仮面ライダーガイゼル Feet.オール・ダークライダーズ
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Capture:01 ~皇帝ライダー、出陣~
前書き
多くの仮面ライダー達が戦いあい争う融合世界群ゼノアース。
ある者は同じ神々の名を持つライダーと刃をぶつけ。
ある者は不可視の速度で走り抜け。
ある者は奇しくも死してなお復活した者と対峙し合う。
そんな血で血を洗う異世界にて、新たなるライダーが参戦しようとしていた。
東京、とある人混みの中。
そこでは自らの素顔を灰色のフードで隠したその人物は周囲の人達とは異なる雰囲気を身に纏っており、口を一切開かずに自身の歩みを進める。
その最中で見つけたのは、人気がなさそうなとある裏路地。人の目を気にしながらそこへ足を踏み入れると、小走りに去っていく。
やがて通りかかる人の姿がなくなった所へ辿り着くと、フードの人物は上を見上げて地面を蹴り上げた。
「よっ、と」
自分の身長を優に超えるほどの脚力で建物同士の狭い壁を足場にジャンプし、上空へと駆け上がる。
まるでアクションゲームのキャラクターのように飛び上がると、近くのビルの屋上へと辿り着く。
上手く着地すると目深に被っていたフードをとってその素顔を晒した。
「窮屈すぎて嫌だなぁ、この街……いやこの世界って言った方がいいか」
そこから露になったのは短く整えた金髪の幼げな少年の顔。
その童顔な年若い少年という印象が強いが、彼の眼に宿る強い光が年相応には見えない。
その青年――『レクス・ルーファス』は街の光景を見ながら、自身が思った事を口にする。
「さーて、何処かの仮面ライダーが戦っていないだろうか」
レクスはこの世界に何処かにいるであろう"仮面ライダー"達の存在を探るため、目を瞑ってその気配を探る。
最初に聞こえてきたのはビルの下の街を歩く人々の多くの歩く足音、他愛もない話、聞きなれた雑音。
そして次に聞こえてきたのは、誰かが争う喧騒だった。
それも一般人がやるような普通なものではない。何かを焼くような熱線、物体を斬り落とす斬撃音、そして骨をも砕く勢いを秘めた打撃音。
尋常ではないほどの喧噪の様子を文字通り耳にしたレクスはニヤリと笑う。
「おっ、早速やってるねぇ。んじゃあ向かいますか」
レクスは自分が見つけた喧噪の正体を確かめるために、足を屈伸させた後、助走をつけて走り出す。
ひしめき合う建物と建物の間を飛び越えて、目的の場所へと向かっていく。
「頼むぜ、お目当てのいるといいけどなぁ! よっとぉ!」
まるで空を飛ぶように駆け抜けるレクス。
彼が目指すその場所は、仮面の戦士達が巡る一つの戦火が今上がっていた。
~~~~
場所はとある港。
太平洋から運ばれてきた大きなコンテナが周囲を囲むその場所は、ライダー達によって戦いの舞台と化していた。
最初にぶつかり合っていたのは、二人の仮面ライダー。
拳と蹴りによる激しい格闘戦を繰り広げた後、二人は距離を取って相手を見据えた。
一人は漆黒のアンダースーツの上から黒い鎧を身に纏った龍を模した仮面の戦士。
腰部の銀色のベルトには龍のエンブレムが刻まれた黒いカードデッキが装填されていた。
その名は、『仮面ライダーリュウガ』。
鏡の中の世界・ミラーワールドにて死闘を繰り広げる黒き龍の騎士。
一人は黒いボディに紫色の煌く装甲を身に着け、後ろの腰部からはマントが靡いていた。
頭部は指輪の宝石のように輝いており、その手には紫色の宝石が嵌められていた。
その名は、『仮面ライダーダークウィザード』。
かの"指輪の魔法使い"と同じ容姿をした謎に包まれた黒い魔法使い。
二人の仮面ライダーは接近戦だけでは決着がつかないと判断すると、それぞれのアイテムを取り出す。
リュウガはデッキから引き抜いたカード・アドベントカードを左腕の手甲型召喚機・ブラックドラグバイザーへと装填。
ダークウィザードは右手に嵌めた指輪・ウィザードリングを自らの変身ベルト・ウィザードドライバーへと翳す。
【STRIKE-VENT】
【チョーイイネ! スペシャル・サイコー!】
リュウガは右腕につけられた龍の頭部を模した武器・ドラグクローを構えると、同時に相棒である竜型の契約モンスター・ドラグブラッカーが出現し、その口からは炎が噴き出しはじめる。
対してダークウィザードは前方へ片手を向けると魔法陣が生まれ、そこから勢いよく炎が噴き出そうとする。
そして両者は同時に燃え盛る火炎を放った。
「タァァァァァ!」
「はぁっ!!」
リュウガの放った『ドラグクローファイヤー』と、ダークウィザードの魔法『スペシャル』を用いた火炎攻撃。
炎と炎、ぶつかりあう熱量が二人のライダーへ襲い掛かる。
奇しくも竜という力の源にしている両者の炎は場所が場所なら余りある熱量が余波となって一般人へと襲い掛かりかねない勢いで、この場に人がいなかったのが幸いだ。
お互いを焼き尽くさんとする勢いで炎を繰り出す二人……だがそこへ、水を差すかのように一人の戦士が乱入する。
「――ハッ!!」
「「!?」」
リュウガとダークウィザードへと襲い掛かるのは強烈な突風。
変身した状態でも耐えられないほどの風力が二人を襲い、重いコンテナすら容易く揺らぐ。
そこに現れたのは一人の仮面ライダーだった。
深紅と黒のボディという古代ギリシャの彫像のような美しさを印象付けるその姿。その背中には一対の鳥の翼が広げていた。
その名は『仮面ライダーイカロス』。
悪意と邪悪な意思によって進化した宇宙より舞い堕ちた英雄。
両翼を広げたイカロスは地面へと着地すると、強風に煽られて態勢を崩れたリュウガとダークウィザードへと襲い掛かる。
イカロスが振りかざしたパンチをリュウガはいなして回避し、両者の格闘戦へと発展する。
振りかざされるイカロスの連続パンチを手ではじき、時には躱し、お返しと言わんばかりにドラグクローによる打撃を放つ。
「ハァッ!!」
「フンッ!」
イカロスは背中の両翼を展開し、盾としてドラグクローによる一撃を防ぐ。
あまりにも鉄壁な硬度を誇るその両翼にリュウガは驚き、イカロスは反撃へ移そうとする。
だがそこへ、イカロスにとってもリュウガにとっても意外な伏兵が仕掛けてきた。
【コネクト・プリーズ】
「そのまま耐えて!」
ダークウィザードが叫んだと同時に、空間を繋げるコネクトの魔法によって呼び出した銃剣型変形武器・ウィザーソードガンを構えてその引き金を引いた。
放たれた銀色の銃弾は不可思議な軌道を描いてイカロスの両翼をくぐり抜け、吸い込まれるように被弾した。
イカロスの体から火花が飛沫のように飛び散り、その体を揺らがせる。
「ぐぅっ!?」
「ここだッ!!」
リュウガはドラグクローを嵌めている拳に力を込めてイカロスを突き放した。
数メートルまで引き剥がされたイカロスは両翼を広げて攻撃を仕掛けようとする……だが、そこへ獣のような咆哮が聞こえてきた。
驚いたように急いで振り向くと、そこには長い体をうねらせる黒い竜の影があった。
『ギャォオオオン!』
「貴様ッ! ぐぅ!?」
黒い竜――ドラグブラッガーの口から放たれた黒い炎がイカロスへと飛び掛かる。
咄嗟に両翼で炎の直撃を防ぐが、火炎を浴びた箇所が次第に石のように硬くなっていく。
しまった、と気付いたときには時すでに遅し……ドラグブラッガーの火炎が全身を包み込み、やがて硬直化した。
やがて大きな鉱石のように拘束されたイカロスを見て、リュウガはダークウィザードに向かって一言呟いた。
「どうやらおれ達だけの戦いどころじゃなくなったな」
「……うん」
「お前を信じたわけじゃないが、さっきの借りだ。場所を移して仕切りなおすぞ」
「ええ。でも、次は手加減しない」
ダークウィザードとの数少ない受け答えをすると、リュウガはダークウィザードと共に港のコンテナ置き場から去ろうとする。
だが、そこへ彼ら二人に追い打ちをかけるように、何者かが銃の乱射による襲撃をかけてきた。
「「ッ!?」」
「ダメじゃないですか。『やることあるならちゃんとやらないと』ってお母さんから言われなかったんですか?」
まるで子供を叱るような言葉と共にやってきたのは、漆黒の戦士。
全身黒一色のボディに加え、腰部には二本の黒い小型ボトルが装填された回転レバー付きベルト、戦車の模った双眸の複眼が二人のライダーを見ていた。
黒い仮面ライダーの手にはガトリング銃武器・ホークガトリンガーをを構え、引き金を引いた。
その名は『仮面ライダーメタルビルド』。
輝く未来を創造した自意識過剰な天才な英雄とはかけ離れた、漆黒に塗りつぶした世界を造り出す鋼鉄の戦争兵器。
激しい銃撃音と共に襲い掛かる銃弾。
リュウガはダークウィザードを突き飛ばしつつ咄嗟に避けると、舌打ちしながら悪態づく。
「チッ、次から次へと!」
リュウガはベルトに収められたVデッキからアドベントカードを引き抜くと、ブラックドラグバイザーに装填する。
【GUARD-VENT】
何処からともなく現れた竜の胴体を模した盾・ドラグシールドを装着したリュウガはメタルビルドの放つ銃撃を防ぐ。
メタルビルドがリュウガに注目しているその間を駆け抜けてダークウィザードはウィザーソードガンを銃の形をしたガンモードから剣の形をしたソードモードに変えて走り出す。
向かう先はメタルビルド……目の前まで接敵すると、そのまま斬り付けようとする。
「やぁぁぁぁぁ!!!」
「あっ」
メタルビルドが気が付くのも束の間、ダークウィザードが振り下ろした刃が迫る。
ウィザーソードガンの刃がメタルビルドの首元へと迫り、勝っ切ろうとする。
だが、メタルビルドに当たる直前、何者かが防いでそのままダークウィザードごと弾き飛ばした。
「きゃっ!?」
「黒い魔法使い!? くっ!?」
メタルビルドの周囲に現れたのは、何体にも及ぶ重武装の機械人間達。
本来ならばとある重工が作った『ハードガーディアン』と呼ばれるそれはメタルビルドを守るように現れる。
メタルビルドは現れた彼らに対し嬉しそうな声を上げた。
「皆、ありがとう!よーし、あのライダー達をやっつけちゃうよ!」
メタルビルドの言葉と共にハードガーディアン達は右腕のガトリングガンを向け、そして発砲した。
一斉に放たれた銃弾を回避しつつ、リュウガと背中合わせになったダークウィザードは彼(最も素顔は知らないため性別は分からないが)に話しかけた。
「追われてしまったね」
「あぁ、状況が一変することにもほどがあるだろ」
「どうする? このままだと私達やられてしまうよ?」
「元より諦めるつもりはない。だが……どうこの状況を覆すか」
強襲してきたメタルビルドに追い詰められていくリュウガとダークウィザードの二人。
彼らがハードガーディアンの乱射攻撃をどうにか防いで凌ぐが、あれだけの機体数だ。撃ち抜かれる野も時間の問題だ。
彼ら二人に敗北と死の匂いが香り始めようとした……その時だった。
「よっ、とっ!」
――――誰かが重い鉄を蹴り飛ばすような音が聞こえてきたのは。
謎の乱入者によってハードガーディアンの一体は蹴り飛ばされ、地面に転がった。
メタルビルドは倒れたハードガーディアンを見て大きく動揺し、手に握っていたホークガトリンガーまで投げ捨てて駆け寄る。
「わわっ、大丈夫!?」
「えっ?」
「誰だ?」
ダークウィザードとリュウガはハードガーディアンを蹴り飛ばした乱入者へと注目する。
二人とメタルビルドを割って入ったのは、一人の若い金髪の青年。
その青年――レクスはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、少々芝居がかった声で話しかけてくる。
「やぁやぁ、どうも親愛なる仮面ライダー諸君。今日も元気に戦っているようじゃないか?」
突如姿を現したレクスにリュウガとダークウィザードの二人は警戒し、メタルビルドは連帯感を持っていたハードガーディアンを蹴られて戸惑っている。
彼ら三人のライダーの様子を見て、レクスは少し残念そうな表情を浮かべた。
「なんだよ、折角強敵なオレが乱入したってのに盛り上がりにかけるなぁ」
「な、なんなのですかアナタ!? あ、危ないですから下がっててください!」
ハードガーディアンを立て直したメタルビルドは動揺しているのか挙動不審な言動で怒鳴るが、レクスは鼻で笑って返した。
そして周囲を見回して現在この場にいる仮面ライダー達の姿を確認する。
傷ついたリュウガとダークウィザード、石化して身動きができない様子のイカロス、そして何体ものハードガーディアンを連れたメタルビルド。
どう見てもメタルビルドが優勢のこの状況を見て、眉を顰めたレクスは『ある物』を取り出す。
――それは、奇妙な球体上の液晶体が取り付けられた大型のバックルだった。
レクスの取り出したそれを見て、リュウガとダークウィザードは驚きの声を上げる。
「……あれは!?」
「ライダーベルト!?」
2人が驚く中、レクスは気にも留めずにそのバックル――『インペリアルドライバー』を自身の腰へと装着させる。
さらに独特な紋章が刻まれた十字架型アイテム『クロイツキー』を取り出す。
クロイツキーの一つ・カイゼルキーをインペリアルドライバーに設けられた装填口へとセットする。
【Set Gaiser】
「さぁ、いくぜ……変身!」
【Armord Up】
バイクのエンジンを回すようにカイゼルキーを回すと、バイク音と共に電子音声が鳴り響く。
ドライバー中央部に設けられた液晶体部分・E-リアライザーからいくつもの光のボディアーマーが出現。
レクスの前方に人一人分の全身鎧一式が出現すると、レクスの体へと重なり合い、その姿を一人の仮面ライダーへと変貌させていく。
漆黒のアンダースーツの上に一体化したのは赤と黄色で彩られた鎧。
骸骨とも思えるほどの白い頭部へ、燃えるように赤い十字型のパーツが装着。さらにバラバラになって展開。
まるで王冠にも見えるパーツが取り付けられた後、鮮やかなグリーンの複眼が発光する。
首元に黄色のマフラーが靡くと、最後に電子音声が鳴り響く。
【The Imperial lord Descended】
そこに現れたのは、新たなる仮面ライダー。
異端なこの世界に渦巻く混沌を破壊するために現れた、鎧を纏った皇帝。
威風堂々を地を行くその仮面ライダーの名は……。
「仮面ライダーガイゼル。ただいま降臨、ってな」
――仮面ライダーガイゼル
かの仮面の戦士は目の前のライダー達を打ち倒すべく自ら出陣した。
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