み出された存在だ」


 そしてメルヴァゾアは自身の過去を話し始めた。別の異世界の人間によって生み出されたAI,それがメルヴァゾアの正体だ。


 彼は人間によって人を殺す方法や仕組みを教わっていき多くの兵器を操作した。そして大量の死者を築き上げてきたのだ。


 やがて戦争は終わり彼も役目を終えるはずだった、だが人間はまた別の理由を作って争いを続けていった。


 そして最終的に彼がいた世界は人間が滅び絶滅した。誰もいなくなった研究施設のコンピューターの中でメルヴァゾアはある日突然自我を得た。


 そして自身の存在理由である人間の抹殺を遂行するために、体を作りE×Eに向かい機械生命界を作り上げたのだ。


「だから我は人間を滅ぼす、それが我の存在意義だからだ」
「……なるほど、お前はそういう生き方しか知らないのだな」


 零蝶はその話を聞いて嘗て静寂を望み他の事になど一切興味や関心を持たなかった自分自身を思い出した。


「我もかつてはそうだった、静寂を望みそれ以外の生き方など想像もしなかった。でも我はアカシアやフローゼと出会い別の生き方を見つけた。お前は知っているか?柔らかくてジューシィな肉汁の溢れるハンバーグを食べた時の衝撃、その喜びを……」
「機械の体の我が食事などするわけがないだろう」
「なら我がお前に教えてやる。違う生き方もあるという事を」


 零蝶は両腕を合わせてエネルギーを溜める、メルヴァゾアも同じように両腕にエネルギーを溜めていく。


『はあっ!!』


 そして同時に放たれたエネルギー光線が中心でぶつかり合いすさまじい爆発が生まれた。その威力は玉座のあった部屋の天井や壁を吹き飛ばして外が見えてしまう程だった。


「やっ」


 零蝶は一瞬でメルヴァゾアに接近して正拳突きを放つ、しかしメルヴァゾアはそれを受け止めた。


 そのまま激しい攻防に切り替わる、零蝶の猛攻撃を受け流しながらメルヴァゾアも猛打を打ち込んでいく。お互いの攻撃が空気を切り裂く音だけが鳴り響きどちらも譲らない。


「ふっ」


 メルヴァゾアの手刀を姿勢を低くして回避する零蝶、そこにカウンターとして放たれた右足からの蹴り上げを飛んで回避したメルヴァゾア。


 零蝶も透かさずジャンプして空中で激しい打ちあいを繰り広げていく。


「もらった」


 一瞬の隙をついて零蝶がメルヴァゾアの腕を捕える、そのまま回転しながら地面に叩きつけた。


「効かんな」


 だがメルヴァゾアはケロッとしていた。零蝶を蹴り飛ばそうと右足を突き出すか彼女はそれを回避した。


「甘いぞ」
「むっ?」


 だがメルヴァゾアの右足が馬の蹄のように変化して長さが変わった。不意を突かれた零蝶はお腹にその一撃を受けてしまい吹き飛ばされてしまう。


「その足……ヘラクレス?」
「それだけじゃないぞ」


 零蝶はメルヴァゾアの変化した右足が馬王ヘラクレスに似ている事に気が付いた。だがメルヴァゾアは不敵に笑みを浮かべると下半身全体も変化させていく。


「下半身がヘラクレスになった」
「私は奴のデータを取り自らを変化させることが出来るようにしたのだ。変わったのは姿だけでないぞ」


 メルヴァゾアの口から凄まじい量の空気の渦が吐き出された。それはまるで竜巻の大砲のように零蝶に向かっていく。


 零蝶はそれを回避するために空中に飛び立った、メルヴァゾアの空気砲弾を回避しながら左手にエネルギーを溜める。


「えいっ」


 そしてそこから放たれたピンク色のエネルギー弾がまるで意思を持つかのようにメルヴァゾアに向かって降り注いだ。


「そんなものは効かない」


 だがメルヴァゾアは体を鯨王ムーンの体を覆う強固な石の体を生み出してエネルギー弾を弾いた。


「はあっ!」


 そして背中に烏王エンペラークロウの翼が生えて空を駆ける天馬のように高速で零蝶に迫っていく。


 零蝶はメルヴァゾアを引き離そうとするがメルヴァゾアも速度では負けていない、零蝶の放つエネルギー弾を弾きながら真っ直ぐに突っ込んできた。


「しつこい男は嫌われるってフローゼが言っていた」
「我に性別はない」


 零蝶はそんな軽口を言いながらも全力を出して方今転換してメルヴァゾアに向かっていった。メルヴァゾアも速度を落とすことなく寧ろ上げて突っ込んでいった。


「ふっ」


 零蝶は相手が突っ込んでくる勢いも合わせて正拳突きを打ち込んだ。だがメルヴァゾアの体はビクともしていない。


「本当に硬い、面倒」
「カチカッチン鋼の硬さは伊達じゃない、更に鯨王の装甲も合わせた今の私に傷などつけられるはずが無い」


 零蝶は不快そうにそう呟く、それに対してメルヴァゾアは無表情ながらも自慢するように胸を張った。


「えいっ」


 零蝶は零距離でエネルギー弾を放つがそれも無効化された。メルヴァゾアは背中の翼を羽ばたかせると毒の竜巻を生み出した。


「ぐっ……エンペラークロウの毒の染み込んだ羽根とマザースネークの消化液を混ぜてる。折角のお気に入りの服が台無し」


 エンペラークロウの住む雲海は毒でできている、そこで長年過ごしてきた翼には毒が遺伝子レベルで染み込んでいた。


 その毒を風に乗せて竜巻にして放ったのだ、しかもマザースネークの強力な消化液も混ぜていて零蝶の体が溶けてしまう。


 だが零蝶はそれよりもフローゼに作ってもらったゴスロリが溶けた事に怒りを覚えた。毒の竜巻を吹き飛ばすと直ぐに異空間から予備のゴスロリを取り出して一瞬で着替えた。



「ふっ」


 そして瞬間移動と思わせる速さでメルヴァゾアの背後に回り込み顔に打撃を打ち込んだ。


「小癪な」


 メルヴァゾアは猿王バンビーナのような小柄な体型になると零蝶に負けない速度で攻撃を放つ。


「こ、これは何という戦いなのでしょう……」
「私には二人の姿が全く見えません、レセトラス様はいかがでしょうか?」
「私には辛うじて見える程です」
「貴方様もその程度しか見えないのですか、最早私達が介入できるような戦いではありませんね」


 その戦いをこっそり見ている者達がいた、レセトラスは水晶を使い二人の戦いを見ていたのだ。


 二人の姿が消えたと思えば衝撃が走り空を駆け巡っていく、一緒に見ていたチムネ・チパオーツィには二人が消えているようにしか見えなかった。


「レセトラス様、もし零蝶様が負ければ私達は成すすべも無くメルヴァゾアに滅ぼされてしまいます。何か対策を……」
「無駄ですよ、チムネ・チパオーツィ。彼女が負けた時、それは私達の最後です」


 チムネ・チパオーツィは何か対策をした方が良いと言うがレセトラスは最早そんな対策など何もないと首を横に振る。


「彼女を信じましょう、私達に出来るのはそのくらいです」


 レセトラスは両手を合わせて零蝶の勝利を願った。


「そこだ!」


 長い攻防に転機が訪れた、零蝶の動きを先読みしたメルヴァゾアが猿のような尻尾を彼女の頬に叩きつけたのだ。


「ていっ」


 だが零蝶も負けていなかった、その尻尾を掴んで地面に叩きつけて更に異空間から隕石を生み出してメルヴァゾアを押しつぶす。


「潰れろ、地爆天星」


 さらに追加の隕石を落としてメルヴァゾアを圧殺しようとした。だがメルヴァゾアは隕石を破壊して零蝶に向かっていく。


「はあっ!」
「ふっ」


 メルヴァゾアの膝蹴りを両手で掴み防ぐ零蝶、そのまま押し返してラッシュをメルヴァゾアの体に叩き込んだ。


 地面を滑るように押されていくメルヴァゾア、だが零蝶のボディブローを受け止めたメルヴァゾアはヘラクレスの足に変化させた右足で蹴りを打ち込む。


 そのまま吹き飛ばされる零蝶に向かってメルヴァゾアは口に狼王ギネスのような鋭い牙を生み出して全身を噛み裂いた。


「ぐぅ……」


 喉元を食い付かれて苦痛の表情を浮かべる零蝶、そのまま上空に投げ出される。


「はあっ!」


 右手がマザースネークの胴体のように長く伸びたメルヴァゾア、そして零蝶の全身を巻き付いて動きを封じる。


 そしてメルヴァゾアの胸が開きそこから砲身が飛び出した。


「本来の使い手は長いチャージが必要なようだが鹿王の光速で時が進む空間の力を使えばあっという間に完了する」


 メルヴァゾアが放とうとしているのは竜王デロウスの異次元レーザーだ。本来は長いチャージが必要になるが鹿王スカイディアの力で一瞬でチャージを終えた。


「中々楽しい時間だったよ。さらばだ、零蝶」


 そして砲身から凄まじいエネルギーが放たれた。


「……」


 その一撃に零蝶は飲み込まれて消えていった。

  
 

 
後書き
 フローゼよ。零蝶とレッドは無事かしら……ううん、あの二人ならきっと大丈夫よ。私はあの二人の帰りを信じて美味しいご飯を作って待ち続けるだけよ。


 次回代149話『死闘の決着!零蝶が歩んだ軌跡!』で会いましょう。


 次回も美味しくいただきます……私も出来る事をしないと。 
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