生國魂神社の銅像
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第五章
「コントみたいにされてもや」
「動かれないですか」
「銅像やから痛みも何も感じんからな」
だからだというのだ。
「全くや」
「それでは動かれないですか」
「自分で動くわ」
そうするというのだ。
「今みたいにな」
「そうなんですね」
「そや、しかし自分等から見て古いコントやろ」
銅像は顎に右手をやり首を傾げさせて話した。
「銅像のやつなんて」
「最近動画サイトにもありますよ」
瞳があっさりとした口調で答えた。
「それで私達も観て面白いので」
「知ってるんかいな」
「私が見付けて二人に紹介しました」
瞳はそうしたと話した。
「面白いからって」
「そうなんか」
「はい、そうです」
その通りだというのだ。
「それでやろうともしました」
「されても痛くないが鬱陶しい」
だから嫌だとだ、銅像は答えた。
「それで止めたんや」
「そうでしたか」
「それでや」
銅像はさらに話した。
「自分等の疑問は解けたな」
「はい、動くのは銅像ですね」
「そして私が誰か」
「織田作さんですね」
「身体がなくなったけどな」
そして今は幽霊だがというのだ。
「ずっと大阪におって親しんでるわ」
「そうですか」
「あちこち行って食べて」
そうもしてというのだ。
「楽しんでるわ」
「そうなんですね」
「やっぱり大阪はええわ」
銅像は笑って話した。
「ほんまな」
「大阪お好きですか」
「大好きや」
蓮華に答えた。
「ほんまな」
「そうなんですね」
「生まれ育った街やからな」
それ故にというのだ。
「ずっと作品に書いてな」
「今もですね」
「おるわ」
そうしているというのだ。
「楽しくな」
「そうしてるんですね」
「これからもな」
今だけでなくというのだ。
「おるで」
「そうですか」
「ああ、大阪大好きや」
またこう言ったのだった。
「心から言えるわ、この辺りも好きで難波もな」
「お好きですか」
「それでこの神社も好きやし」
「銅像にも入られますか」
「まさか自分が銅像になるとは思わんかった」
その銅像を動かして笑った。
「そうや、しかしな」
「嬉しいですか」
「私のことずっと覚えてくれるなんてな」
「忘れないです」
絶対にとだ、美咲は答えた。
「私織田作さんの作品好きです」
「あっ、読んでくれてるか」
「色々な作品を」
「そうしてくれてるんやな」
「はい」
正直に答えた。
「そうしています」
「それは嬉しいな、私はどうもマイナーで」
「作家さん達の中で」
「文豪でもないしな」
「いえ、文豪に入っています」
美咲はそこは強い声で話した。
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