だからってなんだよー 私は負けない
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夏休みになって私は近くの小川の支流を山のほうに登ってっいって、獲物を捕まえようと思っていた。去年から時々来るのだ。
山間まで来たところで少し、草をかき分けて水際で靴を脱いで川に入って、石がゴロゴロしているとこで獲った3匹の沢がにを竹ザルと金ザルを合わせたものに入れて、今度はイワナを捕まえようと、石を寄せて組んで、小枝を通り路に重ねるようにしていった。その囲ったところに入り込んだイワナを手で捕まえるつもりなのだ。沢がには唐揚げでイワナは塩焼きで晩ご飯のおかずにって思っていた。
その水たまりに立って、イワナが入り込むのを眺めていると、時折 鳥の鳴き声がするものの流れる水の音だけしか聞こえてこない。すると、山の草樹からガサガサと音が・・・私は、その瞬間 熊だと思って、焦って大きな岩にしがみついて熊鈴を必死に鳴らしていた。
「なに 岩にへばりつてるんだい? 熊と間違ったのか」
「えっ 人間かぁー びっくりしたわー」と、私は岩にくっついたまま、安心していた。
「あぁー 驚かしてしまって ごめん ごめん」
「うん なんで そんなとこから現れるのよー」
「歩き回ってたら道から逸れてしまったんだろうな でな 川のほうに行けば 戻れるかな思って」
「ふ~ん 何で 歩き回ってたの?」
「まぁ この辺りの山の樹とか植物がどんなかなと・・・」
「はぁーぁ 山の自然を荒らさないでよー」
「写真 撮ってるだけだよー 君こそ 女の子がひとりで こんなとこで何してるんだい?」
「・・・私は イワナを捕まえようと思って・・・」
「なるほど で そこがその仕掛けか? 手で捕まえられるの?」
「捕まえられるよ! 前に 何度も・・・ まぁ そこで 見てな」と、しばらくして 来た! 入ってきた」私は、そっと両手を沈めて・・・じぃっとして、頃合いを見て・・・
「やったぁー ほらね!」と、掴んだものを誇らしげに見せて、ザルの中に収めた。
「ふ~ん 立派なもんだなぁー あっ カニも居る」
「だよ 沢ガニ 唐揚げにして食べるの イワナはもう1匹要るんだぁー お母さんの分」
「なるほどなぁー 君はそんな恰好でここまで登ってきたのかい?」
「そーだよ いつも」
「そんな短パンで脚を出してたら 虫とかに刺されないかい?」
「あのね ミントの葉っぱを絞った汁を塗ったら 虫も避けるみたいよ」
「はぁ なるほどー でも ダニには効かないみたいだよー」
「うるさいなー いいの! 黙っててー イワナが人の声でも警戒するんだからー」
「おお そうかー ごめん ごめん」
その後、沈黙が続いて、水の流れの音だけになって・・・10分程 やったぁー
「なぁーるほどなぁー なんか 名人を見ているみたいだなぁー」
「ふふっ 今日の収穫 終了 ねぇ お兄さんはこのへんの人?」
「今年の4月から 奥浦津中学に赴任してきた」
「あっ そう 新米なんだ 私も来年から1年生 また 会えるかもね」
「だなー 不適任の烙印を押されなきゃあな」
「今 クラスの担任させられてるの?」
「副担任 でも 指導する担任の先生が 女性なんだけど 厳しくてね」
「あぁ 今は 男より女の先生のほうが厳しいよねー 私 愛崎すぐり 先生は?」
「三倉耀 三つの倉に輝く 部首の部分が曜日の曜で日のかわりに光る」
「へっ よく わかんない でも 三つも倉があるんだぁー お金持ち?」
「いや 名前だけだよー」
「でも 賢そうだし 何となく このへんの人と違って品があるよ 大学は? 出身は?」
「京都教育大 大阪の枚方というとこ 下に妹が居て 長男なんだ なんか 身元調べみたいだなー 愛崎さんだっけ? 君は兄妹は?」
「私はひとりっこ お母さんと二人だけなんだー 母子家庭」
「そうかー でも 元気だね ハキハキしているしー」
「それは 先生が・・・感じいいもん つまんない先生じゃぁないよね 直感」
「そうか それは褒めてくれているかな?」
「うん 今のところはね 来年になるとわかんないよ」
「そーだね 楽しみにしているよ なぁ また 会えるかもな この もっと上流のほうには山葵もあるかもな 自然薯なんかもありそう 今度 行って見ようと思うんだ」
「・・・あのね そーゆうのダメなんだよ 私もね 採って来くれば それなりにお金になるってわかっているけど 誰かに叱られると思うからー」
「そうかー 地権者ってのがいるのかな 触れない方が良いかぁー」
「だよ 先生だから 余計 まずいでしょ!」
「だな 忠告ありがとう」
「いいえーぇ あのね 今日のはダメだけど 今度 イワナ獲ったら 焼いて食べさせてあげるね 美味しいんだからー 焚き火で焼くの」
「おおー それはうまそーだな 楽しみにしているよ」
これが、その先生との出会いだった。
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