真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第34話 一家団欒。父上はエスケープ
今夜は母上の手料理を十二分に堪能しました。
母上の手料理は最高でした。
猪々子はガツガツと食事に勢を出しています。
「斗詩。そっちの豚の丸焼きを取ってよ。ああ、それとスープも」
「文ちゃん。もう少しゆっくり食べなよ」
斗詩が猪々子に落ち着いて食べるように注意していますが、猪々子は食べることに夢中です。
余っても勿体ないので食欲旺盛なのは構わないです。
凪、沙和、真桜はグループになって、楽しそうに会話しながら食事を楽しんでいるようです。
本当にあの3人は仲が良いなと思いました。
母上と一緒に夕食の用意をしていた麗羽と揚羽は、私の為に食後の甘味を用意しれくれました。
二人が用意してくれたのは、杏仁豆腐です。
私は杏仁豆腐が大好きです。
麗羽と8年来の付き合いですが、料理をしているのを見た事がありません。
その麗羽が料理した杏仁豆腐なので、少し不安がありました。
見た目は全く問題ありません。
私は一口だけ杏仁豆腐を口に運びました。
凄く不味いです。
母上の絶品料理を食べて至福の一時を味わっていた私を一気に現実に戻してくれました。
条件反射で吐こうとしましたが、できませんでした。
麗羽が私を涙目で見ていました。
「正宗様。美味しくありませんのね」
「はは・・・・・・。不味い分けないじゃないか」
私は後に引けなくなりました。
「正宗様。無理を為されなくてもいいんですのよ。私の料理が美味しいはずありませんもの・・・・・・」
麗羽はすっかり元気を無くし、涙目でしょんぼりと俯いています。
母上を見やると満面の笑みで無言の圧力をしてきました。
食べれば良いんでしょう!
食べますよ!
私は自棄になり一気に杏仁豆腐を食べました。
オエエエエェーーー。
不味い!
なんて不味いんだ!
麗羽が作ったものでなければ料理した奴を斬り殺しています。
「麗羽。美味しかったよ」
私は吐きそうなのを気合いで克服し、麗羽に甘味の感想を言いました。
「・・・本当ですの?無理に美味しいだなんて言わないでくださいまし」
麗羽は私の感想を素直に受けようとしません。
「本当だよ。麗羽が作ってくれた料理を美味しくないなんて思う訳ないだろ」
「本当にですね。正宗様。私の作った杏仁豆腐は本当に美味しいんですのねっ!」
涙目だった麗羽は急に元気になりました。
「正宗様。実は杏仁豆腐を沢山作りましたの。好きなだけ食べてくださいまし」
麗羽は鍋一杯の杏仁豆腐を差し出しました。
はは・・・本当ですか?
あんな不味い甘味これ以上食べれるわけないです。
ですが、食べない訳にはいきません。
私が思案していると揚羽が助け舟を出してくれました。
「麗羽殿。次は私の杏仁豆腐を正宗様に食べていただきたいです。麗羽殿ばかり狡いです。その杏仁豆腐はお義父様に食べて戴くのがよろしいのではないでしょうか。お義父様は夕餉も取らずに政務を為さっているとのこと。義娘となる麗羽様の料理を口にすれば、きっとお喜びになられると思います」
揚羽は父上をスケープゴートにするつもりのようです。
父上、お許しください。
私は心の中で父上に安否を祈りました。
「そうですわね。お義父様のことをすっかり忘れていましたわ。こんな遅くまで政務をされていては体に毒ですわね。私の料理で英気を養っていただかないといけませんわね。お義母様。お義父様の処に案内してくださいませんこと」
「麗羽ちゃん。それは良いわね。あの人も多分お腹を空かせていると思うわ。義娘の手料理を食べれないなんて可哀想だと思っていたのよ。あの人の事だから涙を流して喜ぶと思うわ。麗羽ちゃん。一緒にあの人の処に行きましょう」
母上は余程、昼間のことが腹に据えかねているようです。
麗羽と揚羽は美人なのですから、そう思うのは素直な気持ちだと思います。
それに父上にとって最愛の人は母上ただ一人だと思います。
私は今度は父上の援護射撃をすることを止めました。
ここで私が余計なことをして、母上の矛先が私に向くかもしれないです。
麗羽の杏仁豆腐を鍋一杯食べる勇気は持ち合わせていないです。
「はい、お義母様。正宗様。少し出かけて来ますわね」
麗羽はうきうきした表情で私を見ています。
「正宗。揚羽ちゃんの料理もしっかり味わうのよ」
母上は私が麗羽の料理を食べていた時の笑顔を私に向けて来ました。
しっかり食べろということですね。
母上と麗羽は意気投合して、父上の居る政庁の執務室に向かって行きました。
父上、頑張ってください。
「正宗様。どうぞお召し上がりください」
揚羽は私の手に杏仁豆腐の入った皿を渡して来ました。
麗羽の件で杏仁豆腐に抵抗感を感じていた私は恐る恐る口にしました。
「えっ!美味い・・・」
私はつい気持ちを口に出してしまいました。
本当に美味しいです。
「正宗様。私の杏仁豆腐は不味いと思ってらしたのですか?失礼ですね・・・・・・。私が味見もしていない料理を人前に出すわけがありません。お陰でこの一皿しかできませんでしたけど・・・・・・」
揚羽は剥れた表情で私から顔を背けました。
「はは・・・・・・。面目ない。麗羽の料理が不味い」
私が話すのを揚羽は一差し指で口元を押さえました。
「そのようなことは人の居る前で言うものではありませんよ。妻の出した料理は美味いと言って食べるのが男の甲斐性というものです」
揚羽は私に小言を言うと悪戯っぽく微笑みました。
「麗羽殿には私から上手くお伝えしておきます。きっと、お義父様は今頃酷い目に在われているでしょうね」
「ああ、そうだね・・・・・・」
私と揚羽は揃って嘆息しました。
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