夢幻水滸伝
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第二百八十四話 アメリカの北端からその三
「ヴォネガット様が結論を出すまでです」
「考えてええですか」
「そうして下さい」
是非にという返事だった。
「ここに留まられて」
「この教会にですか」
「今お家はありますか」
「いえ」
ヴォネガットは首を横に振って答えた。
「実は」
「それでお金もですね」
「今見ますと」
聖職者キリスト教の服を調べると財布があった、そして中を見たが。
殆どなかった、あるにはあるがそれでも雀の涙程であった。ヴォネガットはこれではとてもと思い述べた。
「殆どです」
「ないですか」
「左様です」
まさにというのだ。
「これは」
「ではです」
「それではですか」
「ヴォネガット様が望まれるだけです」
期間を設けずにというのだ。
「留まって下さい」
「ええのですか」
「神は来る者を拒みません」
笑顔でだ、牧師はヴォネガットに話した。
「そうですね」
「はい、それは」
ヴォネガットもその通りだと答えた。
「神の慈愛は無限ですから」
「それで、です」
「私が望むだけですか」
「留まられ」
「考えてですか」
「結論を出されて下さい」
「世界を救われるのですから」
シスターも言ってきた。
「熟考させるべきです」
「その団体のことも」
「そうです、ですから」
「この度はですか」
「望むまま留まられ」
この教会にというのだ。
「熟考されて下さい」
「そうですか、有り難い申し出です」
ヴォネガットは二人の好意に心から感謝して述べた。
「まことに」
「ではですね」
「これより」
「ですが何もせえへん訳にはいきません」
ヴォネガットは二人に答えて述べた。
「そうですさかい教会のお仕事をです」
「手伝ってくれるのですか」
「その間は」
「はい、何でも言って下さい」
仕事はというのだ。
「どうか」
「それも神に仕える者の務め」
「そういうことですね」
「そうです」
まさにというのだ。
「そやからええでしょうか」
「その申し出受けさせて頂きます」
畏まってだ、牧師はヴォネガットの申し出に応えた。
「まさにそれがです」
「神のご意志ですね」
「ヴォネガット様がこの教会に来られ」
そしてというのだ。
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