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だからってなんだよー 私は負けない

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1-4

 夏休みの宿題を仕上げる為、近くの神社で階段の上から見渡せる駅の周辺の集落の絵を描きに来ていると、下から駆け上がってくる人が居て、私の知っている貫一兄ちゃんだ。トレーニングの恰好でダッシュして登って来る。登り切るところで私の姿を認めて

「おっ すぐりか 絵? 宿題か?」

「うん 宿題 貫一兄ちゃん トレーニング?」

「あぁ 今 練習が休みだからー」

「高校でサッカー部に入ったんだよねー 練習 キツイ?」

「まぁな 一応 運動部だからな 早く レギュラーにならなきゃぁーな 昨日からここを5往復してから、10㎞走るんだ」

「へぇー 死ぬヤン」

「まぁ 才能無い奴は、それぐらいしないとなー」

「ふ~ん 才能ないんだー それでも やるの?」

「まぁ 出来るとこまでな」と、又、降りて登ったりしていて、その間 私は 描き続けていた。階段の上あたりは樹々の陰になっていて、程よい風も流れて涼しげなのだ。

 貫一、貫次兄弟とは、数年前まで一緒に遊んだ間柄なのだ。ウチの集落にはこの3人しか子供が居なかったせいもある。

「じゃぁ 降りたら走りに行くからな すぐり お昼 あるのか? 何にも無いんだったら、うちに寄れば飯ぐらいあるぞ おかずはたいしたもんないけどー」

「大丈夫 家に帰れば何かあると思う ありがとうね 貫一兄ちゃん 優しいよねー 貫次に比べるとー あいつは いつも 朝 どさぐさに紛れて、すれ違いざまに頭を叩いたりとかお尻を触ったりしてくるんだよー」

「あっ そうかぁー あいつは すぐりのこと好きなんだよー きっと まだ、子供だから ちょっかい出したいんだよー」

「そんなもんなのー たぶん そんなもんだと思って 無視するけどねー 貫一兄ちゃんは? 私のこと 好き?」

「ああ 好きだよ 昔から知っているし 遊んだし 俺の可愛い妹みたいに思ってるよ なんか 困ったことがあれば 言ってこいよー」と、駆け下りて行った。

 貫一兄ちゃんは、小さい頃から、私の面倒を優しく見てくれていて、家が貧乏でくたびれた服を着ていても差別もしないで、時々、おやつも分けてくれていて、よく遊んでくれていたから、私は淡い想いを抱いているのだ。

 描き終えて、家に帰ると2時を回っていた。朝の残りのご飯とお味噌汁に白菜のお漬物で掻き込んで、夏休みのドリルはもう終えてしまっているので、1学期の復習をやりだしたのだ。

 夕方近くになって来て、近所のおばぁさんが訪ねてきて

「すぐりちゃん かい? これ キュウリだ 食べろやー」

「あっ おばぁさん いつも ありがとう」

「雨があんまー 降んないもんだからー ひん曲がってしまってとるけんどなー トマトもよぉー 採ろうと思ってるうちにな 弾けてしまって、虫がついて駄目になってしまったんだわ」

「ううん 酢の物とか お漬物にするとおいしいよ トマトも残念だなぁー」

「んだー すぐりちゃんは 遊びに行かないんかい?」

「うん お友達は少し離れているし 遊ぶったって TVゲームとか お化粧して遊ぶだけなんやー 私 そーゆうの あんまり すかん それよりさー おじいさん 元気なん?」

「まぁ ケァセンターとかで 時々 お世話してくれるからなー 助かる」

「あのさー 畑仕事も大変でしょう? 私 お手伝いできることがあったら ゆうてー」

「だなぁー 秋になったら 芋を掘るから 手伝ってもらおうかなー 助かるよ」

「わかったー お手伝いに行くね!」 
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