だからってなんだよー　私は負けない

　私が、竈のすすを掃除していると、知らない間に先生が立って居て

「わっ　あわわっ　もぉー　びっくりするやんかー」

「いや　声を掛けたつもりなんだけどー」

「聞こえんかった!　いつ帰ってきたん?」

「今　その脚で・・・」

「それは　私に真っ先に会いたいから?」

「まぁー　そんなとこかな　これっ　卵のキッシュ　お土産」

「ありがとう」と、私は懐かしくて先生に抱き着こうとすると

「おっとっとー　待った!　すぐり　すすだらけやんかー」

「あっ　そーかー　けど　先生の方から、抱きしめてきて　逢いたかったよー　とかの言葉を何故　君は言えないんだ!」

「言えるか!　そんなの・・・まだ・・・」

「まだ?」

「いや　そのぉー　そうだ!　すぐりが送った　みかんの木　清音叔母さんがすごく喜んでいたよ　お正月らしくって　すぐりは気が利く娘だってっ」

「でしょぉー　あれは、橘って木なんだ　実もみかんより少し小振りでょ?　食べても酸っぱいと思うよ　そこの雑木林の端っこにあるの」

「なるほどね　そこも・・・すぐりのものなのか?」

「ううん　あそこはお母さんの・・・でも、篠田の社長さんが借りて　椎茸の栽培を広げるんだって」

「はぁ　椎茸ねぇー・・・」

「先生　私ね　パソコン買おうと思うの　ほらっ　画像とか　いろいろと　スマホだと　画面も小さいし・・・」

「そうだね　授業でも使うから・・・」

「アドバイスは?」

「そーだな　この辺りは・・・家電の量販店も無いから、通販でいいんじゃぁ無いのか　ジョーシンとかヤマダとか・・・最近は、取り付けの際も親切にやってくれるよ」

「ふ～ん　その程度かー　先生　あんまりパソコンのこと詳しく無いんだね」

「まぁな　乗り遅れているかもー　あんまり　興味無かったからー」

「ふ～ん　じゃあー　アダルトサイトとか女の子の裸とか見て無いんだ」

「なんで　すぐりが・・・そんなの知ってるんだ?」

「だって　みんな　普通に知ってるよー　私　パソコン無いから、知らないんだけど　友達は見るんだってー　男と女の人がすごいことやるんだってね　勉強になるってー」

「うううー　何の勉強してるんだー」

「そんなの　しょーがないよ　今は・・・　大人が悪いんだよ　そーいう社会なんだからー　ねぇ　先生は　そーいう　経験あるの?　女の人と」

「お前なぁー　それが　先生に聞くことかぁー?」

「わぁー　無いんだぁー　ふふっ　あのね　勉強しといてね　私と　するまでに」

「・・・何　言ってるんだよー　何で　すぐりと・・・」

「そんなに　動揺しなくていいよ!　ちょっと　そうなればって思っただけ　でも　私　嫌じゃぁないよ　今でも・・・」

「ばか!　からかうんじゃぁない　ぼっ　僕は君のこと　生徒と先生の・・・まあ　友達程度に・・・仲のいい・・・」

「私は・・・もう　ちょっと　違うってことを知っておいて欲しいよ!　だって　抱いて寝てくれた初めての男なんだからー」

「お前なぁー　あれは　たまたま・・・だよ」

「いいの　いいの　弁解しないでも　私は　後悔してないんだからー」

「あのね　変な風に言うのって　よさないか?　で　ないと　君との関係がおかしくなる」

「わかった　先生って　真面目な人なんだね」

「そらぁー　まだ　ちゃんと　先生を続けたいからね」

「ねぇ　晩御飯食べて行かない?　私がつくるから」

「そうだなー　いや　帰るよ　のめり込みそーだから」

「何よ!　その　のめり込みそーって　そーいうのって　よさないか?　のめり込むのが何が悪いん?」

「まぁ　その　生徒の家でってー　社会的に・・・」

「そーゆうのって　嫌いよ!　先生　私な、家も貧乏で、小さい頃　保育園とか小学校に入った頃　いつも同じような服　着とったんやー　だから、みんなから臭い、寄るなとか言われて、いじめられとった　世間って・・・みんなそんな風に見るんやなって、陰で泣いてたわー　今度もそう　周りからは、庄爺から財産を騙し取ったみたいに悪く思われて・・・ひがみ半分やろけど・・・　そやから、世間とか社会とかに　負けへんわって思うようになったの　だからってなんだよー!　ってな　世間は世間やー　私は私」

「そうか　それで　すぐりは強いんだな　僕も見習うことがあるよ」と、頭を撫でてくれた。私は、まだ　先生にとっては　その程度なんだ・・・いつになれば、もう少し進むんだろうか