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金木犀の許嫁

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第二十三話 里帰りその六

「やはりです」
「難しいですね」
「はい」
 まさにとだ、幸雄は答えた。
「やはり」
「ご自身で言われるんですね」
「自覚しているので」
 白華にそれ故にと答えた。
「ですから」
「そう言われるんですね」
「はい、ですが近付くことはです」
「出来ますか」
「少しでも。それと私の名前の幸は家の字ですが」
「真田家のですね」
「幸村様の。ですがそれと共に」
 それだけでなくというのだ。
「実は両親は西本幸雄さんにもです」
「あの、その方は」
 その名を聞いてだ、白華ははっとなって言った。
「かつて阪急と近鉄で監督をして」
「大毎でもでしたね」
「八度リーグ優勝を果たした」
「名将です」
「そうでしたね」
「あの方からもです」
「取られたお名前なんですね」
「そうなのです」
 このことも話した。
「実は」
「そうだったんですね」
「名将であり」
 三つのチームを優勝させたことは伊達ではない、それも合わせて八度もだ。
「人格者でもあられました」
「素晴らしい方でしたね」
「熱意を以て選手を指導した」
「その西本さんのお名前をですね」
「譲り受けています、光栄です」
 夜空に微笑んで話した。
「とても」
「私も知ってますから」
 白華は唸る様にして言った。
「西本さんのことは」
「名将で人格者として」
「そうです、残念ながら日本一にはなれませんでしたが」 
 それでもというのだ。
「日本一以上のものをです」
「残されましたね」
「そうでした、私もです」
「西本さんの様に」
「問題もありました」
 幸雄はこうも言った。
「今から見れば」
「西本さんもですね」
「鉄拳制裁がありました」
「そうでしたね」
 白華も言われて頷いた。
「あの人は」
「選手に何かあれば」
「鉄拳制裁でしたね」
「当時はそうした時代で」
「西本さんもですね」
「殴っていました、怒るとです」
 その時はというのだ。
「非常に怖く」
「しかもかなり怒る人でしたね」
「試合が負けていますと」
 その時はというのだ。 
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