金木犀の許嫁
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五十九話 母方の祖母その八
夜になるとだ、幸雄と真昼が家族に言った。
「私達もです」
「許嫁同士になりました」
「それで将来はです」
「一緒になります」
「おめでとうございます」
佐京が二人に微笑んで応えた。
「これからお幸せに」
「そうなる様に努力します、それでなのですが」
幸雄は佐京の言葉に微笑んで応えた。
「今度はです」
「白華がですね」
「伊賀の方でお見合いをします」
「そうですね、では皆で」
「伊賀に行きましょう、私もです」
幸雄もというのだ。
「服部家の方とお話をしますので」
「だからですね」
「伺わせて頂きます、ただ」
「ただといいますと」
「実はこれといった大事なお話はなく」
そうであってというのだ。
「世間話をして一緒にお食事をする位です」
「そうなのですか」
「ですが定期的にお会いすることが」
このこと自体がというのだ。
「大事でして」
「幸雄さんも伊賀に行かれますか」
「そうしてきます、かつては宿敵同士でしたが」
「真田家と服部家は」
「服部家は幕府に仕えていましたので」
徳川家康の家臣としてだ、その為幕府と戦った真田家は服部家とは宿敵同士と言っていい間柄であったのだ。
「そうでした、ですが今は」
「親戚同士ですね」
「明治維新の時に和解しまして」
そうしてというのだ。
「それで、です」
「今はですね」
「定期的にお互い伊賀と神戸にお邪魔しまして」
「お会いしていますね」
「そうしています」
まさにというのだ。
「そうなっています」
「左様ですね」
「明治維新で、ですね」
真昼は幸雄の横から言った。
「全部変わりましたね」
「はい、江戸時代の間はです」
「大坂の陣の後は」
「真田家は十勇士と共に薩摩に逃れ」
「そこで暮らしていましたね」
「名前を変え薩摩藩の藩士として」
その立場でというのだ。
「そうしていました」
「そうでしたね」
「それが維新になり」
そうしてというのだ。
「それで、です」
「それからはですね」
「名前を戻し八条家に招かれ」
「八条財閥に入って」
「神戸で暮らす様になり」
八条家のあるこの街にというのだ。
「それで、です」
「そのうえで、ですね」
「服部家とも和解しまして」
「それで、ですね」
「今はです」
まさにというのだ。
ページ上へ戻る