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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第43話 鈴々山賊団

太史慈に支度金を渡して、私達一行は幽州に向かうことにしました。

私達は山賊討伐をしながら目的地を目指しました。

旅を始め二ヶ月が過ぎようとしています。

この旅で得たことは農村の荒廃を目の当たりにしたことです。

この時代は住み良いとはお世辞にも言えないと思います。

それでも人々は毎日を一生懸命暮らしています。

私は飢えるなど前世を含めて体験したことがありません。

飢える人々をテレビや新聞などで見るのではなく、間近で目にすると居たたまれない気持ちになります。

私は彼らからすれば恵まれています。

このさき私は戦乱の世を生き抜くことになります。

戦乱の世になれば、今以上に苦しむ人々を目の当たりにするのかと思うと胸が苦しくなります。

それでも私は進まねばいけません。

戦乱の世を生き抜き麗羽と揚羽と幸せな生活を送りたいです。

私のエゴなのは分かっています。

結局、人は自分がかわいいのです。

そして自分の周囲の人々が大切なのです。

それでも私は旅をして見た人々も守りたいと思います。

全ての人を救うのは無理だと思います。

だから、私は少しでも多くの人が幸せを実感できる世を作りたいと思います。





一月かけて目的地である幽州に入りました。

私達は現在、啄郡のとある街に着きました。

日が暮れそうなので、私達は宿を探そうと街中を歩いていました。

「はあーーーーーー。正宗様ぁーーーーーー。疲れたのーーーーーー」

沙和がだらし無い声で私に話しかけてきました。

「沙和。給金下げるぞ」

私はボソッと沙和に言いました。

「それはやなのーーーーーー。正宗様の意地悪ーーーーーー」

沙和は口を尖らせ私に不満を言いましたが、先程のだらけた様子はなくなりました。

沙和を操るにはこの手が一番のようです。

「ははっ!正宗様、きっついなーーーーーー。それぐらいで堪忍したってや。沙和も反省したやろ」

真桜が私に沙和の援護射撃をしてきました。

「別に、沙和をいじめている訳じゃない。沙和がもっとしっかりしてくれれば問題ない」

「正宗様の仰る通りです。沙和、弛んでるぞ」

凪は私の発言に賛同してくれました。

「もう、凪ちゃんまでひどいのーーーーーー」

これ以上、沙和をいじめるのも可哀想だなと思いました。

「沙和、そう不貞腐れるな。最近は山賊狩りでまともな食事をしていなかったからな。今日の夕飯はいつもより奮発するから機嫌を直せ」

「本当なの。やっぱり、正宗様、大好きなのーーーーーー!」

沙和の態度に麗羽と揚羽は白けた視線で見ていた。





「鈴々山賊団のお通りなのだ!どけ、どけっぇーーーーーー」

威勢の良い声が聞こえたので、その方向を見やると豚に乗った女の子が蛇矛を振り回して、子供達を先導して街の中心部を走り抜けていきました。

「待ちやがれぇーーーーーー!あの糞餓鬼どもが・・・・・・。毎度毎度、食い物を盗んで行きやがって・・・・・・」

中年の男が項垂れながら愚痴を言いました。

彼の言葉から察するに、先ほどの子供達は泥棒を働いたようです。

それも今回だけではないのでしょう。

「おい、あの子供達はなんなのだ」

「はぁ、あいつらか。この街の悪ガキだよ。悪ガキはどうでもいいさ。問題はあいつらじゃなくて張飛だ。賊に親を殺されて、街のみんなも大目に見ていたが、もう許せねぇ!」

男はもう我慢の限界だと言わんばかりに拳を振り下ろしました。

「お前、さっき張飛といったな!」

私は張飛という言葉に反応し、男に掴み掛かった。

「・・・ああ、あの豚に乗って先頭走っていたのが張飛だ」

男は私のいきなりの行動に混乱していました。

あの変な豚と蛇矛に既視感を抱いていたが、まさか先程の女の子が張飛だったとは・・・・・・。

張飛をスカウトするしかないです。

張飛が士官すれば、この街の人達も張飛に悩まされることがなくなると思います。

ふふ、はははははっ!

張飛は麗羽に士官させることにします。

麗羽なら張飛のお姉さんとして仲良くやっていけると思います。

幸先良いです。

麗羽配下の武官の人数を厚めにしておく必要があるので渡りに船です。

「この私に張飛のことを任せてくれないか?私は劉ヨウというものだ。これまでも山賊を倒してきたので問題ない。それに張飛はまだ子供だ。できれば、正しい道に導いてやりたいと思う。駄目だろうか?」

私は男を放すと張飛の件を任せて貰えるように頼んだ。

「劉ヨウ・・・。もしかして、あの劉ヨウ様ですか?地獄の獄吏と呼ばれる山賊が恐怖する武人で有名な」

山賊狩りをやりすぎましたかね。

山陽郡の麒麟児より、地獄の獄吏が板について来た気がしないでもないです。

「そうだ。私がその劉ヨウだ」

「それなら安心だ。俺達も張飛のことは手を焼いていたんです。張飛の奴はあんななりですが、腕っ節が強くて街の男衆総出でも手が出せなくて困ってたんです」

「それなら話は早い。明日の夕刻にでも張飛の家を案内してくれないか?」

私が明日の夕刻にしたのは、今日はみんな疲れているだろうと思ったからです。

明日の朝から昼では、張飛を見つけたとしても街中での戦闘になりかねないです。

それでは街の人達に迷惑がかかります。

張飛も夕刻には自分の家に戻ると思います。

「問題ないです。劉ヨウ様達は宿は決まってらっしゃるんですか?」

「まだ決めていない。これから探すつもだったんだ」

「それならお任せください。手頃で良い宿を紹介させて貰います」

普通、こういうシチュエーションで宿を紹介するなら宿代はタダのような気がします。

この男、ちゃっかり商売しています。 
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