| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第9話 仮面の戦士

 太陽が昇り始めた頃の早朝。海鳴市にある小さな公園の一角。其処でなのはは一人魔力のトレーニングを行っていた。
 地面に置いた空き缶を魔力弾をコントロールして何回も弾くトレーニングである。
 魔力の向上だけでなく魔力弾のコントロールにも役に立つトレーニングである。が、このトレーニング側から見るとそうは思えないのだが実質かなりキツイ。現になのは自身の顔も徐々に苦悶の表情に変化しだしてきた。

「99……100!」

 100回空中で弾いたのを皮切りに空き缶をゴミ箱へと弾き飛ばす。このままゴミ箱に入ればフィニッシュ達成であった。
 が、空き缶はゴミ箱の角に辺り金属音を奏でながら地面に落ちた。それを見て残念そうな顔をしながらなのはは落ちた空き缶を広いゴミ箱へ入れた。

「はぁ~あ、難しいなぁ」
【ですが、かなりの上達速度です。普通なら半年も掛かる事を数日でこなせるようになった事には驚きです】
「えへへ、何だかやる気でるなぁ」

 例えお世辞でも褒められるのは嬉しい事だ。なのはは心底そう思えていた。
 その後も基礎トレーニングとして簡単な筋トレ等も行い早朝の特訓は終了した。早朝トレーニングを終えたなのはを出迎えてくれたのは家族の笑顔であった。
 昨夜の出来事は家族には話してない。自身が魔法少女となって各地で暴れている怪獣と戦っているなどと知ればきっと家族は心配する。
 辛い事だが隠し通すしかないのだ。

「お帰り、今日も公園でランニングかい? 張り切ってるなぁ」
「えへへ、今度の体育のテストで良い点取りたいからね」

 尚、公園でのトレーニングに関しては体育のテストに向けての自主トレと言う事にしてある。
 勿論人目を気にしてでの早朝なので眠いなど言ってはいられない。そのせいか普段は苦手だった早起きも出来るようになったのは儲け物とも言える。
 そんな感じでなのはの自主トレーニングはかれこれ一週間は続いた。
 今の所管理局から何の連絡も来ていない。捜索こそしているのだろうがまだ見つけられてないのだろう。
 そんな考えを頭に浮かべながら食事をしようとした時、今朝のニュースが報道されていた。


【此処1週間で突然行方不明となる事件が多発しています。警察も必死の捜索を続けておりますが以前として行方が分かっておりません。行方不明になった人は以下の通りです。

林五郎さん、山野剛さん、本郷猛さん……】


 どうやらニュースでは最近噂になっている行方不明事件を報道していたようだ。だが、その中にある人物の名前があった。

「何! 本郷が行方不明だって!」
「え! あの本郷さんが!?」

 恭也となのはが驚きの声をあげた。勿論他の家族も驚いている。

本郷猛。

 彼はこの高町家とはそれなりに顔の通じた間柄であった。
 城南大学在学の秀才であり、知能指数は600、それに運動神経抜群と正に欠点のない男とでも言えた。
 そんな彼は実は高校時代は恭也と同じ学校の同級生であり良く彼と競い合った事があったのだ。言わば恭也の良き理解者でもあり親友でもあった。
 また、なのはも彼には色々とお世話になった。幼少の頃孤独だった時に良く家に遊びに来て遊び相手になってくれた思い出がある。
 今でも脳裏に浮かぶ幼い自分に向けたあの優しい笑顔を見せる本郷。
 その本郷が行方不明となった。

「警察は捜しているのか?」
「ニュースにまでなっているって事は恐らく総動員で探しているんだろう。だが、それでも見つからないってのは妙だなぁ」

 父士郎が顎に手を当てて考え出す。なにやら一人でブツブツ呟いているようだが此処では聞こえない。それよりも今はニュースで報道された内容が心配だった。
 もしや本郷の身に何か起こったのだろうか?
 気が気でないなのはであったが、今ではどうする事も出来ない現状でもあった。

「そうだ! 立花のおやっさんなら何か知ってるかも知れない!」
「そうだな、立花さんなら本郷のコーチもしていただろうし」

 恭也が思いついたかの様に手を叩く。

立花籐兵衛。

 喫茶店アミーゴのオーナーであると同時に立花モーターズの経営者でもある。そして、本郷のバイクのコーチでもあり良き理解者でもあった。彼なら本郷の行方を知っているかも知れない。

「お兄ちゃん、立花さんの所に行こう!」
「何言ってるんだ。子供のお前が行って何かあったんじゃ危険だろうが。俺と美由紀で行ってくるよ。お前は大人しく留守番してなさい」
「は~い」

 連れて行ってくれないと分かったのかなのはは不貞腐れる。

「そうだ恭也。立花さんに会うんだったら何時かのお礼だって菓子包みを持って行ってくれないか? ささやかな気持ちって奴でさ」
「全く、遊びに行くんじゃないんだよ父さん」

 愚痴りながらも了解する恭也ではあった。
 その後、二人はバイクに跨り立花のおやっさんの経営するアミーゴまで走り去っていってしまった。それを二階から見送るなのは。
 だが、彼女とてそう簡単に諦める性格ではない。机の上に置いておいたレイジングハートを掴み目の前に持っていく。

「行こう、レイジングハート」
【分かりました。ですが今回の件はジュエルシードとは関係ないようですが?】
「本郷さんには昔凄いお世話になった事があるの。だから放っておけないんだよ」
【個人的事情なのですね。分かりました】

 了解したのかレイジングハートはそれ程深く詮索しなかった。
 そのレイジングハートを首に巻き簡単な荷物をリュックに詰めて背負い家を出る。目指すはバス停。移動手段が徒歩ではキツイのでバスに乗って目的地に向かう予定なのだ。
 が……

【時にマスター、旅費の方は大丈夫なのですか?】
「あ!!!」

 レイジングハートのその言葉になのはは気づく。バスに乗るにもお金が必要なのだ。
 因みに今のなのはの所持金は300円であった。これでは流石にバスは利用出来ない。かと言って電車もそれはキツイ。
 どうしようものかと悩んでいた時であった。
 何処からとも無く聞き覚えのあるギターの音色が聞こえてきた。何処と無く悲しげで、儚げな曲が聞こえてきた。

「この音色……何処かで?」
「よぅ、また会ったなぁ。なのは」

 其処に居たのは黒い服にカウボーイハットを被り白いギターを弾く青年こと早川健であった。

「早川さん!」
「どうした? 何時に無く暗い顔しているじゃないか。彼氏とのデートに遅れそうな口なのかい?」
「早川さん、車とか運転出来ますか?」

 いきなりそんな事を聞きだすなのは。そのなのはに健は鼻で笑いながら指を鳴らす。

「おいおい、俺は何をやらせても日本一の男だぜ。車の運転位お茶の子歳々だぜ」
「お願いします! 私を乗せて喫茶アミーゴまで連れてって下さい!」
「おいおい、いきなりだなぁ。喫茶アミーゴって言ったらかなり遠いなぁ」

 何とも渋い対応をしだす健。そんな健を見てなのははじれったさを感じていた。急いで向かいたいのだ。今、こうしているだけの時間すら惜しいのだ

「もしかして早川さん、本当は車の運転出来ないから渋って誤魔化そうとしてませんか?」
「何っ!」
「日本一の男ってのは嘘だったんですね。正直減滅しました」

 そっぽを向きながら言い放つ。その言葉を聞いて黙ってられる健ではない。

「言ってくれるじゃねぇか、なのは。其処まで言うなら何処へでも連れてってやろうじゃねぇか! 地球の裏側でも何処でも連れてってやろうじゃねぇか!」
「本当ですか? 男に二言はありませんからね」
「ったく、末恐ろしい嬢ちゃんだよ」

 一本取られたような顔をする健に向かい満面の笑みを浮かべるなのは。日本一の男を言いくるめる事など彼女位しか出来ない偉業であろう。
 そんな訳で健の自前の車に乗り込むなのは。

「言っておくが、俺の運転は少々荒っぽいぜ。運転中に降ろしてくれなんて言っても聞かねぇからな」
「大丈夫です!」

 シートに齧りつくような態勢でなのはは言う。それを見た健はニヤリと笑った後、力いっぱいアクセルを踏み込んだ。




     ***




 目の前に広がるのは不気味な色をした部屋であった。そんな空間の中、本郷猛は大の字で寝かされていた。

「こ、此処は一体何処だ?」
「気がついた様だな。本郷猛。此処は我等ショッカーのアジトだ。お前は我等ショッカーの怪人として改造される栄光ある人間として選ばれたのだ」
「しょ、ショッカーの怪人だと? 何を訳の分からん事を言っているんだ!」

 本郷は信じられなかった。まるで、出来の悪いSFホラーでも見せられてるかのような感覚だった。
 だが、違った。目の前にあったのは不気味な空間だけじゃない。その周囲を不気味なペイントを施した医者達が揃っている。

(俺は…俺は一体どうしちまったんだ? 確か、俺はついさっきまでおやっさんと…)

 本郷はつい先ほどまでの事を思い出した。
 それはある高原での事。来るべきモトクロスカップに向けて最期の追い込みをしていたのであった。

「うん、良いタイムだ。だがこんなんじゃぁグランプリは狙えんなぁ」

 本郷猛の専属コーチである立花籐兵衛が苦い顔をして猛にそう言ってきた。それを聞いた猛が眩しい笑顔を放って言い返す。

「分かりました。それなら次は後10秒位タイムを縮めてみますよ」
「その意気だ。それ行って来い!」

 立花に背中を後押しされる様に猛が再びコースを走り出した。普段から走りなれた道の険しいコースである。
 が、これを自在に走れるようになればグランプリも夢じゃない。その為の追い込みでもあったのだ。
 そんな時だった。自分の背後から迫る数台のバイク集団があった。明らかに不気味な集団だったのは覚えている。

(何だ? この俺に挑戦しようって連中か? 面白い!)

 普段なら乗らないが今回は逢えてその挑戦に乗る事にした猛はバイクを吹かしてスピードを上げる。それに追いすがる様にバイク集団もスピードを上げだした。
 やがてコースが視界の悪い林方面に差し掛かった頃だ。突如目の前に謎の網が現れたのだ。回避できずにその網に捕まってしまう猛。
 そして、それを見てゆっくりと歩み寄ってくる不気味な集団。其処で猛の記憶は途切れてしまっていた。
 猛の思考は此処で再び不気味な空間に戻される。

「俺を……俺を一体どうするつもりだ!?」
「本郷猛。貴様はこの1週間の間に我等ショッカーの科学人の手により栄光ある改造人間として生まれ変わったのだ。もう貴様はかつての様な脆弱な人間ではない!」
「なっ! 俺が改造人間だと!?」

 猛は驚き自分の体を見た。其処にあったのは緑と黒をイメージしたスーツを纏った自分の姿があった。
 しかも体に妙な違和感を感じる。恐らく既に身体の改造は終了していたのだろう。それが彼等の言う改造人間と言う事なのだろうか?

「今から貴様の体に5万ボルトの電流を流す」
「何!」

 猛は戦慄した。5万ボルトの電流など並の人間では耐えられる筈がない。一瞬にして黒こげとなってしまう。

「普通の人間ならば一瞬の内に黒焦げとなって死んでしまうだろう。だが、お前は改造手術によって風力エネルギーを蓄える事が出来るようになった。そして、今のお前の体の中にはそのエネルギーで満たされているのだ。直ちに電流を流せ!」
「止めろ! やめてくれぇ!」

 猛の声を張った願いも聞き入れられる事はなく、無情にも電流は流れ出した。

「ぐあああああああああああああぁぁぁっ!!!」

 猛の体に猛烈な痛みが走った。が、不思議と体は無事だった。これが改造の影響なのだろうか?

「貴様が痛みを感じるのは、まだ脳改造が住んでいないからだ。脳改造さえ終われば貴様は栄光あるショッカーの一員となれるのだ。直ちに脳改造手術を開始しろ!」

 ショッカーの医者達が各々医療器具を手に猛に近づいてきた。
 その時だった。突如辺りの電灯が消え、警報が鳴り出した。

「大変です! 変電室で爆発が起こりました。何者かが爆発させた模様です!」
「何だと? すぐに原因を調べるんだ!」

 そう言うと戦闘員は勿論医者の全ても部屋を後にして出て行ってしまった。

「い、今なら……うおぉっ!」

 両手に力を込める猛。すると彼を拘束していた鋼鉄製の手枷がいとも容易く千切れたのだ。
 これには猛も驚かされた。

「こ、これが……これが改造された俺の力なのか?」

 自身の力にひたすら驚く猛。すると、其処へ暗闇から誰かがやってきた。其処を向くと、其処には猛の良く知る人物が立っていた。

「貴方は! 緑川博士。貴方は行方不明になっていたんじゃ?」
「本郷君、すまない。私はショッカーの一員として働かされていたんだ。そして、私はショッカーに君を改造人間の候補として推薦してしまった。それが原因でこんな目に合わせてしまって、本当に申し訳ない」
「え? それじゃ緑川博士が! とにかく、此処を早く出なければ……しかしどうやって」

 辺りには既に戦闘員達でひしめき合っている筈だ。下手に出ようとすれば再び捕まってしまう。

「本郷君。天井を破って脱出するんだ。普通の人間なら出来ない事じゃが、改造人間である君なら容易い筈じゃ!」
「本当ですか? よぅし、こうなったらイチかバチかだ!」

 猛は緑川博士を抱かかえると天井目指して一気に飛び上がった。天井のガラスを突き破り外へ飛び出す猛。

「出来た! 博士の言う通りだ。しかしショッカーとは一体何者なんですか?」
「世界中から有能な人材を集めて、動物や昆虫、果ては植物の持つ特殊能力を付加した人間、即ち改造人間を作り出し世界を征服しようとしている悪の集団じゃ。そして本郷君。君はバッタの改造人間として改造されたんじゃ。その脚力は常人の数十倍以上の筈じゃ」
「バッタの……改造人間」

 まともな神経を持つ人間ならまず信じない事だろうが今の本郷なら信じられる話だった。そして、それは即ちショッカーが世界を征服しようと既に世界中に網を張っていると言う事に他ならない事でもあった。
 止めねばならない。これ以上自分の様な悲しい人間を増やさない為にも自分は戦わなければならないのだ。その思いを胸に猛は緑川博士を連れて見知らぬ道をひたすら走り続けた。
 ショッカー達が本郷の逃亡を嗅ぎ付けるまでそうは掛からない筈だからだ。




     ***




 なのはと健の乗った車が峠道を走っていた。目的地であるアミーゴまではもう間もなく着く筈だ。

「しかしそのアミーゴとやらに行って何をするつもりなんだ? まさかこんな遠くまで来てコーヒーを飲むだけってんじゃねぇんだろう?」
「人が行方不明になっているんです。私の知り合いも行方が分からないんです」
「成る程、最近巷を騒がせている失踪事件と絡んでいたのか。面白い話だ。私立探偵としちゃぁ首を突っ込まない訳には行かない話しだぜ……ん?」


 ふと、健は何かを見つけたのか車を止める。それは、目の前を歩く二人の人影であった。
 一人は青年であり、もう一人は老人である。その二人がヨタヨタとこの峠道を歩いていたのだ。

「よぉ、こんな道を歩くなんざ正気の沙汰とは思えないなぁ」
「お、お前! 風見! 風見志郎じゃないか! 良い所に居た!」
「誰の事だ? 悪いが人違いだな。俺は早川健。唯の私立探偵さ」
「何? それにしちゃそっくりってもんじゃないぞ」

 青年が健を見て驚きに包まれていた。そんな時、なのはが青年を見てハッとする。

「ほ、本郷さん! 本郷さんですよね?」
「君は……確か、なのはちゃん? あの恭也の妹の?」
「はい、なのはです! 私が幼い頃良く遊んで貰ったなのはです」
「やはりそうか。道理でお姉さんやお母さんと面影が似てる筈だ。暫く見ない内に大きくなったね」

 そう言って猛がなのはの肩に手を置く。その際、猛の手に猛烈な力が入りなのはの肩を締め上げた。

「い、痛い! 痛いですよ本郷さん!」
「なっ、す、すまない」

 ハッとなり思わず手を離す猛。

(そうか、俺は改造された影響で力を制御出来ないんだ。今の俺には子供と戯れる事すら出来ない体にされちまったって事なのか……畜生! ショッカーめぇ)

 猛が拳を握り締めて思いつめだした。そんな光景を疑問そうに見つめる健。

「どうでも良いが、これからどうするんだお前たち。俺達はこれから喫茶店アミーゴに向かう途中なんだが」
「アミーゴ? おやっさんのところに行くんだな。だったら俺達も連れてってくれ」
「良いぜ。だったら車の後ろに……ん?」

 何かの気配に気づいた健の顔色が曇りだす。それは獣道の向こうから迫る数名の集団であった。

「逃がさんぞ本郷猛! 大人しく脳改造を受けるが良い! そして緑川博士! 我等ショッカーを裏切ったらどうなるか思い知らせてくれる!」
「しまった、もう追いついてきたのか!」

 猛が舌打ちする。だが、そんな中で健となのはの二人はその集団を見て別の意味で驚かされた。

「おい、あいつ等この間砂漠で出会った奴等じゃねぇか」
「本当だ! 甲児さんのマジンガーを狙ってたのと同じですよ早川さん!」

 集団が近づくと猛と緑川だけでなく、其処に居た早川となのはに気づき驚きの声を上げる。

「き、貴様らあの時の!」
「よぉ、つくづく縁があるみてぇだな俺達には」
「ふん、丁度良い! 貴様等二人は抹殺命令が下されたのだ! 探す手間が省けたと言う物だ! ホァッ、ホァッ、ホァッ!」

 両手を挙げて蜘蛛男がそう言う。

「頼む、あんた達は緑川博士を連れて逃げてくれ!」
「って、おいおい。何を言い出すんだよ」
「行ってくれ! 此処は俺が何とかする!」

 無理やり緑川博士を乗せて猛が走るように促す。

「行かせんぞ! 掛かれぇ!」
「イーー!」

 蜘蛛男の命を受けて戦闘員達が一斉に襲い掛かってきた。それを一人で迎え撃つ猛。

「早く、早く行くんだ!」
「ちっ、くたばるんじゃねぇぞ本郷猛さんよぉ!」

 一人戦う猛を残し健は車を走らせる。

「馬鹿め、逃がすと思うか!」
「行かせるか!」

 追いかけようとする蜘蛛男を背後から押さえつける猛。

「お、おのれぇ! 邪魔をするな!」
「少しでも時間を稼がなければ……」

 少しでも健達の逃げる時間を稼がなければならない。その為には此処で足止めする必要がある。そう判断した猛。
 だが、その猛の腕を掴み蜘蛛男が投げ飛ばす。

「ぐぁっ!」

 地面に叩きつけられた猛の口から声が上がる。

「本来なら貴様の捕獲が命令だが、邪魔するようなら抹殺する! 死ねぃ!」

 蜘蛛男の口から数発の毒針が放たれる。咄嗟にそれをかわした猛だが、運の悪い事に足を踏み外し崖下へと落下してしまった。

「うわあああああああああああああああ!」

 叫びをあげながら落下していく猛。それを見た蜘蛛男が鼻で笑う。

「馬鹿め。我等ショッカーに歯向かったからこうなったんだ! それ、急いで緑川博士と早川健、そしてあの小娘を殺しに行くぞ!」
「イーー!」

 そう言って蜘蛛男が先を急ごうとした時だった。何処からともなく笑い声が聞こえてきた。

「だ、誰だ! 何処に居るんだ!」
「俺は此処だ! 悪党共!」

 それは遥か上に生えた巨木の上に居た。赤いスーツを身に纏った一人の正義のヒーローが其処に居た。

「貴様! あの時の……」
「そう、怪傑ズバットだ! あの時は取り逃がしたが、今回はそうはいかん!」
「ほざけ! それはこっちの台詞よ! 今度は貴様を返り討ちにしてくれる!」
「面白い!」

 飛翔し、蜘蛛男達の居る地点に降り立つズバット。

「どう返り討ちにしてくれるのか教えて貰おうか?」
「ふん、その余裕も今の内だ! これだけの数を貴様一人で相手に出来るかな? それに貴様の弱点は既に把握済みだ!」
「何っ!」
「貴様のその奇妙なスーツ。どうやら力の源はそれらしいが、そのスーツには制限時間がある。恐らくもって5分と見た!」
(ちっ、其処まで見抜かれていたとはな)

 舌打ちするズバット。それこそ怪傑ズバット唯一の弱点であった。
 無敵を誇る怪傑ズバットはそのスーツを着用出来る時間は僅か5分しかないのだ。そして、その5分を過ぎればズバットスーツは爆発を起こし、中の居る健は粉々になってしまう。
 かと言って、途中でズバットスーツを解除すれば、そのスーツは唯の服となってしまう。それも、鉛以上の重さを持った唯の足かせとなってしまうのだ。
 その弱点をショッカーは既に掴んでいたようだ。

「どうやら図星のようだな。それ、戦闘員達よ! 今度こそズバットの息の根を止めてやれぃ!」

 蜘蛛男が命じ、戦闘員達が一斉に襲いかかろうとした。正にその時だった。

「待てぃ!」
「何! 今度は何だ?」

 再び声が発せられた。それは別の巨木の上だった。
 其処には緑のスーツに身を固め、赤い目を持った仮面を被った一人の男が立っていた。

「こ、今度は一体何者だ!」
「俺は貴様等ショッカーから人類の平和を守る為に誕生した正義のヒーロー。その名を【仮面ライダー】だ!」

 眼下に居る怪人と戦闘員達に向かい堂々とした声でそう告げる仮面ライダー。突然の出現に辺りでは慌てふためく戦闘員達が目に映った。

「静まれ! たかがもう一人増えただけの事だ! 慌てる事じゃない!」
「とぅっ!」

 声を上げて飛翔し、仮面ライダーもまたズバットの居る場所へ着地する。

「仮面ライダーか、フッ、良い所を持ってかれちまったみたいだな」
「気にするな。あんたが時間を稼いでくれたお陰だ」

 互いに背中を預ける形でそう言い合う。その回りを戦闘員達が取り囲む。

「だったら、やる事は分かってるな?」
「勿論だ。こいつら全員叩きのめす!」
「上等、行くぞ!」

 ズバットの言葉を皮切りに二人のヒーローは一斉に戦闘員に殴りかかった。応戦する戦闘員達だったがズバットと仮面ライダーのコンビの前に次々と返り討ちにあっていく。
 遂には蜘蛛男一人となってしまった。

「残るは貴様唯一人だ! 行くぞ!」
「おのれぇ! 我等ショッカーに歯向かう愚か者めぇ!」

 唸り声を上げながらズバットと仮面ライダーに向かっていく蜘蛛男。そんな蜘蛛男相手に二人は顔面を蹴り上げる。数歩引き下がりながら顔を抑える蜘蛛男。
 それを好機と見るや、仮面ライダーは空高く舞い上がる。

「これでトドメだ! ライダーキック!」

 空中で回転し力を増したキックが蜘蛛男に命中する。それを食らった蜘蛛男が今度は崖下へと落下していった。
 生死は分からないが恐らくこの高さからでは助かる筈がない。そう思えたのだ。
 すると、其処に来てズバットスーツのアラームが鳴り出す。

「どうやら安心の様だな」
「助かった。お前も改造人間なのか?」
「俺はそんな大層なもんじゃない。唯の復讐に囚われた悪鬼さ。それより、お前に聞きたい事がある」
「何だ?」

 ズバットスーツの機能を停止させ、スーツを脱いだ健が仮面ライダーに尋ねた。

「2月2日に飛鳥五郎と言う男を殺した奴を、お前は知っているか?」
「2月2日……飛鳥五郎……すまない、知らない」
「そうか、緑川博士はこの先にある廃工場に隠れている。すぐに行ってやれ」
「待て、お前はこれからどうするんだ?」
「お前が居るなら安心だろう。俺にはやる事がある。悪いが後は任せたぜ」

 そう言うとギターを背負い歩き出す。悲しげな歌を奏でながら早川健と言う男は再び復讐の為に一人歩き出したのであった。

「復讐か……アイツもまた、俺と同じで過去に苦しみを背負っているんだな。だが、俺はこの宿命に負けはしない。必ずこの力を使ってショッカーの野望を打ち砕いてみせる!」

 悪の秘密結社ショッカー。その規模は全世界に及んでいた。
 世界を影から支配する為に世界中から人を誘拐し、改造人間にして世界を恐怖に陥れようとする悪の集団。
 しかし、そんな悪の集団に敢然と立ち向かう一人のヒーローが現れた。大自然の力をその身に宿し、超絶なるパワーで悪を打ち砕く悲しき宿命を背負った一人の男。
 その男の名は本郷猛。そして、彼が変身するヒーローの名前は【仮面ライダー】。
 今、此処にまた一人新たなヒーローが誕生した瞬間であった。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

青年は己の身に起こった不運に戸惑いを覚える。
だが、悪の魔の手はそんな青年とその仲間達の身にも及んでいた。

次回「迫り来る悪魔達 炸裂!ライダーキック」

お楽しみに 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧