金木犀の許嫁
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第五十五話 忍者は冷静にその十四
「どうにもならなくなります」
「這い上がることは簡単じゃないんですね」
「左様です」
「それで巨人もですか」
「流石にそうはなりません」
幸雄はこうも話した。
「底を抜くまで堕ちることは」
「けれど巨人はそこまでなったんですね」
「そこまで堕ちました」
「だから簡単にはですか」
「よくなりません」
そうだというのだ。
「どうしても」
「そうですか」
「ですからもうです」
「一から造るつもりで」
「何年もかけないと」
「よくなりませんか」
「そうです、餓鬼になれば」
そこまで堕ちればというのだ。
「最早です」
「そうなりますか」
「左様です」
こう夜空に話した。
「容易にはです」
「上がれないですね」
「そうなっては駄目です」
「まずはそこからですね」
「人は」
「そうなんですね」
「餓鬼は何か」
幸雄は夜空に話した。
「よくご承知下さい」
「物凄く卑しいですね」
「そうです、餓えているのは何故か」
「卑しいからですね」
「何の徳分も持たず」
人としてのそれをというのだ。
「ただひたすらに浅ましく卑しい」
「それが餓鬼で」
「人として生きていましても」
それでもというのだ。
「心根が堕ちますと」
「そこまでなりますね」
「巨人は堕ちるところまで堕ちて」
「その底を抜いたんですね」
「だから餓鬼の様になり」
そしてというのだ。
「そこから立ち直ることはです」
「難しいんですね」
「左様です、あのままでは」
「ずっとですね」
「最下位です」
幸雄は話した、そんな話も楽しくしつつだった。
夜空達は日常を過ごしていった、それは平和なものだった。だが何もないかというとそうではなかったのだった。
第五十五話 完
2024・12・23
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