仮面ライダーガイゼル Feet.オール・ダークライダーズ
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Capture:02 ~電撃凱旋、その名はガイゼル~
突如現れた謎の仮面ライダー・ガイゼル。
ゆっくりと足を前に出して歩き出した彼にメタルビルドは驚愕していた。
「あ、新しい仮面ライダー!? でも、あんなシステム、たぶん見たことない……でも、私が頑張らないと!」
未知の敵性存在に動揺していたが、なんとか自分を鼓舞して立ち直ったメタルビルドは武器を生み出す。
碇のような水色のボディに電車のパーツが組み合わさったボウガン型武器・カイゾクハッシャーを手に取り、弓のように構えると"ビルドアロー号"という電車型攻撃ユニットを矢のように引き、電車型のエネルギー弾を発射した。
【各駅電車ー!】
「やぁ!」
「おっと?」
放たれた電車型エネルギー弾をガイゼルは軽く避けると、先程とは打って変わって真横へと疾走。
メタルビルドは狙いをガイゼルへと再び定め、さらに隣に立つハードガーディアンも狙いを銃口を向けて乱射する。
いくつものエネルギー弾と実弾を交えた銃撃が放たれるのだが、ガイゼルはそんなものを気にせず走り抜けていく。
「たっく危ないねぇ。妙に連携が取れているっていうか!」
メタルビルド達の銃撃を掻い潜り、近くの大型コンテナへと身を隠すガイゼル。
少しの間は銃撃を凌ぐことはできるが、相手は仮面ライダーだ。鉄のコンテナを容易くぶち抜く術などいくらでも持っている。
……まず戦いの喧騒を嗅ぎつけてやって来た時、まず見えたのは二人のライダーを思い詰めるメタルビルドの姿。
全身黒ずくめのあのライダーは多くの人型戦闘兵器を連れてやって圧倒していた。
数で押して戦うという多勢に無勢の様子に何らかの厭気を感じたガイゼル――レクスは今回の戦場へ頭を突っ込むことを決めた。
奴らの鼻っ柱を折るために、とりあえず動かなければならない……そう考えた時、カイゼルの視界に入ってきたのは一つの石化した黒い石のような何か。
先程の戦いでドラグブラッガーによって拘束された仮面ライダー・イカロスが封じられている。
それを見て何かを閃いたガイゼルは咄嗟に地面を蹴って走った。
「あれだ!」
「まちなさーい! てぇい!」
【快速電車ー!】
メタルビルドとハードガーディアンによる掃射攻撃がガイゼルへと迫る。
だがそれらを掻い潜りながらガイゼルはイカロスが封じられた石の物体へと近づくと、勢いよく殴りつけた。
「どっりゃあああああ!!」
ガイゼルが繰り出した拳と共に、石の表面は黒い炎となって砕け散っていく。
降り注ぐ炎からリュウガはダークウィザードを庇い、ガイゼルが行った行動に驚いていた。
「ぐっ、アイツ何を!?」
「――ウガァァァァァ!!」
咆哮を上げながら、砕け散った石の中からイカロスは解放されるとその両翼を広げて羽ばたいた。
イカロスから巻き起こった強風はメタルビルド達へと襲い掛かり、身動きができなくなる。
「わわわっ!?」
「邪魔をするな! オレは、仮面ライダーとしてお前達ライダーを……!」
解放されて自由の身になったイカロスは空中へと舞い上がると自身の体を回転させ、周囲の物体を巻き込みながらメタルビルドの方へと迫る。
イカロスの回転による強風によりメタルビルドは身動きが取りづらくなり、代わりに重装甲によって吹き飛ばされにくいハードガーディアンが出て来て対応をする。
混沌と化した戦況になりつつある中、ガイゼルは仮面の下でニヤリと笑った。
「どうやら狙い通りになったみたいだなぁ」
「あなたまさか、あのライダーを解放して戦いの流れを変えたの?」
ガイゼルの言葉を聞いてダークウィザードは驚きの声を上げる。
まさか敵であるイカロスを利用してメタルビルドの優勢を変えてしまうとは思ってもなかったのだ。
現にイカロスの驚異的な猛攻によりメタルビルドとハードガーディアンの連携を崩しつつある。
自分達では思いつかないような奇策にリュウガとダークウィザードは驚くが、そんな彼らの事を知る由もなくガイゼルは次なる一手に出る。
「出番だぜ、カリバー」
自信ありげに口にしながらガイゼルが取り出したのは、変身の時に使った物とは別のクロイツキー。
ガイゼルはそのクロイツキー……カリバーキーをインペリアルドライバーへと装填し、勢いよく回した。
【Set Caliber】
「鎧変身!」
【Call Up】
ドライバーからの電子音声が鳴り響くと、インペリアルドライバーのE-リアライザーから人型のエフェクトが出現。
ガイゼルの重なりあい、その姿を一本の剣を携えた紫の甲冑の戦士に変える。
紫のボディスーツに銀色の装甲を纏い、銀色の仮面をつけた頭部には剣を模した一本の角が映えていた。
【The Riding Power Caliber】
その名は『仮面ライダーカリバー』。
闇の力を以て未来を閉ざす暗黒を切り開く誇り高き暗黒剣月闇を振るう剣士。
カイゼルが変身したそのライダー・カリバーは愛剣である暗黒剣月闇を構えて目の前の敵を見据える。
そして勢いよく月闇をメタルビルド達へ振り下ろした。
「いくぜぇ、とりゃああ!!」
振り下ろされた暗黒剣月闇から繰り出された黒い炎の刃がハードガーディアン達へと放たれた。
高熱を宿したその一撃はハードガーディアンの分厚い装甲を容易に断ち切り、文字通りに真っ二つにした。
共に戦ってきたハードガーディアン達が撃破された事に、イカロスと対峙していたメタルビルドは驚愕の声を上げた。
「皆ッ!? なんてことを!?」
「余所見をしている場合か!」
悲痛な声を上げるメタルビルドに対し、イカロスは風のエネルギーを纏ったパンチを叩き込もうとする。
だが当たる直前にメタルビルドの姿が掻き消えた。まるで実体のない雲を触るかのように、消えたのだ。
イカロスは周囲を見回すと、カリバーへと急いで襲い掛かるメタルビルドの姿があった。
その手には四つの漫画のコマを模した刀身を持つ刀・4コマ忍法刀をカリバーへと振り下ろす。
「てぇぇぇい!」
「おっと?」
「よくも、よくもぉぉぉぉぉ!!!」
【分身の術!】
全てのハードガーディアンを撃破されたメタルビルドは声を荒らげながら4コマ忍法刀のトリガーを引く。
するとガイゼルの周囲にメタルビルドの分身が出現。一斉に斬り付けようとする。
カリバーは刀を治めるように暗黒剣月闇を腰部の専用ホルダー・必冊ホルダーへと納め、トリガーを引いた。
【月闇居合! 読後一閃!】
「どっりゃあああ!!」
暗黒剣月闇の刀身に集まった紫色のエネルギーを振るい、分身したメタルビルドを……否、正確にはメタルビルド達がいた空間を叩き斬る。
空間が闇に包まれ、メタルビルドに囲まれていたカリバーはいつの間にかその姿を消していた。
攻撃しようとせずに一体どこに行ったんだ……と、メタルビルドが警戒していると、上空から聞こえてきたのは一つの電子音声。
【Radiat On】
「さぁて、ここからはこの姿だ! 刮目しな!」
「!?」
メタルビルドが急いで見上げると、そこにはカリバーの姿から元の基本形態に戻ったガイゼルの姿。
急降下しながらガイゼルは新しいクロイツキーをドライバーへとセットする。
【Set Release】
「その身に刻め!これが王道だ!!」
【Final Burst】
インペリアルドライバーから鳴り響いた電子音声と共に、ガイゼルの周囲に光のエフェクトで出来た道が出現。
光の道・フォトンロードはメタルビルドへと真っ直ぐ伸び、分身を含めて巻き込んでいく。
全てのメタルビルドを絡めとった後、黄色のマフラーが炎のように揺らめいて勢いよく噴出した。
まるで加速器のように勢いを増しながら、ガイゼルは足を前へと出して、そして……。
――轟音。
カイゼルの必殺の飛び蹴り『ライトロードストライク』が炸裂した。
生み出した分身が爆発する中でメタルビルドは蹴り飛ばされ、地面へとバウンドしたのちに叩きつけられた。
呻き声も上げるすらできないほどの一撃を受けて、メタルビルドはそのまま沈黙。
あと残されたのは砕け散ったハードガーディアンの大量の残骸。そして唖然と見ていたリュウガ、ダークウィザード、イカロスだけだった。
特にダークウィザードは仮面の下で目を見開いて驚いていた。
「別の仮面ライダーに変身、それにあの強さは一体……」
「分からないことが多い。だがただものじゃない事は確かだな」
ダークウィザードの言葉を聞いてリュウガは答える。
二人は次が自分がやられるかもしれない、と思いながら何時目の前に立つガイゼルが襲い掛かってもいいように身構えている。
それはイカロスも同じようで、手から生み出した風の渦をいつでも叩き込めるように力を溜めている。
三人を見てガイゼルは上手く着地した後、何かリアクション起こす様子もなく、ただじっと見つめるだけ。
三者三葉の様子を見せる中、暫しの静寂が流れる。
だが、一同の間に流れていた静寂は意外な増援によってすぐに破られた。
「おっ、なんだ?」
「あれは、さっきの機械兵団?」
驚きの声を上げるガイゼルとイカロス。
そこに現れたのは、ハードガーディアンとよく似た機械兵達。
『ガーディアン』と呼ばれるそれはガイゼル達ライダーへ武器の機関銃で攻撃し始める。
降り注ぐ銃弾をイカロスは両翼で防ぎながら、疑問符を浮かべる。
「何故今になって増援がやってきた?」
「さぁてね、失いたくないんだろうさ。あの硬そうな真っ黒クロスケをさ!」
「チッ、決着は次の機会だ!」
イカロスは舌打ちを打つと、上空へと逃げて去ろうとする。
――だが、そこへイカロスの耳に聞こえてきたのは……メタルビルド、正確にはその変身者の悔しそうな声だった。
「そんな……私、負けちゃった? お母さんとの、約束が……」
その思いがけない内容の譫言のように呟くその声にイカロスは難色を示すと、両翼を羽ばたかせて上空へと舞い上がった。
メタルビルドの……その変身者は、嫌に思えるほどに澄み切った青空を見上げる事しかできなかった。
その一方、目に見えぬほどの速度で離脱していくイカロスを背にしてガーディアンがこちらへと攻撃をする状況は続いていた。
ガイゼルは自身の首から長く伸びたマフラーを振るい、降り注ぐ銃弾を叩き落とすとリュウガとダークウィザードへ声をかける。
「じゃあな、お二人さん!」
リュウガとダークウィザードを背にして逃げるガイゼル。
謎の仮面ライダーの事も気になるが、ここは逃げるしかないと思ったリュウガ達の方もその場を撤退。
その場には残されていたのは、仮面ライダー達が戦った戦闘の痕跡だけだった。
――彼らの光景を、いくつもの戦士が遠くから見ていたのであった。
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