金木犀の許嫁
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第五十五話 忍者は冷静にその十三
「あそこまでどうしようもなくてな」
「育成を行って」
「そのシステムを確立して」
「設備もですね」
「整えてフロントの考え方もです」
「変えないと駄目ですね」
「チーム自体も」
フロントに加えてというのだ。
「過去の栄光なぞ捨てて」
「未来を見ることですね」
「お金がなく人気もないことをです」
こうしたことをというのだ、何しろ巨人は今や全てのプロ野球のチームで最も人気がないチームであるのだ。当然赤字経営である。
「自覚して」
「何から何まで一からですね」
「やらないと駄目ですから」
「時間は相当かかりますか」
「何年もかけて」
三年どころかというのだ。
「行わねばなりません」
「そうですか」
「ですがそれが出来るか」
幸雄はこうも言った。
「巨人に」
「無理ですか」
「そんなチームではありません」
幸雄の言葉は冷静なままだった。
「ですから」
「そうはなりませんか」
「そんな発想すらないからです」
だからだというのだ。
「あそこまでなっているのです」
「二十五年連続最下位ですね」
「勝率一割台で」
そうした有様でというのだ。
「弱いままです」
「何から何まで最低の」
「いいところなぞ全くない」
そう言うべきというのだ。
「最低最悪のです」
「チームのままですね」
「底を抜いて堕ちますと」
そうなればというのだ。
「もう容易にはです」
「上がれないですね」
「人の底を抜いて堕ちれば」
「餓鬼になりますね」
「そしてです」
さらにというのだ。
「ただひたすら悪くなります」
「上がらずに」
「そうです」
「それは人だけじゃないんですね」
「野球チームも人の集まりですから」
それ故にというのだ。
「同じです」
「底を抜けるとですか」
「そこからです」
「どんどん堕ちて」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
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