世界の礎
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第二話その五
利も得た、その利で兵も雇い軍も強くしていくのだが。
軍の大臣に任じた狼人のイシュ、初老の彼に言った。
「馬に乗って戦う」
「馬にですか」
「そうだ、その為にだ」
彼に馬の厩舎の中で話した。
「馬具を出す」
「馬具といいますと」
「馬に乗る為の道具だ」
それだというのだ。
「轡、鞍、手綱、鐙といったものをだ」
「出されますか」
「馬の足には蹉跌を施してな」
そうもしてというのだ。
「馬に上手く乗れる、かつ馬が速く長く走れる様にだ」
「するのですか、そういえば」
ここでイシュは言った。
「北には馬に乗って動き働く者達がいるとか」
「その者達の様にだ」
「馬に乗るのですか」
「これからはな、そのうえでだ」
「戦うのですね」
「普段も馬に乗って移動すればな」
そうすればというのだ。
「速い、だからだ」
「馬に乗るのですね」
「遊牧民達の様にな」
彼等のことをだ、義青も話した。
「そうする、しかしだ」
「しかしといいますと」
「馬に乗ることは難しい」
このことも言うのだった。
「非常にな」
「あの、馬に乗れば」
イシュも言った。
「馬は確かに速いです」
「駆けるとな」
「私は乗ったことがありませんが」
それでもというのだ。
「わかります」
「どうなるかだな」
「はい、乗るだけならいいですが」
そうであるがというのだ。
「しかしです」
「馬が駆けるとな」
「馬の上でバランスが取れず」
「風の圧も受けてな」
「落馬します」
「そして落馬するとな」
「かなりの怪我を負いかねません」
こう言うのだった。
「その時は」
「遊牧民達は歩くよりもだ」
まさにそれより先にというのだ。
「馬に乗る」
「子供の頃からですね」
「それ位だ、そして自分達で歩くことなくな」
「常に馬に乗るのですね」
「そうだ、だからだ」
そうした暮らしだからだというのだ。義青はこの世界の遊牧民も同じである彼等のそのことも話すのだった。
「馬に慣れてそれこそ裸の馬にだ」
「乗ってもですね」
「何の問題もなくだ」
「動けますか」
「まさに馬を完全にだ」
こう言っていいまでにというのだ。
「乗りこなす」
「それが彼等ですね」
「だからこそだ」
それ故にというのだ。
「速い、そして強い」
「北では無敵だとか」
「戦えば必ず勝つまでにな」
「そう聞いていますが」
「その彼等の様にだ」
義青は強い声で言った。
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