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金木犀の許嫁

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第二十三話 里帰りその五

「そうしています」
「そうですか」
「努力しなければ」
 そうしなければというのだ。
「とてもです」
「成長出来ないですね」
「そうです、そして幸村公はとても寛容な方でしたね」
「そうですね」 
 佐京は幸雄の今の言葉に確かにという顔になって頷いた。
「あの人は」
「十勇士はどなたも異端といいますか」
「忍者の中でもですね」
「当時の常識を逸脱していました」
「本当に異端でしたね」 
 佐京も頷いた。
「あの方々は」
「ですが十人全員をです」
「家臣に迎えて」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「義兄弟、友人としてもです」
「家臣としてだけでなく」
「生死まで誓い」
「迎え入れましたね」
「そうでした、異端とみなされる方々も」
「全員そこまでして受け入れたんですね、そういえば」 
 佐京は幸雄の話を聞いて言った。
「俺達のご先祖様の」
「猿飛佐助さんもですね」
「忍者の中でかなり異端でした」
「普通の忍者ではなかったですね」
「幸村様だからこそ」
 それ故にというのだ。
「迎えてくれました」
「そうでしたね」
「はい、本当にです」
 それこそというのだ。
「よかったです」
「そうなんですよね」
 真昼もここで言った。
「十勇士の方々って」
「どの人も凄い個性よね」
「その個性を異端って呼ぶなら」
 夜空に応えて話した。
「異端よね」
「どの人も強烈よね」
「それで幸村様にお仕えするまでは」
「どなたも一匹狼だったのよ」
「浪人でね」
「もうどのお家もね」
 当時の大名達のというのだ。
「家臣として迎えそうになかったけれど」
「その方々をね」
「幸村様は笑顔で迎えられたのよ」
「一人一人」
「十勇士全員をね」
「そう考えたら」
 夜空も言った。
「幸村様は器が大きいわね」
「凄くね」
「ただお強くて頭がよくて」
「普段はお優しくて義侠心があるだけじゃないのよ」
「寛容で器も大きかったわね」
「そうよ、もうね」
 それこそというのだ。
「最高の主君だったわ」
「本当にね」
「確かに石高は低かったけれど」
 真田家は当時十万石程でこのことは維新まで変わらなかった、尚その実高は三万石位だったという。
「幸村様の器はね」
「天下一だったわね」
「そうした意味で素晴らしい方だったわ」
「素晴らしい人ね」
「あの方の様に生きられるか」
 幸雄はしみじみとした口調で述べた。 
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