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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第2話 脅威のロボット誕生

真夜中に帰ってきた為になのはは兄の恭也に大目玉を食らってしまうもその時に連れていたユーノを見るなり家族全員が彼を揉みくちゃにしてしまった為にそれ程怒られる事はなく無事に住んだのは既に記憶の範疇であり。
それから翌日、毎朝のお決まりの如く皆で朝食をとっている時、何気なくテレビをつけていた事が今回の話の始まりとなる。


『今日で丁度国際平和連合が設立されて100年の日となります。皆様も今日この日を感謝しましょう』


ニュースキャスターが満面の笑みを浮かべて言う。
なのはには何の事なのかさっぱりだった。
確かに国際平和連合なる組織が出来上がっていると言うのは学校で習った気がする。
しかし其処まで大騒ぎする事なのであろうか?


「本当にこの組織が出来上がってから世界は平和になった者だよ」
「え? どう言う事、お父さん」
「なのははまだ教わってないだろうけどね、今から丁度100年前ってのはそれはもう厳しい時代だったって言われてるんだ。世界各地で戦争が起こり、危うく人類が滅亡するかも知れない位まで行った事があったんだ。だから世界各国の首脳達はこれ以上無益な戦いを行わないようにと作った組織がこの国際平和連合なのさ」


士郎が自慢げに語る。
それを家族全員真剣に聞いていた。
どうやらこの手の話は覚えておかないと恥ずかしいようだ。


「でもさぁ、そんな簡単に戦争とかって終わるの?」
「勿論最初はゴダゴダだったさ。だけど皆が必死に努力した結果、世界から主だった戦争はなくなり、こうして平和な世界が来た訳なのさ」
「へ~、お父さん物知りなんだねぇ」


なのはのその言葉に異様に照れる父。
思わず家族全員眉を顰めた。
何せその顔と来たら、目元は垂れ下がり鼻の下は伸びて口の端は釣り下がると言う何とも間抜け面だったのだ。
そんな時であった。
ニュースキャスターが次のニュースを読み出した。


『本日、新しいエネルギーとして注目されていた光子力が遂に一般公開されました。そのエネルギーは凄まじく、微量で膨大なエネルギーが得られる上に無公害と言う正に夢のエネルギーとの報告だそうです。これが実用化されれば世界は枯渇するエネルギー問題から一気に解決される事となります。』


ニュースキャスターが内容を読み、映像が映し出された。
どうやら新しいエネルギーの告知らしい。
その映像に移ったのは例の光子力の実験の場面であった。
ほんの微量のエネルギーで部屋一杯眩く照らしてしまったのだ。
想像以上に凄まじいエネルギーであった。


「新エネルギーかぁ、これが実現化したらもう原子力発電所はお役御免だな」
「そうだな。そうなればエネルギーで苦しむ事もないし、何より無公害ってのが良いよな」


忽ち話題は光子力の事で持ちきりとなった。
恐らく近い未来、光子力は全世界に出回りエネルギー問題は一気に解決する事だろう。
なのはもその光子力に多大な興味を抱きだしていた。


「凄いなぁ、私もそんな凄いの一度見てみたいなぁ」
「だったら、行って見るか?」


なのはの願いを叶えるかの如く士郎が言う。
それを聞いたなのはの目がこれでもかと丸くなる。


「本当? お父さん」
「あぁ、あそこにはお父さんの古い知り合いが居るんだ。多分もうすぐニュースで出る筈だよ」


そう言い士郎はテレビに目を向ける。
それに釣られるように家族全員がテレビを見る。


『それでは、これよりこの画期的な新エネルギーである光子力エネルギーの開発者でもある弓 弦之助教授にお話を伺いたいと思います』


「あ、あれ? 違うのか?」
「どうしたの?」
「お父さんの知り合いって弓教授って人なの?」
「嫌、確か光子力を開発したのは兜博士の筈だが……兜博士、引退したのかなぁ?」
「兜博士?」
「あぁ、父さんの古い知り合いでね、昔は良くあの人の依頼をこなした事があったんだよ」


士郎が自慢げにまた話す。
父の仕事と言うのはなのはには良く分からなかった。
余りその手の事になると教えてくれないのだ。
聞こうとしても何故か応えてくれずそのまま逃げ去ってしまうばかり。
遂にはなのはも聞く事を止めてしまった。
別に知らなかったからと言ってどうこうなる訳でもないのだから。


「まぁ良いか。後でお父さんが兜博士に連絡を入れておくよ」
「有難う。お父さん」
「そうと決まったらさっさとご飯食べないとな。折角の朝飯が冷めちまうぞ」


恭也が笑いながら言うのに皆もまた大声で笑いながら、食事を再開した。





     ***





地球のおよそ7割が生みに面している。
その大海原の何処か、エーゲ海と呼ばれる場所にそれは存在していた。
古代ミケーネ人と呼ばれるギリシャ人の先祖の人々が住んでいたと言われる島「バードス島」
その島に今、とてつもない悪意を持った一人の男が今世界に向かって牙を突き立てようとしていた。
その男の名は、Dr.ヘル。


「Dr.ヘル、機械獣の完成おめでとう御座います」
「うむ」


紫の肌に顔中に白い髭を生やした老人が頷く。
黒いマントを体に纏い手には奇妙な形をした杖が握られている。
そんなDr.ヘルに跪くのはこれまた異様な姿をした者だった。
半分が男、半分が女の姿をした怪物であった。
その怪物が今、彼の前で低く頭を下げていたのだ。


「あしゅらよ、わしは遂にこの機械獣を完成させた。じゃがまだじゃ。まだ完全に完成したとは言えんのじゃ」
「これはご謙遜を。これほどの素晴らしいロボット、最早世界広しと言えど貴方様しか作れない筈。一体何がご不満なのですか?」


あしゅらが驚きながら尋ねる。
現にあしゅらの前には数体の機械獣と呼ばれる巨大ロボットが立っていたのだ。
どのロボットも力強く今にも暴れだしそうな威圧感を放っていた。
これだけの凄さがあるのに一体何が不満なのだろうか?


「うむ、貴様が疑問に思うのも無理はあるまい、此処に居る機械獣達が暴れだせばこのバードス島など一分も経たずに海の底に沈む事じゃろう。しかしじゃ、ワシが求めておるのは他にあるのじゃ。これを見よ」


Dr.ヘルがコンソールを操作する。
すると何も映っていなかったモニターに突如夜の町が映りだす。


「Dr.ヘル、これは一体?」
「世界各地に送り込んだスパイ衛星が捉えた映像じゃ。よく見るが良い」


スパイ衛星が映したと言う映像からは、町一体を何か奇妙なエネルギーが覆い尽くす光景が見えた。
これでは何も見えない。
現に映像からは奇妙なエネルギー体のせいで中で何が起こっているのか見えないからだ。


「この奇妙なエネルギー体をワシは疑問に思い調べた。その結果、このエネルギーはこの世界には存在しない未知のエネルギーだとワシは突き止めた」
「何と、異世界のエネルギーなのですか?」
「驚くのはこれからじゃ」


モニターでは先ほどのエネルギーが消え去り、中から現れたのは一人の少女であった。


「見よ、この娘を。彼奴が持っているのは明らかにこちらの世界ではない未知の技術が使われておる」
「確かに、ですがそれだけならば無視しても良いのでは?」
「馬鹿者、この後じゃ! あの娘の足元にある物を良く見るのじゃ」


映像を拡大させる。
すると少女の目の前に蒼い結晶体が落ちていた。
Dr.ヘルが注目したのは正にこれであった。


「あの結晶体からは膨大なエネルギーが検出された。ワシは気になりそれを調べた。そしてあれの正体を知ったのだ」
「Dr.ヘル、あれは一体何なのですか?」
「あれはジュエルシードと言い、遥か古代に異世界で作られたロストロギアなる物じゃ」
「ロストロギア……とは?」
「貴様が知る必要はない。あしゅらよ! 貴様は直ちに日本に渡りあのジュエルシードを手に入れてくるのじゃ! さすれば我が機械獣軍団は正に無敵の軍団となる」


諸手を挙げてDr.ヘルが言う。
それを聞いたあしゅら男爵は再び深く頭を下げた。


「ははっ、このあしゅら男爵! 必ずやそのジュエルシードを手に入れて参りましょう!」
「それともう一つ、光子力研究所を占拠せよ。そして光子力エネルギーを我が手にするのじゃ!」


そう言うとDr.ヘルは長い階段を下りてあしゅら男爵の前に立つ。
すると持っていた杖をあしゅら男爵に手渡す。


「これはバードスの杖じゃ。これを使い機械獣ガラダK7とダブラスM2を貴様の意のままに操る事が出来る。この2体を使いジュエルシードと光子力エネルギーを手に入れてくるのじゃ!」
「ははぁっ!」


深く一礼をした後、あしゅら男爵は立ち上がりバードスの杖を高く振り上げた。


「機械獣ガラダK7、ダブラスM2! 目覚めよ! そして日本を火の海に沈めてしまうのだ!」


あしゅら男爵の命を受け、二体の機械獣が目覚めの咆哮を挙げる。
開戦の狼煙をあげるかの如くその叫びはバードス島から響き渡ったのであった。





     ***





高町家前では荷物を纏めたなのはが何かを待っていた。
その横にはユーノがチョコンと座っている。


「ねぇなのは、何を待ってるの?」
「お父さんがね、さっき電話したら迎えが来てくれるから家の前で待ってなさいって言ってたんだ」
「へぇ、ところでその例の……光子力って何?」


ユーノが尋ねた。
彼にもその名前は真新しい事なのだろう。
だが、それに対しなのはも困った顔で首を傾げる始末だった。


「う~ん、実は私も良く分からないんだ。今朝ニュースでやってて、凄いエネルギーだって事しか分からないの」
「凄いエネルギー……もしかして、ジュエルシードと関係があるかも?」
「そ、そうかなぁ?」


早合点すべきではないのだろうが違うとも言えない。
とにかく、今は迎えが来るのを待つだけだった。
そんな時、遠くから何かが近づいてくる音が聞こえた。
何かの走る音だ。
それもかなりのスピードの音が―――
何の音だろうと耳を傾けていると、それは突然目の前にやってきた。
突如飛び出してきたのは1台のバイクとそれに跨った青年であった。
それはなのはの目の前に着地して其処で止まる。
余りに突拍子もない光景だったのでなのはもユーノも思わず腰を抜かしてしまう。
目の前に居たのは大型バイクに跨った青年である事は間違いなかった。
上は白いタートルネックの長袖シャツで下は紺色のジーンズを履いている。黒い髪に直角に曲がったもみ上げが特徴的で太い眉毛をした青年だった。


「あんたか? 電話で言ってた高町って人の娘ってのは?」
「は、はい!」


いきなり尋ねられた者だから若干上ずった声で返す。
それを聞いた青年は少女を見て面白かったのか笑い出す。


「悪かったなぁ、驚かせちまって。お爺ちゃんに急いで連れて来いって言われたもんだからすっ飛ばして来たんだぜ」
「そ、そうなんですか?」


すっ飛ばして来たと言うが、電話をしてまだ30分位しか経ってない。
此処海鳴市から光子力研究所のある静岡までは車で最高時速で走っても1時間弱は掛かる筈である。
それを30分弱で来るとは相当な事だ。
一体何キロ出して来たのだろうか?


「なぁに、ちょいと近道したのさ。そうすりゃ此処までなんてすぐつけるぜ」
「ち、近道ですか?」
「あぁ、ちょいとした獣道なんだけどさ。其処から行けばかなり時間が短縮出来るんだ。ま、俺でなけりゃ行けない道なんだけどさ」


青年が自信満々に言う。
相当なまでの自信が伺えた。
一体どの様な道なのだろうか?
想像すると少し恐ろしくなる。


「おっと、そう言えばまだ名前を言ってなかったな。俺の名は兜甲児だ」
「私は高町なのはです。宜しくお願いしますね甲児さん」
「あいよぅ、ところで其処のイタチは何だ?」


甲児が視線を落としなのはの隣に居たユーノを見る。
しかしフェレットをイタチと間違えた所を見るに余り動物に関しての知識はないように見える。


「甲児さん、この子はユーノって言ってイタチじゃなくてフェレットなんですよ」
「フェ、フェレット? 言い難いなぁ」
「あのぉ、ユーノ君を連れて行っちゃ駄目ですか?」
「別に良いぜ、賑やかな方がお爺ちゃんも喜ぶだろうしな」


不安げに尋ねたなのはに甲児は笑いながら言ってくれた。
その笑顔になのはは安堵する。
初めて会った時は少し怖い人かと思えたがその実はとても気さくで優しい兄貴分の様な人であった事が分かった。


「さ、乗りな。時間が勿体無ぇや」
「あ、はい」


頷き甲児の手を借りながらバイクの後ろに跨る。
ユーノはなのはが背負っている鞄の中に入る。
下手にくっついていたら振り落とされる心配がある。


「よし、んじゃ行くぜ。しっかり掴まってろよ、振り落とされても助けてやらねぇからな」
「え? それってどう言う―――」


言葉の途中で突然バイクは走り出した。
それもものすごいスピードだ。
軽く80キロは出てると思う。
そのスピードのバイクにしがみつくのはかなり大変な事だった。
しかもそれだけにあらず、何と一般道からいきなりデコボコの獣道を走り出したのだ。


「うぎゃっ! あうっ! えひゃっ!」


物凄い揺れに必死にしがみつきながら口から声が出る。
その声が気になったのか甲児はなのはの方を見る。


「しっかり口を閉じておきな。でないと舌噛むぜぇ」

笑いながら言っている。
これだけの揺れにも関わらず甲児は眉一つ動かさない。
それどころかこの揺れを寧ろ楽しんでいるかの如くだ。
相当の運転技術があるように思われる。


(な、なのはぁ……僕このままだと意識が飛んじゃうよぉ)
「そ、そんな事言ったって~」
「あん? どうしたんだぁ」


バイクを止めて甲児がなのはの方を見る。


「え? 何がですか?」
「何がって、さっき誰かと話してたみたいじゃねぇか。一体誰とだ?」
「誰って、ユーノ君とですけど」
「ユーノって、あのフェレットとぉ!」


今度は逆に甲児が驚かされた。
何せあのフェレットとか言うユーノと話してたとか言うのだから甲児もそりゃ驚く訳である。


(小さい子は夢を見るっつぅけど、最近の子供の発想にはついていけそうにねぇや)


溜息をつき頬を掻きながら甲児はそう思っていた。
確かに自分も小さい頃は動物と話が出来れば良いととは思った事はあったがそれが出来ないと気づいたのは自分が小学校に入った頃の事だ。
背丈から見るになのははもう既に9歳位にはなっている。
それなのにそんな事を言うって事は側から見たら頭がおかしいとしか思えない。


「それで、そのユーノは何て言ってるんだ?」
「えっと、このままだと意識が飛んじゃう~って言ってました」
「何だとぉ! イタチの分際で生意気言いやがって! そんなに嫌なら特等席に座らせてやろうかぁ? 何処に居んだユーノは?」
「えっと、今出しますねぇ」


このまま放って置くと結構危なそうなのでなのはは鞄の中に居るユーノを引っ張り出して甲児の前に見せた。
甲児はユーノを受け取り目の前に持っていく。
其処でユーノは目を回していた。


「お、お空がグルグル回ってる~」


そしてそんな事をうわ言みたいに呟いている物だから今度は甲児が逆にビックリしてこけてしまった。


「うわぁ! イタチが喋りやがったぁ! 俺頭がおかしくなっちまったのかぁ?」


頭を抱えて青ざめる甲児。
そんな甲児に対しなのはは少し頬を膨らませる。


「違いますよ。ユーノ君は普通に話せるんです」
「下手な同情は止してくれ! 俺は頭は悪いがちゃんとした常識は持ってるつもりだよ。なのに何でイタチの言葉が分かるんだぁ? 俺一体何時何処で頭おかしくなっちまったんだよぉ!」


頭を抱えてこの世の終わりかの如く嘆きだす甲児。
仕方なく目を回してるユーノを揺すり起こして甲児の誤解を解こうとした。


「ユーノ君、お願い」
「分かったよ、あの……甲児さん?」
「あん、何だよ……ってわぁ! またイタチの言葉が聞こえるぅ!」
「あの、僕こう見えてイタチじゃなくてフェレットです。それから僕にはユーノ・スクライアって名前があるんですよ」
「な、何だ? お前…喋れるのか? でも何で? 九官鳥やオウムみたいな物か?」
「いえ、普通に喋れますよ。ですからもう驚かないで下さい」


ユーノは甲児になのはとの出会いの事や昨晩起こった事などを説明した。
誤解を解くには其処まで説明しないといけないからだ。
本来なら余り部外者に話したくないのだが此処まで知られてしまっては話す他ない。


「つまり、お前が偶々見つけたその……えっと何だ、ジュウマンシッポってのが護送中の事故でこの地球にばら撒かれちまったって事なのか?」
「甲児さん、ジュウマンシッポじゃなくてジュエルシードですよ」
「どっちだって良いさ、しかしはた迷惑な話だぜ」
「すみません」


ぶっきらぼうに言う甲児にユーノは深く項垂れる。
そんなユーノの肩を甲児は笑いながら叩いた。


「悪かったよ、その代わりと言っちゃなんだが、俺もそれ探すの手伝ってやるよ」
「え? 甲児さんが」
「こう見えて俺は結構勘が良いんだ。忽ちバシーンと当ててやるよ」


自信ありげに言うが余り信用できそうにない。
だが声に出すとまた怒られたら怖いのでその事は深く胸の内に仕舞っておく事にする。


「そんで、どうして光子力研究所に行きたいと思ったんだ? まさか君みたいなお子ちゃまが近未来のエネルギーを見学したいだなんて事言う訳じゃねぇよなぁ」
「もしかしたらその光子力にあのジュエルシードが関連してると思ったんです。心当たりはありませんか?」
「何言ってんだよ。光子力ってのは富士山麓でしか取れない新元素ジャパニウムってのを使って作られてるんだぜ。そんなジュエルなんちゃらなんてのは使われてねぇよ」


心外だとばかりに甲児は言い張る。
どうやらユーノの宛ては外れたようだ。
だとするとこのまま光子力研究所に行っても時間の無駄にしかならなそうだ。


「ま、乗り掛かった船だ。それにお爺ちゃんもお前に会いたがってたし、とりあえず俺ん家に上がれよ。其処でお爺ちゃんに説明をしてもらえば良いだろうしな」
「はい、それじゃお願いします。でも、安全運転でお願いして貰っても良いですか?」
「ちぇ、しょうがねぇなぁ」


本当はかっ飛ばして行きたいのだが大事な客人を怪我させては不味い。
仕方なく甲児は獣道をそれほど飛ばさずに駆け下りた。
するともう既に目の前は町となっていた。


「此処まで来れば家まで目と鼻の先だぜ」
(た、助かった~)


甲児のその言葉にホッと安堵するなのはとユーノ。
だが、その時であった。
突如地面が揺れだしたのだ。


「え? 何!」
「これは地震だ。伏せろ!」


急ぎバイクから降りてなのはを下におろし、その上に甲児がかぶさるように横になる。
瓦礫から彼女を守る為だ。
震度はかなり大きく、周りの家々が崩れているのもある。
しかし、それもやがて収まりだし、甲児達は立ち上がった。


「ふぃ~、とんでもなくでかい地震だったぜ。何時ぞやの大震災並だなぁ」
「はい、でも甲児さんの家は大丈夫なんでしょうか?」
「そうだ! お爺ちゃん」


ハッとなった甲児がバイクに飛び乗る。
その後ろになのはも乗ってしがみつき再びバイクは走りだした。
辺りでは正に惨状となっていた。
家の殆どが崩れておりまともに建っている家の方が少ない位だった。


「ひでぇ…無事でいてくれよ」


甲児は内心不安で一杯になったのを必死に振り払った。
あのお爺ちゃんの事だ、きっと無事に決まっている。
そう思いながら甲児は自宅前にたどり着いた。
どうやら自宅は無事らしく特に崩れた跡などはない。


「良かった、無事みたいだ」


安心する甲児。
だが、其処へまたしても巨大な揺れが襲ってきた。


「ま、また地震?」
「違う、この揺れ方は地震じゃねぇ!」


物凄い揺れに不安を感じ甲児は自宅を見た。
すると自宅の下から地面が盛り上がり家を吹き飛ばして何かが現れた。
それは二体の巨人であった。
嫌、唯の巨人ではない、全身を機械で構築された機械の巨人であった。


「えぇ! な、何あの大きな……えっと、ロボットは?」
「あのロボット……前にお爺ちゃんの研究していた設計図と似ている」


甲児はその二体のロボットに見覚えがあった。
片方は分厚い装甲をした如何にも重装甲を思わせる風貌のロボット。
もう片方は耳の方に発電機にも似た物を取り付けたロボット。
その二体が家の地下から飛び出して町の中へと飛び込んでいったのだ。
その後はとんでもない光景があった。
二体のロボットは町を踏み潰し、なぎ倒し、蹂躙していく。
正にこの世の終わりを思わせる光景でもあった。


「酷い…」
「畜生、何だってあんな化け物が家の下から……そうだ、お爺ちゃん!」


巨大ロボットを見てすっかり忘れていたが思い出した。
あれが家の下から出たと言う事は祖父は無事なのだろうか。
急ぎ家に向かった。
其処はもう見るも無残な姿だった。
家は面影を残して居らず、巨大なロボットが飛び出した跡と思われる巨大な穴がポッカリと開いていた。


「ん?」


甲児は穴の中に見えるのを見た。
それは機械の輝きであった。
家の下には巨大な地下室があったのだ。
だが、甲児は疑問に感じた。
自分の家に地下室などあっただろうか?
もしあったとして、一体何を研究していたのだろうか?
甲児はそれが知りたくなってきた。
一体祖父は何を研究していたのかを。
あの二体のロボットとどう関係があるのかを。


「どうするんですか? 甲児さん」
「こうなったら降りて調べてみるしかねぇや」


意を決して地下室へ向かい降りる甲児。
それに続いてなのは達も地下に降りてきた。


「おいおい、何で君まで此処に来るんだ?」
「私も兜博士が心配なんです。一緒に行きますよ」
「ちぇっ、物好きな子だぜ。怪我しても知らねぇからな」


舌打ち混じりに甲児は更に地下室を進んでいく。
其処に見えたのは今外で暴れている二体のロボットに良く似たロボットがガラクタのように捨てられているのが見えた。
これを見て甲児は分かった。
祖父はロボットを作っていたのだ。
それも、戦闘用の巨大ロボットを。


「お爺ちゃんが作っていたのは戦闘用の、それも巨大ロボットを作ってたんだ」
「でも、一体何でそれを作ってたんでしょうか?」


なのはが疑問を投げ掛ける。
それに甲児は首を傾げることしか出来なかった。
祖父は甲児にとって尊敬出来る人物だ。
だが、だからと言って祖父の全てが分かる訳でない。


「一体お爺ちゃんはどうして戦闘用ロボットなんて物を作ったんだ? 今のご時勢国際平和連合ってのが出来上がったお陰で戦争とは無縁の世界になったってのに?」


二人の疑問は募るばかりであった。
とにかく奥に進む他ない。
奥に進むと、其処は巨大な格納庫だった。
辺りにはやはりガラクタが散乱している。
もしかしてあの二体のロボットだけしかないのか?
だとしらたあの二体のロボットにどう対抗すれば良い。
そう思いながら更に格納庫の中を進んでいた時、彼らはそれを見つけた。
其処にあったのは巨大な一体の巨人であった。
姿形は先ほど外に出て行った二体の巨人に似ている。
だが、その姿は先ほどの二体とは違い何処か雄雄しく、また頼もしくも見えた。


「こ、このロボットは一体?」
「来たか、甲児」
「あ!」


声がした。
甲児達は声のした方に顔を向けた。
其処には一人の老人と少年が居た。
老人は片目が潰れておりとても怖い顔をしていた。
なのはもその老人には驚き思わず甲児の裏に隠れる。


「兄貴、遅かったじゃねぇかよぉ!」
「シロー! 二人とも無事だったんだねぇ」
「あったりまえじゃわい! このワシを誰だと思っとるんじゃ!」


目の前で怖い顔をした老人が高笑いを浮かべた。
それを見て甲児はホッとなる。
だが、未だになのはは怖がっている。


「ん? 甲児、その後ろの娘は誰じゃ?」
「あぁ、この子かい」


甲児に背中を押されて恐る恐るなのはは前に出る。


「えっと、始めまして。高町なのはって言います」
「ほぉ、あの高町の娘か。道理で嫁さんとそっくりに見える訳じゃわい。こりゃ10年後が楽しみじゃのぉ」
「よせよお爺ちゃん。鼻の下が伸びてるぜ情けない」


孫として情けない祖父の姿は余り見せたくないのだろう。
参った顔で甲児はそう言うと祖父十蔵は顔を元に戻した。


「お爺ちゃん、さっき家の中から外に出て行ったあのロボットは何だい?」
「あぁ、あれか。あんなの唯のゴミじゃ、試作品に過ぎん」
「試作品なんですか?」
「その通りじゃ。名前はアイアンZにエネルガーZ。どちらもワシが作り上げたロボットじゃ」


やはりそうだ。
十蔵は巨大ロボットを作り上げていたのだ。
だが、一体何故。


「お爺ちゃん、今外ではその二体が暴れているんだ。何とか此処から止められないのかい?」
「あ~、無理じゃな。あいつら完全に暴走しておる。最早ワシの手に負えんわぃ」
「そ、そんな無責任な!」


なのはの鞄から飛び出したユーノが声を上げる。
それを見た十蔵が興味深そうにそれを見る。


「ほほぅ、昨今の小動物は言葉を発するんかぁ? こりゃ是非とも解剖してみたいもんじゃ」
「えぇ! あ、あのぉ……解剖だけはしないで下さい」


ユーノを庇うようになのはが言う。
そんななのはの事などお構いなしに十蔵がユーノに手を伸ばす。


「お爺ちゃん、そんな事は良いからよぉ。何か手はないのかよ!」
「言ったじゃろうが、あの二体はゴミ同然じゃとなぁ!」
「そんじゃ何か手はあるのか?」
「甲児、お前も先ほど見たじゃろうが、格納庫の奥にあるロボットを」
「あ、あぁ……見た」


十蔵の言う通り甲児は見た。
格納庫の奥には唯一体のロボットが立っていたのだ。
姿かたちはあのアイアンZとエネルガーZに酷似している。


「お爺ちゃん、あのロボットは一体何て名前なんだ?」
「あれこそワシの最高傑作とも呼ぶに相応しいロボットじゃ。全身を超合金Zで身を固め、光子力エネルギーで動く。その様は正しく空に聳える鉄の城。名前を付けるならば、あれこそ脅威のロボット、嫌! スーパーロボット『マジンガーZ』じゃ!」


「スーパーロボット……マジンガーZ」


甲児は再びそのマジンガーZを見た。
物言わぬマジンガーZはまるで甲児を見るかのようにその場に立っていた。
果たして、マジンガーZは動くのか? そして、二体の暴走ロボットにマジンガーZは勝てるのだろうか?




     つづく 
 

 
後書き
次回予告


少年は神にも悪魔にもなれる力を手にした。
その前に立ちはだかるは二体の巨人。
少女と少年は互いに力を合わせてこれに挑む。
果たして勝機はあるのか?


次回「始動、マジンガーZ」


お楽しみに 
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