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偽マフティーとなってしまった。

作者:連邦士官
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4話

 運命のハイジャックまで、たったあと1ヶ月しかない。本物のマフティーのハサウェイは、次々に連邦政府の高官を暗殺している。同時に、少し前のキンバレーの乱により一気に崇高な犠牲者となったダンスマフティーも平和改革路線として一定の影響力を得た。

 何より、サイド3やサイド1などで正しいニュータイプはマフティーであるという与太話になっており、シャア・アズナブルとアムロ・レイの両面性の象徴として人気があるようだ。

 隠れジオン主義者がマフティーダンスを踊って逮捕されたり、本物のマフティーの活動を「シャア・アズナブルとして、母なる地球を人類から解放し、人類に母離れを促す父性的な行為」として支持するものも多いらしい。最早、意味がわからない。

「アインス、最近、よく新聞とかを見ているな。どれを開いてもマフティーマフティーだ。殺されたマフティーは本物だったのかだとか、元々いたマフティーは連邦軍の暗殺部隊で政敵を殺す為の道具だとか。シャア・アズナブルだとか、エゥーゴの意思を継ぐものだとか言いたい放題だ。」
嫌になるねとドライが言うとツヴァイも頷いていた。

「両方があってこそ、崇高なるマフティーが完成する。破壊と創造を司るかつての神と呼ばれた存在と同じ地点に、新たに畏敬を集める存在が生まれるというのに一面しか見ずに語るなどは、マフティー・ナビーユ・エリンに失礼に当たる。」
いや、かぼちゃと本物のマフティーを一緒にしたら、そちらこそマフティーに失礼に当たるだろう。真面目に悩んだ結果とはいえ酒代から逃げるためにやった不純なダンスなのだから。

 耳が痛すぎる為、早めにパイロットスーツを着てギャプランを動かす。戦闘はできないレベルかもしれないが旋回も滑らかになり、多少のMSなら振り切れそうな気もするくらいだ。

「オエンベリ‥‥。」
ギャプランが捉えたセンサーが見せるオエンベリの姿は、まだ復興途中でジム作業機型などが復興作業をしている。

 献花台が設けられ、献花台を背中にマフティーダンスを配信してるのでは無かろうか。狂った世の中だ。

「ギャプランに‥‥この加速乗りこなせたは良いが。」
ジャックはSFSを用意したが運転が下手な人間しかいない為、俺が結局、ギャプランの中で遠隔制御をして向かうしか無いらしい。危なさそうな場合はギャプランの加速+SFSの加速で逃げ切れるからマシかもしれない。

 その二つの加速が合わされば直線的な加速は理論上はEx-Sガンダムなどでもなければ追いつけない圧倒的な推進力を生み出す。制御できると思えないし、一歩間違えば軌道上に幻影は疾るとなりかねない。

「しかし、まさか、メガ粒子砲の修理が出来たとは‥‥。」
ギャプランはメガ粒子砲を撃てるようになり、ミサイルポッドも増設され、SFSもメガ粒子砲以外にバルカンが付いていたのだが、更にオプションでミサイルポッドと砲塔が増設され、ジェガン1機なら討てなくも無いレベルに昇華している。

「しかし、俺には高速機動戦は無理だからケリィ・レズナーかコウ・ウラキかジョニー・ライデンかヤザン・ゲーブルでも連れてきてくれとしか言えんわけだが。」
独り言をしてごまかす以外にできることは無い。操縦できるのと戦えるのは別なのだ。皆がオリヴァー・マイやクェス・パラヤではない。

 オエンベリ軍のMSが目に入る。
抗議の意味を込めて頭はオレンジに塗られ、それ以外は黒く塗装されている。あんなダンスの意味なぞというものは存在しないからこそ、誰でもその意味を詰め込める、見いだせるコンテンツになった。

 ツヴァイの考察は、オリジナルのダンスマフティーが歌ったあの曲に対する考察も様々な人間の解釈というフィルターで加工され、解釈した人間の解釈したい結果を生み出し、インターネットの検索サーバーが提供するサイトの履歴からアルゴリズムが生み出すフィルターが更にそれを鋭角化し人々の思いをより、代弁して行く。

 連邦のちゃんとしていない情報統制により、インターネットのコミュニティはより小さくなり、小さく区切られたコミュニティによりエコーチェンバー現象が発生し、マフティーは正しくなっていく。連邦政府が規制をするほどマフティーの仕組みは深まっていく。

 人々が描いた理想のマフティーと時に暴力により人々を恐怖させるマフティー、マフティー自身が大自然の脅威、大自然への畏怖を表した存在となり、マフティーが地球と宇宙を象徴して自然の前には人間は無力であることをわからせ、地球連邦の傲慢さに反省を促すとも言っていた。

「インテリが考えることはわからん。俺は生きるのに精一杯だというのにみんなは暇なのか。いかんな。」
ツヴァイにそのへんを聞いてみよう。学がないからわからない。

「慣れてきたら余計なことを考える!」
ギャプランに慣れたせいでよくも考える。しかし、マフティーダンスが流行るのも、マフティー・ナビーユ・エリン‥‥ハサウェイの持つカリスマあってのものだ。マフティーの地力とシャア・アズナブルの存在に支えられたブームに過ぎない。

「しかし‥‥。」
ギャプラン特有の加速と本来の航空機としてのバランスの悪さからくる振動を抑え込み、急旋回をする。次はオエンベリ軍のミデアを飛ばしてキャッチする練習が始まる。マニピュレータを確かめる。

 ミデアがこちらに背を向けるとゆっくりとゆっくりとアプローチをするが慎重すぎてミデアを空振ってしまう。残り正味26日間でどこまで仕上げれるかだ。

 ハイジャック本番では人質さえ殺さなければハサウェイを刺激しないはずだ。計画では、ティターンズが破壊したせいで反連邦感情が高い香港に向かわせた後に航空機を飛ばすとなってはいるが、そうすると成功したとしてもケネス大佐を捕虜にはできない。キンバレーは無能だから居てもらわねば困るのだ。

 ならば‥‥
「逆に、オエンベリに降下させて、閣僚達を捕虜にしてしまえばオエンベリを攻撃することはできなくなるか?ケネスを捕虜にして、閣僚をキンバレーに引き渡す。キンバレーは手柄を挙げて、職務を続けるはずだ。」
それに、今の連邦で恐ろしいのはブライト・ノアだが、過去の反政府的組織エゥーゴの経歴からキンバレーの当て馬にされるはず。

 マフティー・ナビーユ・エリンの中身にアムロ・レイ説とシャア・アズナブル説が出てきた今、エゥーゴの元メンバーは監視対象のはずだ。特にニュータイプのアムロ・レイとシャア・アズナブルに一番近かったブライト・ノアなら尚更だ。

 キンバレーは馬鹿だが大佐、ブライト・ノアも大佐である。ニュータイプを恐れる奴らからすればキンバレーを出世させるだろう。同時にキンバレーが出世をすれば世間からの反感が高まり、マフティーダンスの勢いも削げるに違いない。

 そのキンバレーを本物のマフティー(ハサウェイ)が捕虜にすれば、最高の結果ではなかろうか?

 それにジャックは身代金がどうかではなく、生粋のデラーズ・フリート的な部分があるから、これを高潔に言い回せば奴も頷くだろう。ツヴァイらも連邦憎しなのだから、身代金にはそこまで興味もなかろう。


「ジャック、いるか?」
司令官室(悪趣味な地球柄のカーペットの敷かれた部屋に巨大な地球儀とサイドと月と地球を模した天球儀が飾られ、壁にはネオジオンやアクシズに袖付きなどの旗が飾ってある。)に入るとジャックはデラーズの銅像を拭いていた。やはり、こいつは邪悪な存在だ。

「あ、あぁ、掛けてくれ。そこの冷蔵庫に瓶のコーヒーがある。俺はキレイにするので忙しい。」
一応、出しはしたがおじさんが禿げたおじさんの銅像を拭く姿を見せつけられ、はっきり言ってゲッソリとした感覚に襲われ手を付けられなかった。

「で、どうしたんだ?つまらない用事なら今からギレン総帥の銅像を俺は拭かねばならん。」
これ以上、おじさんがおじさんを拭く姿を見たくなかったためにすぐに本題に入ることにした。

「ハイジャックだが、香港ではなくオエンベリに直接降下させてはどうだろうか?これが計画書だ。ツヴァイたちも賛成してくれている。」
資料を渡すとジャックはニヤリと笑った。

「俺がお前を、アインスいやミハイルを呼んだ理由がわかるか?」
そんな物はギャプランを動かせるからに過ぎないだろう。ギャプランがなければ俺はここにいないはずだ。

「耐G体質だろう。他のやつはギャプランなど動かせそうにない。」
フハハっとジャックが笑いだした。

「いや、違うね。あのBAR、ネズミのBARではなく、お前が踊ったBARだ。俺は債務者があんな良いBARに入るのを見て許せなくてね。ついて行ったわけだ。」
まさか‥‥何だこいつは!?やめてくれ…。デラーズ大好きおじさんじゃないのか!?あまりの驚きに喉が渇き、瓶のコーヒーを口につけて飲もうとした矢先にまだジャックは続けた。

「お前が奥に入っていって、あのマフティーが出てきた。そして、踊りながら歌うマフティー・ナビーユ・エリンが出てきた。それにあの歌詞。マンハンターのような部隊にいて、モビルスーツに乗りたかったお前の過去とそして、マフティー軍に参加した今を考えればすぐにわかった。それに。」
ノート型端末を俺の前にジャックは置くと動画サイトを開いた。

「これがその時に撮影をしたダンスだ。気がついたらお前の、お前のダンスを動画サイトに載せていた。あの素晴らしい連邦政府に反省を促すダンスを。歌詞の内容はジオンの系譜についてのものだろう?すぐさま背景をラプラス宣言にしたものなども生まれたのを見るに、ジオン・ズム・ダイクンの清廉さを皆が感じたのだろう。」
勝手に感じてろよ。無許可に動画サイトに載せて背景をコラージュするんじゃねぇ。ジオンはおかしい奴しか居ないのか?

「しかし、ですねぇ…俺にはダンスの動画に対する責任と義務がそうすることで生じる訳だから‥‥。」
続けようとして手で制された。

「言い分はわかるがそれでも、時代がマフティーを、マフティー・ナビーユ・エリンを求めるのだから当然だろう?俺はマフティーの正体がお前、ミハイルと知ってずっと監視するために行動してきた。どっちなのかを見極めるためにな。」
何いってんだこいつ!?会話が成立しないぞ!!冗談ではない。コーヒーの瓶をテーブルにおいた。

「どっちだと思ったんですか?それで。」
思わず怯んで敬語になってしまった。殺されかねないため拳銃を確認する。ジオニストの一人や二人、拳銃で何とかできるはずだ。

「確信した。やはり、君はマフティー・ナビーユ・エリンだ。ダンスはマグレではない。この計画書、無能を出世させ、連邦政府への反感を高めマフティーを加速させるなど常人の俺では思いつかない。」
いや、デラーズやギレンの銅像を毎日5回も拭いて掃除してるお前は異常者だよ。マフティーダンスが独り歩きをしている。いつか見た映画のセリフが脳内でリフレインした。

『身構えている時には、死神は来ないものだ。』
それが響いて脳に染み渡る。最初から計画されていたんだ。コイツラは原作の偽マフティーのチンピラ集団ではなく、本物のマフティーに憧れたテロリスト集団だったんだ。たかが、酔って踊っただけなのに。飲み逃げにならない為に踊っただけなのに。

「正体を‥‥俺がダンスマフティーだと世界に言うんですか?」
恐ろしかった。それをされたら地球連邦と本物のマフティーに捕捉されやしないかと。コーヒーの瓶の結露がツーと流れ落ちるのに合わせて、冷や汗も俺の背中からツーと滴った。

「それは君の、いや、マフティー性に反する。君がやろうとした。誰もがマフティーとなり、連邦政府に反省を促す崇高なる理念とジオン・ズム・ダイクンがなし得なかった清廉さの伝播が出来なくなる。マフティーは謎のままに、マフティーはマフティーでなくてはならないのだ。」
皆がマフティー・ナビーユ・エリンになれれば、それはニュータイプへの変革の前段階だろ?私にはわかるとまでご丁寧に続けて。

「何故そんなに、俺を買い被るんですか?俺は単なる地球に魂を惹かれた俗物、重力に魂を縛られた俗人かも知れませんよ。」
少しでも、危険人物からの好感度を下げねば大変なことになる。思い込みが激しすぎて怖すぎる。

「地球に、重力に魂を縛られた俗物はそうは言わん。やはり、君は高潔な戦士だ。俺がそこまで高潔な戦士にあったのはソロモンの悪夢のアナベル・ガトーやエゥーゴに参加した時にあったクワトロ・バジーナいや、シャア・アズナブル以来だよ。」
勝手に好感度が上がっていく。何なんだこの動きは。

 そして、その後も押し問答をして部屋に帰るときにはギャプランを操縦したあとより、汗まみれになっていた。
 
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