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俺様勇者と武闘家日記

作者:星海月
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第3部
グリンラッド〜幽霊船
  風変わりな三賢者


「この変化の杖は、あんたの弟子が作ったものだ。二度と会えないかも知れないあんたのために、この杖を渡すよう頼まれたんだ」

 その後。本来の目的を果たすため、私たちはマックベルさんに変化の杖を渡した。

「……そうか。この杖は、エドが作ったんじゃな」

 マックベルさんは、ユウリから変化の杖を受け取ると、感慨深げに杖を眺めた。

「昔、わしが一度ピチピチギャルになりたいと言ったら、いつかわしのために姿を変えられるアイテムを作ってみせると意気込んどったな。あいつめ、未だにその約束を覚えていたとはの」

「メチャクチャ動機が不純じゃねーか!」

 ナギのツッコミに、思わず頷く私。おそらく皆の胸中も同じだろう。そんな私たちの思いなど知る由もなく、マックベルさんは顔を上げる。
 
「うむ。わが弟子の思い、確かに受け取った。ならばお前たちに、何か礼をせねばならないな」

 そう言うとマックベルさんは、くるりと私たちに背を向けると、家の中へと入ってしまった。どういうことかと顔を見合わせる私たち。しばらくして、なにやら布に包まれた箱を持って再び現れた。

「……なんだそれは?」

 怪訝な顔で問うユウリに、マックベルさんは半ば強引にその包みを押しつけた。

「これは昔、とある海賊共から手に入れたアイテムでな。使うと金銀財宝の在り処を教えてくれるそうじゃ」

 金銀財宝? そんなおいしい話があるのだろうか?

「じいさん。いくらなんでも胡散臭すぎだって。そもそもなんでそんなのをあんたが持ってんだよ?」

 ナギもまた、猜疑心に満ちた目でマックベルさんに尋ねる。けれどマックベルさんはあっけらかんと言い放つ。

「昔、船旅をしていたときに海賊どもと縁があっての。海の魔物を退治したときに礼としてもらったんじゃ。まあわしは、財宝なんぞに興味なかったからの。だからお前らみたいな欲深いガキどもにやったんじゃ」

「いちいち腹の立つじいさんだな」

 口をへの字に曲げながらナギが呟く。

「ふん。俺にはあんたが三賢者だとはどうしても思えない。誰がどう見てもただのエロジジイだ。もしあんたが本当に三賢者だと言うなら、何か証拠くらい見せろ」

 どっちが年上なのかわからないほど高圧的な態度を見せるユウリに、マックベルさんの眉が跳ね上がる。

「本当に清々しいくらいクソ生意気なガキじゃな。わしが賢者でなければぶん殴ってたところじゃわい」

「ごめんなさい! ユウリちゃんは口は悪いけどちゃんとした勇者なんです! 大目に見てあげてください!」

 珍しくユウリのフォローをし、頭を下げるシーラ。同じ賢者の先輩を目の前にして、萎縮してるのだろうか?

「むう。後輩にそこまで言われたら仕方ないのう」

 その言葉に、シーラはハッと気づく。

「後輩って……。おじいちゃん、あたしが賢者だってわかるの!?」

「うむ。まあ、なんというか、わしと同じ『ニオイ』を感じるんじゃよ」

「ええ〜!? おじいちゃんと同じ匂い!? まさか加齢臭じゃないよね?」

「シーラ、お前それ本人の前で言うなよ……」

 嫌そうな顔をするシーラに、呆れた顔でツッコミを入れるナギ。マックベルさんは話を続ける。

「お前さんの魔力は、二十年前のわしに匹敵するほど強い力を持っておる。わしは元々魔法使いじゃから攻撃呪文の応用は得意じゃが、お前さんの魔力は……、攻撃と回復、両方とも応用が利くやも知れんな」

「応用? もしかしてたまにユウリちゃんが使うようなことかな?」

 シーラの言うユウリの応用とは、ベギラマの火力を弱めたり(ナギに対して)、仲間全員を移動させるルーラを自分一人だけを対象にしたり、同じく仲間全員にかけるアストロンを自分だけにかけたりとか、そう言うことだろうか。

「ふむ……。勇者に会うのは初めてじゃが、お前からは大した魔力は感じないのう。きっと器用貧乏なだけじゃろうな」

「は!?」

 その言葉が癇に障ったのか、更にユウリの顔が不機嫌になる。

「あんたこそ、三賢者の肩書きよりエロジジイを名乗るべきだろ」

「何を言うか! ならばお前さんのようなクソ生意気なガキンチョには、少しお灸を据えてやらねばならんな!!」

「何!?」

 マックベルさんは、動揺するユウリの前で手を突き出すと、素早く呪文を唱えた。

「メラゾーマ!!」

「なっ!?」

 マックベルさんの手のひらから、彼の上半身ほどの大きさの火球が生み出される。そしてそのままマックベルさんは、ボールを投げる要領でその火球をユウリに思い切りぶちかましたでないか。

 ゴオオアァァァァッッ!!

「ユウリ!?」

 火球はユウリの前で炸裂し、天までとどくほどの火柱を上げて燃え上がった。火の壁の向こう側には、ユウリらしき人影がぼんやりと浮かび上がっている。

「ユウリちゃん!!」

「嘘!! やだ!! ユウリ!!」

「駄目だよミオ、近づいちゃ!!」

 火柱の前まで駆け寄ろうとする私を、ルークが腕を掴んで引き止める。だけどこんな酷いことをしてるのに、呪文を放った当のマックベルさんは、ケロっとした顔でその様を眺めているではないか。

「マックベルさん!! 今すぐあの火を消してよ!!」

 血の気が引く思いで私が懇願するが、マックベルさんの口が動くより早く、ルークが私の方を小突いて来た。

「ミオ、あれ……」

 ルークの視線につられるように私も視線を向けると、そこには炎に囲まれていたはずのユウリが平然とそこに立っていた。

 ただ一つ違うのは、さっきまで身につけていた防寒用の上着がなくなっており、普段の軽鎧姿になっていることだ。

「ユウリ!! 大丈夫なの!?」

「……ああ。燃えたのは上着だけだ」

『え?』

 狐につままれたような表情の私たちに、ずっと静観していたマックベルさんが堂々と胸をそらす。

「見るがいい!! 今のはわしが長年の研究で改良した、対象者の衣服を一枚だけ燃やすことのできる呪文じゃ!」

『は!?』

「やっぱりエロジジイじゃねーか!!」

 唖然とする私たちに、ナギのツッコミが入る。

 いやでも、これって十分すごいことだよね!?

「すごいよおじいちゃん!! メラゾーマをあんなふうに応用するなんて!!」

「ほっほっ。もっと褒めるがいい」

 尊敬の眼差しで見つめるシーラを背に、マックベルさんは鼻高々だ。

「落ち着けシーラ!! いくらすごくても、変態っていう肩書一つでプラマイゼロになるんだぞ? いいのかそれで?」

 ナギのもっともな指摘にシーラは我に返ったように、

「ゔっ!? そ、それでも賢者だし……、でも……、うーん……」

 と、何やらブツブツ呟くと、頭を抱えて唸ってしまった。

 そして一番の被害者であるユウリはと言うと、上着を燃やされてしまったせいか、寒さに耐えきれずガチガチと歯を震わせていた。

「大丈夫? ユウリ」

「どう見ても大丈夫なわけないだろ。あのクソジジイ、変態なだけでなく性格も歪んでやがる」

 マックベルさんを睨みつけるユウリの目には、明らかな敵意が感じられた。

「寒いなら、私の貸そうか?」

「余計なお世話だ! それよりジジイ、『オーブ』って知ってるか?」

 唐突に尋ねられ、キョトンとするマックベルさん。

「おうぶ……? はて……、親が子供を背負うやつなら知っとるが」

「それは『おんぶ』だ! 賢者なら、不死鳥ラーミアを蘇らせることの出来る宝珠のことくらい、知ってるんじゃないのか?」

「ふん! 宝珠なら最初からそう言わんかい! ハイカラな物言いしおって」

「まさか本当に知っているのか?」

「いや、知らん」

「……」

「ストップ!! ベギラマを唱えるのだけはやめて!!」

 今にもベギラマを放たんとするユウリを、私は必死で止めにかかる。

「ユウリ、実際にオーブを見せたら何かわかるかもよ?」

 私が提案すると、ユウリは伸ばしかけた手を止め、渋々鞄からブルーオーブを出した。

「ふむ……。それが『おーぶ』とやらか?」

 ブルーオーブに目を留めるマックベルさん。やがて何かを思い出すかのように目を窄めた。

「……もしかしてその『おーぶ』というのは、祭壇か何かに納めるのかの?」

「そ、そうです!! レイアムランドという場所にある祭壇に……」

「その何とかランドかどうかは知らんが、わしは一度そいつと似たようなものが置いてある場所に行ったことがある」

『ええっ!!??』

 その一言に、私達は一斉に驚愕した。そして、マックベルさんは、一つ一つ思い出すように話し始めた。

「わしはここに移住する前、別の氷の大陸にも行ったんじゃ。そこには小さな塔が建っていてな、生活するには絶好の場所だったんじゃが、入ってみたらすでに居住者がいたんじゃ」

「ここと同じ様な環境で、塔があって、しかも既に住んでる人がいたってこと?」

「うむ。早速ここに住もうと中に入っていろいろと物色しているうちに、上の階へと続く階段があって登っていったんじゃ。そこで奇妙な形の祭壇と、その『おーぶ』を見たのじゃ」

「祭壇にオーブ……。本に書いてあったレイアムランドに間違いなさそうだな」

 冷静にユウリが分析する。ナギのお母さんであるフィオナさんが持っていた本に、オーブを納める祭壇がレイアムランドという氷に覆われた大地にあると書いてあった。まさしくマックベルさんの言った通りの場所だ。

「じゃが、そこに居住者もいてな。その子らに不法侵入者扱いされて慌てて逃げ帰ったんじゃ」

 なんか色々と突っ込みたいけれど、要するにマックベルさんが行ったという場所には祭壇があって、オーブもあった。でも、そこにはすでに誰かが住んでいて、マックベルさんは諦めてここに住んだということか。いや、それってどういう状況なの?

「あんたの生活事情はどうでもいい。それよりそのオーブは、何色だったんだ?」

 私たちが今持っているのは、青と緑と紫の三つ。もし他の色だったら、なにか手がかりが見つかるかもしれない。

「うむ、確か、黄色だったはずじゃ。あれほど美しく光り輝く宝珠は今まで見たことなかったからのう」

 黄色……! 初めて聞く情報だ!!

「黄色と、他にはなかったのか?」

「うむ。一つしか置いてなかった。じゃが、そいつが置ける場所は一つだけじゃなかったはずじゃ。お前らの言うとおり、五〜六個ぐらいはあったかもしれんな」

 マックベルさんの話によれば、その祭壇らしき場所にあったのは、五〜六個の台座のうちの一つだけに、黄色い宝珠があったとのこと。確か黄色……イエローオーブは、私の師匠フェリオが持っていたと聞いた。だけどカザーブにいる間はそんなものは一度も見かけなかったし、師匠自身もそんな話は一度もしてこなかった。

「そうだ、ルーク! 師匠と一緒にカザーブに来たとき、黄色いオーブって見なかった?」

「いや、僕も初めて聞くよ。一緒に住んでたけど、そんなの見たことなかったし」

 ということは、結局イエローオーブが今どこにあるのかは、わからないままということだ。

「おい、ジジイ。その祭壇がある場所がどこにあるか覚えているか?」

 イエローオーブを諦めた様子のユウリは、世界地図をマックベルさんに広げて見せた。気づけば降っていた雪は止んでおり、空には晴れ間が見えていた。

「ふむ、たしかあそこはここよりももっと西の方にあったはずじゃ。地図でいうと……、この辺じゃな」

 マックベルさんが指さしたのは、地図で言えば左下。ランシールから南西の場所にある、小さな大陸だった。

「こんなところに祭壇なんかあるの? ていうかおじいちゃん、こんなところに移住しようとしてたの?」

「人里離れた場所を探し求めてたどり着いたのがここじゃった」

 うーん、今まで出会った賢者の中でも、マックベルさんは一際変わった人だ。どっちかというと、イシスに向かう途中で会ったヴェスパーさんに似ている気がする。

「ありがとうございます、マックベルさん。おかげで魔王の城に一歩近づくことができました」

 私がお礼を言うと、さっきまで不機嫌だったマックベルさんの顔が綻んだ。

「なんと礼儀正しい子じゃ。ピチピチギャルにならなくても、お前さんがここに残ってくれれば、わしは幸せな余生を全うできる気がするのう」

 そう言うなり、マックベルさんは私の手を両手で握りしめた。いや、私はここに残る気なんて全く無いのだけれど。

「ベギラマ」

 ぼおおおっ!!

「ぎゃあああああっ!!!!」

「うわあああ!! マックベルさんのひげが!!」

 突然放ったユウリのベギラマが、マックベルさんの真っ白なひげを包みこんだ。

「やっぱりこのエロジジイ、一度氷河の中に叩き落としたほうが世の中のためになりそうだな」

「なんなら今から僕がこの場で張り倒そうか?」

 いつの間にかルークまで殺気立っている。ていうかいつ意気投合したの?

 流石に本気ではなかったのか、マックベルさんの長く白いひげが黒く焦げただけで、大事には至らなかった。けれど当のマックベルさんはユウリに攻撃されたからか、どす黒いオーラを漂わせている。

「……なるほど。お前の呪文の応用力の高さはわかった。ならばわしは、お前をはるかに凌ぐ技をお前たちに見せてやろう」

 その瞬間、マックベルさんから凄まじい圧が私たちに襲いかかった。魔力のない私でもわかる。これは威圧だ。想わず体が竦んでしまうほどのビリビリとした威圧感が辺りに撒き散らされる。 

 そして一呼吸の後、マックベルさんの声が轟いた。

「バギマ!!」

 ビュゴゴゴオオオオオオッッッ!!

 マックベルさんの掌から、真空の刃が螺旋を描き、やがて咆哮にも似た轟音を伴いながら巨大な竜巻へと変貌する。マックベルさんの家よりもはるかに大きな竜巻は、マックベルさんの合図と同時に私たちの方へ向かってきた。

『うわああああっっ!!??』

 突然の脅威に、私たちは絶叫を上げながらその場から逃げようとした。だが、竜巻は突如不自然に軌道を変え、なぜかシーラの方へと進んでいった。

「え? え? ちょっと待って!? なんであたし!?」

 突然標的にされ、戸惑うシーラ。しかし竜巻はその大きさに似合わず、驚異的な速さで彼女へと向かっていく。まるで、彼女の方へと吸い寄せられるように。

『シーラ!!』

 叫ぶ暇も与えてくれず、巨大な竜巻はシーラを巻き込んだ。いや、さっきのメラゾーマみたいに、きっと呪文を応用したものなのかも知れない。でも、どうして今シーラに!?

「安心せい。あの娘には、わしのとっておきの術を授けてやった」

「とっておきの術?」

 どういうことかと、さらに尋ねようとしたのだが――。竜巻の中にいるシーラが悲鳴を上げているので、思わずそちらを振り向く。

「しっ、シーラ!! スカート!! スカートめくれてる!!」

 なんということか、風がシーラのスカートを巻き上げているではないか。一応シーラが必死でスカートを押さえているが、いつまで持つのか時間の問題である。

「もう少しじゃ!! もう少しで全てが……」

「やっぱりただの変態ジジイじゃねーか!!」

 ドゴッ!!

 マックベルさんの側頭部を思い切り殴ったのは、ナギだった。ナギに殴られたマックベルさんはそのまま横に倒れる。

 これは……、うん。同情の余地なしだな。

 マックベルさんが気絶したと同時に、シーラのスカートを翻弄していた竜巻が消える。

 辺りはしんと静まり返り、微妙な沈黙が続く。

「……見た?」

『……』

 男性陣、何も言わず。けれどそれが答えと気づいたシーラは、今度は私の方に向き直り、泣きついてきた。

「うわああん、サイアクだよ〜!! 皆にタダで見せちゃうなんて〜!!」

 え、そういう問題なの!? 私は心の中で思わず突っ込んだ。

 一方、傍らではむくりと起き上がるマックベルさん。頭を擦ってはいるが、どうやら無事のようだ。

「やれやれ、いきなりなんちゅうことをするんじゃ。せっかくわしの後釜に術を伝授しようとしてたのに」

『え!?』

「これもわしの応用技でな。自分が習得した呪文を、他人に伝授する呪文じゃ。今わしは、まだレベルの低いお前さんにバギマを伝授しようとしてたのじゃ」

 どういうことかと、呪文に詳しいシーラの方を見るが、彼女もピンとこない様子だ。

「えっと……、まだあたし、バギマ覚えてないんだけど、もしかしておじいちゃんのおかげで使えるようになったってこと?」

「うむ。あの竜巻の風を全て吸収すれば完全にわしの術をマスターできたはずだったんじゃが、このクソガキのせいで半分程度の力しか与えられんかった」

「オレのせいかよ!?」

 いや、今のは決してナギは悪くない。むしろ最初に説明しなかったマックベルさんに非があると思うのは私だけではないだろう。

「半分とは言ったが、あくまでわしの魔力を基準に考えた場合じゃ。その術を使うときのお前さんの状態で威力は大幅に変わる。体調、精神状態……、それと、一番大事なのはイメージじゃな」

「イメージ?」

「呪文というのは術者の精神力とイメージですべてが決まる。他人から教わるということは、自分自身で覚えるよりも引け目を感じるものじゃ。その状態で呪文を唱えても、本来の威力が発揮されるとは限らない」

 急にマックベルさんが真剣な顔つきになり、シーラは神妙な顔で頷く。

「大昔と違って、今わしらが扱える呪文は単純で、ありきたりなものばかりじゃ。例えば今では幻の呪文とされている『ザオリク』も、魔物が今よりもはびこっていた時代では、各地の教会の神父のほとんどが習得できていたそうじゃ。それはその時代が、今よりも死が身近に感じられる――つまり死をイメージしやすい環境だったのが理由の一つとされておる。他にも失われた呪文は数多くあるが、その原因の大半は、その呪文を正確にイメージ出来ないからだと言われている」

「なるほど……」

 うん。私にはよく分からないけれど、シーラが頷きながら考え込んでいるのを見ると、きっと彼女にとっては重要な知識なのだろう。

「大事なのはイメージじゃ。それさえできれば、お前さんもいろんな呪文の応用が出来る。それが出来て初めて、一人前の賢者になれるじゃろうよ」

「わかった! ありがとうおじいちゃん!! ところで……」

「む? なんじゃ?」

「そんなにいろいろ応用できるんなら、スカートをめくらないようにすることもできたんじゃないかなー? ねえ?」

 顔は笑っているが目は決して笑っていないシーラの表情に、たじろぐマックベルさん。

 その後、シーラは呪文の応用力を勉強するため、バギの呪文で何度もマックベルさんのひげを切りそろえようとして、しまいにはマックベルさんの長いひげが、あごひげくらいまで短くなってしまったのだった。

 
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