金木犀の許嫁
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第二十三話 里帰りその七
「もうです」
「大変だったそうですね」
佐京も言ってきた。
「あの人は」
「そうでした、もう周りにです」
「いられない位に」
「怒って」
「星野監督みたいに」
「近寄れない位でして」
「退場も多かったそうで」
その数七回に及んだ。
「監督室の電話機もでしたね」
「よく壊されたそうです」
「物凄かったんですね」
「そうでした、鉄拳制裁がです」
「あの人にはありましたね」
「そうでした、今から見ると」
幸雄はそれでと話した。
「そうした問題がありました」
「殴ることですね」
「その拳は鉄より硬く」
そうしてというのだ。
「炎よりも熱い」
「そう言われていましたね」
「そうでした、確かに殴る人で」
そうであってというのだ。
「このことはよくないですが」
「訳もなく、じゃなかったんですね」
夜空が問うた。
「西本さんは」
「厳しい人でした」
それ故に鉄拳制裁もあったというのだ。
「ですが」
「それだけじゃなかったですね」
「よくある暴力はDVで」
そう言うしかないものでというのだ。
「気晴らしに行う下劣なものですが」
「西本さんは教育ですね」
「当時の。選手のことを想って」
「殴っていましたね」
「その為炎より熱いとも言われました」
その拳はというのだ。
「選手への愛情があったので」
「だからですね」
「そうでした。今見ると問題ですが」
「その問題にもですね」
「確かなものがあった」
「そんな方でしたね」
「もうあんな人は出ないかも知れないです」
幸雄はこうまで言った。
「選手を育て共にあり」
「優勝して」
「選手のことを想った」
そうしたというのだ。
「素晴らしい人は」
「そうなんですね」
「だから野村さんともです」
「野村克也さんですね」
夜空は野村さんと聞いてすぐにこの人だとわかった。
「あの人ですね」
「はい」
その通りという返事だった。
「あの人です」
「やっぱりそうですね」
「ライバルでしたが」
「そうでって」
「それと共にです」
「仲よかったんですね」
「お互いに理解して」
そうしてというのだ。
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