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エターナルトラベラー

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エイプリルフール番外編 「夢」その2

「ナツっ!」

バッと布団から上半身を起き上がらせて覚醒したイズミは開口一番ナツの名を呼んだ。

「…ここは…?」

「日向宗家の屋敷だ」

「ナツッ!」

居ても立ってもいられなかったのか、イズミは飛び上がるように掛けるとナツに抱き着いた。

「ナツ…よかった…よかったよぉ…」

「お、おおう。いつになく積極的だなっ」

と言うナツの軽口にいつもなら反撃が有るはずなのに嗚咽を漏らしてただ小さく震えているイズミ。

ポンポンとイズミの肩を叩くとようやく落ち着いたのか恥ずかしくなったようで、なぜか殴られた。

「っぁ…お、お母さんは…」

「…暗部の遺体回収班が見つけたよ」

「そんなっ…お母さん、…お母さん…」

イズミの両目から涙が零れ落ちる。

「俺がもう少し速く駆けつけていれば…」

と言ってイズミを抱きしめた。

「ううん…ナツの所為じゃ…っ…ないよ…むしろナツが来てくれなかったら…私…」

ポンポンと後ろ頭を抱きしめる。

「お母さんが唯一の肉親だったものな…俺ももう両親は居ないけど…」

「…っ!」

俺の言葉に両親が居ない子供は珍しくないと言う忍者の世界の現実を思い出し、ビックリしたのか涙が止まったようだ。

「小母さん…ちゃんと弔ってやろうな」

「うん…うんっ…」

ようやく気持ちもほんの少しだが切り替えられたようだった。以前父親を亡くしている事も理由の一つだろう。

「とりあえず、今日からイズミは俺の家で暮らすように」

「はぁ?なんでよっ!」

「それはお前が俺の嫁さんになったから…あだっ!」

「私が、いつ、あんたの、嫁に、なったっ!」

「痛い痛い痛い…もうちょっと手加減して、これでも俺は一度死にかけたのよ…?」

「…っそうだ、イタチくんっ!」

「…話はイタチだけの問題ではないのだが」

しかし、いつかは知らねばならない問題。

現状でも知り得る事実だけをイズミに伝える。

うちは一族の壊滅。そしてイタチの里抜け。

「そんな…どうして…」

ふらりと倒れ込むイズミを支えるナツ。

「クーデターを企てていたと言う噂もある。…イタチが何を思ってこんな事をしたのかは分からない。が、生き残りはお前とサスケだけだ」

それと張本人でるイタチだが、彼はもう木ノ葉には居ないだろう。

「そんな…」


しばらくするとベッドで休んでいるイズミの元に日向の家の者が用事を伝えにやって来た。

開いたふすまから入ってきた人物は動物のような仮面を着けている所を見ると暗部なのだろう。

「火影様が呼んでいます。どうかご同行ください」

「火影様、が?」

うちはの数少ない生き残り、それも下忍と来れば扱いは慎重にならざるを得ないのだろう。

「俺も行きます」

「君は?」

「俺も昨日の事件には関わっているんで」



そしてやってきました火影ルーム。

三代目とご意見番の二人、そしてあの包帯の男が根のダンゾウか。

「すまんな、すこし昨日の事で聞きたい事があってな」

と三代目。

「あ、はい…」

それから簡単な質問とそれの反応を見ていた。

うちはによるクーデター思想に染まってないかと言う心理テストも兼ねているのだろう。

そして最後に悪者をうちはイタチと定義付け、その憎しみを里の外に向けさせる。

悪役を買って出たのはダンゾウだが、それを止めない時点で火影としての責務なのだろう。

「しかし、二人とも良く逃げられたの」

「イタチはあれで暗部の部隊長を務めた男だ、お前たちどうやって逃げた?」

と、ダンゾウ。

「こうやってです」

「きゃあっ!」

そう言うとナツはイズミをお姫様抱っこで抱えると飛雷神の術で日向の屋敷に飛んで行った。

「これはまさか…飛雷神の術か…」

「新しい世代が芽吹いていると言う事じゃろう。ナツはどことなく今回の事件の真相に気が付いているのかものう」

スッと立ち上がろうとするダンゾウに三代目が待ったをかける。

「イズミは生かす。これは決定事項じゃ。あのイタチから守ったのじゃ、表面通りの実力ではないのじゃろう。それに日向からの手紙も来ている」

「なんと?」

「うちはイズミを日向ナツの嫁にするじゃそうだ。今すぐではなくともあやつはうちはでは無くなる」

「ただのこじつけではないか」

「それでも生き残りの恨みはうちはイタチに向いている。そうイタチが仕組んだ事じゃ」

「様子をみる」

「そうか」

今度はダンゾウの退出を三代目は止めなかった。

しかし、これでしばらくイズミの安全が確保されたことには三代目の尽力が大きかった。


火影室から飛雷神で飛んだナツ達。

「ねぇ、昨日の…」

「ん?」

開きかけた口はしかし開かれることは無く…

「ううん、何でもないわ…」

うちはの一族の壊滅。最愛の母の死。

そしてもろもろの事から自分は守られたのだ。

この日向ナツに。

(強くならなきゃ…いつまでも泣いてなんていられない)

だから、これ以上ナツに負担をかける自分が嫌で強くなろうと決めたのだった。





「中忍試験?」

ナツがぽかんと口を開く。

うちはの事件からしばらく経つ。

ようやくイズミもあの事件を飲み込めた頃だろう。

そして下忍として様々な任務をこなし、体も少し大きくなってきた頃、中忍への昇級試験を受けるようにと担当上忍のシズマが話題を振って来た。

「各々が考えて受験票を記入して来い」

解散とシズマの声でその場を辞す。

「うわー、ついにボク達も中忍試験かぁ」

「うれしそうだねスイは」

「そりゃぁ、イズミさんは?」

「まぁ、うれしい…かな。それより、ナツは?あまりうれしそうじゃないね」

「え、そう?」

とスイ。

「ナツは受けたくないの?中忍試験」

とイズミが問う。

「受けたくない…面倒くさい…」

「ど、どうして!?中忍だよ、中忍っ!なりたくないの!?」

ナツの言葉にスイが信じられないと聞き返した。

「死ぬ率が上がるのはちょっと…」

「でも残念ね、中忍試験はスリーマンセル。ナツ、出るわよ」

「えー?」

「今度デートしてあげるわ。…スイが」

「ちょっと!なんでボクなんですかっ!」

「良し頑張る」

「なんかその態度はそれはそれでムカツクのはどう言う事かしら?」


今度の中忍試験は霧隠れの里で行われる。

あまり良い噂の聞かない里だが、中忍試験は持ち回りなので仕方ない。

霧隠れの里に乗り込んだ俺達は中忍試験会場に向かう。

「なんか、雰囲気の悪い里ね」

イズミが周りを見ながらそんな感想を漏らす。

「木ノ葉と一緒にしてはいけないだろう。それに霧隠れは良くない噂が絶えないしな…」

「良くない噂?」

とスイ。

「血霧の里の異名で恐れられてる。その内容を聞けば木ノ葉に生まれてよかったと思えるほどだ」

「そんなに?」

「まぁな…さて、試験会場に着いたようだ」

一次試験の内容は筆記。

うん、全然わからんね。やっぱりうまくカンニングしろって事なのだろう。

イズミは写輪眼を持ってるから大丈夫だろうが、さて、スイは…

と考えているとアオの影にスイの細く伸ばされた影がくっついた。

なるほど、逆影縛りの術か。

この状態でナツが動けばそのままスイの体も動く。つまり俺が白眼でカンニングすればスイにも自動的に伝わる仕組みなのだ。

さて、問題なく一次試験は通過し二次試験が始まる。

二次試験は霧隠れの里の第36演習場。ここで三チーム事に三つ巴で自陣の旗を守りつつ相手の旗を倒す。

最後まで残った1チームが勝ち抜けと言うルールだ。

強そうな敵が居れば協力して当たると言う手も使える。

攻めに入って自陣の旗を取られても意味は無い。どう言う戦略で行くかも重要なのだ。

「と、言う訳なんだが…どうする?」

「スイは守りも攻めも有用性が高いな。影縛りの術が便利すぎだろ」

「はい」

敵の動きを止めると言う技はとても攻守に優れているだろう。

「ナツさんも飛雷神の術が使えますから敵陣から一気に自陣に戻れますね」

とスイ。

「イズミはどちらかと言えば攻めのタイプだな」

「どうして?」

「写輪眼に火遁だろ、攻めずにどうする」

「…そうかも。じゃあどうするの?」

「ボクが守備でお二人がオフェンスで良いんじゃないですか?」

「それが良いか。俺が西側、イズミが東側。はい、これ」

「これは?」

「飛雷神のマーキングされた特別クナイ一応持っておいて」

二つ取り出しそれをイズミとスイに投げ渡す。


作戦は決まった。

「それじゃ、散」


西側にある旗を目指して走る。

途中、二つ気配を感じたがそのまま行かせてしまおう。電光石火で旗を取ってしまえば良い。

「白眼っ!」

遠視の能力で旗の位置を確認。

「多段飛雷神の術」

クナイを力いっぱい投げ、さらに飛雷神の術で投げたクナイに投げたクナイを飛雷神で送り付ける事を繰り返すといくつもの中継を経て相手の旗のすぐそばにクナイが刺さる。

「白眼(笑)をなめるなよっ!」

そのまま一気に飛雷神の術で敵の懐に飛び込むと旗を回収。

「なにぃ、どうやってっ!?」

そのまま飛雷神で自陣に戻ると、敵の部隊がスイの影縛りにつかまっていた。

「ナイスっ!スイ」

「はいっ!」

俺はそのまま手に持った旗を振り回して敵の意識を刈り取る。

ドーンッ

爆音の後噴煙を上げている。

白眼で見ればイズミが戦闘に入ったようだ。

「行ってください」

とスイ。

コクリと頷くと飛雷神の術でイズミの傍へと飛んだ。

「イズミっ!」

東側はまずは自陣の守備を優先したらしい。

そこに一人で突っ込んだイズミの火遁が炸裂していたのだ。

「取ったっ!」

火遁を煙幕代わりに敵に隙を作らせ、その間に瞬身の術で旗を狙ったようだ。

「…援護いらなかったか」



無事に二次試験も合格し、三次試験は一か月後。

その間は準備期間であり、里に帰るも残るも自由。

一応練習用に貸し出される演習場も割り当てられているので帰らなくても問題は無い。

自里との往復を考えれば帰る時間はもったいないと考えるのが普通なのかもしれない。

皆で霧隠れの里に滞在し演習場で修行する。

「三次試験は個人戦。個々のスキルアップが必要なんだろ?なのにどうして三人一緒に修行しているのかね?」

「えっと…」

「うーん…なんかシズマ先生に聞くよりもナツに聞いた方が新しい事を教えてくれそう」

スイとイズミ。

おーい…

まあいい。俺は別に中忍になりたい訳じゃないし。

「で?何が聞きたい?」

「えーっと、そのナツの異様な打たれ強さってどこから来てるの?」

とスイ。

結構な頻度でイズミに制裁を受けているのだが、いつの間にか回復しているナツ。

「そうね…そう言えば…あなたイタチくんに刺されてたよね。…あれは幻術じゃなかった。でももう傷痕もない…どうして…」

「うーん…あれは木遁チャクラモードとでも言うべきか」

「木遁チャクラモード?」

「自分のチャクラを性質変化させたうえで形態変化させて身に纏う。そうすると体に変化が起こるんだ。体が活性化するとでも言うのか。木遁、水遁なら脅威の治癒能力みたいな」

「と言うか知らない言葉が出て来たわね。形態変化?」

「ですね」

「形態変化はその名の通りチャクラの形を変える技術だな。うーん…スイは無意識にやってるだろ?影縛りの術なんて陰遁の性質変化と影を伸ばす形態変化の技だろ?」

「そ、そうなの?」

「そうだろ。一族の秘伝忍術はそこんとこ教えないの?」

「…聞いてない。…出来るはず、とそんな感じだったし」

「…うちはの一族なんて自分のチャクラ性質すら調べないわよ。でも火遁は使えていたわね」

良いのか…秘伝。もうちょっとこう、…あるだろ?

「それで…」

「結局…」

「私たち(ボクたち)にもできる?(ますか?)」

「う、うーん…要修行かな。本戦まではまだひと月あるのだし。もしかしたら覚えられるかもしれないしね」

まず二人ともチャクラ穴からチャクラの放出する感覚を覚えてもらわなければならない。

これはナツがどうにかした。

白眼で点穴を見極め、そこから微弱なチャクラを流し込む。自分以外のチャクラが経絡系すべてを駆け回り刺激されビックリしてチャクラ穴が開いたようだ。

これが出来れば次はチャクラを留める修行。まぁ、形態変化だ。俺は纏と言っている。

この状態に性質変化を混ぜると、チャクラモードとなる。まぁ九尾チャクラモードや転生眼チャクラモードと違い発光したりはしない。どちらかと言えば四代目雷影の雷遁チャクラモードと同じと言った方が良いだろう。


みっちりとその修行を影分身を用いて習得に励む事一か月。

「もうやだ…うちは一族」

「え、なによ?」

見事に習得したイズミの体をプラズマが覆っていた。

「それはもう雷遁じゃない。プラズマだ…火と雷…あとは陰を混ぜてあるんじゃないか?」

「そうなの?確かにどうせなら火と雷、両方混ぜてしまえとは思ったけれど」

「くっそ、うちは一族のバカヤロー」

二種…三種混合。それを血継淘汰って言うんだぞ。

大声で愚痴を叫ぶと少しすっきりした。うちは一族はどちらかと言えば陰のチャクラ性質を得意としている事を忘れていた。遡ればインドラの家系だからな…うちはって。

須佐能乎もどちらかと言えば陰遁の一種だし…

「そうだな…耀遁(ようとん)とでもしておくか。…この世界で三つめのヨウトン…そのうち三ヨウ遁とでも言われるようになるのか?」

どうでも良いが。

「耀遁、ね。うん、いいかもしれない」

で、そっちはと。

スイを見ればうっすらと風を纏っていた。

「出来ました」

だが、陰の性質変化が多いせいか荒れ狂う暴風と言う感じはしない。むしろ周りの光を透過させ幻像を結ぶ方が得意な感じがする。

「どんな感じ?」

「恐ろしく身が軽いです。今ならナツさんの飛雷神の術に追いつけそう」

「いやいやいや、それは流石に…」

「あ、そうね。私もなんだか追いつける気がするわ」

「ええっ!?」

結果、イズミとスイの速度はとてつもなく、下忍の域を脱していた。全盛期の瞬身のシスイと比べてしまうほどである。

「あっ…」

と言う間抜けな声でチャクラモードが切れたらしい。

「まだまだ持続時間が足りないな。これに忍術を織り交ぜるのだからさらにチャクラ消費が激しくなる。…そのモードは不退転の時しか使えない、か」

「要修行って事ね」

「ですね」

今の感じで五分が限界と言う所。伸ばすには慣れとチャクラ量の増大が必須課題だろう。


そして始まる三次試験。

各国から影も観戦に訪れている。よく見れば観戦席にはすでに三代目火影もスタンバイしていた。


三次試験は個人戦のトーナメント。

一試合目は自分のチームメイトとは当たらないように配慮されていた。

呼ばれて闘技場の中央へと降りていく。

「あー、面倒くさい…さっさとリタイア…」

「ナツー、リタイアなんかしたらぶっ殺すわよっ!」

…リタイアは無しだ…うん。イズミ、怖い…

さて相手は霧の国の忍のようだ。

「始めっ」

ちょっ!まだ心の準備が…



一試合目は順調に三人とも勝ち上がり第二試合目が始まろうかとした時。

突如として試験会場に現れる霧の国に忍び達。

「な、なに?」

「監視と言う訳じゃなさそうだ」

何事か、とその現れた忍たちの言葉を聞いていればクーデターだそうだ。

霧隠れの里はクーデター後、血霧の里の異名を払拭しつつ…さらには里の国力低下でなめられないようにと考えの元クーデターに至ったらしい。

そしてそのクーデターの成功を大々的に知らしめるために他国の影達が居るこの中忍試験を選んだ、と。

とは言え、そんな考えに同調するのは本当に一握り。霧隠れの里のお家騒動なのだが、すぐに鎮圧されるだろうと思っていたのだが…

闘技場へと入って来た一人の忍。その様子がおかしい。何かの幻術にでもかかっているのかフラフラしている。しかし取り分けその忍の護衛は厚かった。

「なんだ…アイツは…」

「なんかすごくイヤな感じ…」

俺は白眼で、イズミは写輪眼でその忍を視る。するととてつもないチャクラを内包しているのが見て取れた。

「あれって…まさか…」

「ナツ、何か知っているの?」

「ナツさん?」

クーデター軍は不利を悟るとその男に何かの術を掛け始めた。

「うああああああああああっぉおおおおおおおおおおおおおっ!」

男は苦しそうな声を上げるとボコボコとチャクラが吹き上がり腰の下、尾てい骨のあたりから吹き上がり伸びていく。

「まさかまさかまさかっ…」

しかし、そこで器の方がもたなくなったのか内部から破裂するように巨大な何かが現れる。

それは六本の尻尾を持つ巨大なチャクラの塊。

「まさか、…あれって…」

「あ、あ…イヤ…イヤーーっ!」

イズミがそれを見て錯乱。

「イズミっ!」

両肩をもって揺さぶると眼に光が戻った。

「ナ…ツ…ナツっ!」

「正気に戻ったようだな」

「ナツさん…あれって」

控えめにスイがナツの裾を掴んでいた。目の前のアレが恐ろしくてしょうがないのだろう。

それでも霧隠れの里の忍たちが押さえの掛かっていた。


「アレは…くっ…」

振るわれた尻尾に会場が揺れる。

「逃げるぞ、二人ともっ!」

「ねえ、あの大きなナメクジってもしかして九尾と…」

「ああ、おんなじだろうなっ!」

六尾は敵も味方もなく暴れまわる。

キュィーーーン

「あ、…あれは…お父さんとお母さんを…」

黒い球体が口の前に収束し始めている。尾獣玉だ。アレが放たれれば里の被害は甚大だろう。

「まて、イズミっ!」

「イズミさんっ!」

耀遁チャクラモードで駆けるイズミには追いつけず。

「ダメーっ!」

ほぼ体当たりのようなイズミの攻撃は六尾の首元へと当たり六尾の顔がわずかに上を向いた。

バシュ

放たれた尾獣玉は地面に放たれることなく遠くの山へと飛んでいき、そして爆音。

「あんなのが里に放たれたら…」

とスイ。

九尾事件の時はいち早く避難所に避難していて尾獣の攻撃は見ていなかったらしい。

第二射のチャージが始まった。

「あああああっ!」

バシュ

「な、なんでっ!?」

耀遁チャクラモードが解除されるイズミ。まだ慣れていないのだから先ほどの一撃で使い切ったのだろう。

「やばいっ!スイ、縛れるかっ!?」

「やってみますっ!影縛りの術」

グインと伸びるスイの影が六尾の影を掴むとイズミを襲おうとしていた六尾の動きが止まる。

「でも…これは…きついです…」

「上出来っ」

ナツは飛雷神の術でイズミの傍に飛ぶとイズミに触れる。

「っナツ!」

「もう…もたないっ!」

その後再び飛雷神の術でスイの所へ。

一瞬後六尾の尻尾がナツ達のいなくなった地面を削っていた。

さらに今度はスイを連れて少し遠くへと飛ぶ。

「バカっ!イズミ、一人飛び出してっ!」

「バカとは何よっ!」

「大体これは他里の問題だぞ、木ノ葉の俺達が関わっていい問題じゃないっ」

「それが何っ!?」

「っ!」

「ここでアレを暴れさせれば何の力もない人達、ただ平和に暮らしたい人たちが死んでいくのよっ!木ノ葉のように…お父さん、お母さんのようにっ!」

やはり相当に九尾襲来はイズミのトラウマになっているようだ。

言い争っているうちに放たれた尾獣玉。

それは会場から一直線にまりを吹き飛ばし爆発。

「何とかしないとっ!」

「だが、どうやってっ!」

「どうにかして、よっ!」

ギンと睨み返したスイの瞳の写輪眼が変化した。

「…っ!万華鏡だとっ!?だが、これならっ…」

六尾って目、開いてるのか?そもそも目っぽいあれは本当に目なのか?

イヤ、目のはずだ。でなければサスケの輪廻写輪眼で幻術にはめられやしないはず。

「ナツ、あいつを里の外に飛ばせないかしら?」

「四代目みたいにか?」

「そう、四代目みたいに」

ガシガシと頭をかくとどかりと座り込むナツ。

「デカすぎてチャクラが足りない。少し貯めるから俺はここを動けない。…だから」

「デカい方には私が行くわ」

「はい、じゃあボクが適当な場所にこのクナイを打ち込んできますね」

「イズミ、死ぬなよ」

デートしてくれ、とかフラグは立てない。

「当然よ…それじゃあ、散」

イズミは六尾の元へと向かい怪我人を救助しながら特性クナイを投げる隙を伺い、走り去ったスイの風遁チャクラモードならそれなりの距離を稼げるだろう。

俺は動かずに自然エネルギーを誘引し仙術チャクラを練り込みに入る。

スゥと目元に隈取が現れた。

「よし…震えるなよ…俺っ!」

イヤだ、近づきたくないと言う気持ちをどうにか蓋をして立ち上がるとまず飛雷神の術でイズミの元に飛ぶ。

「ナツっ!……それは?」

そう言えば仙人モードは見せてなかったか?

「話は後だっ!手裏剣術はイズミの方が得意だろっ!」

「うんっ!」

マーキングを施したクナイを投げつけると六尾の表面付近に飛ばされたクナイへと飛ぶ。

「ここからが本番っ!」

今度はそのまま六尾に触れるとスイの持つクナイへと飛んだ。

ズドンッ

「イズミさんっ、ナツっ!」

霧隠れの里からほど遠い山間。むしろ良くこの短時間にスイはここまでこれたものだが…とりあえず里から六尾は引き離した。

だが六尾の暴走は止まらない。術者が近くに居るのか居ないのかは分からないが、どうやら錯乱させられているようだった。

「とにかく動きを止めないとっ!」

「はいっ!」

ナツとスイが印を組み上げる。

「木遁・樹界降誕」
「影首縛りの術」

まずスイの影縛りの術が六尾の動きを止め、その周りから乱立する巨木が巻き付いて六尾を拘束する。

ヒョイと空中に躍り出たイズミが印を組み…

「火遁・豪火球の術」

ジュっと六尾の表皮を焼いたが、思ったほどのダメージではない。

「くっ」

まずその巨体を縛り切れなくなったスイの影首縛りの術が切れ、さらに粘液が強酸性に変化したのだろうか、縛り上げる木々が焼かれ、軟体特有の柔らかさで抜け出ようとしている。

「なろっ!」

木を抜くとすぐにでも抜け出してしまいそうな六尾に焦る。

ボゥと二射、三射と豪火球の術が炸裂するがそれで倒しきれるはずもなく、効果が無いと分かるとイズミは一旦引いた。

「どうしよ、ナツ…」

「このままほっぽって逃げねぇ?」

「「それはダメ(です)」」

息ぴったりに返された。

「でもな?強力な封印術でもなければ尾獣を抑えられない。で、誰か封印術のスキル持ってる?」

「封印術…アレを封印できるほどの…」

だが、六尾を封印できるほどの封印術など上忍でも難しい。

六尾を睨みつけたイズミの写輪眼が再び万華鏡へと変化する。

「ダメ…ぜったい、ダメっ!」

「…イズミ?」

するとどうだろうか、六尾の体になにやら呪印が刻まれていった。

「こ、これは…」

と驚愕の声を上げるスイ。それほどまでに目の前の光景は異様だった。

「グギャオオオオオオオオ」

最後の抵抗か、尾獣玉の収束に入る六尾。

「「やらせないっ!」」

再び伸ばされたスイの影と縛り上げている木々が尾獣玉の角度を変える。

尾獣玉は上空へと飛ばされ被害は無し。

「あ、焦る…」

「心臓に悪いです…」

呪印はついに六尾の体を覆いつくし、その巨体も動きを止めた。

グラリと倒れ込むイズミ。

「イズミさんっ!」

ぎりぎりでスイがイズミを抱きかかえて地面との激突を回避。

「いったいイズミさんに何が…」

「チャクラの使い過ぎだろう。あの封印術はイズミがやったものだ」

「あれを…?でもいったいどうやって…」

「それは今度で良いだろ…流石にもう疲れた……なっ」

「な、なんです?」

驚きの声を上げたナツにスイもつられて見上げれば異次元に封印さるように次元の間へと押し込まれようとしていた六尾が渦を巻き、チャクラだけの状態になるとこちらに飛来して来た。

「なっなんでっ!?」

「し、知らないよっ!」

六尾を暴れさせたクーデター軍は、時限式に封印術を組み上げていのだ。尾獣には暴れてもらいたい、しかし再封印、再利用できなければ意味は無いと思ったのだろう。

尾獣の封印には人身御供を捧げるのが風習である。つまりは人柱力を作る術と言う事だ。

しかし、六尾を暴走させた彼らには誰に封印されても良かった、故に一番近いチャクラの多い人間と言う条件を付けていた。封印されてしまえば回収は容易、操るのも簡単と思ったのだろう。

しかし、里から遠く飛んだ為にここに居る人間はナツ達三人しかいない。

ナツ達にしてみれば何が起こったのか分からない為に即刻逃げに転じようとして…

「ぐっ…チャクラを使いすぎた」

流石にあの巨体を飛雷神の術で飛ばしさらに木遁で縛り続けるのは膨大なチャクラを使う。

「ナツっ!」

スイの心配そうな声。

「くそっ…」

比較的チャクラの余っているスイか、もしくはイズミをめがけて飛んでいくチャクラの塊。

飛雷神の術は…あと一回が限度。なら…

「きゃーーーーーーーっ!」

くそ、間に合えっ!

飛雷神の術で飛んで六尾のチャクラの塊の前へと飛び出す。

「ぐぅ…」

何かが自分の中に入ってくる。

経絡系を通り体の隅々へと一周した後に精神の内側へと入り込んでくる。

これは…まさか…



目の前に迫る六尾のチャクラに恐れおののくスイ。しかしイズミを守ろうとしっかりと抱きしめていた。

「…え?」

しかし予想した衝撃がやってこない。

恐る恐る目を開けるとそこには…

「ナツ…?」

「よう、無事か?」

「どうして…?」

「女の子を守るのが…男の役目だからな…」

「か、体に異常は無いのですか?」

「…分かんないけど…もう、限界…」

バサリと意識を手放すと無様にスイの上に覆いかぶさるように倒れ込んだ。


尾獣をナツに飛ばされたクーデター軍は決定力を欠き、捕縛されどうにかクーデターは失敗に終わる。

しかし、それに伴って中忍試験は中止。

だが幸か不幸か、それまでの戦績でめでたく…まぁ俺個人としてはまったくめでたくないのだが、三人そろって中忍へと昇格を果たした。



まぁ、それでも一応めでたい事なのでこじんまりとだが祝勝会を開く事に。

高級寿司屋に席を設け、シズマ先生のおごりで豪遊としゃれこんだ。

しっかし、中忍ベストって着なきゃダメ?ダサイから着たく無いんだけど…機能的だけどさ。

「中忍への昇格、おめでとうございます。ナツ兄さん、イズミさん、スイさん」

と、一緒に連れて来たヒナタからのお祝いの言葉。

「これ、あんまりお小遣いもらえてないから、小さなものなのですが」

と三人に渡されたのは小物類。

「ありがとう、ヒナタさま」

「ありがとう、ヒナタちゃん」

「ありがとうございます」

「しかし、まさかみんな合格するとはな」

とビールを飲んで一人出来上がっているシズマ。

「これでようやく俺も肩の荷が降りるよ」

「こらこら、勝手に降ろすな」

「だが実際お前らは手のかからない子だったからな?」

どこのネグレクトの親の発言だ。

「明日からはお前らも部隊を率いて任務をこなす事もあるだろうが、まぁ…お前らなら大丈夫だろう」

「シズマ先生…」

目に涙をためるスイ。

今の話にどこにウルウルする要素があったよっ!?

ちげぇ、あいつアルコール入ってやがるっ!

「ねぇ、ナツぅ…あのでっかいヤツのチャクラが入ったようにぃ…ひぃっく…思えたー…のぉ…だけど、ぉ…からだぁわぁ…っ…だいじょうぅぶ…なの?」

「まずお前が大丈夫じゃないな。何を言っているか分からない」

慌てず騒がず白を切る。

「ナツはぁ…ひぃっく…きゅぅ…」

休止の点穴を突いてスイを黙らせた。

「ナツ?そう言えば…あの…」

しかしこの場で言う事では無いと思い直したイズミも口を閉ざした。

まぁなんだかんだで祝勝会も終わり、…ほんと、これからどうしよう。

イズミとスイにはとりあえず六尾の顛末を口外しない事で了承を得た。こういうことは秘密にした方が良いと三人での一致した意見だったからだ。

あの時、六尾を体に取り込んでしまった俺は人柱力となってしまっているのだろう。

しかし…

しかしだっ!

なんで六尾…?

六尾と言えば見たらわかる通りナメクジさんだ。どうせなら他の尾獣がよかったよぉ…

しくしくしく…

と、それ所じゃない問題が発生した事がさらに俺の心を重くする。

六尾の人柱力となった事で死亡フラグがビンビンに立ったのである。

将来、暁のメンバーは尾獣を狩り集めるだろう。それこそ尾獣化した二位ユギトすら刈り取る猛者どもだ。

人柱力は尾獣を抜かれてしまうと死んでしまう。と言う事は…俺の死亡フラグは回避不能な訳で…

どうしよう…まじで…

とりあえず、しばらく任務休ませてくれないかな…?



……

………

木ノ葉から離れた山の奥に飛雷神の術で飛び、崖の上にあぐらをかいて座る。

とりあえず、二つの封印術が掛けられた六尾の封印はぐちゃぐちゃで、強いのか弱いのかも分からない。

強い所もあれば弱い所もある。そんな感じだ。

チャクラを練り上げ経絡系にチャクラを通し、それを影分身が白眼でのぞきながら封印術式を調べていく。

絡まった二つの術式を解いて一つの術式に変更させる。

……無理だろ、これ。

「無理ー…もう無理絶対無理…」

と根を上げたナツの背後がカサリと揺れた。

「ナツ…大丈夫?」

「大丈夫だが、どうやって此処に?」

「どうって…走って?」

耀遁チャクラモードなめてました。

「ねぇ、ナツ…スイから聞いたわ。あなたの中にあの尾獣…六尾が封印されているって」

「ん、ああ。別にそれは大した事じゃないさ。ただ体の中にあの大きなヤツが居るだけだからな」

ナメクジとは言わない。もしかして会話を聞かれていたら六尾と仲を深める前に拗ねられるかもしれないから。

「ただ、ちょっと問題がある」

「問題?」

「ああ、二つの封印術が絡まってうまく機能していない…このままだと…」

最悪六尾が体から出てしまう。

「そんな、ちょっと見せて」

「あ、おい…」

有無を言わせないイズミはその両目を赤く染めた。…万華鏡写輪眼だ。

「イズミ、それ…」

「これもスイから聞いた。私が瞳術で六尾を封印したんじゃないかって、それで」

「それで万華鏡写輪眼を?」

「そんな名前なのね…うちはの私が知らなくて、どうしてあなたが知っているのかしら?」

「あは、あはは…いやぁ…あ、うんと…以前イタチがそんな名前で呼んでいたんだ」

とごまかす。

「イタチくんも万華鏡写輪眼を…と今はそんな事はいいわ」

再び集中してナツの体を見るイズミ。

「何これ…本当にぐちゃぐちゃ…」

「解けるか?」

「解呪しろって事…たぶん出来ると思うけど」

出来るのかよ…その自信はどこから…ああ、万華鏡か。

「まった、解呪はしなくていい」

「どう言う事?」

「たぶん、俺は六尾を抜かれたら死ぬ」

「そんな…」

「だから…絡まりを正すだけで良い。それだけで良いから」

「分かったわ…」

イズミが万華鏡写輪眼の能力でナツの封印を最適化していく。

「いらない所は削ったし、絡まりも解いた。もう大丈夫なはずよ」

「そっか…ありがとう、イズミ」

「ううん、元をただせば私の所為だもの…ねえ、私を恨んでくれても構わないのよ?」

「え、なんで?」

「どうしてって…それは…」

「あの時、俺はお前をかばった事に後悔は無いよ…それにもう二回目だ。だから気にするな」

「そう…ナツ」

「うん?」

「ありがとう…」

「おう」

さてと。

「ナツ?」

「ちょっと六尾に会って来る」

と言うと精神の奥深くへとダイブしていった。

目の前には大きな岩があり、そこから薄暗い光が漏れている。

まるで天岩戸のようだ。

俺はその隙間…尾獣では出入り出来ないであろうその隙間から中に入っていく。

なんか封印術の精神世界のはずなのにこの岩戸、なんだかジメジメしている。

しばらく歩くと巨体の六尾の獣、尾獣の姿が見て取れた。

「よう」

「あんたはオレを止めたやつらの」

「うん、そしてごめんな。いや、別に俺の所為って訳じゃないと思うんだけど、また人間に閉じ込めてしまって」

「それね。オレを操ってたやつが前もってしかけてたんよ。だから仕方ないんよ」

「そうなのか?」

「と言うか、お前も変な奴やよ。尾獣のオレとまるで話が通じると思っている」

「う、うーん…まぁ?」

その辺は原作知識で知ってました、とは絶対に言わない。

「それで、ここまで来たと言う事はオレの力を奪いに来たのか?」

「いや、別に…チャクラの引っ張り合いで勝てる気がしない」

「じゃあ何しに来たんよ?」

と六尾があきれ顔?で問いかけた。

「まぁ挨拶だな。これからよろしく、と…封印してしまってごめんなさいとね」

「変な奴やよ。おまえ」

「そ、それは酷くねぇ?」

「ここは居心地がよさそうだし、しばらくならオレの寝床にしてやってもいいんやよ」

洞窟、…そんなに気に入ったのか?俺の精神がジメジメしているから気に入ったとかじゃないよね?

「おう、そうか。それじゃしばらく泊めてやる。連泊もオッケーだ」

「変なやつやよ、本当に」

尾獣にあきれ顔をされた。ような気がする。六尾の顔色を窺うのは難しいが…だってナメクジだもの。

「ああ、そうだ最後になっちまったけど。俺は日向夏。木ノ葉の忍だ」

そう言って右手を伸ばすと六尾はかがんでその巨体にしては小さな手を伸ばす。

「オレやよ、犀犬(さいけん)ってんだ。よろしく」

コツンと二人の拳がぶつかった。




「ナツ…?」

どうだった、とイズミ。

「いや、中々話の分かるヤツだったよ」

「尾獣って話せたの?」

「おう。変わろうか?」

「…また今度で良いわ」

そう?

しかし、犀犬とまさかの和解を遂げた俺にはやる事がある。

とりあえず修行かな。


暁メンバーは強力で、尾獣化が出来ていた二位ユギトすら狩る猛者どもである。

となれば、六尾を抜かれてからの事を考えよう。

え?尾獣を抜かれたら死ぬだろう?知ってるよ、そんなのは…

しかし、思い出せ。ナルトは一度九尾を抜かれている。ならどうして生き返ったのか。それは九尾を再封印したから。

うん、意味は分からないかもしれないがそう言う事なのだ。

正確には二つに分けられていた陰のチャクラの九尾と言う事になる。

そしてもっと思い出せばキラービーも八尾を抜かれても生きていた。

やはりたこ足一本分のチャクラを戻したからだろう。

つまり根本の所まで遡るとチャクラは分けられるのである。

となればやる事は一つ。犀犬のチャクラを分ける、そうそれだけなのだ。

犀犬の協力もあり、どうにか尻尾一本分のチャクラを分離、封印する事が出来たが…出来ればこれを使う事が無いと良いのだけれどなぁ…

「しくしく…オレ六尾やんよ…なのに五尾になってしまった」

「ごめんて…尻尾はまた生えるから…ほら、塩分で溶けるよ」

「ええ?涙で体って溶けるん?」

「冗談だ…ぐもっ」

精神世界で犀犬の手痛い一撃を貰ってしまった。


問題は六尾の事だけじゃない。

あの中忍試験の時に開花してしまったイズミの万華鏡写輪眼、これをどうするかだ。

イズミの万華鏡写輪眼は天鈿女命(アメノウズメ)と言う。

正確には封印術の宮比神(ミヤビノカミ)と解術の大宮売神(オオミヤノメノカミ)の二つなのだが、二つはセット能力の為今後は天鈿女命で統一しよう。

「さすが万華鏡写輪眼…白眼(笑)とは格が違うな…はぁ…」

「そ、そう?」

「そりゃそうだろ。白眼(笑)は睨んだだけで封印術の行使は出来ない」

「ですね」

俺の言葉にたじろぐイズミと同意してくれたスイ。

今日は三人でイズミの万華鏡写輪眼の試射と実験を行っていた。

「ただ、万華鏡写輪眼は使わないほうが良い」

「どうしてよ。強力だし、こんな能力隠したほうが良いのは分かるけれど」

「その理由も確かにあるけれどそうじゃない。イズミの眼球基幹の陰陽バランスが崩れている。使い続ければ間違いなく失明するよ」

「なっ!?」
「そんなっ!?」

「ハイリスク、ハイリターンな瞳術なのだろうね」

永遠の万華鏡写輪眼と言うものも有るが、うちは一族は皆殺しに合いそもそも万華鏡写輪眼の開眼者は稀だ。そんな中他人の万華鏡写輪眼を移植なんて出来ようはずもない。

その方法でのリスクカットはイズミには不可能だった。

「何とかならないの?」

「陰陽バランスを整えるだけなら俺が超頑張れば可能だが」

「頑張りなさい」

「おふぅ…ただ、根本の解決にはならない。使いすぎれば失明は免れないだろうよ」

HPを全快まで戻す事は出来るだろうが、ダメージ回避は出来ない。そして俺がどんなに頑張っても最大HPは下がる一方だろう。ダメージを負い続ければ…分かるよね?

あと、眼球の陰陽バランスを整えるのだって難しいんだからなっ!?白眼で経絡系を見て調子を整えるように繊細にチャクラコントロールしたりと俺しか出来ないんだぞ?たぶん。

須佐能乎は…まだ黙っておくか。あれもリスクが高い能力だろうから。

「しかしうちは一族の血継限界って奥が深いですね。うらやましいです」

と言うスイの言葉にイズミが少し暗い表情を浮かべた。

ゴチンと俺はスイにゲンコツを落とす。

「あだ…痛いです…」

「あのな。うちはの写輪眼の開眼条件は愛の喪失なんだ」

こそりとスイに告げる。

「なっ!」

「だから、な?」

分かるだろう、と。

「…はい」

そう言えば、いつイズミは万華鏡写輪眼の開眼条件を満たしたのだろうか。…謎だ。


本日の任務はお休みだ。

お休み…休日のはずなのだが、なぜかハナビの子守をさせられている日向宗家の使用人さんこと日向ナツです。

子供は好きだから別にいいんだけどさ?

今日もいつものように木の根元に座り、眠ったハナビに膝枕をしながら仙術チャクラを練る修行中である。

「ナツ兄さん。またこんな所に居て」

「ヒナタか」

他人の目が無いときは敬称が抜けてしまっているが、別にヒナタから咎められてないから良しとしている。

「もうそろそろお昼の時間ですよ」

「おー、今行くよ」

と仙術を解除してヒナタを見れば所々青く打ち身をしていてボロボロである。

「…っこれは…あの…その…」

俺の視線に気が付いたのだろう。恥ずかしそうに手で遮って顔を真っ赤に染め上げた。

「ヒアシさまと柔拳の修行か。精が出るね」

「…はい。お父様は厳しく教えてくれています」

現時点ではヒナタは宗家の跡取りだ。それは厳しくしつけるか。

「…ナツ兄さんは」

「ん?」

「あの…ナツ兄さんが柔拳を修行している所を見たことがないなって…おもって」

最後の方は尻すぼみな感じでヒナタが問いかけた。

「ん、ああ。俺は柔拳をほとんど習ってないから」

「ええっ!?ナツ兄さんって日向ですよねっ!?」

「この目を見れ分かるだろ」

「はい、それは…でも…」

日向一族伝来の薄い紫色の眼は否定できない。

「それじゃあ…どうして…?」

「うーん…」

どうしようか、と考えて真面目に答えることにした。

「俺はね。忍者になりたくはなかったけど、忍術は使いたかったんだ」

「は…?…え?」

俺は犀犬(さいけん)から教えてもらった印を組み上げると水と土のチャクラを練り込んだ。

「溶遁・泡沫の術」

ふぅーと息を吹き出すと日の光を反射して虹色に光るシャボン玉が無数に飛んでいく。

「うわぁ…きれい」

「う…うにゅう…あにゅっ」

起きたハナビがシャボン玉をみて指さしながら笑っている。まだうまく言葉をしゃべれる歳ではないのだ。

「な、面白いだろ?忍術ってこういう事が出来るんだぜ」

ハナビをあやしながら話を続ける。

「だから俺は柔拳の修行をやめた。柔拳を修行する時間で俺は忍術を修行したい。白眼は遠視、透視の感知能力の方が有用だから、別に柔拳が使えずとも忍者の世界じゃ重宝される。柔拳が使えなくても困らないしね」

ケンシロウになる気は無いのよ。

「今度…私にも忍術を教えてください」

「え?」

「私も、こんなきれいな忍術は…使ってみたいから」

「はは…じゃぁ今度教えてあげよう…そうだな…ヒアシ様との稽古はサボれないだろうから影分身を寄こしなよ」

「影分身を…ですか?」

「うん。影分身。後はまた今度にしよう」

「…?はい、わかりました」

ハナビにお昼ごはんを食べさせないといけないし、そろそろ戻らないとね。

その日から時間が有るときに少しヒナタに忍術修行を付けてあげる事になったのだが…物覚えが良すぎる気がするのは気のせいか?

確かに柔拳や他人を傷つける攻撃が苦手なのは変わらないのだが…そう言えば何気に影分身も苦労しないで覚えてましたね…

誰だヒナタに才能が無いなんて言ったやつは…ああヒアシか。



「今日こそはあの変な感じのチャクラを教えてもらうわよっ!」

といつものようハナビを膝の上に座らせ、疲れたからと倒れるように眠っていたヒナタに膝を貸してやって大きな木陰で休んでいると、そんな声で起こされた。

「イズミか…」

イズミはあのうちは壊滅事件の後はナツの家に居候している。その為ナツの行動は筒抜けなのだ。

「変なチャクラ?」

とはイズミと一緒について来たスイの言葉だ。

「そう。六尾と戦った時に見せたアレよ」

「ああ、確かに目の周りに赤い痣が出来てましたね」

「痣って…痣じゃなくて隈取な…」

「そんなものはどうでも良いわよ」

「あー…あれな…」

「何?この後に及んでしらばっくれるの?」

「いや、そんな事もないが…」

「何なの?」

「いや、まあいいか」

何かを諦めてため息をつく。

「あれは自然エネルギーを取り込み仙術チャクラを練った状態。仙人モードとでも言おうか」

「仙人?」

「また分からない言葉が出てきました。ナツと居るとそんなんばっかですね」

スイさーん…

丁度動けない事だしと仙術チャクラを練る。

「…自然エネルギーはそこかしこに有って、人間個人など比べ物にならない量が存在する。それを利用するのだからそれはもう、ものすごく強い」

スゥと目の周りに隈取が出来て。

「そうなんだ」

「ああ。感知能力、身体強化、単純なチャクラ量。どれをとっても段違いだろう」

「すごいわね。…でもナツがはぐらかしたりもったいぶったりするときって何かしら裏があるのよね」

「そうですね」

あらら…

「まず、仙術を覚えるのはものすごく面倒」

「どの位?」

「俺は影分身をして二年かかった」

「長いわね」

「まぁね。次は持続時間が短い。練った分を消費したら終わりだ」

「そう。でもそれはまた練ればいいだけじゃない」

「それが三つ目。仙術チャクラを練ってる最中は動けない」

「ええっ!?」

「使えるの、それ?」

忍の世界では良い的だろう。

「幾つか回避策はあるが…実戦で使いたければ練るスピードを上げたい所。だから俺の忍術修行の半分はこの仙術チャクラを練り込む修行に使っている」


「つまりどう言う事なの?」

とスイが言う。どの位強いのか、と言う事だろうか。

「うーん…サイヤ人が大猿になった感じ?」

戦闘力が十倍だ。

「意味が…分からない…」

「えっと…地力が半端なく跳ね上がった状態が仙人モードと思ってくれ」

「だから六尾を飛雷神の術で飛ばした上であれほどの木遁が使えたのね」

「でも、覚えても限定的にしか使えない力って事ですね」

「で、どうするんだ?覚えたいななら修行みてやるが?」

「でも、ナツは二年かかったのよね?」

とイズミ。

「最初は独学だったからな。途中から変な猿に教えてもらったが…自然エネルギーを感じる事が出来るのに時間が掛かった。今なら俺が自然エネルギーを誘引出来るから二年はかからないと思うけど…」

「変な猿って何者よ」

「仙人だ」

「猿なのよね?」

「猿だな」

ただ、時間は掛かる。その時間を他の修行に当てた方が技は磨けるだろう。チャクラの地力差はあるが。

イズミがスイにコソっと耳打ちする。

「どうしよう」

「とても強い術のようですね。仙術とは」

「でも習得難易度は高そうだし、使えるのが限定的すぎない?」

「はい。ですが、いざと言う時後悔したくありません」

「…そうね」

イズミとスイは見合って相談した後、答えをだしたようだ。




頸椎辺りに手を当てて、自然エネルギーを俺が誘引し、流し込む。

俺がガマの油の代わりをして、またバランスが崩れて来たら柔拳の要領でたたき出す、叩き棒の変りもしている。

当然、自然エネルギーの扱いは難しいので、俺の影分身の数も3体が限度。本体を含めて4人の修行しか見れない。

イズミとスイは影分身を一体ずつ出しての修行だ。

習得速度は二倍になるが、二倍程度ではやはり時間が掛かるのは当然。

しかもこの修行、結構難しいのだ。これを短期間でマスターしたナルトはやはり才能が有ったのだろう。

仙術チャクラを練る修行をする事数か月。…とりあえず、修行による休暇休業で完全無職でお金を稼げないのは痛いが、集中的に修行しないとこれはものにできない。俺の場合は時間のある子供時代にやった訳だしね。


「みてください。ナツ兄さん、出来ましたっ!」

仙術チャクラを練るのに四苦八苦しているイズミとスイを横目になぜかいつの間にか仙術チャクラを練れていたヒナタ。

「…ヒナタ?」

「なっ!」
「なんでっ!?」

「…?たぶん小さいころからナツ兄さんにくっついていた所為かと…だってナツ兄さんってお昼寝と称して仙術修行してたでしょ?」

あー…

「ナツにいたま、みてみて」

「ハナビ?」

「おそろいー」

御年二歳。そろそろ言葉を話し始めたハナビが早くも仙術チャクラを練っていた。

「私たちって…」

「才能無いのかしら…」

ヒナタどころかハナビにすら抜かれているのである。落ち込むのもしょうがない。

「日向は木ノ葉にて最強…まさか…本当に…?」

感知の能力は確かに高い一族だが…どうしてこうなった。…いや、俺の所為だなのだが。

自然エネルギーを誘引して仙術チャクラを練る修行中の俺にくっついてたんだ。最初は分からなくても、体がそれに合うように成長してしまったのかもしれない。

「何事も小さいころの方が身に付きやすい…と言う事だろう。カエルの子はオタマジャクシと言う事か…」

「何それ、意味が分からないのだけど…」

とイズミ。

「オタマジャクシは尻尾でスイスイ泳いでいるだろ」

「だから意味が分かりません…」

そうスイも言う。

分からんかね。

まさかヒナタとハナビが仙術を使えるようになると言うハプニングもあったが、どうにかイズミとスイも仙術チャクラを練る事が出来るようにはなった。

「実戦では使えないわね」

「はい…」

まだ不慣れなためか自然エネルギーの誘引に時間が掛かり、また持続時間も短い。

実践ではとてもではないが使えないだろう。

「人生そううまくは行かないものだ」

「私なんてうまくいかない事ばっかりよ?一族は滅亡の危機だし、婚約者の事だって」

「イズミさん婚約者いたんですね」

あー…口約束でイズミの身柄を守るための物だが。

「…コイツよコイツ」

と言ってイズミは俺を指をさす。

「ええっ!?」

「イヤなのか?」

「イヤとかっ!そう言う事じゃなくてっ」

「と言うか、知っていたのか?」

「むしろナツは私が知らないと思っていたの?」

「ああ」

「…ヒアシ様に言われているわ。私の立場はサスケくんとはまた違って木ノ葉の里では微妙な扱いだって。うちはにはクーデターの噂もあったから…」

「そんな…」

そうスイが驚きの声を上げた。知らなかったのだろう。

「なんの後ろ盾もない私を守ってくれているものが日向家で、それの理由がナツとの婚約なのよ」

「そうなんですか?」

とスイがこちらを向く。

「まぁ、一応そう言う事になっているな。まぁ、イズミが相応の力を里の為に示せば噂は払拭される。イズミが大人になる頃には自然消滅を狙ってたのだけど」

「何よっ!私じゃ不満って事っ!」

「おいおい、どうしてそうなる。…イズミは美人だし努力家で最高のお嫁さんになるだろう。だがっ!」

「だが?」

とスイが相槌。

「俺の夢はハーレムおっ…おふぅ…」

イズミの拳が決まる。

「さ、変態は始末したわ。修行を続けましょう」

「…そう言えば初顔合わせの時に言ってましたね…あれ、本気なのでしょうか?」

「…さあ?でもナツだし、結構本気なのかも…ヒナタちゃんなんかは危ないわね」

「ハナビちゃんも危ないかもです。ヒナタちゃんはもう遅いかもしれませんが、子供には頼れるお兄ちゃんに見えますから…初恋が、とかになりかねません」

「初恋か…」

「イズミちゃん?」

「う、ううん…何でもないの」

顔を真っ赤にして話題を変えたあとナツを無視して修行を再開していた。

「お、俺に介抱はないのか…がく…」




修行もひと段落したので久しぶりに任務に従事する事に。…お金が無くなってきたから仕方ないのだよ。

修行中は無職…お金は入らないしね。

「パスッ!」

大きく手前でバッテンを作る。

「おまえなぁ…」

呆れ声を上げるのは三代目火影、猿飛ヒルゼンである。

ここは火影室。忍者の任務を受けに来ているのだが…

Cランク任務を言い渡そうとした火影にバッテンを作って拒否を示した。

「ナツ…あなた…」

呆れるイズミ。

「どうして受けたがらないんですか?」

スイが問いかける。

「Cランク以上は死ぬ危険性が有るだろうがっ!俺はまだ女の子とにゃんにゃんしてっごふぅ…イズミ…これは痛い…」

鳩尾にきまるイズミの拳。

「さ、行くわよ」

「行ってきます」

ナツはイズミに引きずられ、スイはペコリと火影に頭を下げて火影室を出て行った。

任務は狂暴化した野生動物の駆除のようだが、それにしてはランクが高い。

「ナツってどうしてそんなにCランク任務を拒否するんですか?」

「別に俺は忍者になりたかった訳じゃないから…家庭の…と言うか一族の事情による所が大きい。白眼が使えるのも理由の一つだろう」

「日向一族ですものね」

「と言う事で忍者になる事はしょうがない。ならばせめて命の危険性が少ないほうが良いだろ?大体俺は中忍にすらなる気がなかった」

しかしどうしてか中忍に昇格してしまったんだよなぁ…

「それにしては修行は真面目にこなしてますよね…習得している術も特殊ですが歴代火影の術ですし…」

「そうね。死にたくないと言いながら何度か死にかけてるしね」

「ええっ!?でもそう言えば六尾の時も…」

「それはほら、男ならかっこつけなければいけないシーンってあるじゃん?」

「どんなシーンですか」

とスイ。

「それは勿論、女の子を守る場面…あれ?」

イズミのグーが飛んでこない。

「どうした、イズミ」

「……ねぇ…ううん、何でもないわ」

「うん…?」

歯切れ悪く会話が終わると任務へと向かった。


「ここか…」

任務地へと到着すると長老へとあいさつをして任務内容を聞く。

最近野生動物による被害が多いらしい。それくらいならば別に里の者でも対応出来るのだろうが…次々に村人が衰弱しているらしい。

今は体の弱いものから先に倒れてしまっているようだ。

任務内容は村人が回復するまでの野生動物の駆除なのだが…

「原因が分かってないな。流行り病と言う風ではない。白眼で見たがチャクラ…この場合生命力だが、それが著しく低下している」

「それって…」

「原因は分からないんですか?」

とイズミとスイ。

「うーん、何かに吸われている感じがするが…そもそも俺らの任務じゃないな」

「そんな…」

任務内容は野生動物の駆除と村人の回復までの護衛。

「でも、村人のチャクラが吸われている事が原因ならそれを解決しなければ任務達成にはならないんじゃない?」

とイズミ。

「むぅ…」

「でもいったい何にチャクラが吸われているのでしょう?」

そうスイが眉間にしわを寄せて考え込む。

「少し調べてみる必要がありそうね」

イズミが言ってそれぞれ調べてみる事に。

「白眼っ」

経絡系が見える白眼なら吸われたチャクラがたどっている道が見える。

視れば地面の中を伝って町の外に流れて行っているようだ。

「ぐぉおおおお」
「ぐもー」
「がるるるるるるるる」


「ひぃー…数多すぎっ!」

「何やってるのよ、ナツ」

町から少し離れた山の中。狂暴化している動物たちから逃げ惑う。

「火遁・炎弾の術」

「影縛りの術」

そこに駆けつけて来たイズミとスイ。

「ナイスタイミングっ!」

「この程度ならナツなら余裕でしょうに」

「まったくです」

あら…

「いやぁ、ちょっとじっくりと見なきゃいけないものがあってね?」

「何、それ」

「白眼で集中しないと見えないくらいですか?」

「まぁね。と言うかお前たちは?」

「ナツが町を出たのを見かけたから」

「追いかけて来た」

「おーい…」

まぁ良いけど。護衛は必要だし。

地面深くにまるでチャクラの経絡系のような感じで浸透している何かがチャクラを吸い取っているようだ。結構深くを流れているので白眼で集中しなければ見失いそうなのだ。

「…ここだな」

「ここ?」

「何もないですよ?」

山の中腹の何もない地面を見つめていた俺に懐疑の視線を投げるイズミとスイ。

「ここで良いんだよ」

俺は大玉螺旋丸で地面を掘削して穴を掘っていくと突如として空洞が現れた。

「これは…?」

「え、え?」

「これがチャクラが減ってっている原因」

「「ええっ!?」」

空洞の中には小さな木が生えていて、一本の幹の頂点には蓮の花のような蕾が付いていた。

だが、これは何だ?

「まさか…」

「何、何か知っているの?」

イズミが問いかけた。

「小さいがまさか、神樹…か?」

「神樹?」

って何?とスイが言う。

なんて言っているうちにその植物に変化が現れた。

日の光が当たるようになったのが原因なのか急激に開花が始まったのだ。

結実した果実。

しかし吸い取るチャクラ量が少なかったからなのか白眼でみれば中身は空っぽのようだ。

「どうするの?」

「う、うーん…イズミ…どうするって、なぁ?」

「これが原因だっていうなら、処分しないと。イズミさんの火遁で燃やしちゃえば?」

「そうね」

「ちょちょっと待った」

と慌てて果実をもぎ取った。

「火遁・豪火球の術」

ボウと吐き出される炎弾がキレイに神樹を焼き払う。

「ふぅ…」

「で、それはどうするのよ」

と手に持った実に視線が集まる。

「それは何なの?」

「う、うーん…」

まさかこれが大筒木カグヤが口にした神樹の実…な訳は無いか。

「とりあえず封印しておくか」

俺は巻物を取り出すと、あの六尾事件以来習得した封印術で巻物にその実を封印したのだった。

「町にもどってみましょう」

「そだね」

「はい」

町に戻り、滞在する事数日。あの木を焼いてからどうやら皆体調も回復している。

地面の中に流れて行っていたチャクラももうない。どうやら事件は解決したようだ。



「だからっ!なんでまた高ランク任務なんだよっ!」

ランクはやはりDを超えている。

「今回はうちはと関係の深いネコバア様からの依頼なのよ」

だから断れないとイズミ。

ネコバアとはうちは一族が武器を用立てるときに利用する武器商人なのだが、やはりイズミは面識があるようだ。

「肉球スタンプ?」

スイがネコバア様に問いかける。

「そうじゃ。お前たちの任務は巨大猫の二位の肉球スタンプを押してもらって来る事じゃ」

「ニイ…?」

ニイ…うーん…何か忘れている気がするのだが?なんだろう。

「かの者が今ちょうど隣街に来ていると言う話があっての、ちょうど良い機会なんじゃが…ワシも取引があってここを動けんのじゃ。じゃから代わりにもらって来て欲しいのじゃよ」



……

「つまりは隣街に来ているニイと言う巨大猫さんから肉球スタンプを押してもらって来ると」

うーんと頬に手を当てるスイ。

「どうしてCランク任務なの?しかも中忍を三人も使う任務って…」

「さあ?それは私に分からないわ」

「………」

「どうしたの、ナツ」

「いや…何でもない」

「変なナツ」

「ですね」

そんなこんなでたどり着いた隣街。

「とりあえず情報収集ね。半刻後ここに集合と言う事で…散」

イズミの号令で散会して情報集流。

「しかし、いったい何を忘れているんだろう…」

うーん、えっと…

「ニイ…ニィ…ニー…」

うーん…

「…二位?」

え?

まさか、まさかまさかまさかっ!?

「飛雷神の術っ」

「ナツ?え、ちょっと!?」

すぐさまスイの元に飛ぶとそのまま襟首をつかんでイズミの元へと。

キィンキィン

投げられた手裏剣をクナイで弾く。

「ナツっ!」

「イズミっどうしたっ」

これはっ!と叫ぶ。

「知らないわよっ!ニイについて聞いていたら急に襲われたのよっ!それで街からは距離を取ったのだけどっ!」

確かにここは街から外れた林の奥だろう。

「バカ、一人で先走るすぎだっ」

「そうです、一人でなんてっ!」

「でもナツなら来てくれるって信じてたっ」

たくっ

「白眼っ」

キィンと視界が広がった。

「この身のこなし、忍だな。相手は三人か?」

「何…?写輪眼だけじゃなく白眼だとっ」

驚愕の声が林の奥から聞こえて来た。

そして写輪眼と白眼の血継限界の事を知っている。下忍と言う事はあるまい。

「額宛てを見るに雲隠れだな…」

「なんでっ!」

「任務がかち合った、と言う事は無いでしょう。こちらは肉球スタンプを集めているだけだし」

とスイ。

「じゃあなんでっ!」

キィンキィンと飛んできたクナイを弾く。

「問題は二位の方だろう」

「ニイ?…それって大きな猫の話でしょう?」

いや、それが…

ススっと二人の忍が姿を現す。

「貴様たち、どうしてユギト様を調べていた」

「ユギト様?知らないわよっ!知ってる、スイ?」

「知らないですよぉ」

会話の最中も容赦なく手裏剣が飛んできていた。

「吐かせてから殺すつもりだったけど、結構やるなこいつら。やっちまうか」

「そうだな」

今度は忍術か。写輪眼対策で未だ敵は木々を壁にしている。そしてあの印は…

「雷遁が飛んで来るぞっ!」

「嵐遁(らんとん)・励挫鎖苛素(レイザーサーカス)」

なっ!まさかの嵐遁っ!?

「イズミ、スイっ」

強力なレーザーが木々をなぎ倒して襲い掛かる。

「くっ…」

「きゃぁ!」

「くそっ!木遁・木錠壁」

シェルターのように眼前に木壁を展開し、嵐遁から身を守る。

イズミとスイなら問題ない。

なぜなら…

「ぐはっ」

「はやいっ…」

耀遁と風遁のチャクラモードがある。その機動力は俺が付いていけないレベルだぜ?

「忍法・ねずみ毛玉」

「イズミ、スイ、いったん下がれっ」

「分かった」

「う、うん…」

ネズミの形をした炎の塊が走り寄って来たかと思うと爆発。

その隙に三人目は強烈な一撃を喰らわせた二人を回収して一旦下がったようだ。

「すみません、ユギト様」

「良いのです…アイツらはどうやら私に用があるようですので」

と言うと一人の忍が姿を現した。

「お前らは私、二位ユギトになんの用事だ」

有名な写輪眼の前に堂々と出てきていると言う事は幻術に対する相当な準備が有ると言う事。

「ニイ…え?もしかしてニイって、え?」

「ち、違います。ボク達が探しているのは大きな猫の話で」

「お前たち、まさかそこまで…ならば手加減は出来ないぞ」

「ちょぉっと何一人で自己解決してますかねっ!?」

焦って突っ込んでみるが時すでに遅い。

「上忍二人を軽々と倒したお前たちに手加減は出来ない。せめて探していたものの手であの世に送ってやろう」

「な、なに…?」

チャクラがその身からあふれるほどに高まると一気に膨れ上がった。

「猫っ!?」

現れたのは青い炎の巨大な化け猫。

「巨大猫って、コイツの事っ!?」

「ばっか、こいつの尻尾をよく見てみろよっ!」

「尻尾が二本?もしかして…」

「び、尾獣ってやつですかっ!?」

「逃げるぞ、尾獣とやり合ってられるかっ!」

「でも、任務が…」

「任務どころの話じゃないだろ…」

「でも、やってみないと分からないじゃない」

「バッカ、お前たちバッカっ!」

「後悔して死んで行け」

ゴウゥと炎を吐き出した二尾の尾獣。

イズミとスイは問題なく避けている。

「あーもう…一瞬だぞ?一瞬だけ動きを止めるからその内にスタンプを押してずらかるぞっ!」

「うんっ!」
「はいっ!」

俺はクナイを投げるとそこに飛んで炎を避け、さらにクナイを投げて飛ぶ。

二尾の上空へと投げたクナイへと飛雷神の術で飛ぶと一気に尾獣化。

「行くぞ、犀犬(さいけん)さん」

「しょうがない。ちょっとだけ力を貸してやるやよ」

「何っ!?」

いきなり巨体が空中から全体重を乗せて二尾に覆いかぶさる。

「忍法・屋台崩しの術」

「なっ!?六尾だとっ…」

なんて事はない。ただの体当たりだが、質量がある分威力が高かった。

ドドーーーン

諸共に地面に激突。

「きゅー…」

尾獣化は痛覚もある。それで気を失ったのだろう。

「ほら、今だ」

「あ、うん…だけど…ねぇ?」

「うん…ナツって六尾になれたのね…」

「あれ?言ってなかったっけ?」

「聞いてない」

「うん、聞いてない」

…まぁ巨大ナメクジに成れても良い事ないしね。

「そんな事は今はどうでも良いんだよっ!さっさと肉球スタンプを取れよっ!」

半ギレになって声を上げた。

「はーい」

肉球に朱肉を塗って、と。


ポン


「任務完了、ずらかるぞっ」


「あれ、ナツ怒ってる?」

「おーまーえーらーっ!」

「ほら、怒ってる…絶対怒ってるってっ!イズミさーん…」

イズミとスイを連れて飛雷神の術で飛ぶことで何とか二尾から何とか逃げ切る事に成功した。


「ほれ、任務完了じゃの」

「と言うかネコバア様…相手が二尾の化け物だなんて聞いてなかったんですけどっ!」

とイズミもさすがにこれには抗議の声を上げた。

「ほっほ、だがよく二尾相手にスタンプを取ってきたのう。流石はうちはと言った所かの」

「ネーコーバーアーさーまー!?」

「ほっほっほ」

笑ってごまかしやがったこのババア…

「流石にヤバイかもと思ってちゃんとAランク任務の依頼をだしたじゃろうて」

「Aランクぅ!?」

どう言う事だとイズミを見れば視線をそらしやがった。スイも視線をそらした所を見ると知っていたようだ。

「だって…簡単な任務だと思ったんだもの」

まさか仲間による任務詐称とか…

「イーズーミーっ!」

「ご、ごめーん」

軽いわっ!

もうやだ…イズミと居ると命がいくつあっても足りません。誰かたすけてー…



「そーらを自由に飛びたいなー」

「はぁ?」

「ナツ…ついに頭の方が逝っちゃったんだ…」

「ナツ兄さん…」

「そらー?」

イズミ、スイ、ヒナタ、ハナビと集まって修行中空を見上げてつぶやいた俺に皆が総突っ込み。

「いい、ナツ。人間は飛べない。何?私に投げてもらいたいの?」

「鳥系の口寄せ動物と契約するしか…」

「後は忍者凧とか…」

「たこー?」

「ちげーよっ!気ままに自由にこの体で飛びたいんだよっ!あと筋斗雲の術なら飛べますー」

「ちょっとそれまだ教えてもらってないわよっ!」

「でもそれ仙術なのよね。仙術チャクラを使わなければ使えねーんだよ」

はぁはぁはぁ…

「まぁ、言ってる意味は分かるけど…そんな術なんてあったかしら?」

「…あったらみんな飛んでると思うけど」

「…うん」

「とぶーとぶー」

いつからか俺も忍者は飛べないと思っていたのだが、ふと思い出したのだ。

確かに周りの誰も飛んでいない。しかししっかりと思い出してみれば確かに原作では飛んでるやつもいたのだ。

原作で飛べたのはオオノキと六道仙術を使えた者達だけ。

後者は血継網羅のようだが、前者は土遁のはず。

「まず忍術の分類を考えよう」

「ナツの自論がまた始まったわ…」

「ですね…」

イズミとスイはあきれ顔。

「例えば土遁・土流壁」

「それが?」

「結果は同じでもこれは実は二種類存在する」

「はあ?」

「一つは性質変化による物質化。つまり口から吐き出すように土壁を作り出さす」

印を組み上げゲロゲロと口から吐き出して作る土壁。

「おー」

「で、次。物質操作系の忍術」

印を組んで地面に手を付いた。

ドドーンと地面から屹立する土壁が現れた。

「あれ…同じ、術?」

とヒナタが驚く。

「あれ?本当だ」
「ええ!?」

おい、イズミとスイ。お前達は話半分に聞いていたな?

「忍術はこの二つの側面がある。物質化と物質操作」

「へー、それで?」

「空を飛ぶにはいくつものアプローチがあると思うんだ。チャクラでの物質操作。これで操ればきっと空を飛べるはず」

我愛羅が砂をあやつって筋斗雲のように乗っていたのはこれだ。

いや筋斗雲の術は使えるが。

「何となくわかったけど、何を操るの?」

「それは勿論、チャクラ自体…?」

「うん、それじゃあナツ。完成したら教えて」

「おいっ!」

ちょ、イズミさーん?

「それと、飛雷神の術を教えてくれる約束はどうなったのよ」

「あ、ボクも飛雷神の術覚えたいっ!」

「あ、はい…」

「ナツ兄さん…かっこわるい」

「かっこわるいー」

ぐは…俺のガラスのハートが粉々よ…


チャクラコントロールを極めて放出したチャクラ自体を操る。

アプローチ自体はこれで合ってるはずだ。

しかし、これがものすごく難しい。

「…無理」

ほんの少し浮くことは出来ているんだよ。だけど飛んでいるかと言われれば…うーん。

この理論は間違っていたのかとアプローチを変えようかと悩んでいた時、一番最初に浮き上がった人物が居た。

「ハナビっ!?」
「飛んでるっ」

驚きの声を出したのは俺とヒナタだ。

ススーと浮かび上がって縦横無尽に空を駆けるハナビ。

「あはは、あはははーっ!たのしいー」

「ハナビは天才かっ!?」

俺の修行を見ているうちに何となく要領を得たらしい。…仙術チャクラも練れるようだしハナビ…恐ろしい子。

「じゃなくてっ!アプローチは間違ってなかった。後は修行するだけっ」

「ほ、本当に…飛べるんだ…」

ヒナタも信じてなかったのかよっ!

基本的に俺にはハナビの様な才能は無いので数で勝負。勿論ナルトのように百人に分身しろと言われれば無理だが、二倍、三倍と経験値を詰める影分身がこの世界で一番チートなのです。


「ふははははっ!見ろっそしておののけっ!」

「ナツ兄さん、恥ずかしいよ」

ようやく覚えた飛ぶ技をイズミとスイに見せつける。

「本当に飛んでる…」

「うわー…ナツって時折本当に覚えてくるから信じられないよね」

まあなー。

「あ、ちょっとハナビ、降りてきなさーい」

ふわっと浮き上がるヒナタは飛んで遊ぶハナビを追いかけまわす。

「……あー」

「えーっと…」

「何?」

ふぃっと目をそらすイズミとナツ。

くっそ、ああ、ああそうだよ。俺が一番最後だよっ!物覚えが悪くて悪かったなっ!

「で、なんて言う名前にしたの?」

「う、うん…そうだな…舞空術だよ」

「なるほど、空を舞う術って事ね」

へえとイズミとスイが頷いた。

「じゃぁ、コツを教えて」

「そうですね。ボク達も飛びたいです」

いや、だからー…

飛雷神の術も覚えられてないようだけど、舞空術も同じくらい難しいからな?ついでに仙術修行もある。

しばらく任務に行っている暇はなさそうだ。



基本的にヒナタは優しい子に育った。

ヒナタも才能は高いだろうが、その優しさが柔拳の習得を邪魔しているようで、やはりヒアシ様からの風当たりは強いようだ。

まぁそれは期待の裏返しなのだろうが…

しかし幼くしてハナビが才能の片鱗を見せていた。

ヒナタより五歳も下のハナビだが、柔拳にいたってはヒナタよりも上。

これはハナビの性格の差が大きいのだが…

柔拳至上主義の日向宗家ではハナビを跡目候補にした方が良いだろうと言う判断を下すのに時間は掛からないだろう。

跡目候補を決める試合の結果を見てヒナタとハナビ、どちらを跡目とするか決めるようだ。

「この試合でヒナタは跡目候補を外れるはずだが…」

「はじめっ!」

ヒアシの号令でヒナタとハナビの両者がぶつかる。

バシッバシッと互いの拳がぶつかる音が響く。

ハナビの才能は確かにヒナタを超える。だが、現時点ではまだヒナタの方が強い。しかし…

決められる手を緩めてしまうヒナタ。

手加減された、とハナビは思っただろう。手加減ではないのだが、ヒナタの実力通りではない。

「そんなだと、ナツにいさまはわたしがもらいますよ」

「ハナビ、何を言っているの?ナツ兄様はイズミ姉様の婚約者…」

「そんなの、跡目になれば変えられます。ねえさまはそれでいいんですか?」

「でも、それは…だって」

「これに勝ったらまずナツにいさまをわたし専用の付き人にしちゃいますよ?」

遠くから観戦している俺はハナビがヒナタに何か言った事は見て取れていたのだが、内容までは聞き取れなかった。

「ハナビ…てめー、いいかっ!アイツは私んだっ!」

あ、アレ…ヒナタの雰囲気か…

「あれを私から奪っていくやつは皆敵だっ!」

月読ヒナタさん降臨。

ヒナタの白眼がいつもより力強さを増していた。

「ひ、ヒナタ…?」

いきなり雰囲気の変わったヒナタにたじろぐのは近くで見ていたヒアシ様。

「行くぞハナビっ!覚悟はできてんだろうなっ!」

「はいっ!ねえさまっ!」

バシ、バシと技に切れ味が増していた。ハナビの躊躇いが消えたからだろう。

しかし、それに食らいついていくハナビ。…本当に五歳も年が下なのだろうか。

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」

「はっ…はっ…はっ…はっ…」

「やるなハナビっ」

「ねえさまこそっ」

「だが、このままでは…」

「はい、終われませんっ」

ちょ、なんか二人とも距離を置いた事を良い事に自然エネルギーを集めてますがっ!?

そして互いに目元を赤い化粧で染める。

仙人モードだ。

「これ…は?」

ああ、ヒアシ様がもう付いて行ってない。まぁ当たり前か。

「行くぞハナビっ」

「はいっ!」

ドンッと空気が震えた。それもそうだ。互いに自然エネルギーを操っての柔拳なのだ。

いつしか二人とも地面を離れた空中戦をしているのだが、白熱した二人は気が付いていない。

ドンッドンッと空気が震える衝撃音が地上まで届いてきている。

「これはいったいどうした事じゃ…」

先代様の言葉は皆を代表したような呟きだった。

皆が見上げた先でヒナタとハナビは戦っているのだから。

「はぁっ!」

「やぁっ!」

ドゥンッ

互いの拳がぶつかり合い、…そして最後はダブルノックアウト。ズザザーと互いに地面を転がって目を回していた。

「きゅう…」

「にゅぅ…」

医療忍術の心得がある者はすぐさまヒナタとハナビに駆けていき治療を始めていた。

「ナァーーーーーツっ」

ヒアシ様の恫喝の様な呼び声。

「は、はいーっ!」

「…後で私の部屋に来るように」

げぇ、マジで…

幸い、ヒナタとハナビに目立ったダメージは無く、互いにうまくいなしたらしい。

しかし決着つかずになった事で跡目候補を決めそこなってしまったようだ。


と、言う事でやってまいりましたヒアシsルーム。

中に居たのはヒアシ様と先代様ですね。

「座れ」

ヒアシの厳格な声に促され正面にあぐらをかく。

「なんで呼ばれたか分かるな?」

「さ、さぁ…?」

ビキビキビキ

あ、青筋立ててらっしゃる…いや、白眼か。

「質問を変えよう。ヒナタとハナビが使った技はなんだ。お主の仕業と言う事は分かっているぞ」

ええっと…

「言わぬなら…のう?」

ちょ、先代様…印を組もうとするのはやめてくださいませんかねっ!?あれ、痛いんだからねっ!

わかった、わかりましたー…話しますよ。ちぇ。

「仙術か…」

もろもろ話した後ヒアシが一言漏らした。

「まゆつばだと思っておったがのぅ」

とは先代様だ。仙術と言う技術は噂では知っていても実際に見たことは無いのだろう。

「私らも覚えられるのか?」

「さあ?それは分かりませんが、俺が仙術の修行を独学で始めてコントロールが出来るようになるまで二年かかりましたね」

「…二年か。長いな」

「はい。それに、実戦向きの技術じゃないですしね」

「ふむ…」

仙術チャクラを練るのには動いてはいけない。

ヒナタもハナビも互いに動かずに見合っていた時に仙術チャクラを練ったのだ。

「修行で仙術チャクラを練る時間は縮まるのか?」

「どれほどまで縮めれるかは分かりませんが…少しずづ速くはなってますね。まだ一瞬で、とはなりませんが」

「最後の浮いた技が仙人の技と言う事か」

ええと…ごまかしても良いのだけれど、どうしようか。

実際仙術チャクラが練れるほどに繊細にチャクラをコントロール出来なければ舞空術は使えないからあながち嘘じゃないのだけれど。うん、そう言う事にしておこう。

「では、お前には明日から柔拳の修行を付けてやる事にしよう」

「……はい?」

なんか会話が飛んだ気がするのだが?

「あの、なぜ…?」

俺は基本のチャクラを放出する技以外ほとんど柔拳使えないのだけれど?

「それだけの技術がありながら柔拳を使えないのは日向の恥。それに仙術チャクラと柔拳を組み合わせれば敵に大ダメージを与えられる。違うか?」

「そ、そうですね…仙術チャクラは扱いが難しいので、柔拳の要領で相手に流し込めれば相手は仙術チャクラを扱いきれずに死にますね」

正確には石化するのだが、今は良いだろう。

「ヒナタとハナビには半歩でも先を行く者が必要だ。お前が責任をもって二人の道標となれ」

えー…

「おことわ…」

ギロッ

「りょ、了解しましたー」



……

………

ナツが退出した後のヒアシの部屋。

「あの日向の異端児が化けおったの」

「はい」

と先代の言葉に頷き返したヒアシ。

「飛雷神の術に仙術…これほどの術が使える者を分家として縛り付けられるじゃろうか」

「日向の柔拳の口伝、秘伝によるアドバンテージもあやつにどれほど効果があるか…」

と頭を抱えるヒアシ。

「ヒナタとハナビの跡目問題も決着がつかなんだ。…こうなればどちらかをあやつに嫁がせて本家に取り込んだ方が良いのではないか?」

「くっ…それも一つの手ではありますね」

「ヒアシよ、娘はいつか嫁ぐものだぞ?今からそんな顔をするでないわ」

「ええと、ちなみにどのような顔を?」

していましたか、とヒアシ。

「まるで鬼の形相よ」

とカラカラと笑う先代。

「とりあえず、明日の修行でヤツをボコる事にしましょう…ふっふっふ」

「ヒアシよ…ほどほどにのう」



……

………
 
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