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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第131話 行こうぜグルメ神社!食運アップを目指して!

side:イッセー


 ディオドラとの決闘の日が決まった、一週間後らしい。


 ただ悪魔の上層部にこの話が漏れてしまったらしくゲストとして魔王や権力のある悪魔も呼びたいと言われたらしい。


 見世物になるのは良い気分はしないがあくまで俺の目的はディオドラとの決闘だ。なにかを要求してきたわけじゃないので承諾した。


 そして決闘の日が近づく中、俺は皆を集めてある提案をした。


「グルメ神社?」
「ああ、決闘前の願掛けに行こうなって思ったんだ。ここ最近は美味い物も食ってないし皆の気分転換にもどうかなって思うんだけど?」
「良いじゃない、私も雑誌とかで出てて行ってみたいと思ってたのよね」


 リアスさんは賛成の言葉を言うと全員が頷いた。ただティナだけが残念そうにしていた。


「イッセー、その日私仕事だわ……しかも丁度グルメ神社の」
「ありゃりゃ」


 どうやらグルメ神社のリポートの仕事があるらしい。


「ティナさん、お土産は買ってくるのでお仕事頑張ってください」
「祐斗君、なら今日はいっぱい甘えてもいい?」
「勿論です」
「やった♡」


 二人はそう言うとハグしながらキスし始めた。リン姉もまあ仕方ないかと言った感じで何も言わなかった。最初と比べると随分と仲良くなったよな、あの二人。


「まあそういう事だから予定を開けておいてくれ」
「分かったわ」


 こうして俺達はグルメ神社にお参りをしに向かう事になったんだ。


―――――――――

――――――

―――


「わああっ!すっごい大きいわねぇ!」


 グルメ神社のあまりにも大きすぎる鳥居にリアスさんが歓喜の声を上げる。


「ここがグルメ神社、確か美食神アカシアの像が祭られている場所なんだよね?」
「パンフレットには『グルメ世界遺産』の一つとして数えられていると書いていますわ。それゆえに人が沢山いますわね」
「ふえぇぇ……どこを見ても人ばかりですぅ」


 祐斗がここに美食神アカシアの像が祭られている場所だと話し、朱乃はパンフレットを見てグルメ世界遺産に認定されていることを知ったと言う。


 そんな場所だからかギャスパーの言う通り凄まじい人の数だ。人見知りなギャスパーには酷な場所かもしれないな。


「それにしてもすっごく大きな土地だし。どこまでがグルメ神社なんだっけ?」
「境内の面積は確か8万平方キロメートルだったな」
「北海道と殆ど同じ大きさじゃない!?通りでこんなにも人がいる訳ね」
「ははっ、ここに来る人間は皆食運を求めてきますからね。運は様々な仕事や立場、結果に結びつくものですから誰でも来るんですよ。年間で90億人は訪れるバケモノ神社ですね」
「まさにグルメ時代の聖地ですね」


 リン姉のグルメ神社の広さはどのくらいかと聞かれたので俺が答えるとリアスさんが北海道と同じ大きさだと驚いた。デカすぎるよな。


 ルフェイの言う通りここはグルメ時代の聖地でもある、皆食運を上げる為にここに来るんだ。


 食運というのは良い食材に出会える運だ、それが高ければ人生は成功するとさえ言われている。


 故に美食屋や料理人、商いやこの世界独自の職業の『グルメ〇〇』など様々な人間が足を踏み入れるパワースポットなんだ。


「じゃあイッセーも来た事があるの?」
「いや実は無いんだ。あの頃の俺は反発心もあって運に頼りたくないって思ってたからな」


 リアスさんが俺は来たことがあるのかと聞いてきたが無いと答えた。本当に昔の俺は変に意地を張っちまうガキだったな。


「ただ皆と色んな経験をして俺も考えを改めた。運も実力の内、特に先日のヴァーリとの出会いで奴が何もしなかったのは本当に幸運だったからな。ディオドラとの決闘の願掛けも併せて一度は来てみようって思ったのさ」
「なるほどね。なら今日はしっかりと食運を上げて行かないといけないわね」


 俺の言葉にリアスさんは納得した様子を見せる。


「それにしても不思議な場所ね、こんなにも聖なる力を感じるのに悪魔である私達にダメージがこないわ」
「食は人間も悪魔も動物も平等にするものですからね。差別はありません」
「それは嬉しいわね。対策用のアイテムが無駄になっちゃったけど」


 リアスさんの話ではどうやら悪魔は聖なる場所に近づくとダメージを負ってしまうらしいがここではそうはならないらしい。


 俺はその原因が食は平等だからだと答えた。悪魔だろうと食は食、生物にとって必要なものだ。そこに差別なんてないんだ。


「ねえねえイッセー君、あっちに屋台がいっぱいあるよ!」
「早く行こう!」
「落ち着けって、二人とも」


 屋台を見て騒ぐイリナとゼノヴィアをなだめながら俺達は屋台が並ぶエリアに足を踏み入れた。


「前に言ったグルメビーチも凄い屋台の数だったけどここは更に多いね」
「腹が減る匂いばかりだな。おっ、酒も売ってるじゃないか」
「こらアザゼル、教師になったなら少しは控えなさい」


 祐斗は前に行ったグルメビーチよりも屋台が多いと感想を言った。めざといアザゼル先生がお酒を売ってる屋台を見つけて目を輝かすがリアスさんが注意する。


「まあ今日くらい良いじゃないですか。先生、奢りますよ」
「えっマジで!?やったぜ!」


 俺の奢るという言葉にアザゼル先生はお酒を売ってる屋台に走っていった。


「もうイッセーったら、普段はそんなに甘やかさないでしょ?一体どうしたの?」
「まあまあリアスさん、今日くらいは良いじゃないですか。ほら、あそこに美味そうな炒め物してる屋台がありますよ」


 俺はリアスさんを連れてその屋台に向かった。


「いらっしゃい!今日は天然の『ガーリップ』を使った新鮮な『モヤシミミズ』があるよ!」
「わぁ、天然のガーリップなんて珍しいですね!」
「モヤシミミズも新鮮で美味そうだな……親父、全部くれ」
「毎度有り!」


 小猫ちゃんは天然のガーリップを見て驚いている。天然物は中々手に入りにくいからな。


 俺はモヤシミミズのガーリップ炒めを購入して皆に分けた。


「うっひゃー、こりゃ美味そうだ。では早速頂きます……」


 俺はモヤシミミズのガーリップ炒めを食べてみる……んー!美味い!シャキシャキのモヤシミミズにガーリップのニンニクの風味が見事に絡んで最高の味わいを出してやがる!


「こりゃハシが止まらなくなる美味さだな!」
「早速良い物を食べれたわね、美味しいわ」


 リアスさんもあっという間に完食してしまった。


「ねえイッセー、あそこに『トロ牛』の串焼きが売ってるよ」
「美味そうだな!」


 黒歌にトロ牛の串焼きを聞いた俺は直ぐに購入しに向かった。


「あむ……んーッ!たまんねぇな!牛肉のジューシィな味わいにオオトロのようなサッと溶けるような脂が口の中に広がっていくぜ!」
「んっ、程よい火加減で最高にゃん♪」


 トロ牛の串焼きを黒歌と共に堪能していく、お互いに食べさせ合ったりしたけどもっと美味くなったぜ。


「師匠!にんにく鳥のから揚げがありますよ!」
「いいじゃねえか!買おうぜ!」


 ルフェイの見つけた屋台からはにんにくの香ばしい香りが漂っていた。にんにく鳥は前に親子丼で食ったけどから揚げもいいな。


「うーん、美味しいです。サクッとした衣に肉汁が溢れてきて堪りません!」
「私にもください、先輩!」
「ほら、あーん」


 ルフェイは笑顔でから揚げを食うと小猫ちゃんが涎を垂らして肩に乗ってきた。小猫ちゃんはにんにく鳥の親子丼にハマってるからから揚げも気になるんだな。


 俺は食べやすいサイズのものを爪楊枝で刺して小猫ちゃんの口に運んであげた。ははっ、一口でいったな。


「んく……『ゴールデンバナナ』と『マシュマロクリーム』、『チョコ噴水』のクレープ最高だし!」
「このかき氷、『ソーダ海』の海水を凍らせたものだね。ほのかな炭酸の風味に『メロロン』の甘さが引き立つシロップによく合うよ」


 リン姉と祐斗はクレープとかき氷を堪能していた。


 黄金に輝くバナナ『ゴールデンバナナ』、雲のように宙を漂うクリーム『マシュマロクリーム』、地面に石油のように埋まってる『チョコ噴水』のクレープか。美味しそうだ。


 祐斗のかき氷は高級ソーダの沸き立つ海『ソーダ海』の海水を凍らせたものにハートのメロン『メロロン』で作ったシロップをかけたものだな。


「このモアイみたいな焼き芋、すっごく甘くて蜜も濃いわね。まるでスイーツだわ」
「こっちの栗も中がトロッとしていて美味しいですわ。皮もまるでパイの生地みたいに柔らかくて食べやすいですわね」


 リアスさんはモアイのような焼き芋『モアイモ』を堪能していた。見た目とは裏腹に繊細な甘さが特徴的なんだよな。


 朱乃は『栗ー夢』という中がクリームのように蕩ける栗を食べているな。あれ火を通すと皮が柔らかくなるからそのままイケるんだぜ。


「うっめぇ!これが『エメラルドドラゴン』のエレラルドワインか!こんな美味いワインは初めてだ!」


 アザゼル先生はなんとエメラルドドラゴンの背中に沸き立つというエメラルドワインを飲んでいた。


 あれって滅多に入荷しないはずなのにと思い亭主に話を聞いてみると何でも酔っ払ったおじいさんが売りに来たらしい。それってまさか……


「はむはむ……それにしても美味しい屋台ばかりですね。流石グルメ神社に出店するだけあって一流のお店ばかりですぅ」
「腕だけじゃここには店を出せないけどな。ここに店に出すには毎月抽選で選ばれた数千店に入らないといけないんだ」
「なるほど、ここに選ばれた時点で凄い強運なんですね」


 体の毛が甘い綿菓子の羊『あメェー』の綿菓子をはむはむしながらギャスパーが辺りの屋台のレベルの高さに驚いていたが、俺はこのグルメ神社で店を出すには毎月行われる抽選に入らないといけないと答えた。


 それを聞いたギャスパーはここに店を出せる時点でかなりの食運を持っているんだなと理解する。


「人は旅行先などワクワクする場所ではつい財布のひもが緩んでしまうからな、ここに店を出せるだけで相当な売り上げを出せるって訳だ」
「でもあの店はそうじゃないみたいよ」


 俺の説明を聞いていたリアスさんが離れた木の下にある店を指差した。そこは賑やかなこの場所には似合わない人のいない屋台だった。


「へぇ、『グル樹の実』を売ってるなんて珍しいな」
「そんなに貴重な実なの?」
「いやグル樹の実はこのグルメ神社に生えてる『美食杉』から取れるからな。しかも500円くらいで売ってる売店もあるから態々こんな場所で3000円で売るのは珍しいなって思っただけだ」


 俺の珍しいというセリフにリアスさんが貴重な食材なのかと聞いてきた、俺は珍しいと呟いた理由を話す。


「美食杉といえば美食神アカシアのコンビである神の料理人フローゼがまな板などに使った非常にありがたい杉ですよね。私もいつかそのまな板を使ってみたいなぁ」
「良い奴だと一億くらいするからな」


 小猫ちゃんはフローゼも使っていたという美食杉のまな板を夢見て目を輝かせていた。この子ならいつかそのまな板が似合う料理人になるんだろうな。


「折角だし買ってみるか。すみませーん」


 俺は店の亭主に声をかける。なんか落ち込んでいた亭主の親父さんは驚いた様子でこちらに振り返った。


「お、お客様!?いらっしゃいませ!」
「グル樹の実を15個ください」
「はい、ありがとうございます!」


 俺はグル樹の実を購入して食べてみる……んっ!?美味いぞ!?程よく熟した実は外の皮はサクッとしていて中はしっとりだ、まるで出来立てのメロンパンを食べてるみたいだな。


「親父さん、このグル樹の実美味いですね!」
「ありがとうございます。自分はグル樹の実にハマってしまって美味しいグル樹の実を皆に知ってもらう為に店を開いたんです」


 なるほど、このグル樹の実は親父さんが厳選したモノなのか。熟していないと青臭かったり苦みが強いことがあるからな。


「気に入ったぜ。ここにある奴全部くれ」
「えっ!?全部ですか!?」


 俺は店にあるグル樹の実を全て買い占めた。他に人はいないから別にいいよな。


「ありがとうございましたー!」
「ふう、良い買い物をしたぜ」


 美味しいグル樹の実を皆で堪能した後俺達は水が湧きたつ大きな手水舎に来ていた。


「うわぁ!?大きな手水舎ですね!なんて清らかなオーラが出てる場所なんでしょうか!」
「まるで水の山ですぅ」


 アーシアが神聖な雰囲気が出るこの場所を感じ取ったのかテンションを上げていた。ギャスパーは沸き立つ水を山のようだと表現する。


「ここは聖なる水が湧きたつ場所『ホーリーウォーター』、参拝客たちはまずここで手や口を漱ぎ体を清めて巡礼の旅に出るんだ」
「巡礼の旅?」
「ああ、アカシアのフルコースをまつった場所を回るんだ」
「ええっ!?アカシアのフルコース!?」


 アカシアのフルコースと聞いてリアスさんや皆が大きなリアクションを見せた。まあ普通ならそんな反応をするよな。


「ははっ、期待させて悪いけどただフルコースがなんなのかは記されていないぞ」
「まあ普通はそうですよね」
「そもそも私達って少しはアカシアのフルコースの名前を知ってるよね」


 俺の説明に小猫ちゃんはそりゃそうだといった顔で納得する。黒歌は前に聞いたアカシアのフルコースのデザート『アース』と俺が狙ってるメインデッシュ『GOD』のことを話した。


「いずれアカシアのフルコースも全て見つけ出してやるさ。今日はあくまで食運を上げるための旅だ。まずはメインデッシュ以外の食殿を周り最後にアカシアの像が祭られている本殿に向かうぞ」


 俺は今日の予定を皆に説明する。


「でもイッセー君、こんな広い場所をどうやって回るの?」
「北海道くらいの大きさの土地ですよ、まさか歩いて回るのですか?」
「それだと何か月もかかってしまうから今日は足を用意してもらった」


 祐斗と朱乃はこの滅茶苦茶広い場所をどうやって移動するのかと聞いてきたので俺は目的の物がある場所に向かう。


「すみません、予約していたイッセーですが……」
「イッセー様ですね。お待ちしておりました」


 俺はなんか作画が簡単な女性に話しかける。すると彼女は何かを取りに小屋の中に入っていった。


「イッセー君、なんかあの女の人まん丸だったね」
「失礼だぞ、イリナ」


 そうこうしてると女性は大きな羊を数匹連れて戻ってきた。


「コイツは『タクシープ』、時速150キロで走る羊だ。コイツなら直に回れるからな」
「だ、大丈夫なの?」
「安全運転だから大丈夫ですよ」


 そして俺達はタクシープに乗って食殿を回り始めるのだった。途中で一回酔ったアザゼル先生がタクシープから落ちたけど割愛するぞ。


 その後俺達は様々な食殿を回って食運を上げていった。伊〇神〇内宮のような大きな場所や厳〇神社のように水の上を船で移動する場所など日本人になじみのある風景が多かったな。


「あら、イッセー。あっちでおみくじが売ってるわよ」
「折角だし寄ってみるか」


 途中でおみくじをしてる場所に着いたので寄ってみることにした。


「あっ、お守りも売ってるし」
「私達が知ってるようなものではないですね」
「ああ、このG×Gでは食に関わるお守りが多いからな。有名なのが『美食万来』、美味なる食材に出会えますようにというグルメ時代を生きるすべての人たちの願いだな。他にも『富食豊穣』、農業水産業従事者の豊作大量祈願……主に農家などの人が好んで買うお守りであっちは『減脂細身』、美容やダイエットなどが上手くいくようにという願いが込められたお守りだ。女性に人気があるな」
「えっ、なら私も買っておこうかしら」
「なんかサニーも好きそうだよな」
「確かに」


 リン姉がお守りを売ってる売店を見つけると小猫ちゃんは俺達の住んでいるD×Dでは見かけない願いの意味が書かれた札を見て首を傾げていた。


 俺がそれぞれのお守りに込められた意味を軽く説明すると美貌やダイエット聞いた女性陣の目が輝きリアスさんを筆頭に買いに走った。


 それを見ていたアザゼル先生はサニー兄も減脂細身のお守りを買いそうだと言い祐斗が同意した。


「先輩、折角なのでこれも買いました」
「おっ、それは『食義開運』のお守りか。料理の腕前が上がるように……良い食材に出会えるように……といった願いが込められた料理人向けのお守りだな」
「はい。あとこっちも買っておきました」
「なになに……『健食子宝』?これって生まれてくる赤ちゃんがアレルギーなど無く何でも健康に食べれるような丈夫な体になってほしいという妊婦さん向けのお守りじゃないか。なんでそんなの買ったんだ?」
「いずれ必要になりますよ……ね♡」


 小猫ちゃんはニコッと笑いお腹を摩った……いやちゃんと避妊してるよな?えっ、してるよね?


「ははっ、高校を卒業したら僕達直にパパになるかもね」
「……」


 同じようにお腹を摩るリン姉を見て祐斗が渇いた笑みを浮かべていた。俺は何も言えなかった。


 因みにおみくじは大凶作だった、なんでも食われる危険性が有り……的な事が書かれていたんだ。


 それは果たして猛獣なのかそれとも後ろで唇をペロッと舐める俺の恋人達なのかは怖くて確認できなかった……


―――――――――

――――――

―――


 その後他の食殿も周り俺達は本堂近くの美食杉の生えている場所を歩いていた。



「はあぁぁ……これがフローゼさんが使ったというまな板の原料になった美食杉……なんて神々しいのでしょうか」
「この辺りに生えてるのは最大級の美食杉だからな。う~ん……」
「どうしたの、イッセー?」
「いや後は本堂だけなんだけどフルコースの前菜に当たる食殿がパンフレットに乗ってないんだ」


 小猫ちゃんは辺りの美食杉をうっとりした目で見ていたが俺はしかめっ面でパンフレットを見ていた。


 それに気が付いた黒歌が俺に声をかけてきたので俺は理由を説明する。


「そういえばまだ前菜の食殿は回ってなかったわね。記入漏れかしら?」
「いやそういう訳でもなさそうだな。なんでだろうか?」
「まあ気にしててもしょうがねぇしまずは本堂に行こうぜ」
「そうですね」


 リアスさんは記入漏れかと言うがそういう訳でもなさそうだ。だがここで考えていてもアザゼル先生の言う通りしょうがないので本堂に向かうことにした。


「おっ、皆見えたぞ。あれが本殿だ」
「なんだか賑やかな声も聞こえてきますね」


 美食杉の生えている場所を抜けるとそこには馬鹿みたいに大きな本堂と今までで一番の人だかりだった。


「わあっ!今日は沢山の人の波を見ましたけど、ここは一番混んでますね!」
「どうやら祭りをしているみたいだな。流石は本堂、人も一番多い」
「賑やかですね」


 大きな本堂の周りにいる人の波……いや海だな。そんな圧巻の光景にルフェイが声を出す。


 祭りをしているらしくあちこちで楽しそうな声が聞こえるな、小猫ちゃんもそんな光景を楽しそうに見ていた。


「アカシアの像はこの本殿の中に祭られている。さあ行こうぜ」


 俺達は最後の目的である美食神アカシアの像を目指して大きな階段を歩いていく。そして本殿に近づくたびに何かを感じていた。


(これはなんだ?何かを食べたわけでもないのに満たされていく気分だ)


 上手く説明できないが体に何かが満ち足りていき力を感じているんだ。これが食運なのか?


 そして階段を上がり俺達の目に映ったのは黄金に輝く人間が皿を持った像だった。


「あっ……」


 それを見た瞬間、俺達の全身に何かが走っていった。


 凄く立派で大きい本殿に対してアカシアの像は等身大の大きさでしかない、なのに俺達には本殿などよりもはるかに大きく見えてしまう。


 俺達はアカシアの像に近づくと無言で手を合わせて彼に感謝をした。


 この人のお蔭でグルメ時代は始まったのだ。俺がこうして仲間達と出会い毎日を楽しく、そして美味しく過ごせるのはアカシアのお蔭だ。


 俺は今までの出会いとこれからの出会いに期待を膨らませつつ手を合わせ続けるのだった。


―――――――――

――――――

―――


「ねえイッセー、私達の食運は上がったのかしら?」


 本殿を後にして階段を降りている際にリアスさんがそう言ってきた。


「んー、多分上がったと思うけど……おっ、丁度良い催しをやってるじゃないか」


 俺は本殿の側でなにかを行っているのを見つけてそこに向かった。


「凄い人だかりね、あれはまな板かしら?」
「中心に包丁が刺さってますね」
「あっ、ティナさんだ」


 リアスさんが人だかりの中心にある大きなまな板を興味深そうに見ていた。小猫ちゃんはそのまな板の真ん中に包丁が刺さっているのに気が付き首を傾げる。


 すると祐斗が仕事中のティナを見つけた。何かの司会をしているみたいだな。


「さあ今年もやってまいりました、年に一度の『食男選び』!!はたして今年は誰が食男になれるのでしょうか?勿論女性も参加大歓迎です!食女になれるかもしれませんよ!」


 なるほど、今日は丁度食男選びだったのか。


「ルールは簡単、ご神木美食杉で作られた巨大なまな板の中央に刺さった包丁を抜くだけです、抜いた人は最高の食運の持ち主と認められます!ただし力だけでは抜けません!木目を呼んで絶妙な力加減でなければ包丁は抜けません!それだけでなく気温や湿度も大きく影響してきますしなにより運が無ければ包丁は抜けないでしょう!」


 ティナの説明の後に何人もの人間が挑戦していったがまったく抜けないな。


 因みにティナは俺達に気が付くとカメラが回ってないタイミングで手を振ってくれた。


 俺と黒歌以外のメンバーも挑戦するが全員抜けなかったな。俺は単純に皆が駄目だったらやろうと思ったから、黒歌は間違いなく抜けるだろうからあえて辞退したようだ。


 その際に黒歌は俺の腕にべったりくっ付いて猫耳を激しく揺らしていた。可愛いよな、ホント。


「うーん、抜けないし」
「バイキルト使ってみたんですけど駄目でした」
「俺の計算が上手くいかないとはなぁ……」


 リン姉は抜けなかったことを残念がりルフェイはこっそり魔法を使っていたようだが駄目だったみたいだ。アザゼル先生は木目を読んでみたようだが上手くいかなかったらしい。


「筋力アップする魔剣を使ってみたけど駄目だったね……」
「ムキになってSDモードになっちゃったけど無理だったわ……」
「スタンドでも無理でしたぁ……」


 ヒートアップしたのか珍しく祐斗やリアスさん、ギャスパーも能力を使ったみたいだ。いやいかんでしょ。


「なんで私は失格なんだ?ただデュランダルを抜こうとしただけなのに……」
「私だって黒い靴履いただけなのに~」
「余裕でアウトだ」


 しまいにはゼノヴィアとイリナはまな板を壊そうとしたので俺が止めた。二人の頭には大きなたんこぶが出来ていた、お仕置きの拳骨だ。


「じゃあ次は私が行きますね」


 今度は小猫ちゃんが挑戦しに向かった。


(わあ、これが美食杉のまな板……なんて均等で綺麗な木目なんでしょうか、これで料理を作ってみたいです。でも今は包丁を抜くことに集中しないと)


 小猫ちゃんはゆっくり包丁の柄に手を添えて握りしめた。


(うーん……この感じだと真上に動かそうとしてもまったく動かないですね。まずは少し右斜めに片抜けて少し左側に刃を向けて……うん、良い感じ。そして少し刃先を揺らしてこう……)


 するとあれだけなにをやっても抜けなかった包丁がまるで嘘のようにスッと抜けてしまった。


「あっ……抜けちゃった」
「ぬ、抜けたーッ!なんと包丁を抜いたのは小さな女の子です!今年の食男ならぬ食女は彼女で決まりです!」


 キョトンとする小猫ちゃんを尻目にティナがテンションを上げてそう実況する。


 ティナは仕事中なので小猫ちゃんの名前は出さずに初対面のように呼んでいた、流石プロ意識が違うな。


「包丁を抜いた小猫さんには境内で使える食券一年分をプレゼントします!」
「ありがとうございます!」


 小猫ちゃんはスタッフから食券一年分をもらい笑みを浮かべていた。前にテレビ取材を受けたことがあるからか何人かは見覚えがあるなと呟いていたが流石に完全には分からないようだ。


 まあ俺の予想では近い内に誰もが知る有名人になると思ってるけどな。てかなって当然だろう、小猫ちゃんなら。


「続きまして『探せ!当たりのグル樹の実!』の説明をさせていただきます。このグルメ神社に数十万本は生えている美食杉、通称『グル樹』ですがこの時期になると金の種が入った実が一つだけ生ります。それを見つけ出せた人がもう一人の食男になります!」
「金の種?そういえばさっきイッセーに貰ったグル樹の実から出てきたにゃん」


 黒歌が胸から金色の種を出して皆に見せた。ていうかどこにしまってるんだよ。


「な、な、な!?何と開始早々イキナリ見つかってしまいました!見つけたのは和服の美女です!」


 黒歌が見せた金の種を見た観客たちは大いに盛り上がった。この姉妹食運が高すぎるな。


「黒歌さんにも食券をプレゼントします!おめでとうございます!」
「にゃはは、ありがとうね。折角だしこの食券は皆で使ってよ」
「そうですね、私達じゃ使い切れませんし勿体ないので私のも使ってください」


 黒歌と小猫ちゃんはこの場にいる人達に食券を分けることにしたようだ。まあ滅多に来ないしその方が良いよな。


「やったー!残りの屋台を全部回っちゃおうよ!」
「ああ、全部食ってやろうじゃないか!」
「よっしゃ!またエメラルドドラゴンのワインを飲むぜ!」
「まったく……」
「先輩!行きましょう!」
「皆で楽しむにゃん♪」
「ああ、そうしようか」


 喜ぶイリナとゼノヴィア、そしてアザゼル先生に俺は苦笑するが小猫ちゃんと黒歌に手を引かれて俺も皆の輪の中に入っていった。


 そしてこの日グルメ神社は多くの人たちが美味しい物を味わい笑顔にあふれる素敵な日になったんだ。


 余談だがグル樹の実を売ってた屋台に挨拶に行ったら案の定繁盛していた。人間って現金だよな。


 さあいよいよディオドラとの決闘だ。アーシアを守れる力があるって証明してやるぜ!

 
 

 
後書き
 リアスよ。今回はネタバレ防止の為に次回予告は控えさせてもらうわ。果たして綺麗なディオドラなのか原作通りの最低なディオドラか予想していて頂戴。


 まあどんな結果になってもイッセーが勝つとは思うけど……下手なことをすると原作以上にヤバイことになりそうなのよね。


 だってここには怒らせたら怖いイッセーの義兄達がいるからね、真っ当な決闘をしてくれればいいけど。

  
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