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生國魂神社の銅像

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第四章

「あんたが見た通りに」
「ええ、今さっきね」
「見間違いじゃなくて」
「確かにね」
「だったらね」
 瞳は美咲の話を聞いて提案した。
「銅像にお水かけてタライぶつけてね」
「コントみたいに」
「そう、そうしたら銅像動くんじゃないかしら」
「たまりかねて」
「鳴かぬなら鳴かせてみせよでしょ」
 瞳は真顔で言った。
「動かないのならね」
「動かせてみせよなのね」
「不如帰ね」
「豊臣秀吉さんね」
「大阪だしね」
「秀吉さんっていうと大阪だし」
 大坂城を築いて居城にし今の大阪の基礎を築いたからだ。
「ここはね」
「秀吉さんでいくのね」
「そうしましょう」
「じゃあお水用意してタライも出して」
 蓮華は早速乗った。
「あと粉とか色々出して」
「昔のコントみたいにやってみましょう」
「それなら銅像も動くわね」
「それで動くか」
 だがここでだった。 
 自分のところに来た三人にだ、銅像が言ってきた。
「アホか自分等」
「あっ、喋ったわ」 
 水を入れたバケツを持ったままだ、蓮華は言った。後の二人もそれぞれバケツを手にしていて今にもだ。
「銅像が」
「あんたの言った通りね」
 瞳は美咲に言った。
「喋べったわね」
「しかも今動いたわ」
 美咲は銅像の手が動いたのを見た。
「ちゃんとね」
「そうよね」
「私見間違えてなかったわね」
「これが幽霊の正体ね」
「そうよね」
「そや、何か噂になってるな」 
 銅像は台から下りて三人の前に来て言ってきた。
「私はこの通り動けるわ」
「いや、織田作さんの銅像が動くとか」 
 蓮華はその銅像を見て言った。
「嘘みたいね」
「いや、それがね」
 美咲がいささか驚いている蓮華に話した。
「幽霊出るっていうお話あったの」
「織田作さんの?」
「お亡くなりになった直後からね」 
 昭和二十二年一月十日に取材先の東京で亡くなっている。
「結核だったけれど」
「その頃助からない病気で」
「それでお亡くなりになったすぐ後からね」
「そうだったのね」
「そや、私は幽霊になった」
 銅像自身も語った。
「それで大阪中を歩いて楽しんでるけれどな」
「銅像にも入られていますか」
「そや、自分の銅像やしな」 
 その為にというのだ。
「時々な」
「銅像に入られて」
「動くこともあるわ」
 そうだというのだ。
「今みたいにな」
「そうでしたか」
「そや、ただ自分で動くことはしても」
 美咲に断りを入れた。 
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