海底で微睡む
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
狭間-藍 星空の記憶
気がつくと、いつの間にか暗い森の中にいた。
睡蓮の水辺はもうどこにもない。代わりに、足元には柔らかな土と落ち葉の感触。木々の隙間から差し込む光は、もう乳白色ではなく、深い青みを帯びている。
少し歩くと、森が開けた場所に出た。
ふと空を見上げてみる。
——満天の星空。深い、深い、藍色の夜空に、無数の星が瞬いている。
「……さむっ」
思わず両腕で自分を抱きしめる。白い世界では感じなかった寒さが、今度ははっきりと肌に伝わってくる。でも、嫌な寒さじゃない。
この光景に、見覚えがある。
……こんなこと、前にもあったっけ。
そうだ。お母さんとお父さんと一緒に、どこかの山奥までわざわざ車で行って、流星群を観測したんだ。
あの時は四歳だった。車の中でうとうとしながら、「まだ着かないの?」って何度も聞いた記憶がある。お父さんは「もうすぐだよ」って笑いながら答えてくれて、お母さんは毛布を持ってきてくれていた。
確か、あの夜はたくさん流れ星が見えて——
空を見上げた瞬間。
「わ、ぁ……」
一筋の光が、夜空を駆け抜けていく。
そして、もう一つ。また一つ。
流れ星が、まるで私を歓迎するように、次々と空を彩っていく。
ページ上へ戻る