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だからってなんだよー 私は負けない

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1-5

 秋になって日曜日にお昼ご飯にとイワナを獲り行こうといつもの場所に来ていた。今日は、快調でもう4匹捕まえていたのだ。

 下から あの先生が登って来る姿が見えて

「こんにちわ 何しに来たの?」

「そーだね 秋になったので いろいろと葉っぱも色づいてきているから、どんなかなって・・・」

「あのさー 今は 熊も動き廻ってるし マムシも居るんだよー 危ないよー」

「そうかぁー 熊ねぇー」

「そーだよ この辺りは熊が平気で家の軒先でも出るからね それに、ここは冬眠しないみたい 怖いよー 奥に行くのは止めときなよー そうだ 今日はイワナが捕れたから、焼いて食べさせてあげるよー この前 約束したよねー 薪で焼くからおいしいよー うちにきなよー」

「はっ うまそーだな」

「うん おいしいよー そーしなよ」

 と、先生を案内しながら、うちに連れて行って、私は早速 竈に小枝を入れて火をおこし始めていた。

「ふふっ 珍しいでしょー? ウチではご飯以外はたいがい この竈で調理するんだぁー 庭木の切ったの 近所からも貰ってきてくべるの 光熱費の節約なんだぁー」

「はぁ なるほどね」

 私は、魚のぬめりを洗って、鉄串に刺して、竈の周りに立てていった。

「ふ~ん 慣れているね」

「ん まぁー いつも やってるから 鉄串だと 中から火が通るからふっくらと仕上がるんだよー」

「なるほどなぁー すぐりちゃんてさー 僕の知らないこと教えてくれるよねー」

「そんな たいしたことないよー 普段 当たり前のことだけだよー」

 魚を焼いている間、先生はじろじろと家の中を見回していて

「先生! あんまり 見回さないでよー ボロ家でしょ」

「う まぁ かなり 風格あるなぁーって」

「そう でも 越してきた時には お父さんがあちこち直したらしいんだよー お風呂なんかも 最初は五右衛門風呂でね 灯油のお風呂にやり替えたの だからシャワーも使えるし、洗面所もお湯が出るようになったって お母さんに聞いた」

「五右衛門風呂?」

「知らないのぉー 石川五右衛門が窯茹でにされたようなのが お風呂になったようもの だから、その時は薪で沸かしてたのよ らしい」

「はっ はぁー」

「まぁ いいやー ほらっ 焼けたよ」と、私がかぶりつくのを見せて

「うっ うまい! あっ あつぅー」と、「ふうふう」と言いながらしながらほおばっていて、2匹目も・・・

「あっ うまかったんだけど これっ おかずじゃぁなかったのか?」

「いいの 先生が喜んでくれたんなら」

「そうか じゃぁ 今度 なんか お返しするよー」

「そんなの いいの! 先生がここは良いとこだって思ってくれたら ず~っと 生徒さん達に教えてくれるんでしょ?」

「そーだね 君みたいな生徒が居るんだったら やりがいあるかなー」

「だね 私も 早く 中学に行くのが楽しみカナ」

「ねぇ 良かったらで教えて欲しいんだけど お父さんとは いつから?」

「う~ん 私が 生まれて まもなく どっかに行っちゃったみたい だから、私 お父さんって どんな人なのか知らないんだよねー ずぅ~っと お母さんと二人」

「そうか 素敵なお母さんなんだろうね ひとりで、こんなにしっかりとしたお嬢さんを育ててきたんだら」

「うぅー お嬢さんなんて 言われたの初めて・・・お母さんは素敵なんだけど・・・若いし・・・ ねぇ 先生のお母さんは? どんな人?」

「そーだなぁー 昔からレストランをやっていて、地域の人の為にとかいってー なかなかの評判だ 父親とは中学の同級生らしくって 今でもアツアツだよ」

「へぇー 羨ましいね 幸せそう」

「かもな でも 昔は苦労したみたいだよ」

「だね 生まれついての幸せは ロクなことないよねー 幸せは自分で掴むもんなんだよね 私 いつか 先生のお母さんに会ってみたいなぁー 素敵な人みたいだしー」

「すぐりちゃんは 学校の先生みたいなこと言うね」

「そんなことないよー 私 今 不幸だってことないよ 幸せだよ でも、お母さんは私の為に一生懸命 働いてくれてるやんかー だから、私が働けるよーになったら お母さんに、もっと 幸せにさせてあげたいんだぁー」

「君は・・・ 僕も耳が痛いよー 僕なんて 恵まれているんだなぁーって 教育者として 頑張るよーになるよ」

「先生 大袈裟なんちゃう? もっと 気楽に生徒に接しなきゃー 引かれちゃうよ!」

「あー そーかー わかった 勉強になります はっはー でも 君と居ると なんか 楽しくなるなぁー」

「うん 私も 普段 お話する人 おらへんやんかぁー 先生と こーやってると楽しい なぁ なぁ まだ時間あるんでしょ 夏休みのドリル見てくれへんかなぁー だって 間違ってると腹立つヤン 君には 一宿一飯・・・一飯の恩義あるでしょ!」

「ふふっ わかった 一飯の恩義ねぇー」 
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