だからってなんだよー 私は負けない
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新年を迎えて、例年通りの割と質素なお料理だった。食べた後もいつものよう神社に出掛けた。お母さんも私も去年と同じプリーツスカートだった。
違うのは、お母さんが出会う人に挨拶をするのだが、何となく相手の反応がそっけないと感じたのは、私の思い過ごしなんだろか。どうも、皆からは、妬みとかひがみに近いものがあるんだと感じていた。でも、竹井さんと出会った時には、違った。笑顔で
「まぁまぁ 紗栄子さん 去年はいろいろと大変だったでしょ? もう 落ち着いた? 丁寧に年賀状まで頂いて うちもね 紗栄子さんが大家さんになって良かったわーって思っているのよ ありがとうね 庄爺の時はね 顔を合わすたんびに 賃貸料を上げようかと思っているって 脅しをかけるのよー 渋ちんだったからねー」 確か、竹井さんは、庄爺から田畑を借りていたのだ。お母さんが何枚かの年賀状を書いているのは、見ていたのだけど・・・
家に帰って、お母さんに聞くと 「賃貸料をね みんな 今までの1/3にしますって お知らせしたの だって そんなに要らないでしょう? ただね 固定資産税もあるし、農地の改良組合とか河川、畦道の補修なんかにもお金出さなきゃあなんないし、この家もあっちの家も手入れしなきゃぁなんないし 幾らかはね、残るようにしなきゃーね」
「ふ~ん ただ貰うだけって訳にいかないんだー」
― ― ― * * * ― ― ―
2日のお昼過ぎに、篠田の社長さんが訪ねて来て
「これ 三太郎の鯖寿司と燻製鯖寿司だって 珍しいだろう お土産 さっき 皆でお昼ご飯に行ってきたんだ それに、賃料 下げてくれたんだな 感謝」
「あっ ありがとうございます 今晩でもいただきますわ」
「うん わかさぎのてんぷらもって思ったんだが 今日は採れなかったみたい この数年 減っているみたいだなー」
「そーなんですか でも いつもいつも気に掛けてくださって ありがとうございます」
「ふふっ 社長さんは お母さんのこと お気に入りなんだものねぇー ねぇ 誘われたことがあるって ほんと?」
「なに言い出すのよー すぐりぃー 大昔のことよ! まだ 食堂やってる頃ね お店の常連さんでご贔屓にしてもらってたから・・・ だって あの時はお母さんも 若かったし、この美貌でしょ ふふっ 何人かから声掛けられたわ!」
「そーだよ あの時は この辺りのみんなのアイドルだったんだからー で、店を閉めた時 俺がウチに強引に引っ張ったろー ずるいって みんなから非難されたんだからー」
「お母さんがアイドルだったって 何となくわかるぅー だから おばさんも皮肉っぽく 言うんだぁー」
「まぁな 昔のことなのに、しつっこいんだ ところで そこの畑の向こうの一角の雑木林 貸してくれないだろうか? すぐりちゃんにも言ったんだけど、原木椎茸を増やそうと思っちょるだよー」
「その話 すぐりからも少し聞いてますけど どうぞ使ってくださいな すぐりもお世話になっていますから 今さら賃料は不要ですから」
「お母さん! たらぁー 社長さん その代わり 条件があるの あそこの隅の方に 橘の木があるのよ その木と1本だけ 小さいのでいいの椎の木を残してほしいの 私 ちょこちょこと葉っぱとか実を採りたいの」
「おぉ それっくらいなら・・・ じゃぁ 早速 49日が過ぎたら手を加えさせもらうよー」
「うぅー じゃぁ 私 是が非でも 売り先 広げなきゃあーね」
「そーだよ 社長 頼むぜ!」
「なんやー その 社長って・・・やめてぇーなあー」
「何でよー 貫次なんかもな すぐりって呼び捨ては気が引けるからって 時々 社長ってゆうとるでー」
「それは あいつは おちょくっとるんやー」
「そんなことは無い 今日もな 貫一が すぐりちゃんのこと えろぉー褒めとったでー すぐりは偉い 賢いし、思いっ切りが良くて度胸がある 女の子にしておくのは惜しいって 残念ながら、可愛すぎるんだよなーってさ」
「へっ 貫一兄ちゃん そんな風に思ってくれてるんだー・・・私もね 小さい頃から すごく気に掛けてくれていて、優しいから大好きなんだーぁ」
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