世界の礎
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第八話 騎馬の民との戦その十二
「困っている者達もな」
「救い」
「仕事を与えてな」
「生きていける様にしますね」
「そうした者達を救わないとだ」
さもないと、というのだ。
「何度も言うが賊になりそれが大きくなるとな」
「国を脅かしますね」
「民が大きな叛乱を起こすとな」
義青はここでは中国の民衆叛乱を念頭に話した、この国の歴史ではそれが王朝の交代につながったりしている。
「国が終わる」
「そうなるので」
「だからだ」
そうなることが予想されるもっといえば義青は中国の民衆叛乱の歴史を知っているからこそ言うのだった。
「私もだ」
「困っている民は救いますね」
「さもないと不満が募りだ」
帝国に対するというのだ。
「やがて暮らしていけなくなるとな」
「蜂起しますね」
「そしてそれが大きくなるとな」
「国さえ滅ぼしますね」
「実際に滅んだ国もある」
義青は明王朝を念頭に話した、この王朝は李自成の乱で滅んでいるがこの叛乱は明朝のあまりにも酷い政治で暮らしていけなくなった民衆が流転する流賊となり起こったものだ。
「だからだ」
「困っているのなら助ける」
「災害なら救助してだ」
そうしてというのだ。
「家を建て食料等を供給してな」
「救いますね」
「街や村も再建してな」
「そうしますか」
「そして地主達が大きくなりだ」
彼等が力を持ちというのだ。
「民が小作人となり搾取されることもだ」
「防ぎますか」
「彼等の生活も守る」
農民達のそれもというのだ。
「自分達が土地を持ち土地の売買の法も厳格化してな」
「容易にはですね」
「売れず雇われてもな」
「しっかりと生活を確保しますか」
「そうなる様にしてな」
そしてというのだ。
「しかとだ」
「彼等の暮らしを守るのですね」
「そうする、また官吏がある程度付け届けを貰うのはいいが」
それはというのだ。
「それも付き合いだ、だが悪政を敷いてだ」
「重税等ですね」
「そして民から搾り取りだ」
「私腹を肥やすのは許しませんか」
「官吏の家が商売をしてもいい」
それは認めるというのだ。
「金儲けはな、しかしだ」
「民を害してはならない」
「決してな」
「豊かになろうともですね」
「民は害さない。豊かで大きな土地を持つ農家は出てもいいし人を雇ってもいいが」
「その雇い方はですね」
「雇われる者達の権利も守る」
そうするというのだ。
「強くな」
「そうもしてですね」
「治めていく、いいな」
「わかりました」
誰もが義青の言葉に頷いた、そうしてだった。
帝国は農民達の権利も守りつつそのうえで北の高原にも勢力を拡大していった、そして砂漠にもそうして中国を目指すのだった。
第八話 完
2024・12・15
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