仮面ライダーガイゼル Feet.オール・ダークライダーズ
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Capture:03 ~邂逅、戦士達~
様々な仮面ライダー達が己の信念と目的の為に戦いあう世界・ゼノアース。
苛烈を極めるライダーバトルの中で、謎に包まれた新たなる仮面ライダー・ガイゼルが姿を現した。
その圧倒的な力と策略の前に他のライダー達は圧倒されてしまう。
ガイゼルの目的とは、ダークライダー達の戦いの行方は。一体なんのために戦うのか。
―――何処かの森。
何十体もの怪人達を相手に二人の仮面の戦士が背中合わせで戦っていた。
どちらも刀剣型の武器を構え、襲い掛かる怪人達を断ち切っていた。
「たっく、人気者はつらいねぇ。千両役者ともなるとこうも魔化魍やそれ以外の奴らまで来るとはな」
片や緑と赤のアシンメトリーな外見を持つ派手な姿をした鬼の戦士。
腰部には腰マントを生やし、太鼓のようなバックルを取り付けており、いかにも豪華絢爛さが伺える。
手には音叉が変化した一本の刀が握られていた。
――その名は、『仮面ライダー歌舞鬼』
戦国から受け継いだ音撃の道を繋ぐ現代に生きる歌舞く鬼。
「お前が退治する魔化魍と違って、ファンガイアは知性も文化もある……それでも人を襲う奴らはいるがな」
片や黒と赤の鎧に彩った分厚い鎧に身を包んだ異形の戦士。
まるで吸血鬼とも皇帝とも思えるその威風堂々とした姿には畏怖がかった雰囲気を漂わせる。
片手には月のように白く光る刀身を持つ両手剣が握られていた。
――その名は、『仮面ライダーダークキバ』
古の時代から生きる吸血鬼の一族を支配する闇を統べる皇帝。
二人の仮面ライダーは襲い掛かってくる怪人達へ向けて、刃を振るう。
歌舞鬼は妖怪伝承の大元とも言える魔物・魔化魍の一体である"テング"へと刀・音叉剣で斬り付けて倒していく。
ダークキバは同族でもある吸血鬼・ファンガイアが迫ってくると迎え撃つ形で愛剣・ザンバットソードを振るって一刀両断。
それぞれ人間ならざる怪人達を倒していく二人……本来、仮面ライダー同士である二人は戦う運命を定めつけられている。
だが今は……。
「その首、もらい受けるぞキング!」
「ッ!」
ファンガイアの一体が自身の体から作り出した剣でその首を狙って振り下ろされる。
別の相手に気を取られていたダークキバは身動きが取れず反撃ができない形で首を狩られようとしていた。
だが首に当たろうとしたその瞬間、剣を持っていたファンガイアへと何かが直撃。
「ぎゃふっ!?」
「ああ悪い、手が滑った」
歌舞鬼が悪びれる様子もなく気持ちの籠ってない謝罪を口にする。
ダークキバがよく見ると、ファンガイアの顔面に円盤型アイテム・ディスクアニマルが直撃しており、それによって地面へと倒れてしまう。
抜け目がない彼の行動に少し驚きつつも、目の前の敵を断ち切った後にダークキバは見やる。
「……お前」
「おーっと、王様相手に失礼でございましたか?」
「……」
ダークキバは無言のままザンバットソードを持つ手を上げると、そのまま歌舞鬼へと向ける。
何を考えているのか、と一瞬驚く歌舞鬼を他所にダークキバは握る力を強める。
その瞬間、歌舞鬼の背後に迫っていた怪物……樹木と貝殻で出来た体でできた壁のような魔化魍・ヌリカベを巨大な紋章で拘束する。
ダークキバだけが使える"キバの紋章"によって身動きできなくなったヌリカベを見て、歌舞鬼は言葉を漏らす。
「おっとぉ、凄まじいねぇ」
歌舞鬼はチラリとダークキバへ視線を向ける。
対してダークキバは襲い掛かるファンガイア達へ赤い斬撃を振りかざしながら、歌舞鬼へ言葉を紡いだ。
「先程の借りは返した」
「へへっ、感謝感激雨霰だよ。王様ァ!」
歌舞鬼は足に力を込めて、一気に地面を駆け抜ける。
緑と赤を交えた一つの影が通り過ぎ、ヌリカベの目の前へと辿り着くとそのまま音叉剣を振り上げた。
――一閃、その振り上げた刃が見事にヌリカベを叩き斬る。
まるで鋏で切られた紙の如く真っ二つになったヌリカベは爆炎と木の葉を撒き散らしながら消滅していく。
その様子を見ていたダークキバはザンバットソードを掲げる形で両手で構えると、腰部のベルト・キバットベルトに収まった蝙蝠型モンスター・キバットバット二世にその刀身を噛ませた。
『ガブリッ、ウェイクアップ!』
「――絶滅・ザンバット斬!!」
ダークキバが叫ぶと同時に彼の周囲にいくつものザンバットソードが出現。
無数にも及ぶザンバットソードは夜空を駆け抜ける流星群の如く敵対者へと貫いていく。
それはファンガイアでも、魔化魍でも、関係なく降り注ぐ。
容赦のない死への鉄槌が異形の怪人達へと下された……やがてそこには砕け散った硝子の破片と、串刺しになった瀕死の魔化魍がいた。
ファンガイアならまだしも、清めの音でしか浄化できない魔化魍でも先程の一撃は強烈だったらしく今すぐに身動きができない。
そこに追い打ちをかけるように、歌舞鬼が仕掛ける。
「音撃打・豪火絢爛!!」
歌舞鬼の展開した音撃鼓に目掛けて一対の鬼の頭がついた撥・音撃棒烈翆が叩き込む。
音撃鼓から発せられた清めの音が周囲に広がり、息も絶え絶えな魔化魍達へと炸裂。
穢れた大地で作られた土塊の身体を打ち壊していく。
そうして歌舞鬼とダークキバ、二人の『鬼』は自分達が狩るべき異形を倒していく。
魔化魍とファンガイアという怪人達の成れの果てだった破片が散らばる中、二人の戦士はその素顔を晒した。
「おーおー、結構派手にやっちゃったねぇ。俺達」
歌舞鬼が変身を解くと、長しの着物を纏った黒髪の美丈夫が姿を現した。
肩まで伸ばした漆黒の髪色に赤い瞳が特徴的な青年――『夜鳥神威』はニヤリとダークキバだった男に視線を向ける。
対してダークキバがいた場所には、西洋の騎士を思わせる服装を纏った若い青年が立っていた。
金髪をオールバックに整え、ギリシャ神話の胸像を思わせる美貌を兼ね備えた青年……『キング』が冷静な面持ちで視線を向けた。
「まさか互いの戦うべき敵と相対するとはな……言いたくはないが、俺達も災難な事だ」
キングは足元にあったファンガイアの亡骸ともいうべきステンドグラスの破片を握り、光に透かすように眺める。
例え自分に歯向かった反逆者であれ、同じ種族の同胞に思うところがあるのだろう。
神威はそう思いながら、キングへ気軽に話しかけた。
「で、どうするんだい? 仕切りなおしてやるかい?」
「いや、興がそがれた。お前との決着は別の機会にしよう」
「へぇ、そうかい……で、聞いたか?例の皇帝ライダーの話」
「皇帝ライダーか」
キングは神威との会話で出た『皇帝ライダー』という名前を聞いて、同じ言葉を口に出す。
巷のライダー達が口にするその【謎の仮面ライダー】についての噂は神威とキング、二人のライダーの耳にも届いていた。
その他ライダーを一閃敷く無敵の強さは轟いてはいる……一体その正体が何なのか、少なくとも神威は気になっていた。
「いやぁ、しっかし物好きだよなぁ。基本争い合うしかないライダー同士なのによ」
神威は土塊の山の上へと座ると、呑気そうな様子を見せる。
そんな彼に対してキングはその美形な顔を向けて、神威へ訊ねた。
「そう言えばお前は何故、命を懸けて戦う?」
キングの質問を聞いて、神威は少し思案する。
そして考えた後に神威は面倒な表情で答えた。
「あー、そうだな……売られた喧嘩は買う主義だが、できるなら平和に暮らしたい」
「ほう……オレも似たようなものだな。天下泰平の世、それが俺の目指す覇道だ」
キングは神威が口にした言葉を聞いて、自分自身の掲げる覇道を告げた。
その顔は先程のぶっきら棒な表情を比べて柔らかく見えた……堅苦しい王様という印象を若干変えていく。
そうしていると、どこからか龍のような嘶く声が空から聞こえてきた。
そこには西洋風の城から龍の頭と翼が生えたような外見を持った、建物とドラゴンが融合した怪物が空を飛んでいた。
キングの根城・キャッスルドランの光景を見て、キングは神威へ背を向けて去ろうとする。
「貴様との決着はいずれつける。それまでにくたばるな」
『行くぞ、キング』
傍らに飛び回るキバットバット二世に言われ、キングは地上へ降り立ったキャッスルドランの元へと向かう。
その様子を見て、神威はニヤリと笑い返した後、待機状態のディスクアニマルを拾い上げ、自分も何処かへと去っていった。
~~~~
日本近海、とある名も無き小島。
真白い月夜の荒れ狂う波が海岸の岩場に激しく打ち付ける中、そこに一人の仮面ライダーの姿があった。
――仮面ライダーポセイドン、つい先日仮面ライダークロノスと激闘を繰り広げていた仮面の戦士、その一人である。
「……」
先刻の戦いも記憶に新しいはずの彼は座り込んで次の相手が来るのを待っていた。
戦いの中で生きる欲望の化身は餓えた我が身を満たすために、静かに強者が来ることを待ち望んでいた。
そんな彼の元へ、一つの白い影が舞い降りる。
「ん……今度は誰だ?」
ポセイドンが仮面に覆われた顔を振り向くと、視界に写ったのは一体の仮面ライダー。
全身白いボディ、背中から靡かせる漆黒のマント、腰部にはUSBメモリ型アイテム"ガイアメモリ"が装填されたベルト・ロストドライバー、そして黄金色に光る双眸の複眼と『E』を模した三叉の角。
――その名は『仮面ライダーエターナル』。
26をも地球の記憶を有する白い死神。
エターナルはポセイドンへ首を上げると、男とも女ともどちらともとれるような声で口を開いた。
「アナタが仮面ライダーポセイドン、でいいのかな?」
「そうだが。で、テメェは強いのか?」
「どうだろうね……でも、少なくとも自分は弱くはないと思う」
ポセイドンの投げかけてきた問いにエターナルは受け答える。
その手には専用武器であるメモリスロットが設けられたナイフ・エターナルエッジを指で回している。
エターナルの様子から見て、ポセイドンは感じ取ると立ち上がって愛用の武器・ディーペストハープーンを構える。
戦う気満々の様子のポセイドンにエターナルはエターナルエッジによるナイフ捌きを止めて、その鋭い刃を下した。
「待て、自分は戦いに来たわけじゃない」
「なんだ? 戦わないのか? 命乞いだけはするなよ。時間の無駄だ」
『何故だ』を体で表現せんとする勢いでポセイドンはディーペストハープーンの矛先をエターナルへ向ける。
今にも飛び出して交戦する気満々の相手にエターナルは冷静に言葉を紡ぐ。
「世間に疎い神様気取りのアナタに死神からのお知らせ。皇帝ライダーが姿を現したよ」
「……なんだと?」
興味を持った様子なのか、ポセイドンはディーペストハープーンの刃を下げる。
かの噂の皇帝ライダー・ガイゼルの噂はポセイドン自身の耳にも聞き及んでおり、そのたぐいまれな強さは自分の欲望を満たすには十分なほど相手だと感じている。
いつもなら人の話など聞く耳を持たないはずの孤高の戦人の意外な様子を見て、エターナルは仮面の下で感心した表情を思い浮かべる。
「どうやら彼、リュウガとダークウィザードを助けたみたいだ」
「ほう、このライダーバトル盛んな時代に他のライダーを助けるとはな」
「興味がわいたかい? 皇帝ライダーに?」
エターナルから告げられた言葉を聞いてこちらも仮面の下で好奇心が抑えきれない様子。
……元々生物達の欲望の結晶であるコアメダルを用いた仮面ライダーゆえか、自身の身に宿る欲望を抑制しきれてない。
ポセイドンの変身者が抑えるどころか、欲望という波の流れに身を任せて戦闘能力へ昇華させているから何らかの暴走といった不具合はない……とエターナルは今まで集めた情報を考えて推察している。
そして、ポセイドンは荒波を打ち付ける夜の海の光景を見ながら、仮面の下でニヤリと笑う。
「戦ってみたいものだ。仮面ライダーガイゼル」
「お前は、オレを満たしてくれるのか?」
仮面の下でにやりと嬉しそうな笑みを浮かべるポセイドン。
それがまだ見ぬ強敵と戦える歓びなのは明らかなほど、彼の笑い声が海岸の岩場で木霊していた。
狂喜するポセイドンの姿を見て、エターナルはただ静観するだけ。
「……」
エターナルがふと見上げると、そこで目に写ったのは真白の月。
まるで穢れを知らない真珠の宝石のように純白の光の照らすそれを見て、エターナルはただ静かに佇んでいた。
~~~~
世界は巡る。世界は回る。
変わらぬ仮初の平穏を、その裏で起きている非日常、終わりの知らない闘争を。
だが、それらをひっくり返すべく、動き出したものがいた。
――それは、闇から這い出てきた仮面をつけた異形だった。
歪な形の冷たい体、牙をむいた口、人ならざる虫のような複眼。
仮面ライダーによく似た、しかし決して仮面ライダーならざる存在である異形の怪物はおどろおどろしい声を発した。
「スベテノ 仮面ライダー 二 死 ヲ」
大いなる闇を抱いた『ソレ』が仮面ライダー達の前に現れるのは、そう遠くない。
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