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金木犀の許嫁

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第九話 忍者は人を殺さないその八

「そこで人は止まるのよ」
「人を嗤って満足して」
「そこでね、それが楽しいと思ったら」
 そうであるならというのだ。
「もうそればかり楽しんで」
「努力をしなくなって」
「本当にね」
「そんな人になりますね」
「実際手首に入れ墨なんて入れてたら」
 真昼は曇った顔で話した。
「まともなお仕事には就けないわよ」
「在宅ワークでもないとですね」
「在宅ワークだってね」
 こちらの仕事もというのだ。
「まともじゃないとね」
「やっていけないですね」
「手首、見える場所にね」
「それだけで普通会社に採用されないですね」
「面接で見られるから」
 採用を決める際のというのだ、
「普通にね」
「そうですよね」
「人間性を見られて採用を決めるのに」
「そんな見える場所にあったら」
「まともな企業なら誰が採用するか」
「アルバイトでも無理ですね」
「アルバイトで入れ墨入れてる人見たことないでしょ」
 そもそもとだ、真昼は言った。
「誰も」
「はい、ないです」
 白華もそれはと答えた。
「私もです」
「でしょ?もうね」
「そんな人はですか」
「今はまともな人じゃないわ」
「まともじゃないから入れ墨入れるのよね」
 ここで言ったのは夜空だった。
「そもそも」
「そうも言えるわね、まともな人は最初から入れないわ」
 真昼は妹にも答えた。
「だって痛いしお金も凄くかかるし」
「そう簡単には消えないし」
「世間の評判も悪いしね」
「だから入れないわね」
「普通の人は見えない場所にもね」
 服で隠れる様な場所にもというのだ、ヤクザ屋さんと呼ばれる人達もあまり見える場所には入れていなかった。
「入れないわよ」
「そうよね」
「そもそもね」
「じゃあまともにならなかったから」
「成人してね」
 そうしてというのだ。
「そうした人だったからね」
「入れ墨入れて」
「もう完全によ」
「まともな社会で暮らしていけなくなったのね」
「こんな人近寄ったら駄目よ」
 妹そして白華に忠告する様に言った。
「ほぼ確実に碌なことしてないから」
「碌な人じゃなくて」
「そう、見えない場所に入れていても問題なのに」
「見える場所に入れてたら」
「手首とか首筋とかね」
 具体的な場所の話もした。
「入れてたらね」
「アウトね」
「もうね」
 それこそというのだ。
「確実にね」
「そうなのね」
「私はそんなに入れ墨入れた人見たことないけれど」
「いますよ」
 佐京が言ってきた。 
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